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ハイキュー‼/黒尾夢


お昼の時間。購買に行こうと立ち上がると、急に黒尾に声を掛けられる。

「ちょっ、待って!」
「えっ?」

急に腕を掴まれたと思ったら引っ張られ、「いいから、こっちきて」と人気のない場所に連れていかれる。ようやく手は離されたものの、黒尾は「あー」「その」と繰り返すばかり。

「ねぇ、こんなところに連れてきてどうしたの?」
「えっと……その……ついてるんだよね」
「? なにが?」
「スカートに血が……」

黒尾が指差したところを確認するとスカートに血がついていた。これはもしかして、生理の……。私は真っ青になる。黒尾が言いづらさそうにしてたのも今なら分かる。

「なんで……いつから……」
「分かんないけど、さっきお前が立ち上がった時に気が付いたんだよね。たぶんまだ俺しか気づいてないから大丈夫。とりあえず、これつけてて」

そう言って黒尾のジャージを腰にまかれる。

「えっ、別にいいよ。汚れちゃうし」
「そんなの気にしなくて大丈夫だから」
「でも……」
「俺がいいって言ってるんだからいいの」
「……ありがとう。それじゃあ、保健室に行くまで借りるね。保健室に行けば着替えとかあるだろうし」
「ついでに次の授業休んだら? ノートなら俺がとるし」
「えっ?」
「具合悪いんでしょ。いつもより顔色が悪いし。無理しなくていいんじゃない?」
「確かにそうだけど……よく分かったね」
「……まぁ、俺だからね」
「なにそれ。でも、本当にありがとう。それじゃあ、そろそろ行くね。黒尾の言う通り、着替えたら保健室で休ませてもらうことにする」
「うん、それでいいと思う。あっ、保健室まで送ってく」
「そこまでしてくれなくていいよ」
「俺が心配なの」
「でも……」
「はい、行きますよー」

最初と同じように私の手を取り歩き出すが、今度は私を気遣ってるのか足取りはゆっくりだった。保健室に向かっている途中、クラスメイトに会う。

「あれ~、黒尾たちだ。ん? なんで黒尾のジャージをまいてるの?」

私の姿を見たクラスメイトが問いかける。そりゃあ、気になるよね。素直に言うべきか、それとも……。とりあえずなにか答えなきゃと口を開く。

「それは……「俺がジュースこぼしちゃったんだよね。だから、それを隠してるの」
「なるほど、それは災難だったね。黒尾も次からは気を付けなよ~」
「おー」

クラスメイトは黒尾の答えに納得したのかそのまま去っていく。

「俺達も行きますか」と、私の手を引いて、黒尾は再び歩き出す。

「黒尾」
「ん?」
「いろいろありがとうね。でも、優しすぎて女子は勘違いするから気を付けた方がいいよ」

現に私が勘違いしそうだ。黒尾ってこんなにかっこよかったけ。

「俺は誰にでもこんなことするわけじゃないけどね」
「それって……」
「……勘違いしていいってことですけど」

前にいる黒尾の耳は赤く染まっていた。

「黒尾、こっち向いて」
「嫌だ」

黒尾の顔が見たくてなんとか前に行こうとするが、黒尾はそれをうまくかわし中々見ることができない。

「見せてよ~」
「具合悪いんだから、大人しくしてろって」

言い合っていると、いつのまにか保健室の前に着く。ようやく黒尾の顔は見れたが、既に元に戻っていた。

「それじゃあ、俺は戻るから。しっかり休んでろよ」
「うん……」

黒尾の手が離れていき、少しだけどなんだか寂しい気持ちになる。

「そんな顔するなって」
「どんな顔?」
「寂しいって顔」
「そんな顔してない」
「はいはい、そういうことにしてあげる。次の授業が終わったら、迎えにきてあげるから」
「自分で戻るから大丈夫だし」
「はいはい、分かりましたよ。とりあえずお大事に」

黒尾は私の頭をポンとして、戻っていく。今日はなんだか驚くことばかりが起こるなと思いながら、私は着替えるとベッドに入る。そして、授業が終わったころに迎えに来た黒尾にさらに驚くことになるのだった。
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