NARUTO/カカサク 短編①

ヒメムラサキ/水樹奈々
※サクラちゃんの子供が出ます。カカシ先生は出ません。

「いのお姉ちゃん! 次、ブランコしよー!」
「いいわよー!」

私と一緒に遊んでいるのは、肩で切りそろえた桃色の髪に少し広めのオデコ、クリっとした眼をした幼少期サクラにそっくりの女の子。この子は見た目通り、サクラの愛娘〝キキョウ”。父親は分からない。サクラが一時期行方不明になり里中が混乱している中、半年後にひょっこりとお腹を膨らませたサクラが戻ってきたのは記憶に新しい。里のみんなは父親が誰がと尋ねたが、サクラは絶対に口をわらなかった。

「いのお姉ちゃん、どうしたの?」

そんなことを考えながら、キキョウの背中を押しつつもボーっとしていた私をキキョウは不思議そうに見る。

「ううん、何でもない」
「そっか」

私の返答を聞いたキキョウはブランコを再び漕ぎ始める。私はキキョウを見ていると、時々ある人の面影を感じることがある。もしかしたら、その人が父親かもしれない。でも、そんなはずはないのだ。だって、キキョウができるずっと前にその人は死んでいるのだから。

「キキョウーーー! いのーーー!」
「ママ!」

ブランコで遊んでいると、仕事帰りのサクラが私達の元へやってくる。

「いの、面倒見てくれてありがとうね。キキョウはいい子にしてた?」
「してたもん!」
「うん、していたよ」
「なら良かった。毎回頼んじゃってごめんね」
「いいのよ。明日はナルトのところだっけ?」
「うん。その予定」
「そっか。でも、別に明日も私が面倒見てもいいのよ」
「ありがと。気持ちだけ受け取っておくわ」

サクラは仕事が忙しく、その間は私やナルト、ヒナタなどのいろんな人がキキョウの面倒をみている。私的には誰かに絞った方がいいとアドバイスをしたけれど、サクラは〝たくさんの人と関わらせたいから”と言って、あえてそのようにしているらしい。

「それじゃあ、本当にありがとう。キキョウ、行きましょう」
「うん! いのお姉ちゃん、またねー!」
「はーい。またねー!」

手を繋ぎ、仲良さそうに帰っていく2人の背中を見送りながら、私は昔を振り返っていた。

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あれはキキョウを宿したサクラが里に帰ってきて、2人で初めてお茶をした時。私はいままでのことを根掘り葉掘り聞いていた。肝心なことは教えてくれなかったけど。

「急にいなくなって私がどれだけ心配したと思ってるの!?」
「ごめん……」
「それに帰ってきたと思ったら、子供ができてるし……本当に驚いたわ」
「あはは、そうよね」
「笑い事じゃない! あんた、どこで誰と何してたの?」
「ごめん。それは言えないの」
「言えないって……。その子の父親の事も教えてくれないの?」
「うん……でも、大丈夫。私がしっかり育ててみせるから」
「サクラ……」

こうなったら意地でも意思を変えないサクラを知っていたので、私は追及を諦める。

「はぁ~、分かったわ。だけど、困ったことがあったらいつでも頼りなさいよ」
「いの……ありがとう」
「何年一緒にいると思ってるのよ! それより、お腹の子の性別は分かってるの?」
「うん、女の子みたい」
「へぇ~。名前はどうするの?」
「もう決まってるわよ」
「えっ! もう!?」
「うん。"キキョウ"って名づけようと思うの」
「理由は?」
「キキョウって秋のイメージが強いけど、夏の花でもあるの。この子は夏に生まれるし、それに……」
「それに?」
「花言葉が"永遠の愛”。素敵だと思わない?」

お腹を愛おしそうに撫でるサクラを見て、サクラがお腹の子のことをどれだけ想っているのかが伝わってくる。

「そうね……すごく良い名前だと思う」
「でしょ!」

そう言って私達は笑い合った。

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それからキキョウが生まれ、サクラはまわりに助けられつつも、宣言通りにしっかりとキキョウに愛情を注ぎ育てていた。仲睦まじい2人を見ながら、こんな日々が続いていくんだろうなと思っていたある日、サクラがキキョウを置いていなくなった。
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