NARUTO/カカサク 短編①

I beg you/Aimer

胸に抱えた思いをはきだしたおかげか、それとも泣きつかれたためか、サクラはあのあと俺の腕の中ですやすやと眠っている。
俺はサクラの泣きはらした目を優しくなぞる。

「そんなことでこんなに悩むなんてバカだなぁ。まぁ、そういうところが可愛いんだけど」

あのね、サクラ。
謝るのは本当は俺の方なんだ。

サクラは自分の不注意で怪我をしたと言っているけど、倒れそうな木があるところに俺がさりげなく誘導して、わざと怪我をするように仕向けたんだ。木が倒れてきた時に助けることもできたけど、あえてしなかった。
最低だよね。でもね、どうしてもサクラを手に入れたかったんだ。

サクラが怪我をして、誰かの手が必要になる状況を作り出す。俺がそれに名乗りを上げ、一生懸命世話をすることになればサクラは嫌でも俺を意識するだろう。痛い思いをさせるのは心苦しかったけど、仕方ないよね。

サクラとの生活は本当に幸せだった。
家にはサクラのものが増え、俺のモノクロだった生活が彩られていく。美味しそうに食べる顔が見たくて、つい料理を作りすぎてよく小言をもらったりしたっけ。

しばらくして、怪我が治っているのを知った。けれど、サクラはそれを隠していた。サクラも俺と一緒にいたがっていると思うと、すごく嬉しかった。でも、サクラの笑顔にどこか影があるのにも気づいていた。きっと俺に隠し事をしている罪悪感からだろう。このままではだめだ。

俺は、昔1度だけ抱いた女を焚き付けると、案の定、女は俺の家を訪れ、サクラを挑発。計画はこのように上手くいってくれた。だが、サクラに暴言を吐いたことは許せない。あとで、消しておくか。

でも、これでようやくサクラを手に入れた。

「もう離さないからね」

そう呟くと、眠るサクラを抱き寄せる。

「……先生」
「サクラ?」

起きる様子はないため、どうやら寝言のようだ。夢の中でも俺と一緒に過ごしてるのだろうか。そしたらなんて幸せなんだろう。

「ずっと愛しているよ」

俺はサクラの瞼に唇を寄せると、サクラが笑ったような気がした。

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