NARUTO/カカサク 短編②

Super Love Songs!/七海るちあ(中田あすみ)・宝生波音(寺門仁美)・洞院リナ(浅野まゆみ)
※最初はサクラちゃん目線、後半はモブ目線。

今日はカカシ先生と任務で使う道具の買い出し。本当はナルトやサスケくんも一緒のはずだったけど、ナルトはお腹を壊し、サスケくんは用事があるとのことで先生と2人での買い出しになった。

「ごめんね~、色々付き合わせて」
「別にいいわよ、私達にも必要なものなんでしょ」
「まぁね。でも、お礼に甘いものおごるよ」
「本当!? やったー!」
「ナルト達には内緒だよ」

そんな他愛もない会話をしていると、クレープ屋さんが目に入る。

「それじゃあ、先生! 私、あのクレープが食べたい!」
「いいよ」

了承を得た私は先生の手を引っ張ってクレープ屋の前まで連れて行き、メニューを見る。

「バナナチョコは定番で間違いないけど、期間限定のベリースペシャルも気になる……」
「そんなに気になるなら2つ食べればいいじゃない?」
「いいの?」
「いいよ」
「でも、カロリーが……」
「明日は任務で動くだろうし、それぐらいいいんじゃない?」
「……それもそうね!」

先生の言葉に後押しされ、私はお店の人に「すみませーん!」とクレープを2つ注文する。

「バナナチョコとベリースペシャルの2つですね。お2人はカップルですか?」
「「えっ?」」

予想外の問いかけに思考を停止させていると、お店の人から「いまカップル割をやっているんですよ~。カップルの方限定で合計金額から20%オフになるんです」と説明を受ける。

「あぁ、そうなんですね。俺達はカップルじゃ……」
「カップルです! そうよね!?」
「えっ!?」
「そうでしょ!!」
「!? ……あぁ、そうだったね」

私の圧に先生は肯定する。お店の人は「じゃあ、20%オフになります~」と笑顔で対応し、先生が会計を済ませ、クレープを受け取る。

「わ~、美味しそう! 先生、ありがとう」
「どういたしまして。それで、あの、サクラ?」

近くのベンチに座り、両手にクレープを持ち、味わって食べていると先生が何か言いたげな表情をしていた。

「どうしたの?」
「いや、その……」
「早く言いなさいよ」
「いや、さっき俺達はカップルだって言ったよな。あれ、どういう意味かな~と思って」
「あ~、あれね。だってそう言った方が安くなるから。先生だって少しでもお得な方がいいでしょ?」
「なるほどね……」
「ほかに何があると思ったの?」
「いや別に」
「ふ~ん」

まだ何か言いたげな先生だったけど、それ以降聞いてこなかったため、私はクレープを食べ進めることにした。

ーーーーーーーーーーーーーーー

私は日暮問子。木ノ葉テレビ5年目の中堅アナウンサー。趣味は恋愛作品鑑賞、特技は恋愛相談、休日の過ごし方は婚活。番組でカップル特集をやることになり、今回はそれに使う素材を撮影するために、公園にインタビュー取材にきていた。まさに恋愛マスター(自称)の私にぴったり! そこで私はベンチでクレープを美味しそうに食べている女性とその横でそれを微笑ましそうに見ている男性に目を付けた。あの雰囲気、カップルに違いないわ!!

「あの~、すみません」
「はい?」
「私、木ノ葉テレビの日暮問子です。いまインタビューを受けてくれる方を探しているんですが、大丈夫ですか?」
「木ノ葉テレビ!? もちろんです!!」
「えっ!? ちょっと!!」
「テレビに出れるチャンスなんだから、ちょっと黙ってて!」

男性は困惑していたが、女性の方は二つ返事で引き受けてくれた。

「それでさっそくお話を伺いたいんですが、お2人は付き合われてどのぐらいなんですか?」
「「えっ?」」

私の問いかけに2人が固まる。

「えっと……お2人はお付き合いされてますよね?」
「付き合ってる? 私たちが? 彼氏と彼女ってことですか?」
「はい。仲良さそうにしていらしたので」
「まさか~、違いますよ。先生と教え子です」
「えっ!? それは失礼しました! すごく良い雰囲気でてっきり恋人同士なのかと……。あの、本当に付き合ってないんですよね?」
「そうですけど……」

インタビューに答えてくれる女性の言葉が信じられず、私が男性の方を向くと男性の方も察したのか「そうなんです。すみません、期待に沿えなくて」と申し訳なさそうに謝ってくる。

「いや! こちらこそ勘違いしてすみません!」
「あはは、よく言われるので、気にしないでください」
「えっ! よく言われるの!?」
「サクラ、知らなかったの? お前がよくうちにきたり、俺を財布として甘味屋につれていくから何回かそう言われたことあったよ」
「あ~、言われてみれば確かに“先生と付き合ってるの?”と聞かれたことがあったかもしれない……」

私の存在が忘れられているかのように2人の会話は進んでいく。これで、本当に付き合ってないの……? そのやり取りをしばらく見ているうちに、私はもしかして両片思いのでは……と結論に至る。そうと決まれば、おせっかいかもしれないけど、私は行動せずにはいられなかった。

「あの!」
「あっ、すみません……」
「いえ……ちょっと彼女と話してもいいですか?」

私は男性の方に断りをいれると、彼女の方を少し離れたところに連れ出し、男性に聞こえないように話をはじめる。

「いきなり連れ出してごめんなさい。どうしても聞きたいことがあって。あなた、あの人の事どう思ってる?」
「えっ、あの人って先生のこと? どうって言われても……」
「付き合ってないのは分かった。でも、私にはどう見ても両想いにしか見えないから、気になってしまって」
「両想い!? 私と先生が!?」
「で、どうなの?」
「どうって……普段はだらしないけど、いざという時には頼りになる先生かなと……」
「ほかには?」
「ほかは……甘いものを奢ってくれたり、勉強をみてくれたりとかですかね」
「かっこいいなとか、好きだなって思うことは?」
「えっ!?」

私の質問に女性の顔が赤く染まった。

「その反応! あるのね!?」
「いや、まぁ、あるといえばありますけど……」

何かを思い出しているか、女性はすっかり乙女の表情になっていた。

「でも先生は大人で、私はまだそうじゃないし……」
「今時年齢差なんて関係ないわ! それに、もし彼が好きって言ってきたら?」
「そんなことありえないですよ!」
「そんなの分からないじゃない!」

私の圧に驚いたのか、苦笑いを返す。

「あっ! ごめんなさい。つい……」
「いえ、大丈夫です」
「でも、あの男性はあなたのことを大切に想ってると私は思うの。うまく言えないけど、私の勘がそう言ってるわ」
「先生は確かに私を大切にしてくれていると思います。でも、きっとそれは教え子だからですよ」
「そんな……」

少し悲しそうな表情で言うその子に私はそれ以上何も言えなかった。


数日後。私がスーパーで買い物していると、あの時の男性と出会った。

「あっ、こんにちは」
「こんにちは」
「先日はどうも失礼しました。夕飯の買い出しですか?」

かごを見るといくつかの食材とスイーツがいくつか入っていた。

「えぇ、まぁ」
「量多いですね」
「いや、今日サクラが……。えっと、先日一緒にいた子がうちにくるので」
「あぁ、なるほど!」
「そうなんです。それじゃあ、失礼します」

相変わらず仲が良いみたいだ。そんなことを思ってると、男性が足早に去ろうとするので私は男性を呼び止める。

「あの! あなたはあの子……サクラちゃんの事どう思ってるんですか?」
「えっ?」

いきなりの問いかけに驚いた様子だったが、すぐに理解したのかしばらく考え込んだあと落ち着いた様子で答えてくれる。

「どうって……大切な教え子ですけど」
「そういうのじゃなくて……その、恋愛的な意味で」
「恋愛的か……ありえないですよ。俺はあの子の先生ですよ」

否定はしているが、どうも私には本心とは思えなかった。

「先生も教え子も一人の人間ですよ。そりゃあ立場的に良く思わない人もいるかもしれませんが、大事なのは当人の気持ちだと思うんです」
「……仮に俺がサクラのことを好きだとして、サクラは俺のことは何とも思ってないですよ。先生として好かれているとは思いますけど」
「確かめたんですか?」
「確かめるもなにもそんなの分かりきってることで……」
「確かめてないのに? 何か思い当たることはないんですか?」

私の問いかけに黙り込む。どうやら思い当たるふしがあるようだ。

「部外者の私が出過ぎた真似をしてごめんなさい。でもどうしてもお2人が気になってしまって……」
「どうしてそこまで俺達に?」
「……実は私も似たような経験があって、いま後悔してるんです。こんな思いをお2人にしてほしくなくて」
「そうだったんですね」
「とにかく自分の気持ちに素直になってください。もし上手くいかなかったとしても、そんなのでダメになる2人ではないはずです」
「そうですね……少し考えてみます」
「ありがとうございます。それじゃあ、そろそろ私はこの辺で」

言い過ぎた自覚がだんだん出てきた私はとたんに恥ずかしくなり、今度は私がその場から足早に立ち去った。


それからまた数日後。仕事も休みで、のんびりと散歩をしていると、前と同じ公園であの2人を見つけた。

「こんにちわ!」
「あっ、こんにちわ! 今日はお仕事ではないんですか?」
「はい、お休みです。お2人は?」
「買い物し終わって、いまから映画を観に行くんですけど、まだ映画の時間まであるので、ここで休憩してたんです」
「なるほど」

相変わらず仲が良いなと思っていると、2人が手を繋いでいるのに気付いた。

「手……」
「あっ! 実はあの後付き合うことになりまして……」
「えっ!? それはおめでとうございます!!」
「ありがとうございます」

女性の方は照れくさそうに、でも幸せそうに笑っている。それを隣で男性の方が優しい表情で見守っている。

「良かった……」
「これもあなたが背中を押してくれたおかげです」
「サクラも?」
「“も”って、先生も?」
「あ~、まぁ、うん。結果的にはそうなるかな」

2人のやり取りが微笑ましく、「うふふ」と思わず顔がほころぶ。

「あっ、そろそろ時間じゃない?」
「本当だ! すみません、そろそろ行かなきゃで」
「大丈夫です! 私こそお時間とらせてすみません」
「いいえ、報告ができて良かったです! それじゃあ、また。お仕事頑張ってくださいね」
「ありがとうございます! お幸せに!」

私の言葉に頷いた2人は、手を繋いだまま仲良さそうに去っていった。
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