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4.絶望のその先へ

Dear/中島美嘉


亡骸を抱えながら泣いていると、ずっと聞きたかった声が聞こえてきた。

「……もうっ! そんなに泣いてるから、私の服濡れちゃったじゃない」
「えっ……? サクラ!?」

死んで閉じていたはずのサクラの目が開いている。

「お前、どうして……」
「私がせっかく命をかけたのに、それを無駄にするなんてバカね」
「バカってひどいな……リンと話せて良かったよ、ありがとう。それと本当にごめん。サクラの気持ちに何も気づかなくて。それに医療用具パックのことも」
「……もういいのよ、全て終わったことだもの。私こそ先生の優しさを利用してしまってごめんなさい」
「そんなことない。俺はこれからもお前と一緒にいたい。サクラを失って気づいたんだ。俺にはサクラが必要だって」

サクラは驚いたかと思うと、目を伏せる。

「その言葉、もっと早くに聞きたかったな……」
「えっ?」

サクラの声が小さくて聞こえなかった。

「ごめん、もう一回言って」
「……ねぇ、先生」
「うん?」
「先生って強いわよね」
「えっ……まぁ、うん。そこそこ強いんじゃないかな」
「でも、案外臆病よね」
「えっと、そうなのかな?」
「それにすごく優しい」
「……ありがとう?」
「そんな先生だから、みんな先生のことが好きだし、頼りにしてるし、心配してるの。先生の仲間はたくさんいるんだからね」
「うん。あの、サクラの言いたいことがよく分からないんだけど……」
「だから、私がいなくても大丈夫。間違っても後を追おうなんて考えないでよね」
「……サクラ?」
「私、先生の教え子で良かった。いままでありがとう」
「だからなにを言ってるんだ……?」
「さよなら、カカシ先生」

そう言ってサクラが微笑むと、サクラは光に包まれていく。

「いやだ、サクラ。行かないでくれ! 何でもするから!」

俺はみっともなく醜態を晒す。そんな俺を見てサクラは驚いている。

「こんなに必死な先生初めてみた」
「サクラがここにいてくれるなら、どんな姿でも見せる。だから、お願いだ」
「うふふ、最後にいいもの見せてもらっちゃった」
「最後なんて言わないでくれ」
「……もし私の後を追おうなんてしたら、絶対に許さないからね」
「サクラ……!」
「大丈夫。先生が一生懸命に生きてくれれば、きっとまたどこかで会えるから」

突如強烈な光に包まれ、思わず目を閉じる。

「!?」

目を開けると、腕には相変わらずサクラの亡骸があった。

「サクラ……」

サクラを見下ろす。サクラは目を閉じたままだった。

「サクラはやっぱりすごいよ。俺の考えてることなんてお見通しなんだね」

俺はサクラの後を追うことを考えていたが、その思いは先ほどの出来事ですっかり消え去っていた。

さっきのはサクラの幻で、サクラが俺の自殺を止めてくれた。都合のいい考えかも知れない。でも俺にはそう思えてならなかった。

「サクラの分まで生きることにするよ。だから、またきっと会えるよな」

そう言うと、サクラがかすかに微笑んだ気がした。

【幻想END】
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