NARUTO/カカサク 短編②

Love Sux/Avril Lavigne
※紅先生目線。

他愛もない話をしながら、カカシと並んで歩く任務の帰り道。

「そういえば、最近どうなの?」
「最近どうって?」
「彼女できたんでしょ」
「あ〜、別れた」
「えっ? 付き合ったばっかりじゃなかった?」
「そうなんだけどね〜。振られちゃった」

そういう割には落ち込んでいる様子は全くない。

「またなの。カカシって、いろんな人と付き合う割には長続きしないわよね」
「そう?」
「その彼女はいつまでもった?」
「うーん、2週間かな」
「その前は?」
「1か月」
「なんでそんなに短いの?」
「さぁ? まぁ、どの子もそんなに好きってわけじゃなかったから、別にいいんだけど」
「告白されて、彼女がいなかったらとりあえず付き合うスタンスってこと?」
「まぁね」
「女の敵ね」
「あはは」

そんな会話をしていると前からサクラちゃんが歩いてきた。

「カカシ先生! 紅先生!」

私達に気づいたらしく、駆け足で寄ってくる。サクラちゃんは珍しく髪を編みこんでおり、そこに桜の髪留めがついていた。

「こんにちは、サクラちゃん」
「こんにちは、紅先生。先生達は任務帰りですか?」
「そうだよ。サクラはいまからどこかに行くのか?」
「うん、映画を観に行くの」
「……誰と?」
「いのとだけど」
「ならよし」

そう言ってカカシはサクラちゃんの頭を撫でる。

「ちょっと、先生! せっかくセットした髪が崩れちゃう! それに、誰だったらダメなのよ」
「俺以外の男」
「なによそれ〜。あっ! そういえば、明日の約束忘れてないわよね?」
「忘れてないよ。デパートに行くんでしょ」
「そう! 寝坊したら許さないからね!!」
「はいはい」

「ならいいんだけど」と言いながら、サクラちゃんはカカシに崩された髪をなおす。そして、時計を見て目を見開く。

「あっ、もうこんな時間! それじゃあ、そろそろ行くわ。明日よろしくね! 紅先生もまた!」

私にも頭を下げ、去ろうとしているサクラちゃんをカカシが呼び止める。

「サクラ!」
「なに?」
「その髪留め、似合ってるよ!」
「ありがとう! 先生のおかげね!」

そう言って今度こそサクラちゃんは足早に去っていく。私はそれを見送り、カカシに再び話しかける。

「仲良いわね」
「普通じゃない?」
「そうかしら。それより、あんたのおかげってどういう意味?」
「髪留めのこと? あれ、俺が選んだの」
「あなたがサクラちゃんにあの髪留めをプレゼントしたってこと?」
「そういうこと」
「誕生日プレゼントとか?」
「ううん。たまたま店先で見つけて、サクラに似合うと思って買ったんだよ」
「……さっきのサクラちゃんとの会話だけど、明日会うの?」
「うん。デパートのバーゲンで、荷物持ちしてほしいんだって」
「よくそういうことがあるの?」
「そういうことって?」
「サクラちゃんに何かあげたり、一緒に出かけたりとか」
「あ〜。そう言われると、けっこう多いかも」
「この前、新しくできたカフェに行ったって言ってたけど、もしかしてそれもサクラちゃんと?」
「そうだよ」
「その前の水族館とか動物園も?」
「うん」

カカシから「どこへ行った」「何をした」と話を聞く度に、てっきり彼女と行ったのかと思っていたけど、どうやらそれら全てはサクラちゃんと行ってたらしい。

「それじゃあ、彼女とはどこで会ってたの?」
「ほとんど家で過ごしてたかなー」
「一緒に出かけたこととかないの?」
「少しはあるよ。行きたいって言うから仕方なくね。ほとんどサクラと行ったところだったから、あんまり乗り気はしなかったけど」
「あんた、もしかして彼女にサクラちゃんと訪れたことがあるとか言ったりした?」
「言ったけど」
「……サクラちゃんと彼女から同じ日に誘われたら、どっちを優先する?」
「そんなのサクラに決まってるでしょ」

当然のように言うカカシに私は思わず頭をかかえる。以前カカシの彼女だった子と話をしたときに「私は彼の一番になれなかった」と言っていたのだ。その時はよく分からなかったが、この会話でいま分かった。カカシは彼女よりサクラちゃんを優先していて、いままでの彼女達はそれに耐えきれずに去っていたのだ。

「……あんたが長続きしない理由が分かったわ」
「えっ、マジ? なに?」
「自覚はないのね」
「ちょっと、教えてよ」
「あんた、サクラちゃんのことどう思ってるの?」
「何でサクラ?」
「いいから」
「そりゃあ、可愛い教え子かな」
「もしサクラちゃんが誰かと付き合ったら?」
「え〜、想像つかないな。恋に恋してる感じだし。でも、俺が認めたやつじゃないと許さないかな」
「どんな男ならいいの?」
「サクラのことを一番に考えてて、俺より強いやつかな。サクラはイケメン好きだから、顔も良くないとね」
「あんたより強い男は中々いないんじゃない?」
「まぁね。あと、俺ほどサクラを一番に考えているやつもいないと思うよ」
「それじゃあ、いないってことになるじゃない」
「そうかもね。まぁ、サクラには俺がいるから大丈夫」
「……もう一回聞くけど、サクラちゃんの事どう思ってるの?」
「可愛い教え子だけど」
「はぁ〜」

私は大きなため息をつく。どうやらサクラちゃんへの気持ちも自覚がないらしい。

「自分で考えなさい」
「え〜」

文句を言うカカシを無視して、私はとりあえずしばらく2人の様子を見守ろうと心に決めたのだった。
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