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4.絶望のその先へ

輪廻-ロンド-/ON/OFF


永い永い夢を見ていた。

「先生! 先生!」

遠くで愛おしい人の声が聞こえる。その声はだんだんと近くなる。

「早く起きなさいって!」

ドンっ! 俺は痛みで意識が覚醒し、目を開ける。目の前にはサクラが毛布を持って立っていた。どうやらサクラが俺の毛布を取り上げたせいで、ベッドから落ちたようだ。

「ごめん……思ったより勢いついちゃったみたい」

サクラは申し訳なさそうに俺に近寄る。俺はその腕を引っ張り、サクラを思いっきり抱きしめる。

「……先生?」
「サクラ……!」

サクラを確かめるように強く抱く。夢の中では冷たいサクラを抱いていたが、いま俺の腕の中にいるサクラは温かい。

「いきなりどうしたの?」
「夢を見たんだ。俺たちは忍で、恋人同士だった。だけど俺のせいでサクラは……」
「……先生、泣いてる?」

俺の目からはいつのまにか涙が流れていた。それを見せないようにより強くサクラを抱きしめる。

「大丈夫、先生が見たのは所詮夢よ。だって先生は高校の教師、私はその元教え子でいまは医学生よ。恋人同士というのは合っているけどね」

サクラはそう言うと、俺の背中を優しく撫でる。

「そうだよな……夢だよな。でもなんかリアルで」
「もうっ! しっかりしてよ」

サクラが俺の頬を両手で包む。

「ほら! 私の手、あったかいでしょ。ちゃんとここにいるから!」

サクラがしっかりとした目で俺を見る。俺の好きな瞳だ。

「あぁ、サクラはここにいる」

俺はそう言うと、サクラの手に俺の手を重ねる。

「……今日は大事な日なんだからね。まさか忘れてないでしょうね?」
「忘れるわけないでしょ。サクラの苗字が変わる日なんだから」
「そうよ! 朝ごはんの支度はできてるから、きちんと準備してきてね」

サクラは俺から手を離すと、部屋を出ていく。

俺はその後ろ姿を見届けると、立ち上がって着替える。そして記入済の婚姻届を持って部屋を出た。

サクラを安心させるために頷いたが、あれは夢じゃなかった。上手く説明できないが、そんな気がする。でも、きっと前世とかの遠い昔の出来事。いまじゃない。

今日からサクラとの新しい生活が始まる。俺は改めていまを大事にしようと決意した。

【転生END】
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