NARUTO/カカサク 短編①

Mysterious/Naifu


「カカシ先生、なんかサクラちゃんと同じ匂いがするってばよ」

オレは先生にくっつき、匂いを嗅ぐ。

「気のせいじゃない?」

そう言うと、先生はオレを引き離す。

「ちょっ、引き離すなんてひどいってばよ」
「俺は男に抱きつかれる趣味はないの」
「オレだってそんな趣味はないって。でも、なんか気になるんだよな~。鼻には自信あるから、間違いないと思うんだけど……」

考え込んでいると、サクラちゃんが会話に入ってきた。

「もしかして、私と同じ柔軟剤を使ってるんじゃない?」
「あ~、そうかもしれないな。最近、変えたばっかりだからね」
「でもそれだけじゃない気が……」
「それよりあんた自分の作業は終わったの?」
「げっ!」

そういえば、任務の草むしりの最中だったと思い出す。

「はぁ〜。早く終わらせなさいよ」
「分かったってばよ」

サクラちゃんに促され、持ち場に戻る。
なんかはぐらかされた気がするけど、とりあえずオレは目の前の作業を終わらせることにした。

草むしりも無事に終わり、集合場所に戻る。サスケとサクラちゃんがまだきておらず、先生だけがいた。

「お前が一番だなんて明日は雨が降るんじゃないか」
「オレだってやればできるんだってばよ」
「雨とか勘弁してよ。明日は久しぶりのデートなのに」
「えっ!? 先生彼女いるの?」
「うん」
「誰だか教えてくれってばよ!」
「教えない〜」
「え〜、じゃあヒント!」
「うーん、可愛いよ」
「それだけじゃ分からないってばよ!」
「ほかか……柔らかくて、いい匂いがする」
「だからもっと具体的に」
「お前も知っている子だよ」
「えっ、うそ!」
「ほんとほんと」
「だから誰だってばよ!」
「これ以上は教えない」
「え〜」

そんな会話をしていると、「あ〜、ナルトに先を越されるなんて」とサクラちゃんがやってくる。

「お疲れ、サクラ」
「お疲れ様だってばよ!」
「あれ? サクラ。お前、顔に土ついてるぞ」
「えっ、どこ?」

確かにサクラちゃんの頬には泥がついていた。サクラちゃんは必死に取ろうとするが、なかなか泥は拭えない。

オレが手助けしようとした矢先、先生が「そこじゃない。ここだよ」とサクラちゃんの頬に手を這わせ泥を拭う。しかし、泥は取れたはずなのに先生の手は離れない。

「……先生、もう泥は取れたのよね?」

サクラちゃんが顔を赤くしながら、先生に問いかける。

「……あぁ! 悪い。つい、いつもの癖で。取れたよ」
「もうっ! でも、ありがとね先生」

いつもの癖とは? それに、2人の距離感かなんか近い気がする。
何だろう、この甘い空気は。
オレはその雰囲気にすっかり飲み込まれていた。

「何ぼーっとしてるんだ、ウスラトンカチ」

サスケの声で我にかえる。

「はっ! いや、先生とサクラちゃんが」
「私達がどうしたのよ?」

いつのまにか、2人はいつもの空気に戻っていた。

「いや、何でもないってばよ」

オレは不思議に思ったが、先生が一楽を奢ってくれると言うので、そのことはすっかり頭から飛んでいった。

―――――――――――――――――――――

夕飯の食材を買い終わり帰宅しようとしていると、見知った顔が遠くに見えた。俺は関わりたくないと思い、気配を消して通り過ぎようとしたが、気付かれてしまったようだ。

「サースケ」

肩を叩かれ、俺はゆっくりと振り向いた。

「カカシ」
「ひどいじゃない。無視するなんて」
「気づかなかっただけだ」
「まぁ、いいや。夕飯の買い物?」
「見れば分かるだろう」
「それもそうだね。ちゃんと野菜はある?」

カカシは俺の持っている買い物袋の中身を見る。

「ちゃんと買ってるね。えらいえらい」
「ふんっ」

俺は何気なくカカシの手元を見る。
白地に鶯と桜が描かれたバッグに甘いものがいくつか入ってる。

「あんた洒落た袋を使ってるんだな。それに甘いものは嫌いじゃなかったのか?」
「あ〜これね、彼女のバッグ。甘いものも彼女が好きだからだよ」
「彼女なんていたのか。お前に」
「ひどいね〜。俺だって恋愛ぐらいするよ」
「まぁ、俺には関係ないが」
「すごく可愛いんだからね。欲しいって言ったってあげないからね」
「言うわけないだろう」
「本当に?」
「本当だ」
「その言葉忘れるなよ」

カカシはやけに念を押してくる。
俺は面倒臭くなり、頷いてその場を去った。

翌日。同じように夕飯の食材の買い出しをしていると、サクラに会った。

「サスケくん!」
「サクラか」
「夕ご飯の買い物をしてたの。サスケくんも?」
「見れば分かるだろう」

この会話デジャブだなと思っていると、昨日カカシが持っていたバッグをサクラが持っているのに気がついた。

「それ、流行っているのか?」
「えっ?」
「そのバッグ」
「あー、これはね、お母さんが作ってくれた一点ものよ。可愛いでしょ。お気に入りなの」
「!?」
「サスケくん?」
「……お前、彼氏いるのか?」
「えっ?」
「いや、何でもない。忘れてくれ」
「えっ! ちょっとサスケくん!」

俺はサクラの止める声も聞かず、足早に家の方向へ歩き出した。

何であんなことを聞いたのか分からない。ただ、カカシの彼女がサクラかもしれないと思ったら、口に出していたのだ。

あのバッグは一点もので昨日はカカシが、今日はサクラが持っていた。カカシが買ったのは大量の甘いもの。サクラは甘いものが好きだったはずだ。サクラのバッグの中身も見えたが、ナスが入っていた。ナスは確かカカシの好物だ。そして、昨日のカカシのあの念の押しよう。考えすぎかもしれない。だけど、俺の心の疑念は晴れることはなかった。

―――――――――――――――――――――

月明かりが綺麗な夜。私と先生は2人並んで座っていた。

「先生、何でナルト達に私達の関係隠すの?」
「それを言うならサクラも隠してるでしょ。まぁ、彼女がいることは言ったけどね。でも、ナルトはともかくサスケは何となく勘づいてるんじゃないかな」
「どうしてそう思うの?」
「男の勘かな」
「ふ〜ん」
「そんな冷たい目で見ないでよ。そういえば、隠してる理由知りたいんだっけ?」
「知りたい気もするけど、やっぱり別にいいわ。先生は?」
「俺もいいかな。秘密がある方が何かドキドキしない?」
「なにそれ。でも、ナルトの前で私の頬を触られた時はさすがにバレたかなと思ったけどね」
「あー、あれね。サクラの頬が柔らかかったから離しがたくなっちゃって。でも、一楽で誤魔化したから、忘れてるんじゃない?」
「うふふ、あのナルトならあり得るわ」
「でも、もしバレたとしても俺達の関係は変わらないでしょ」

先生は私の手を握る。

「当たり前でしょ」

私も先生の手を握り返すと、肩にもたれかかり、私達は寄り添いあった。
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