NARUTO/カカサク 短編①

ササゲロ -You Are Mine-/ŹOOĻ

ーナルトの不安ー

「ねぇ、サクラ。何で昨日の夜連絡よこさなかったの?」
「ごめんなさい……疲れてそのまま眠っちゃって」
「ふーん。でも、俺すごく心配したんだよ。そりゃあ、もう眠れないぐらいに。サクラならこの気持ち分かるよね?」
「分かってる。次は絶対に忘れないから」
「約束だからね。分かってると思うけど、サクラを愛してるからこんなにしつこく言うんだからね」
「えぇ、分かってる」
「本当に?」
「本当よ」

このやり取りをカカシ先生がきてから、小1時間はしている。

「カカシ先生。サクラちゃんも反省してるんだし、そのぐらいにしといてほしいってばよ」
「ナルトの言う通りだ。お前たちのせいで任務もまだ始まっていない」
「それに連絡ぐらい忘れることあると思うから、そんなに責めなくても……」
「お前に俺とサクラの何が分かるの?」
「……」

先生の冷たい視線に、オレは思わず固まる。

「カカシ、お前そんな言い方はないだろう」
「はぁ……うるさいなぁ。部外者は黙っててくれない?」

サスケが珍しくフォローに入るが、先生は面倒くさそうにオレ達に言う。

「部外者って……」
「お前……」

オレとサスケはもう呆然とするしかなかった。

「ねぇ、先生。ナルト達の言う通りよ。早く任務を終わらせて、先生とゆっくり過ごしたいし」

サクラちゃんがその場の空気を変えるように呼び掛けると、先生は「それもそうだね~」とさっきとは打って変わっていつもの感じに戻る。
サクラちゃんは先生に気づかれないようにオレ達の方に振り向き、申し訳なさそうに「ごめんなさい」と口パクで謝ってきた。

オレは2人の姿を見ながら、サスケに問いかける。

「サクラちゃん、これでいいのかな……」
「サクラが受け入れている限り、俺たちにはどうにもできないだろう」
「でも……」
「とにかく俺たちは手を出さない方がいい。分かったな」
「……」

オレが渋々頷くと、サスケは“もうこの話は終わりだ”というように2人の後を追った。オレも“サクラちゃんが受け入れてるなら……”と無理やり自分を納得させ、任務に取り掛かることにした。

ーいのの心配事ー

「ねぇ、いの。一緒に写真撮ってくれない?」
「また? 別にいいけど」

カフェでお茶をしていると、サクラがいつものお願いをしてくる。私は言われるがまま、一緒に写真を撮る。

「カカシ先生に送るんでしょ?」
「うん。誰といるのか逐一写真付きで報告しないと、すぐに不安になるから」
「律儀ね。電話も毎時きてるわよね。あの人、ヒマなの?」
「ううん。今はAランクの任務に行ってるはずよ。さすがに戦闘中はかけてこないけど……それ以外は連絡くるかな」
「ひくわ~、あの先生。淡泊そうに見えて、そんなねちっこかったのね」
「そんなこと言わないで。私のこと心配してくれてるのよ」
「そうだけど……。その携帯にも男の連絡先は一切入ってないんでしょ?」
「うん、先生以外のはね。前はナルトやサスケくん、イルカ先生とかも入っていたんだけど、消されちゃった」
「いくらなんでもやりすぎじゃない?」
「まぁ、番号を覚えてるからなくても不便じゃないかな。ただ、履歴とかも毎日確認してくるから、連絡したら消すのを忘れないようにしてる」
「大変ね~、嫌にならないの?」
「うーん。確かに大変だけど、その分愛されてるって分かってるから」
「あんたがそれでいいならいいけど……」
「あっ、先生から電話だ。ごめん、いの」

サクラはそう言うと、電話をするために外に出る。

私はすっかり冷めてしまった珈琲を飲みながら、先生と幸せそうに話すサクラを複雑な表情で見ていた。


ーアスマの説得ー

カカシから飲みに誘われ、俺は馴染みの居酒屋に来ていた。以前は一緒に頻繁に訪れていたが、カカシがサクラと付き合いはじめてからその回数は減っていたのだ。

「お前とこうして飲むのは久しぶりだな。サクラはいいのか?」
「サクラはいま任務に出ていて、明日帰ってくる予定」
「なるほど」

サクラがいないから誘われたのか。まぁ、そんなことだろうとは思ったが。俺たちはグラスを合わせ、酒を飲む。

「サクラとは上手くいっているのか?」
「聞かなくても分かるだろ?」
「あはは、確かに。毎日一緒にいるもんな」

俺がそう言うと、カカシは“当然”という表情をする。

「サクラ、本当に可愛いんだよ。コロコロ表情が変わるし、毎日一緒にいても飽きないんだ。特に笑った顔なんかはもう一人占めしたいぐらい」
「そりゃあ、良かった。でも、まさかお前がこんなになるとはな」
「こんなにって?」
「前は彼女がいてもそっけなかっただろう。逆に冷めすぎていて、付き合っているのか疑ったぐらいだ」
「あ~、あれは向こうが勝手にそう言ってるだけだったからね。俺はただ楽にヤレれば良かったんだよ」
「さいてーだな」
「どうとでも言ってくれ。でも、まさか俺もこんなに誰かを好きになるなんて思っていなかったよ」

カカシは酒を呷り、少し遠い目をしながら語り続ける。

「サクラから告白されたときは驚いたよ。とりあえず軽い気持ちで付き合ってみたんだけど、いつのまにかハマっちゃって。一緒にいるとすごく安心するし、楽しいんだ。今ではサクラのことを考えない日はないかな。だけど、幸せであると同時に不安にもなる。サクラがもし俺の前からいなくなったらって……」

いのに以前“カカシ先生の束縛がひどいのよ。サクラ本人は気にしていないみたいだけど、私が心配で……”と相談されていたことを思い出し、俺は項垂れているカカシにさりげなく尋ねる。

「だから、男達の連絡先を消したり、毎時連絡したりするのか?」
「当たり前でしょ。サクラは優しいから、すぐに男どもが勘違いするんだよね。悪い虫がつかないように俺が見張っとかないと」
「そこまでしなくてもサクラはお前にベタ惚れだと思うが」
「うん、サクラのことは信用してるよ。でも、それでもなんかのきっかけで離れていくかもしれない。俺はその可能性を少しでも排除したいんだ。本当は一日中俺の部屋に閉じ込めておきたいけど、さすがにそれはまだ早いかなって。……最終的にはそうできたらいいけどね」
「それはさすがにやりすぎじゃないのか」
「そう? 愛しているんだからずっと一緒にいたい、誰にも見せたくないと思うのは当然でしょ」
「人それぞれだと思うが……。もしお前を邪魔するやつが現れたらどうするんだ?」
「たとえ誰であろうとも、消すよ」

カカシが平然とそう言ってのけるので、俺はもう開いた口が塞がらなかった。これはもう重症だ。
“俺にはカカシを止めるのは無理だ、悪いな”と心の中でいのに謝り、酒を呷った。
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