ハイキュー‼/黒尾夢
朝、目覚めると筋肉質な肌色に疑問を持ち、顔を少し上に向けると鉄朗の穏やかな寝顔が目に入る。
「私、あの後すぐに眠っちゃったんだ……」
昨夜の鉄朗との甘い出来事を思い出し、自然と顔が赤くなる。そして、喉が乾いていることに気づき、水を飲もうと起き上がった。ベッドから出た瞬間、少しひんやりとした感覚が私を襲う。
「そっか……私、何も着てなかった」
とりあえず近くにあったパンツを履き、そばに落ちていた鉄朗のTシャツを着ると、キッチンに移動する。冷蔵庫からコップを出し、水を飲んでいるとドタバタと寝室の方から足跡が聞こえてきて、キッチンの扉を鉄朗が勢いよく開ける。
「良かった! ここにいた……」
「おはよう、鉄朗。朝からそんなに慌ててどうしたの?」
「朝起きたらお前がいなかったから、もう帰ったのかと思って」
「私、そんな薄情じゃないよ。それより……その……」
「ん?」
「服は着た方がいいと思う」
鉄朗は何も着ていない全裸の状態。せめてパンツぐらいは履いてほしい。私は体から目線をそらしながら、それを指摘する。
「あっ、わりぃ……」
そう言って着替えてくると思っていたが、なぜかこちらに近づいてくる。
「えっ? ちょっと、服着ないの?」
「ん〜?」
私の問いには答えず、にやつきながら徐々に距離を詰めてくる鉄朗に嫌な予感を感じた私もどんどんと後ろに下がる。しかし、壁にたどり着いてしまい、とうとう鉄朗との距離がゼロになり、ギュッと抱きしめられる。
「鉄朗!」
「ん?」
「服!」
「どうせまたすぐに脱ぐからいいかなって」
「はぁ?」
黒尾は私から少し体を離したかと思うと、私の顔を包み込んで熱いキスをふらせてくる。
「んん……っ!」
その甘いキスに酔いしれていると、鉄朗の手が私の太ももを撫で始める。この後に続く行為を感じ取った私は、とっさに鉄朗の胸を押して唇を離した。
「ちょっと、もう朝だよ! それに、仕事あるんだけど!」
「大丈夫。早めに終わらせるって」
「早めって……。仕事から帰ってきてからじゃ、ダメ?」
「ダメ」
自分なりに可愛い顔で言ってみるが、鉄朗は頑なに応じない。こうなったらもう止めることができないのは、長年の経験で分かっている。
「……分かった。でも、せめてベッドがいい」
「了解♪」
鉄朗は“待ってました”といわんばかりに私を機嫌よく抱きかかえると寝室へと向かっていった。