NARUTO/カカサク 短編①
ANGEL'S SONG/浜崎あゆみ
綱手様との修行を終えた帰り道。私は真っすぐに家に帰る気もならず、公園に一人ベンチに座り、反省会をしていた。
「今日もダメだった。肩に力が入りすぎたのかしら……」
サスケくんが里を抜け、ナルトが修行に出て、カカシ先生は任務で忙しい。私もこのままではいけないと思い、綱手様の元で修行しているが、焦りからか何もかもが上手くいかず、自分の不甲斐なさに嫌になるばかり。さらに、いの達と海に遊びに行ったとき、ほかのみんなが同じ班の仲間同士で仲良くしている姿を見て、“なんでサスケくんとナルトはここにいないんだろう”と寂しさを感じてしまったことを思い出し、思わず涙目になってしまう。
「いけない……泣いたって意味ないのに……」
零れ落ちてくる涙を拭っていると、懐かしい声で名前を呼ばれた。俯いていた顔をあげると、目の前にカカシ先生が立っていた。
「カカシ先生……」
「久しぶり」
そう言ってカカシ先生は私の隣に座るため、私は急いで涙を拭い、何事もなかったかのように問いかける。
「どうしてここに?」
「任務が終わって家に帰る途中に見慣れた髪色を見つけてね。もしかしたらと思ったら、やっぱりサクラだったわけ」
「なるほどね。それにしても、先生。しばらく見ないうちに老けた?」
「ひどいな~。そりゃあ、任務続きで疲れてはいるけど、老けてはないでしょ。俺、まだ20代よ」
「そういえば、そうだったわね」
「サクラこそ少しふくよかになったんじゃない?」
「失礼ね! 修行ばかりで3kg痩せたわよ!」
「そうなの?」
「そうよ! まぁ、おかげでこの前海に行った時にビキニを着れたんだけど」
「海か~。いいね~」
泣いていた事に触れられたくないことに気づいているのか、先生も何事もなかったかのように会話を進める。私はそんな先生の優しさに心地よさを感じていた。
「すごく良かったわよ。いの達と行ったんだけどね、すごく楽しかった。スイカ割りをしたんだけど、中々命中しなくて。それに割れたと思ったら、チョウジがほとんどスイカを食べちゃったり。キバと赤丸も走り回って、それでね……」
その時の様子を思い出し、一度引っ込んだ涙が再び溢れてきた。
「やだ……なんで涙が……。これはその……悲しいわけじゃなくて……」
今度こそはごまかせない。きっと先生はいきなり泣き出した私を見て、困っているだろう。それを見たくなくて、顔を上げられないでいると頭にポンっと軽い重みを感じた。
「?」
思わず顔を上げると、それは先生の手で、私の頭を撫でていた。そして、優しい声と表情で「大丈夫だから、サクラ」と言われると、その優しさに私の涙腺は崩壊した。
「うわ~ん」
「あの、サクラ。ここは泣き止むところだと思うんだけど……」
「うるさい。先生のせいなんだから」
「え? 俺のせい……?」
「うん」
そう、先生のせい。あまりにも先生が優しすぎるから、いままで溜まっていたものが溢れ出てしまっている。でもきっと先生はそれも含めて全て受け止めてくれる。なぜだか分からないけれど、そんな気がした。私の予想通り、大泣きする私に戸惑いつつも、先生は私の涙を受け止めながら一生懸命励ましてくれている。
「そっか、俺のせいだよな。うん、ごめんね。どうしたら機嫌直してくれる?」
「餡蜜食べたい」
「餡蜜ね。分かった、いいよ」
「スペシャルの方じゃないとダメだからね」
「はいはい」
そんな先生とのやり取りに安心したのか、それとも抱えていたものが全て流れ出してしまったのか、私の涙は止まりつつあった。そして、最後の涙一粒が流れ終わり落ち着くと、いままでの自分の行動に恥じらいが芽生えた。
「あの……その。先生、ごめんなさい」
「何でサクラが謝るの」
「だって、急に大泣きしたりして……。先生も迷惑だったでしょ?」
「そんなことない。俺は大丈夫。それより落ち着いたなら、約束通り餡蜜を食べに行こうか」
そう言って先生は立ち上がって、私に手を差し出す。
「さっきのは冗談よ。先生だって忙しいでしょ。私はもう大丈夫だから……」
律儀に約束を守ろうとする先生に少し驚きながらも、笑ってやんわりと断ろうとする私の手を先生が無理やり取り、そのまま引っ張って歩き出す。「ちょっと! 先生、どこに……」という私の問いかけも無視するため、逆に先生を引っ張ると、先生は不満そうに立ち止まり振り返る。
「なに?」
「なにって。それはこっちの台詞よ。どこに行くのよ?」
「餡蜜食べに行くんでしょ」
「それはさっき冗談って……」
「いいから。俺、お腹すいたの。さっきはサクラに付き合ったんだから、今度は俺に付き合ってよ」
「でも……」
「自分でした約束も守らないなんて。いつのまにサクラはそんな人間に……」
泣きまねをする先生に呆れながらも、確かにその通りだと了承することにした。
「……分かったわよ」
「さすがサクラ!」
私の返事を聞いた先生は、満足そうに笑うと再び歩き出す。私は先生に引っ張られながら、先生の背中を見る。広くて大きい背中だ。そして、いつのまにか心の中が軽くなったことにも気が付いた。これも全部先生のおかげ。
「ありがと、先生」
「ん?」
「何でもない! それより早く行きましょ」
私は先生を追い越すと、今度は私が先生を引っ張るようにして甘味屋へ向かった。
綱手様との修行を終えた帰り道。私は真っすぐに家に帰る気もならず、公園に一人ベンチに座り、反省会をしていた。
「今日もダメだった。肩に力が入りすぎたのかしら……」
サスケくんが里を抜け、ナルトが修行に出て、カカシ先生は任務で忙しい。私もこのままではいけないと思い、綱手様の元で修行しているが、焦りからか何もかもが上手くいかず、自分の不甲斐なさに嫌になるばかり。さらに、いの達と海に遊びに行ったとき、ほかのみんなが同じ班の仲間同士で仲良くしている姿を見て、“なんでサスケくんとナルトはここにいないんだろう”と寂しさを感じてしまったことを思い出し、思わず涙目になってしまう。
「いけない……泣いたって意味ないのに……」
零れ落ちてくる涙を拭っていると、懐かしい声で名前を呼ばれた。俯いていた顔をあげると、目の前にカカシ先生が立っていた。
「カカシ先生……」
「久しぶり」
そう言ってカカシ先生は私の隣に座るため、私は急いで涙を拭い、何事もなかったかのように問いかける。
「どうしてここに?」
「任務が終わって家に帰る途中に見慣れた髪色を見つけてね。もしかしたらと思ったら、やっぱりサクラだったわけ」
「なるほどね。それにしても、先生。しばらく見ないうちに老けた?」
「ひどいな~。そりゃあ、任務続きで疲れてはいるけど、老けてはないでしょ。俺、まだ20代よ」
「そういえば、そうだったわね」
「サクラこそ少しふくよかになったんじゃない?」
「失礼ね! 修行ばかりで3kg痩せたわよ!」
「そうなの?」
「そうよ! まぁ、おかげでこの前海に行った時にビキニを着れたんだけど」
「海か~。いいね~」
泣いていた事に触れられたくないことに気づいているのか、先生も何事もなかったかのように会話を進める。私はそんな先生の優しさに心地よさを感じていた。
「すごく良かったわよ。いの達と行ったんだけどね、すごく楽しかった。スイカ割りをしたんだけど、中々命中しなくて。それに割れたと思ったら、チョウジがほとんどスイカを食べちゃったり。キバと赤丸も走り回って、それでね……」
その時の様子を思い出し、一度引っ込んだ涙が再び溢れてきた。
「やだ……なんで涙が……。これはその……悲しいわけじゃなくて……」
今度こそはごまかせない。きっと先生はいきなり泣き出した私を見て、困っているだろう。それを見たくなくて、顔を上げられないでいると頭にポンっと軽い重みを感じた。
「?」
思わず顔を上げると、それは先生の手で、私の頭を撫でていた。そして、優しい声と表情で「大丈夫だから、サクラ」と言われると、その優しさに私の涙腺は崩壊した。
「うわ~ん」
「あの、サクラ。ここは泣き止むところだと思うんだけど……」
「うるさい。先生のせいなんだから」
「え? 俺のせい……?」
「うん」
そう、先生のせい。あまりにも先生が優しすぎるから、いままで溜まっていたものが溢れ出てしまっている。でもきっと先生はそれも含めて全て受け止めてくれる。なぜだか分からないけれど、そんな気がした。私の予想通り、大泣きする私に戸惑いつつも、先生は私の涙を受け止めながら一生懸命励ましてくれている。
「そっか、俺のせいだよな。うん、ごめんね。どうしたら機嫌直してくれる?」
「餡蜜食べたい」
「餡蜜ね。分かった、いいよ」
「スペシャルの方じゃないとダメだからね」
「はいはい」
そんな先生とのやり取りに安心したのか、それとも抱えていたものが全て流れ出してしまったのか、私の涙は止まりつつあった。そして、最後の涙一粒が流れ終わり落ち着くと、いままでの自分の行動に恥じらいが芽生えた。
「あの……その。先生、ごめんなさい」
「何でサクラが謝るの」
「だって、急に大泣きしたりして……。先生も迷惑だったでしょ?」
「そんなことない。俺は大丈夫。それより落ち着いたなら、約束通り餡蜜を食べに行こうか」
そう言って先生は立ち上がって、私に手を差し出す。
「さっきのは冗談よ。先生だって忙しいでしょ。私はもう大丈夫だから……」
律儀に約束を守ろうとする先生に少し驚きながらも、笑ってやんわりと断ろうとする私の手を先生が無理やり取り、そのまま引っ張って歩き出す。「ちょっと! 先生、どこに……」という私の問いかけも無視するため、逆に先生を引っ張ると、先生は不満そうに立ち止まり振り返る。
「なに?」
「なにって。それはこっちの台詞よ。どこに行くのよ?」
「餡蜜食べに行くんでしょ」
「それはさっき冗談って……」
「いいから。俺、お腹すいたの。さっきはサクラに付き合ったんだから、今度は俺に付き合ってよ」
「でも……」
「自分でした約束も守らないなんて。いつのまにサクラはそんな人間に……」
泣きまねをする先生に呆れながらも、確かにその通りだと了承することにした。
「……分かったわよ」
「さすがサクラ!」
私の返事を聞いた先生は、満足そうに笑うと再び歩き出す。私は先生に引っ張られながら、先生の背中を見る。広くて大きい背中だ。そして、いつのまにか心の中が軽くなったことにも気が付いた。これも全部先生のおかげ。
「ありがと、先生」
「ん?」
「何でもない! それより早く行きましょ」
私は先生を追い越すと、今度は私が先生を引っ張るようにして甘味屋へ向かった。
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