NARUTO/カカサク 短編①

Salva me/リンドウ(Singer:あじっこ)

「毎年、クリスマスにみんなで集まりましょう!」

ナルト、サスケ、サクラの第七班が結成された年。何の流れでそうなったのか分からないが、そう言いだしたのはサクラだった。そして、いままでクリスマスと無縁だった俺やナルト、サスケはサクラに言われるがままに毎年クリスマスを一緒に過ごすことになる。
しばらく経ち、サスケが抜け、ナルトが修行で里を出た後も、いつかまたみんなが揃うようにとサクラと俺だけは会い続けた。ようやくサスケが里に戻ってきて再び第七班が集まるようになったが、ナルトはヒナタと結婚、サスケは贖罪の旅に出てしまい、また俺とサクラの2人だけのクリスマスになってしまった。

「メリークリスマス、先生!」
「メリークリスマス」
「今年も2人っきりだね」
「なによ? 私だけじゃ不満?」
「そうは言ってないでしょ」
「なら、いいけど」

そう言ってサクラは食卓にクリスマスにちなんだ料理を並べる。毎年サクラか俺の家でクリスマスを過ごしており、今年は俺の家の番だった。

「今年はフライドチキンなんだね」
「去年はローストチキンだったから、変えてみたの」

サクラの料理のバリエーションはだんだん増えていく。サクラが向かいに座るのを確認すると、俺は「いただきます」とさっそく美味しそうなチキンを頬張る。

「うん、美味しい」
「当たり前でしょ」
「昔はひどかったもんな~」

一番最初のクリスマスを思い浮かべてみる。今日のようにサクラが料理を作ってくれたのだが、味がひどすぎた。あの味は一生忘れることないだろう……。遠い目をしていると、サクラがそれに気づいたのが抗議をしてくる。

「ちょっと! いま昔の事考えてるでしょ!」
「いや~、成長したなって思って」
「あの頃は仕方ないでしょ! 料理なんてしたことなかったんだから!」
「はいはい。でも、本当頑張ったよな~」
「当然! あの頃の私のままじゃないんだから!」
「あはは、それはそうだね」

そんな他愛もない会話をしながら、料理もだいぶ平らげ、落ち着いた頃。俺はここ最近ずっと考えてたことをサクラに言うことにした。

「ねぇ、サクラ?」
「ん?」
「……結婚しようか」
「……え?」

サクラの動きが止まり、こちらを驚いた表情で見る。

「俺達、けっこう長く一緒に過ごしてるしさ、そろそろかなって」
「先生……待って……」
「どうした?」
「私達、付き合ってたの?」
「え?」

今度は俺の動きが止まる。

「え? じゃなくて。私、先生に好きとか付き合おうとか言われてないよ?」
「いや、言わなくても分かるでしょ。もしかして、いままで俺は勝手にサクラと付き合ってるって思ってたのか……」
「言わなきゃ分からないわよ。なんとなく私達付き合ってるのかな? って思う時もあったけど、私の勘違いだったら恥ずかしいじゃない」
「いや、勘違いじゃなかったんだけど……」

確かに言葉にしていなかった俺が悪い。でも、休日はもちろん、誕生日や行事のイベントを2人で過ごしたり、お互いの家に泊まり合ったり……これは付き合うって認識でいいのではないか。だって、ハグもキスもしたよ。えっ、今時の子はそうじゃないの? そんな風に考えているとサクラが純粋な表情で聞いてくる。

「先生、私のこと好きなの?」
「……好きじゃなかったらプロポーズなんてしないよ」
「うふふ、そうなんだ……」

サクラがおかしそうに笑うので、俺は「もう好きに笑いなさい」と半ば投げやりな態度で言うと、サクラが俺の隣にやってくる。

「ごめん、先生。からかったわけじゃないの。確かに私達は付き合ってるとは思ってなかったけど……。私ね、先生の言葉嬉しかったよ」
「それは良かったです……」

勝手に付き合ってると勘違いして、プロポーズする……とんだ失態だ。それに俺の気持ちもばれてしまった。俺のライフはもうゼロに近い。

「もうっ! ちゃんと聞いてよ!」

項垂れていると、サクラの方に無理やり顔を向かせられる。

「私、こう見えてもモテるのよ。クリスマスだって、いままで別の人に何度誘われたことか……」
「そりゃあ、そうでしょうよ」

サクラは本当に綺麗になった。俺もサクラに恋焦がれる男達をできる限り牽制していたが、俺の知らないところでそんなことがあったのか……。

「でも、全部断ったの。だって私、先生としか過ごしたくないし」
「それはもう恒例行事になってるからでしょうよ」
「なんでそんな思考になるのよ!」
「だって……」
「もうっ! 女がクリスマスに1人の男としか過ごしたくない理由なんて1つしかないでしょ!」
「?」
「私も先生のことが好きってこと! 先生を好きじゃなかったら、わざわざ2人だけのクリスマスを続けないわよ!」
「でも、付き合ってないって……」
「そりゃあ、付き合おうとか言われてないからね。いまも私達付き合ってないからね。だって言われてないから」

サクラが“あとは分かるわよね?”と視線で伝えてくる。さすがにそこまでされたら、俺でもこの後言わなければいけないことぐらい分かる。

「……サクラ、好きです。俺と付き合ってください。そして、結婚してください」

なぜか敬語になってしまったが、サクラはそんな俺の言葉を満面の笑みで受け止める。

「はい!」

その笑顔を見て、今度からはきちんと言葉で伝えようと決心する。でも、その前にまずは態度で示させてほしい。俺は嬉しそうにしているサクラを思いっきり抱き締めた。
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