NARUTO/カカサク 中編 K
月光花/Janne Da Arc
俺は任務を終え、自宅への道をゆっくり歩く。きっとサクラがご飯を用意して待っているだろう。大人げないことをしてしまった。サクラは気を遣ってくれただけなのに。でもどうしても許せなかった。もう会えないリンからもらったものだったから。それでも、やっぱり俺が悪いよな~。俺はいつのまにか謝るタイミングを逃してしまっていた。
家のドアを開けると、部屋の中は静まりかえっており、人の気配もしなかった。“いないのか……?”と部屋を見渡すと、机に置いてあるものが目に入る。それは直された医療用具パックと置き手紙だった。
“カカシ先生へ
お誕生日おめでとう!
先生に会わせたい人がいるので、この手紙を読んだら2人で散歩した湖のほとりに来てほしいの。
あと、直した医療用具パックを置いておきます。すぐに言えなくてごめんなさい。
春野サクラ”
そういえば、今日は俺の誕生日だ……すっかり忘れていた。それに、サクラは俺の医療用具パックを捨ててはいなかった。なのに勝手に早とちりして、サクラに冷たく当たってしまった。
急いで家を飛び出し、湖のほとりへ向かう。
「確かここだよな」
俺は周りを見渡す。女の子の後ろ姿が遠くに見え、その子に近づいた。
「……サクラ?」
女の子は振り返る。サクラじゃない。俺はその姿を見て、目を見開く。
「久しぶり」
「どうしてここに……」
リンが俺の記憶と変わらない姿のままでそこに立っていた。
「リン! 本当にリンなのか?」
「当たり前じゃない」
「どうして……お前は俺が……」
「カカシに会いたかったから、戻ってきちゃった」
あの頃と変わらない顔で笑うリンに、俺は思わず抱きしめる。
「俺も会いたかった……!」
「カカシ、大きくなったね」
「当たり前だろ。あれから何年経ったと思ってるんだ」
「確かに」
何でリンがここにいるのか分からなかったが、幻術でも何でもいい。とにかくリンに会えた。それだけで十分だ。
それから、俺はリンと色んな話をした。この数年で大きく変わった木ノ葉にリンは驚いていた。それに俺が先生をしていることにも。
「本当に生意気な3人で……」
そこで俺はサクラのことを思い出す。
「なぁ、リン? サクラ……桃色の髪の女の子を見かけなかった?」
「女の子? 見てないけど……」
サクラの手紙でここにきたんだった。サクラがリンに会わせてくれたに違いない。
「……ごめん、サクラを探さなきゃ」
「え! カカシ!?」
リンの引き止める声を無視し、サクラを探しまわる。家に戻ったが、もちろんいない。里のどこにも。探しまわりながらも、心のどこかで分かっていた。サクラからの手紙には、“会わせたい人がいる”と書いてあった。そして、あそこにリンがいた。途中で気づいたが、あのリンはおそらく穢土転生で蘇ったもの。穢土転生には生贄が必要だ。サクラが他人を犠牲にするわけない。となると生贄は……。最悪の考えが頭をよぎる。とにかく落ち着こうと俺は一度立ち止まる。まずは術者が誰かを考える。思い当たる人物は一人しかいない。俺はそいつのもとへ向かった。
「ようやくきたね」
「カブト……やはりお前か」
「そんないまにも殺してやるみたいな眼で見ないでほしいな。僕は彼女の望みを叶えただけだよ」
「望みだと……」
「カカシ先生に会わせたい人がいる。私にはこれしかできないからって」
「ということはやはり……」
どうやら俺の予感は当たっていたらしい。サクラは自分を犠牲にして俺にリンを会わせた。
「サクラ……一体どうして……」
「確かこうも言っていたね。先生には私のわがままに付き合わせてしまった。だから、今度こそ本当に愛している人と一緒に幸せになってほしいって」
俺は言葉を失った。そして、全てを悟った。
確かに振り返れば、サクラが暗い表情をしていたり、様子がおかしい時があった。すぐにサクラが否定とかするから気にしないでいたけれど。
いまなら分かる。サクラは全部知っていたんだ。サクラを悲しませたくなくて告白を受けたこと、サクラを通してリンを見ていたこと、俺がリンを愛していたこと。夢で自分の気持ちをサクラに吐いた時があったが、あれは夢ではなかったんだ。一体いままでどんな気持ちで俺と一緒に過ごしていたのか……。
「健気だよね。まぁ、良かったんじゃない。彼女は望みを叶えられたし、君は会いたかった人に会えた」
「……黙れ!!!」
俺はカブトの首を掴み上げる。
「術を解け」
「術を解いても、彼女はもう戻ってこないよ」
「いいから、解け!!!」
「はぁ……分かったよ」
俺はカブトを連れて、リンの元へ戻る。リンは最初と同じ場所にいた。
「もうっ! どこに行ってたの?」
「リン……」
「カカシ……」
リンは俺の表情で全てを察したようだった。
「そっか、もう時間なんだね」
「ごめん、リン」
「いいよ、カカシにもう一度会えただけで充分」
「俺も会えて良かった」
カブトが術を解き、リンの体が崩れていく。その中からサクラが出てきて、俺は倒れるサクラを受け止める。
「それじゃあ、僕の役目は終わったみたいだし戻るよ」
カブトが去っていく。
「サクラ……目を開けてくれ……」
サクラの体を揺さぶるが、当然ながらサクラの目は開かない。
俺はサクラの事を何も見ていなかった、知ろうともしなかった。サクラはこんなにも自分のことを想っていたのに。リンのことは確かに愛していた。でも、いま愛しているのは……サクラなんだ。俺はいつも失ってから大切なものに気づく。
サクラの亡骸を抱えて涙を流した俺は……
ED分岐
俺は任務を終え、自宅への道をゆっくり歩く。きっとサクラがご飯を用意して待っているだろう。大人げないことをしてしまった。サクラは気を遣ってくれただけなのに。でもどうしても許せなかった。もう会えないリンからもらったものだったから。それでも、やっぱり俺が悪いよな~。俺はいつのまにか謝るタイミングを逃してしまっていた。
家のドアを開けると、部屋の中は静まりかえっており、人の気配もしなかった。“いないのか……?”と部屋を見渡すと、机に置いてあるものが目に入る。それは直された医療用具パックと置き手紙だった。
“カカシ先生へ
お誕生日おめでとう!
先生に会わせたい人がいるので、この手紙を読んだら2人で散歩した湖のほとりに来てほしいの。
あと、直した医療用具パックを置いておきます。すぐに言えなくてごめんなさい。
春野サクラ”
そういえば、今日は俺の誕生日だ……すっかり忘れていた。それに、サクラは俺の医療用具パックを捨ててはいなかった。なのに勝手に早とちりして、サクラに冷たく当たってしまった。
急いで家を飛び出し、湖のほとりへ向かう。
「確かここだよな」
俺は周りを見渡す。女の子の後ろ姿が遠くに見え、その子に近づいた。
「……サクラ?」
女の子は振り返る。サクラじゃない。俺はその姿を見て、目を見開く。
「久しぶり」
「どうしてここに……」
リンが俺の記憶と変わらない姿のままでそこに立っていた。
「リン! 本当にリンなのか?」
「当たり前じゃない」
「どうして……お前は俺が……」
「カカシに会いたかったから、戻ってきちゃった」
あの頃と変わらない顔で笑うリンに、俺は思わず抱きしめる。
「俺も会いたかった……!」
「カカシ、大きくなったね」
「当たり前だろ。あれから何年経ったと思ってるんだ」
「確かに」
何でリンがここにいるのか分からなかったが、幻術でも何でもいい。とにかくリンに会えた。それだけで十分だ。
それから、俺はリンと色んな話をした。この数年で大きく変わった木ノ葉にリンは驚いていた。それに俺が先生をしていることにも。
「本当に生意気な3人で……」
そこで俺はサクラのことを思い出す。
「なぁ、リン? サクラ……桃色の髪の女の子を見かけなかった?」
「女の子? 見てないけど……」
サクラの手紙でここにきたんだった。サクラがリンに会わせてくれたに違いない。
「……ごめん、サクラを探さなきゃ」
「え! カカシ!?」
リンの引き止める声を無視し、サクラを探しまわる。家に戻ったが、もちろんいない。里のどこにも。探しまわりながらも、心のどこかで分かっていた。サクラからの手紙には、“会わせたい人がいる”と書いてあった。そして、あそこにリンがいた。途中で気づいたが、あのリンはおそらく穢土転生で蘇ったもの。穢土転生には生贄が必要だ。サクラが他人を犠牲にするわけない。となると生贄は……。最悪の考えが頭をよぎる。とにかく落ち着こうと俺は一度立ち止まる。まずは術者が誰かを考える。思い当たる人物は一人しかいない。俺はそいつのもとへ向かった。
「ようやくきたね」
「カブト……やはりお前か」
「そんないまにも殺してやるみたいな眼で見ないでほしいな。僕は彼女の望みを叶えただけだよ」
「望みだと……」
「カカシ先生に会わせたい人がいる。私にはこれしかできないからって」
「ということはやはり……」
どうやら俺の予感は当たっていたらしい。サクラは自分を犠牲にして俺にリンを会わせた。
「サクラ……一体どうして……」
「確かこうも言っていたね。先生には私のわがままに付き合わせてしまった。だから、今度こそ本当に愛している人と一緒に幸せになってほしいって」
俺は言葉を失った。そして、全てを悟った。
確かに振り返れば、サクラが暗い表情をしていたり、様子がおかしい時があった。すぐにサクラが否定とかするから気にしないでいたけれど。
いまなら分かる。サクラは全部知っていたんだ。サクラを悲しませたくなくて告白を受けたこと、サクラを通してリンを見ていたこと、俺がリンを愛していたこと。夢で自分の気持ちをサクラに吐いた時があったが、あれは夢ではなかったんだ。一体いままでどんな気持ちで俺と一緒に過ごしていたのか……。
「健気だよね。まぁ、良かったんじゃない。彼女は望みを叶えられたし、君は会いたかった人に会えた」
「……黙れ!!!」
俺はカブトの首を掴み上げる。
「術を解け」
「術を解いても、彼女はもう戻ってこないよ」
「いいから、解け!!!」
「はぁ……分かったよ」
俺はカブトを連れて、リンの元へ戻る。リンは最初と同じ場所にいた。
「もうっ! どこに行ってたの?」
「リン……」
「カカシ……」
リンは俺の表情で全てを察したようだった。
「そっか、もう時間なんだね」
「ごめん、リン」
「いいよ、カカシにもう一度会えただけで充分」
「俺も会えて良かった」
カブトが術を解き、リンの体が崩れていく。その中からサクラが出てきて、俺は倒れるサクラを受け止める。
「それじゃあ、僕の役目は終わったみたいだし戻るよ」
カブトが去っていく。
「サクラ……目を開けてくれ……」
サクラの体を揺さぶるが、当然ながらサクラの目は開かない。
俺はサクラの事を何も見ていなかった、知ろうともしなかった。サクラはこんなにも自分のことを想っていたのに。リンのことは確かに愛していた。でも、いま愛しているのは……サクラなんだ。俺はいつも失ってから大切なものに気づく。
サクラの亡骸を抱えて涙を流した俺は……
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