NARUTO/カカサク 短編①

しょげないでよBaby/B.B.クィーンズ


俺はAランク。いや、Sランク任務に挑んでいる。
命の危険はないが、俺の人権の危機だ。
そして、里からではなく、サクラからの依頼だが。


その依頼はサクラの好きなアニメのグッズが新発売するので、それを買ってきてほしいというものだった。
サクラ本人が行くつもりだったらしいが、どうしても外せない任務が入り、俺に依頼がきたわけだ。
可愛いサクラの頼み、聞いてやるしかないじゃないか。


まだ朝の8時前。普段通りだったら、俺はこの時間ベッドで過ごしている。
だが、いま俺がいるのは商店街のある店にできている列。
俺の順番は15番目ぐらいだろうか、後ろにもけっこうな人数が並んでいる。

一見、早起きして開店まで待つだけの簡単なDランク任務に見えるが、問題は列に並んでいる層だ。男性が一切いないのだ。
並んでいるのは母娘の親子もしくは友達同士、一人の子もいるが、見事に女性だらけ。

それもそうだろう。
サクラのその好きなアニメは女児向けなのだから。
しかも、メインキャラクター達は人魚なので、当たり前だが露出が多い。さらには幼い女の子の人魚も出てくる。
だから、男1人だけで並ぶ俺への視線が痛い。
気を紛らわすためにイチャパラを読もうと思ったが、子供も多く並ぶこんなところで広げたら通報案件だ。
ただでさえサクラと付き合っていることでロリコン疑惑が持ち上がっているのに、もし通報でもされたらその疑惑が確定し、俺は一生白い目で見られるだろう。そんなのはごめんだ。

俺はひたすら心を無にし、時間が経つのを待った。

「10時になりました! 開店です〜!」

店員の声が聞こえ、並んでいる順番ごとに店に入っていく。
長かった……既にAランク任務を達成したような疲労感だ。

とりあえず目的のものを手に入れなければ。
俺も女性達に続いて、お目当てのグッズがあるコーナーに向かう。

着いたら着いたで、俺は戸惑った。たくさんのキャラクターがいるのだ。

俺にはどれも同じ顔に見え、区別がつかない。
色で判断しようと思っても似たような色のキャラクターもいて、さらに分からなくなる。
サクラの好きなキャラクターの名前は分かるのだ。教えてもらったから。
だが、グッズに名前は書かれておらずキャラクターのイラストのみだった。

どうしよう……俺は途方に暮れていた。

ちょんちょん、と下から腕を突かれる。
下をみると七歳ぐらいの女の子がいた。

「おじちゃん、困ってるの?」

“おじちゃん”。俺はその言葉にショックを受ける。
確かに君から見たらおじさんだけどさ、まだ20代だし、一応素顔はイケメンって言われるんだよ。

と言えるはずもなく、俺は
「そうなんだよ〜、大事な人に頼まれてグッズを買いに来たんだけど、どのキャラか分からなくてね。名前だけなら分かるんだけど」
と女の子に答える。

「そうなのね。だったら私が教えてあげる! そのキャラの名前は?」
「えっと名前は確かリカだったかな」
「リカね。私が2番目に好きなキャラクターだわ。この子がリカよ!」

そう言って女の子は指を指して教えてくれた。

「なるほど、これがリカね」

俺はそのグッズを手に取る。

「ありがとね、助かったよ」

俺は女の子の頭をなでる。
女の子は照れたように笑い、俺も思わず顔が綻ぶ。

「良かったわ。これであなたの大事な人も喜ぶわね」
「そうだね。そうだ! 大したものじゃないけどこれあげる」

俺はポケットから飴を取り出す。
俺は食べないが、サクラが好きだから持ち歩くようにしてるのだ。

「ごめんなさい、お母さんに知らない人からものは受け取るなって言われてるの」
「そうなんだ。今時の子はしっかりしてるね」
「でも、どうしてもって言うならもらってあげてもいいわよ」

そう言って手を出してくるので、俺はその手に飴をのせる。

「ありがとう!」
「俺の方こそ本当にありがとうね」
「それじゃあ、私はもう行くわね!」

女の子は手を振りながら去っていった。


さて、目的のものも手に入れたし、あとは会計だ。

レジに行くと、明らかに女児向けのものを買う俺に若い女の子の店員は一瞬怪訝そうな表情をするが、すぐに上辺だけのスマイルに切り替える。

でも俺には分かるよ。笑顔でも

この人、自分用に買うのかな? それとも転売ヤー? もし前者だったら、まじ引くし、転売ヤーだったらまじ許さない。まぁ、頼まれたっていうパターンもあるよね。

みたいな視線を感じてるからね。

俺はその視線に耐え、俺は店を出る。

「はぁ〜〜〜、疲れた。でもこれで任務は完了だな」

俺は家へ帰って、サクラを待つことにした。



「先生、ただいま〜! 買えたー?」

帰ってきて早々にグッズの心配をするサクラに苦笑いしながら、買ってきたものを渡す。

「ありがとー! これよ、これ! 先生大好きー」

サクラの満面の笑みを見て、俺は頑張ったかいがあったと感じる。

「でも、もうこういうのはもう勘弁してね。男1人だけで恥ずかしかったんだから」
「えっ、先生。そのままの姿で行ったの?」
「うん」
「嘘でしょー! なにそれ、面白いわ! 女の子に変化すれば良かったじゃない」
「!? 確かに」
「今頃気づいたの? あー、見たかったな。女の子たちの中で男1人だけのカカシ先生」

サクラは大笑いしている。

「もうそんなに笑うなら、それ返してよね」
「あはは、ごめんなさい。もう笑わないから。でも、本当にありがとうね」

サクラはそう言ってキスをしてくる。
俺はそのキスでスイッチが入ってしまったようだ。

「頑張った俺にご褒美ちょうだい?」
「うふふ、仕方ないわね。何が欲しいの?」
「もう、分かってるくせに」

俺はサクラをベッドに運び、甘い時間を過ごした。


後日、俺が早朝から列に並んで女児向けのグッズを買ったところを里の誰かが見たらしく、それが噂になり、俺のロリコン疑惑が深まり、しばらく白い目で見られていた。

さらに、女の子と仲良さそうに話していたこと(頭を撫でているところ含め)も噂になり、それを聞いたサクラに「私より若い子がいいのねー。このロリコン!」とキレられ、宥めるのに苦労したのであった。
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