NARUTO/カカサク 中編 ■Voyage
あなたと共に
ある日の休日。
私はナルトと2人でショッピングセンターに買い物にきていた。
「えへへ、サクラちゃんとデートだってばよ」
「デートじゃないわよ。クシナさんの誕生日プレゼント買いにきたんでしょ」
「そうだけどさ〜。オレにとって女の子と休日に2人で出かけるのはデートって言うんだってばよ」
「はぁ……。とりあえずいままでどんなものをあげてたの?」
「えっと、確か……肩たたき券やお手伝い券とかかな」
「小学生か! いや、見た目は大きくなっても、頭脳は小学生のままだったわね……」
「ひどいってばよ、サクラちゃん!」
「とりあえず、雑貨屋さんとかを見てまわりましょう」
「おう!」
雑貨屋で何がいいかと選んでいるとナルトに袖を引っ張られた。
「ねぇねぇ、サクラちゃん?」
「うん?」
「あそこにゲームセンターがあって、俺の好きな蛙のぬいぐるみが置いてあるみたいなんだってばよ。少し見てきていい?」
「あんた何しにここにきたのよ」
「母ちゃんの誕生日プレゼント買いにだけど……あのぬいぐるみ、人気らしくてなかなかどこも置いていないみたいで」
ナルトが物欲しそうに私を見てくる。
私はどうやらナルトに甘いらしい。
「……分かった、少しの時間だけよ」
「やったー! ありがとうってばよ、サクラちゃん!」
ナルトは嬉しそうにゲームセンターに入っていった。
私はそれを見届けると、再び雑貨屋を見てまわることにした。
お店も見終わり、ナルトを待っていると、チャラそうな2人組に声をかけられた。
「君、1人?」
「1人じゃないです。人を待ってます」
私は冷たくあしらっていたが、男達はしつこく迫ってくる。
「誰もいないじゃん。それより俺たちと楽しいことしない?」
そう言うと私の手を掴んできた。
「しません。いい加減にしてください!」
私は渾身の力をこめて、その腕を振り払った。
「このアマっ...!」
逆上した男は拳を振り翳してきた。それをとめたのはナルトだった。
「何してるってばよ」
ナルトが男の腕をひねると、その男の顔は苦痛に歪んだ。
「その子に近づくなってばよ」
ナルトが手を離すと男たちは一目散に抜け出した。
「ありがとうね、ナルト」
「遅くなって、ごめん。大丈夫?」
「えぇ、ナルトが助けてくれたから」
「なら、良かった」
「それよりびっくりしちゃった。あんた、いつのまにか男らしくなってたのね」
「そりゃあ、俺だっていつまでもサクラちゃんに守られているわけにはいかないからさ!」
「うふふ。それにしても、すごい汗よ」
私はナルトの汗をハンカチで拭いた。
「サクラちゃんが危ない目に遭ってるのが見えて、全力で戻ってきたんだってばよ。でも本当に無事でよかった……」
そう言ってナルトは照れ臭そうに笑った。
そして、私達は気を取り直し、買い物を再開した。
何軒かまわり、クシナさんへのプレゼントはエプロンに決まった。
「母ちゃん、喜んでくれるかなー?」
「きっと大丈夫よ」
そんな会話をしながら、2人で家へ帰っていると、突然男達が出てきて囲まれた。
よく見るとその中には先ほど私に絡んできた2人組もいる。
「借りを返しにきたぜ」
そう言うと私達に襲いかかってきた。
最初は応戦していたが、多勢に無勢。いくらナルトが強くても、私が人より力があっても敵うはずはなかった。私達はあっさりとつかまり、近くの廃倉庫に連れてこられた。
「女は後から始末するとして、まずはこの男からだ」
リーダー格とみられる男はそう言い、複数人でナルトに暴行し始めた。
私はロープでしばられていたが、前世の時に学んだ縄抜けでほどき、見張りにばれないように携帯をとった。そして、とっさにカカシ先生の番号を入力し、電話をかけた。
見張りはナルトに夢中になっているのか、私の行動に気づかない。
コールが鳴り続ける。
「お願い...…早く出て」
その願いが通じたのか、先生は出てくれた。
「どうした?」
「先生……! ナルトといたら、男達に2人とも連れ去られて……いまナルトは殴られているし、私もうどうしたらいいのか……お願い! 先生、助けて!!」
「なんだと!? いまどこにいる?」
「たぶん……木ノ葉川のそばにある廃倉庫」
「分かった。いまから行くからお前はじっとしてろ。間違っても手を出すんじゃないぞ」
「うん」
そして通話は切れた。私は見張りにばれないように最初の姿に戻り、カカシ先生に言われたとおりにじっとしていたが、一方的に殴られているナルトを見て我慢ができずに私は思わず飛び出した。
「やめて!!」
私はナルトを殴っている一人の男の腕をつかむ。
「離せ!」
ガツンと頭に衝撃がはしる。
私はそれでも男の腕を離さず、続けてくる痛みに目を瞑って耐え続ける。
「サクラちゃん!」
ナルトが必死に叫んでいる。
少しだけ目を開けるが、頭から流れる血が邪魔してあまりよく見えない。
おそらくナルトがこっちに来ようととしてくれてるけど、その身なりはボロボロだし、ほかの男達が邪魔をしている。
耐えろ、カカシ先生がくるまで耐えるんだ。
力には自信があるのよ、しゃーんなろー!
でももう限界かもしれない。
意識を手放そうとした瞬間、白い影が見え、頭の衝撃がやんだ。
そして、そのまま誰かの腕に抱き抱えられた。
そのあたたかいぬくもりに安心したとたん、私の意識はそこで途切れた。
遠くで誰かの声が聞こえる。
私の名前を必死に叫んでいる。
その声はだんだん大きくなっていく。
「サクラ……サクラ!!」
「もう! そんな耳元で叫ばないでよ!」
私はその声の大きさに耐えられず、思わず飛び起きた。
そして、何事かと思い、状況を把握しようとまわりを見渡す。
どうやらここは病室のようだ。自分の体を見るといたるところに包帯が巻かれている。
そうか、ナルトを助けようとして……。
ふと前を見ると、目の前には泣きそうなカカシ先生がいた。
「先生……どうしてここに?」
「サクラ! 良かった!!」
そう言うと私に思いっきり抱きついてきた。
「ちょっ! 先生、苦しい」
私の悲痛な声を聞いて「ごめん」と、先生は体を少し離した。
「ナルトは?」
「ナルトは無事だよ。いまは隣の病室にいる」
「良かった。カカシ先生はどうしてここに?」
「お前が電話してきたんだろう」
「そうね……そうだったわ」
「まだ混乱しているのか?」
「ううん、大丈夫。ナルトを襲ってきた人達は?」
「いまは警察にいると思う」
「そっか。カカシ先生が助けてくれたのよね?」
「まぁ、一応そうなるかな」
「ありがとうございます……」
私は安心した。ナルトが無事で本当に良かった。
「それにしても、どうして俺の言うことを聞かなかった?」
「だって、ナルトが一方的にやられているのを黙って見ているなんて……」
「だってじゃない。お前のボロボロな姿を見て、どんだけ肝が冷えたか」
「でも、私なら少しはやれるって思ったの。ほかの人より力もあるし」
「確かにそうかもしれないが、相手は複数人で男だ。いくらサクラでもチャクラがない状態じゃ勝てないよ」
「それはそうだけど……え? 先生いま、チャクラって……。それに私のこと名前で呼んだ?」
「今頃気づいたの」
「えっ、うそ。まさか、記憶が……」
「そのまさか。俺の前世は木ノ葉隠れの里の忍、はたけカカシ。お前は俺の大事な教え子の春野サクラ。思い出したのは血だらけのサクラを見た時だけどね」
「そんなことって……」
「思い出したのはさっきだけど、サクラの事は初めて見た時から気になってたよ。それに、時々泣きそうな表情で俺を見るから余計気になってね。いま思うとサクラは最初から記憶があったんだな。すまなかった」
「……謝んないでよ、まぁ、確かに先生が忘れてたのはすごくショックだったけど。いまは思い出してくれたじゃない。それだけで十分」
「サクラ……」
先生は私を再び抱きしめた。
嬉しかった。やっと思い出してくれたのだから。
想いを伝えられないのは悲しいけど、それでもいい。
先生の生徒として、今度こそずっとそばにいよう。
私も先生の背中に手を回した。
そう決意したのに、その決意は先生の一言で見事に崩れ去った。
「好きだ、サクラ」
「は?」
「だから、お前のことが好きなんだ」
「えっ、ちょっ……。何言ってるの?」
「ん?」
「ん? じゃなくて、先生。結婚してるじゃない」
「いや、してないよ」
「いや、してるでしょ」
「だからしてないって」
私は混乱していた。先生の言ってることが分からない。
とりあえず先生から一旦離れ、さらに問いかけた。
「じゃあその薬指の指輪は何?」
「指輪? あぁ、これね。偽物なんだよ。結婚してると見せかけるためのフェイクだよ」
「どうして?」
「まわりが色々うるさいから。これをしてるといちいち聞かれないだろ。まぁ、聞かれることもあるから、その時はしてるって答えるけど」
「リン先生は?」
「リン? リンはただの幼馴染だよ。それに同じく幼馴染のオビトと結婚してる」
「休みの日に2人で仲良さそうにショッピングセンターを歩いてたって聞いた」
「……あぁ、あの時か! あれはオビトの誕生日プレゼントを買うのに付き合ったんだよ」
「本当?」
「本当だよ。そんなに気になるなら、リン本人に確かめてみるといい。……本当はこの気持ちは卒業まで言うつもりはなかったんだけど。またいつのまにかお前を失うのは嫌だなって」
「その言葉信じていいの?」
「もちろん」
先生があまりにも優しい顔で言うから。
それが嬉しくて私は思いっきりカカシ先生の腰に抱きついた
「せんせ〜い! 私も先生のことが好き~!!」
先生はそんな私をしっかりと抱きとめ、「会いたかった」と呟いた。
「私の悩んだ時間返してよ〜。先生に会った時、すっごく嬉しかったのに、先生は記憶がないし。さらに結婚していて……私、すごくショックだったんだからね!」
「だから悪かったって。でも、これでもう悩まないでしょ。サクラも俺に心配かけさせないで」
「心配って?」
「風邪で倒れた時は驚いたし、サクラから助けてって電話がきた時は心臓が止まるかと思った。それにサスケのことも」
「サスケくん?」
「うん。なんで2人で仲良さよさそうに食べているのさ。しかも、サクラの手作り弁当」
「あれはなんていうか成り行きで……。サスケくんも記憶があって、嬉しかったの。いままで木ノ葉の人たちにはたくさん会ったけど、みんな記憶がなかったし。……もしかしてカカシ先生が邪魔しにきてたのって、ヤキモチ?」
「その時は自覚なかったけどね。もしかしたら、けっこうサクラのこと最初から好きだったのかも」
「そんな風には見えなかったけど?」
「え~、けっこうわかりやすかったと思うけど。連絡先を教えたのはお前だけだし、俺はわざわざ生徒の家に忘れ物は届けないし、見舞いにも行かない。ぜんぶサクラだからだよ。おかげでヤマトには怪しまれたけどね」
「……そういえば私のファーストキスも奪ったもんね」
「あれはお前が泣くから仕方なく」
「仕方なく奪ったの? さいてー! 私のファーストキス返してよー!!」
私は先生の胸元を叩いた。
「ちょっ! サクラ。悪かった。だから、やり直させて?」
そう言って先生は私の腕を掴んだ。
「やり直すって?」
不思議に思っていると、先生がマスクをおろし、私にキスをしてきた。
「好きだ」
先生はそう言いながら、何度も私にキスをする。
私も最初は抵抗していたが、いつのまにか先生のキスを受け入れていた。
先生とこうしているなんて夢みたい。
私は先生とのキスに酔いしれていた。
どのぐらい経っただろうか。しばらくして、唇が離れた。
「ねぇ、先生。あの時の約束覚えてる?」
「もちろん。ちゃんとサクラに言われた通り、前世ではご飯も食べて、睡眠もとって、任務もほどほどにして。ナルト達の面倒を見て、サクラの分まで生きたよ。80歳ぐらいまでは生きたかな」
「良かった。結婚はした?」
「してないよ」
「先生イケメンなのにもったいない」
「もったいなくないよ。サクラ以外、一緒に生きたいと思える人はいなかったからね」
「じゃあ、先生の老後は誰が見たの?」
「ナルト達やその子供達かな。もう賑やかすぎて静かな老後どころじゃなかったよ」
「うふふ、そうなんだ……」
「あの場所で花見も毎年したよ。サクラを忘れたことなんてひとときもなかった。ここにサクラがいたらと何度思ったか」
「……先生……約束守ってくれてありがとう」
「うん。もう俺より先にいなくならないで。俺はもーあんな思い、二度としたくないよ」
「努力する...。先生ももう忘れないでね」
「あぁ、忘れないさ。これからはずっとそばにいる」
「うん。お花見もまたしたいな。あの時の桜のような場所を私知っているのよ。先生、きっとびっくりすると思う」
「そうなのか、それはぜひ連れて行ってほしいな」
「任せて!」
私たちは再び抱き合った、
「ねぇ、先生。あの時私に言いたかったことを教えてくれる?」
「あぁ、サクラも教えてくれる?」
「もちろん! それじゃあ同時に言いましょう。せーの!」
「「愛してる!!」」
ある日の休日。
私はナルトと2人でショッピングセンターに買い物にきていた。
「えへへ、サクラちゃんとデートだってばよ」
「デートじゃないわよ。クシナさんの誕生日プレゼント買いにきたんでしょ」
「そうだけどさ〜。オレにとって女の子と休日に2人で出かけるのはデートって言うんだってばよ」
「はぁ……。とりあえずいままでどんなものをあげてたの?」
「えっと、確か……肩たたき券やお手伝い券とかかな」
「小学生か! いや、見た目は大きくなっても、頭脳は小学生のままだったわね……」
「ひどいってばよ、サクラちゃん!」
「とりあえず、雑貨屋さんとかを見てまわりましょう」
「おう!」
雑貨屋で何がいいかと選んでいるとナルトに袖を引っ張られた。
「ねぇねぇ、サクラちゃん?」
「うん?」
「あそこにゲームセンターがあって、俺の好きな蛙のぬいぐるみが置いてあるみたいなんだってばよ。少し見てきていい?」
「あんた何しにここにきたのよ」
「母ちゃんの誕生日プレゼント買いにだけど……あのぬいぐるみ、人気らしくてなかなかどこも置いていないみたいで」
ナルトが物欲しそうに私を見てくる。
私はどうやらナルトに甘いらしい。
「……分かった、少しの時間だけよ」
「やったー! ありがとうってばよ、サクラちゃん!」
ナルトは嬉しそうにゲームセンターに入っていった。
私はそれを見届けると、再び雑貨屋を見てまわることにした。
お店も見終わり、ナルトを待っていると、チャラそうな2人組に声をかけられた。
「君、1人?」
「1人じゃないです。人を待ってます」
私は冷たくあしらっていたが、男達はしつこく迫ってくる。
「誰もいないじゃん。それより俺たちと楽しいことしない?」
そう言うと私の手を掴んできた。
「しません。いい加減にしてください!」
私は渾身の力をこめて、その腕を振り払った。
「このアマっ...!」
逆上した男は拳を振り翳してきた。それをとめたのはナルトだった。
「何してるってばよ」
ナルトが男の腕をひねると、その男の顔は苦痛に歪んだ。
「その子に近づくなってばよ」
ナルトが手を離すと男たちは一目散に抜け出した。
「ありがとうね、ナルト」
「遅くなって、ごめん。大丈夫?」
「えぇ、ナルトが助けてくれたから」
「なら、良かった」
「それよりびっくりしちゃった。あんた、いつのまにか男らしくなってたのね」
「そりゃあ、俺だっていつまでもサクラちゃんに守られているわけにはいかないからさ!」
「うふふ。それにしても、すごい汗よ」
私はナルトの汗をハンカチで拭いた。
「サクラちゃんが危ない目に遭ってるのが見えて、全力で戻ってきたんだってばよ。でも本当に無事でよかった……」
そう言ってナルトは照れ臭そうに笑った。
そして、私達は気を取り直し、買い物を再開した。
何軒かまわり、クシナさんへのプレゼントはエプロンに決まった。
「母ちゃん、喜んでくれるかなー?」
「きっと大丈夫よ」
そんな会話をしながら、2人で家へ帰っていると、突然男達が出てきて囲まれた。
よく見るとその中には先ほど私に絡んできた2人組もいる。
「借りを返しにきたぜ」
そう言うと私達に襲いかかってきた。
最初は応戦していたが、多勢に無勢。いくらナルトが強くても、私が人より力があっても敵うはずはなかった。私達はあっさりとつかまり、近くの廃倉庫に連れてこられた。
「女は後から始末するとして、まずはこの男からだ」
リーダー格とみられる男はそう言い、複数人でナルトに暴行し始めた。
私はロープでしばられていたが、前世の時に学んだ縄抜けでほどき、見張りにばれないように携帯をとった。そして、とっさにカカシ先生の番号を入力し、電話をかけた。
見張りはナルトに夢中になっているのか、私の行動に気づかない。
コールが鳴り続ける。
「お願い...…早く出て」
その願いが通じたのか、先生は出てくれた。
「どうした?」
「先生……! ナルトといたら、男達に2人とも連れ去られて……いまナルトは殴られているし、私もうどうしたらいいのか……お願い! 先生、助けて!!」
「なんだと!? いまどこにいる?」
「たぶん……木ノ葉川のそばにある廃倉庫」
「分かった。いまから行くからお前はじっとしてろ。間違っても手を出すんじゃないぞ」
「うん」
そして通話は切れた。私は見張りにばれないように最初の姿に戻り、カカシ先生に言われたとおりにじっとしていたが、一方的に殴られているナルトを見て我慢ができずに私は思わず飛び出した。
「やめて!!」
私はナルトを殴っている一人の男の腕をつかむ。
「離せ!」
ガツンと頭に衝撃がはしる。
私はそれでも男の腕を離さず、続けてくる痛みに目を瞑って耐え続ける。
「サクラちゃん!」
ナルトが必死に叫んでいる。
少しだけ目を開けるが、頭から流れる血が邪魔してあまりよく見えない。
おそらくナルトがこっちに来ようととしてくれてるけど、その身なりはボロボロだし、ほかの男達が邪魔をしている。
耐えろ、カカシ先生がくるまで耐えるんだ。
力には自信があるのよ、しゃーんなろー!
でももう限界かもしれない。
意識を手放そうとした瞬間、白い影が見え、頭の衝撃がやんだ。
そして、そのまま誰かの腕に抱き抱えられた。
そのあたたかいぬくもりに安心したとたん、私の意識はそこで途切れた。
遠くで誰かの声が聞こえる。
私の名前を必死に叫んでいる。
その声はだんだん大きくなっていく。
「サクラ……サクラ!!」
「もう! そんな耳元で叫ばないでよ!」
私はその声の大きさに耐えられず、思わず飛び起きた。
そして、何事かと思い、状況を把握しようとまわりを見渡す。
どうやらここは病室のようだ。自分の体を見るといたるところに包帯が巻かれている。
そうか、ナルトを助けようとして……。
ふと前を見ると、目の前には泣きそうなカカシ先生がいた。
「先生……どうしてここに?」
「サクラ! 良かった!!」
そう言うと私に思いっきり抱きついてきた。
「ちょっ! 先生、苦しい」
私の悲痛な声を聞いて「ごめん」と、先生は体を少し離した。
「ナルトは?」
「ナルトは無事だよ。いまは隣の病室にいる」
「良かった。カカシ先生はどうしてここに?」
「お前が電話してきたんだろう」
「そうね……そうだったわ」
「まだ混乱しているのか?」
「ううん、大丈夫。ナルトを襲ってきた人達は?」
「いまは警察にいると思う」
「そっか。カカシ先生が助けてくれたのよね?」
「まぁ、一応そうなるかな」
「ありがとうございます……」
私は安心した。ナルトが無事で本当に良かった。
「それにしても、どうして俺の言うことを聞かなかった?」
「だって、ナルトが一方的にやられているのを黙って見ているなんて……」
「だってじゃない。お前のボロボロな姿を見て、どんだけ肝が冷えたか」
「でも、私なら少しはやれるって思ったの。ほかの人より力もあるし」
「確かにそうかもしれないが、相手は複数人で男だ。いくらサクラでもチャクラがない状態じゃ勝てないよ」
「それはそうだけど……え? 先生いま、チャクラって……。それに私のこと名前で呼んだ?」
「今頃気づいたの」
「えっ、うそ。まさか、記憶が……」
「そのまさか。俺の前世は木ノ葉隠れの里の忍、はたけカカシ。お前は俺の大事な教え子の春野サクラ。思い出したのは血だらけのサクラを見た時だけどね」
「そんなことって……」
「思い出したのはさっきだけど、サクラの事は初めて見た時から気になってたよ。それに、時々泣きそうな表情で俺を見るから余計気になってね。いま思うとサクラは最初から記憶があったんだな。すまなかった」
「……謝んないでよ、まぁ、確かに先生が忘れてたのはすごくショックだったけど。いまは思い出してくれたじゃない。それだけで十分」
「サクラ……」
先生は私を再び抱きしめた。
嬉しかった。やっと思い出してくれたのだから。
想いを伝えられないのは悲しいけど、それでもいい。
先生の生徒として、今度こそずっとそばにいよう。
私も先生の背中に手を回した。
そう決意したのに、その決意は先生の一言で見事に崩れ去った。
「好きだ、サクラ」
「は?」
「だから、お前のことが好きなんだ」
「えっ、ちょっ……。何言ってるの?」
「ん?」
「ん? じゃなくて、先生。結婚してるじゃない」
「いや、してないよ」
「いや、してるでしょ」
「だからしてないって」
私は混乱していた。先生の言ってることが分からない。
とりあえず先生から一旦離れ、さらに問いかけた。
「じゃあその薬指の指輪は何?」
「指輪? あぁ、これね。偽物なんだよ。結婚してると見せかけるためのフェイクだよ」
「どうして?」
「まわりが色々うるさいから。これをしてるといちいち聞かれないだろ。まぁ、聞かれることもあるから、その時はしてるって答えるけど」
「リン先生は?」
「リン? リンはただの幼馴染だよ。それに同じく幼馴染のオビトと結婚してる」
「休みの日に2人で仲良さそうにショッピングセンターを歩いてたって聞いた」
「……あぁ、あの時か! あれはオビトの誕生日プレゼントを買うのに付き合ったんだよ」
「本当?」
「本当だよ。そんなに気になるなら、リン本人に確かめてみるといい。……本当はこの気持ちは卒業まで言うつもりはなかったんだけど。またいつのまにかお前を失うのは嫌だなって」
「その言葉信じていいの?」
「もちろん」
先生があまりにも優しい顔で言うから。
それが嬉しくて私は思いっきりカカシ先生の腰に抱きついた
「せんせ〜い! 私も先生のことが好き~!!」
先生はそんな私をしっかりと抱きとめ、「会いたかった」と呟いた。
「私の悩んだ時間返してよ〜。先生に会った時、すっごく嬉しかったのに、先生は記憶がないし。さらに結婚していて……私、すごくショックだったんだからね!」
「だから悪かったって。でも、これでもう悩まないでしょ。サクラも俺に心配かけさせないで」
「心配って?」
「風邪で倒れた時は驚いたし、サクラから助けてって電話がきた時は心臓が止まるかと思った。それにサスケのことも」
「サスケくん?」
「うん。なんで2人で仲良さよさそうに食べているのさ。しかも、サクラの手作り弁当」
「あれはなんていうか成り行きで……。サスケくんも記憶があって、嬉しかったの。いままで木ノ葉の人たちにはたくさん会ったけど、みんな記憶がなかったし。……もしかしてカカシ先生が邪魔しにきてたのって、ヤキモチ?」
「その時は自覚なかったけどね。もしかしたら、けっこうサクラのこと最初から好きだったのかも」
「そんな風には見えなかったけど?」
「え~、けっこうわかりやすかったと思うけど。連絡先を教えたのはお前だけだし、俺はわざわざ生徒の家に忘れ物は届けないし、見舞いにも行かない。ぜんぶサクラだからだよ。おかげでヤマトには怪しまれたけどね」
「……そういえば私のファーストキスも奪ったもんね」
「あれはお前が泣くから仕方なく」
「仕方なく奪ったの? さいてー! 私のファーストキス返してよー!!」
私は先生の胸元を叩いた。
「ちょっ! サクラ。悪かった。だから、やり直させて?」
そう言って先生は私の腕を掴んだ。
「やり直すって?」
不思議に思っていると、先生がマスクをおろし、私にキスをしてきた。
「好きだ」
先生はそう言いながら、何度も私にキスをする。
私も最初は抵抗していたが、いつのまにか先生のキスを受け入れていた。
先生とこうしているなんて夢みたい。
私は先生とのキスに酔いしれていた。
どのぐらい経っただろうか。しばらくして、唇が離れた。
「ねぇ、先生。あの時の約束覚えてる?」
「もちろん。ちゃんとサクラに言われた通り、前世ではご飯も食べて、睡眠もとって、任務もほどほどにして。ナルト達の面倒を見て、サクラの分まで生きたよ。80歳ぐらいまでは生きたかな」
「良かった。結婚はした?」
「してないよ」
「先生イケメンなのにもったいない」
「もったいなくないよ。サクラ以外、一緒に生きたいと思える人はいなかったからね」
「じゃあ、先生の老後は誰が見たの?」
「ナルト達やその子供達かな。もう賑やかすぎて静かな老後どころじゃなかったよ」
「うふふ、そうなんだ……」
「あの場所で花見も毎年したよ。サクラを忘れたことなんてひとときもなかった。ここにサクラがいたらと何度思ったか」
「……先生……約束守ってくれてありがとう」
「うん。もう俺より先にいなくならないで。俺はもーあんな思い、二度としたくないよ」
「努力する...。先生ももう忘れないでね」
「あぁ、忘れないさ。これからはずっとそばにいる」
「うん。お花見もまたしたいな。あの時の桜のような場所を私知っているのよ。先生、きっとびっくりすると思う」
「そうなのか、それはぜひ連れて行ってほしいな」
「任せて!」
私たちは再び抱き合った、
「ねぇ、先生。あの時私に言いたかったことを教えてくれる?」
「あぁ、サクラも教えてくれる?」
「もちろん! それじゃあ同時に言いましょう。せーの!」
「「愛してる!!」」