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NARUTO/カカサク 短編②

cerasus~桜並木に導かれて~/卯月新 (細谷佳正)

「サクラ、どうしてここに?」
「カカシ先生」

私はいまライトアップされた桜並木道に一人で佇んでいる。ライトアップされた桜はとても綺麗で観光名所にもなっているが、深夜だからか私以外の人はいなかった。そんな中カカシ先生が現れいきなり話しかけられたので、私は驚きつつも返事をする。

「先生こそどうしたの?」
「俺はアスマと飲んだ後に酔い覚ましに歩こうかなと思って」
「そっか」
「お前今日誕生日だよね。サスケといるんじゃなかったの?」
「そのはずだったんだけど……サスケくん、急な任務が入っちゃったんだって。任務だから仕方ないよね。あ~、今年こそ一緒に祝えるかと思ったんだけどな~」

サスケくんとは付き合ってはいないが、いい雰囲気だと思っている。私の誕生日に会うって決まった時は何かあるんじゃないかと期待していたが、その予想は見事に外れた。そもそも会えないんじゃ、何か起きようもない。

「髪や服、いつもと違うね」
「分かる? 服も新調して、髪も可愛くセットしてもらったの。まぁ、意味なくなっちゃったけどね」
「……意味なくない。俺はサクラのこんな綺麗な姿見れて良かったと思う。すごく似合ってるよ」
「ありがと。お世辞でも嬉しい」
「お世辞じゃないのに」

先生は私の頭を撫でる。その手が心地よくて思わずうっとりしてしまう。

「そういえば、ケーキ食べたの?」
「えっ? 食べてないけど……」
「うそ!? 食べなきゃダメでしょ。俺、いまから買ってくるからちょっと待ってて!」

そう言うと先生は私の目の前から一瞬で消える。

「いったい何なのよ……」

とりあえず、私は近くのベンチに座って待つことにした。しばらくすると、先生が戻ってきた。

「ごめん。この時間だとこれしかなくて」

そう言って先生が取り出したのは、苺ののったショートケーキだった。ホールサイズで、プレートには「Happy Birthday サクラ」と書かれている。

「ありがとう……てか、ホールなの?」
「誕生日と言ったらホールケーキでしょ」
「そうなの?」
「よく分かんないけど、そうじゃないの? 本にはそう書いてあったよ」

私が驚いているうちに先生はケーキにロウソクを立て、火をつける。

「さあ、サクラ。ろうそくを消して」

私は言われるままに息を吹きかけ、ロウソクを吹き消す。

「お誕生日おめでとう、サクラ」

先生は優しい笑顔で私にお祝いの言葉をかける。

「ありがとう……」

私が感動にふけっていると、先生が急かすように言った。

「さぁ、ケーキを食べよう」
「えっ」
「早くしないと誕生日過ぎちゃう」

先生の指さす方を見ると、時計の針があと10分ほどで頂上にきそうだった。

「いや、10分でホールケーキはいくら私でも無理よ」
「大丈夫」

ホールケーキをフォークでざっくり差すと私の口に詰め込んでくる。

「ちょっ、先生。モグモグ。」
「分かってる」

そう言って先生も同じフォークでケーキを食べ出す。

「えっ! どうして。甘いの苦手じゃ……」
「いいから黙って食べて」

先生は辛そうだったが、食べる手は止めなかった。そして、なんとか時間内に2人でホールケーキを食べ終えた。苦手なものを無理して食べたからか、先生の顔色はあまり良くない。

「先生まで食べる必要なかったのに……」
「1人で食べるより2人で食べる方が美味しいでしょ」
「それもそうだけど」

ふと時計を見ると、時計の針は12時を過ぎていた。

「誕生日終わっちゃった……。寂しい誕生日になるかと思ったけど、先生のおかけで最後は一人じゃなかった。本当にありがとう」
「どういたしまして。こんな感じで申し訳ないけど、サクラの誕生日が祝えて良かった」
「充分よ。あっ! そうだ! お礼にといってはなんだけど、今年の先生の誕生日は盛大にお祝いするわね。みんなを呼んでパーティーでも開こうかしら」
「えっ、それはいいよ。遠慮しとく」
「だ~め! まぁ、さすがにパーティーは大げさだけど、何かしたいの。先生は何してほしい?」
「え~、急に言われても」
「いいから、考えて」
「うーん。……何でもいいの?」
「私にできることならね」
「そしたら……サクラの時間をちょうだい」
「私の?」
「うん」
「分かった。でも、それだけでいいの?」
「充分」

そう言って先生が笑うから、それでいいのだと私も納得する。

「じゃあ、今年の先生の誕生日は1日空けとくね」
「ありがとう。それじゃあ。夜も遅いし、帰りますか」
「うん」

立ち上がろうとすると、先生が手を差し出してくる。

「?」
「手。送ってくから」
「いいわよ、子供じゃあるまいし。先生の家は私の家と反対でしょ」
「いいから。昔もよくこうしていたでしょ」

遠慮している私の手を握ると、先生は私を引っ張るように歩き出す。

「もうっ! 仕方ないわね」

私は先生の手を握り返す。先生の手は昔と変わらず、温かかった。
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