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NARUTO/カカサク 中編 ■Voyage

初恋の人


入学式の翌日のお昼休み。
ご飯を食べながら、いのとナルトに昨日すぐに帰ったことを問い詰められていた。

「サクラちゃん、急に帰っちゃうからびっくりしたってばよ」
「本当よ。私の呼びかけも無視して帰るなんていい度胸じゃない」
「ごめん、ちょっと用事があって……」
「まさか、男じゃないわよね?」
「えっ、サクラちゃん。彼氏いるの!? オレ聞いてないよ~」
「もう違うって!」
「そういえば、私達のクラスの担任。カカシ先生ってかっこいいわよね。まぁ、私はタイプじゃないけど」

私はその言葉にドキッとした。

「そうかな~? オレはマスクで顔隠してるし、怪しい奴だと思うってばよ」
「そこもミステリアスでいいんじゃない?」
「なになに、カカシ先生の話?」

カカシ先生はモテるようで、この話題をしていると別の女の子たちが話に入ってきた。

「そうそう。私達の担任の話」
「確かにかっこいいよね~。でも昨日聞いたら結婚してるんだって」
「保健のリン先生とでしょ?」
「相手は教えてくれなかったけど、絶対そう! 幼馴染らしいしね。それに先輩が見たらしいんだけど、普段はリン先生、カカシ先生呼びなのに、2人だけの時は名前で呼び合ってたんだって」
「まじか〜」
「これも先輩情報なんだけど、休みの日に2人で仲良さそうにショッピングセンターで歩いてるのを見たんだって」
「先輩情報すごいわね……。相手があのリン先生じゃあ、勝ち目ないわね……。昨日見たすっごい美人だったもの」
「性格もいいみたいだしね」

会話に入れなくなったナルトはつまんなさそうに外を見て、私は会話に入ることもできずにただその場にいるだけだった。

そんなこと知りたくなかったな……。

そんなことを考えてると急に会話をふられた。

「春野さんはどうなの?」
「えっ! 私!?」
「カカシ先生の話題にあまり入ってこないじゃない。学級委員で昨日話したんじゃないの?」
「話したんだけど……えーっと...あんまり覚えていないというか……」
「もしかして、ほかに好きな人がいるから、興味ないとか?」
「...そう! 実はそうなの!」

いままで蚊帳の外にいたナルトが入ってきた。

「えっ!? サクラちゃん、好きな人いるの? もしかして、オレ?」
「そんなわけないじゃない!」

私はナルトの頭を思いっきり叩いた。

「ちょっと! サクラ! 私も聞いてないわよ」

いのも私にすごい剣幕で迫ってくる。

「……あっ、私! 先生に呼び出されてたんだった! そういうわけだから、またあとで!」

そんなことはなかったが、この場から逃げ出したくてとっさに嘘をつき、教室を飛び出した。
向かう場所はどうしようか……とりあえず私は屋上へ向かった。

屋上の扉を開けると、きれいな青空が目の前に広がった。
私はその空の青さに吸い込まれるように歩きだした。
だから、当然下など見ていなかったので、何かにつまづいたのは仕方なかった。

「きゃっ!」
「いてっ!」

私は地面にぶつかりそうになり、衝撃に備え目を瞑ったがその衝撃は柔らかいものだった。
何かがクッション代わりになったようだった。

「あれ? 私、平気・・・?」
「俺が平気じゃない。早くそこをどいてくれ」

声の方へ目を向けると、サスケくんがいた。
どうやら寝ているサスケくんに私が躓いて、そのままサスケくんの上に乗っかったらしい。

「ごめんなさい!」

私はすぐにサスケくんの上から降りた。

「ったく、人の昼寝を邪魔しやがって……」

そう言ってサスケくんも体を起こした。

サスケくんがいるなんてびっくりした。
……うん? サスケくん? サスケくんってあの……?
私はまじまじと見つめた。
黒髪で整った容姿。このぶっきらぼうな態度。
間違いない。サスケくんだ。前世と変わらないあのサスケくんだ。
私の大好きだったサスケくんだ……。

私の目からは自然と涙がこぼれだしていた。
サスケくんはそれを見て驚いていた。
そりゃあ、いきなり知らない女に目の前で泣かれたら困るだろう。

「ごめん、ごめんなさい……」

零れてくる涙を必死にとめようとしたが、思いとは裏腹にどんどん出てくる。

「はぁ」

サスケくんは大きなため息をつき、立ち上がった。
私は思わずビクッと体が震えた。

そのまま立ち去ってしまうのだろうか……その方がいい。
こんな姿を現世でも見られたくない。
その思いとは裏腹にサスケくんは私に近づいてきた。

そして、私の目の前までくると、サスケくんは私の顔に手を伸ばし涙を拭った。

「えっ?」

「相変わらずお前は泣き虫だな……サクラ」
「サスケくん……いまなんて……?」
「サスケくんって呼んだってことはお前も思い出しているんだな」
「うそ……サスケくんも?」
「あぁ」

私は驚きで涙が引っ込んでしまった。
いままでたくさんの木ノ葉の里の人たちに会ってきたが、前世の記憶がある人は誰一人いなかった。
それなのに今日ここで初めて会った、前世の仲間であり、私の初恋の人の記憶があるなんて……。

「サスケくん!!」

私は思わずサスケくんに飛びついた。
そんな私をサスケくんは優しく受け止めてくれた。

それから私たちはチャイムがなるまで、お互いのことを話していた。


サスケくんは私と同じ学年で、となりのクラスらしい。
いままでは別のところに住んでいたが、父親の転勤でこの町に最近引っ越してきたみたい。
だからいままで会わなかったのね。

「そろそろ行くか」
「うん。ねぇ、サスケくん。その、あの……また会える?」
「となりのクラスなんだから、いつでも会おうと思えば会えるだろう」
「それはそうなんだけど……」
「……明日のお昼も俺はここにいる」
「そっか」
「……お前も来たいならくるといい」
「うん! そうだ! 私お弁当作ってくるね」
「!? それは断る……」

サスケ君の顔が青ざめた。
そうだった……前世ではサスケくんとお花見をしたのは最初の1回っきりだったから、私の料理の腕が上達したのを知らないんだった。
前世の記憶があるぶん、現世でもきっと料理の腕前が変わらないはず。
それにいまはヤマト隊長と2人暮らしだから、家事も分担している。ヤマト隊長も私が作った料理を食べて美味しいと言ってくれているから、問題ないだろう。

「私、前世ではサスケくんがいない間にすごく頑張ったんだからね! もう食べたらきっと驚いちゃうわよ。だから、明日絶対持ってくる!」

これはもう意地だ。そう言い逃げし、私は自分の教室へ戻っていった。



そして、翌日。いのたちを上手くかわし、屋上へ来ていた。

「本当にいる……」

「そりゃあ、いるだろう」

サスケくんが昨日と同じ場所にいた。
私は隣に座り、早起きして作ったお弁当を広げた。
我ながら上出来だ。サスケくんの好きなおかかのおむすびとミニトマトはもちろん、前世でカカシ先生に褒められた卵焼きと唐揚げというラインナップだ。

サスケ君はおそるおそる手に取ると、それを口に入れた。

「……」
「……」

沈黙の時間が流れる。私はドキドキでサスケくんの感想を待った。

「……悪くない」

そう言うとサスケくんは次々をお弁当に手を出し始めた。

「よかった……!」

私も安心して、お弁当を食べはじめた。
食べ終わると、2人で寝転び空を見上げた。
ふと、隣を見るとサスケくんも私の方を向いていたらしく、目が合った。

「どうしたの?」
「……またお前に会えて良かった……」

サスケくんは耳をすまさないと聞こえないような音量でそうつぶやくと、すぐに反対方向を向いた。

「えっ……」

私は思わず体を起こし、サスケくんの顔を覗こうとしたが、腕で隠され見えなかった。
でも、髪と腕の隙間から見えた耳が真っ赤に染まってるのを見て、私は微笑んだ。

「私も会えて嬉しかったよ」

それからお昼休みはサスケくんと過ごすのが私の日課になった。



サスケくんと過ごすのが当たり前になり始めたころ……そいつは突然やってきた。

「サスケくん、今日は肉団子を作ってみたの」

それを聞いたサスケくんは肉団子をひとつ掴むと、自分の口まで運ぼうとした。
しかし、それはサスケくんの口に入ることはなかった。
なぜならば、カカシ先生がいきなり現れ、それを横取りしたから。

「う~ん、美味しいね~」

そう言うとカカシ先生はものすごい早さでお弁当の中身を空にしていく。
私とサスケくんはその光景に呆気にとられていた。

「ごちそうさまでした」

その言葉で我に返ると、すでにお弁当の中身はきれいさっぱりなくなっていた。

「ちょっと! いきなり何なんですか?」

私は思わず叫び、先生に掴みかかった。

「いや〜、たまたま屋上にきたら2人を見かけてな。そしたら、春野の手作り弁当っていうじゃないか。とりあえず先生が味見してやろうと思って」

「だからって、全部食べることはないでしょー! 私たちの分がないじゃない!!」

「それは悪かった。おわびに先生のお弁当あげるから」

そう言うと先生は自分のお弁当を渡してきた。

「そういう問題じゃなくて……」

お弁当を見ていた顔をあげると既にカカシ先生はいなくなっていた。

「あいつならすごいスピードで去っていたぞ。結局何がしたかったんだ?」
「さぁ……?」

私達は途方にくれながも、カカシ先生のお弁当を2人で食べた。
きっとリン先生の手作り弁当なんだろう。味はそこそこ美味しかった。


それから時々カカシ先生は現れ、私のお弁当を横取りし、自分のお弁当を渡して去っていくという日々が続いた。
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