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NARUTO/カカサク 短編①

乙女のポリシー/石田よう子
※紅先生目線。

ここは上忍待機所。なんとなく窓の外を見ていると、庭のベンチでいのちゃんとサクラちゃんが楽しそうに話しながら座っていた。暇だったため、なんとなく耳をすませると2人の会話がかすかだが聞こえてくる。

「あっ、指のささくれがむけちゃった」
「私、絆創膏あるわよ」
「ありがとう。それにしても、サクラは何でも持ってるわね。この前、ボタンが取れちゃった時に裁縫セットが出てきたのは驚いたわ。あと、急な雨が降ってきた時に折り畳み傘を当然のように持っていたこともあったわね~」
「女の子としては当然よ! 」
「そうかしら……。でも、どうしてそんなに準備がいいの?」
「だって……サスケくんに何かあった時に役に立つかもしれないじゃない。怪我したり、服が破けてたり、雨が降ったりとか……」
「そこから恋が生まれるかもって?」
「うん!」
「そんまヘマ、サスケくんはしないと思うけどね~」
「もしかしたらよ!」

微笑ましくて思わず「うふふ」と笑っていると、カカシが私の傍にやってくる。

「なに、一人で笑ってるの?」
「別になんでもないわ」

私は窓からカカシへと視線を移す。

「あなたがこんなに早く来るなんて珍しいわね」
「まぁ、たまにはね。何見てたの?」
「あの2人よ」

窓の外へと再び視線を向けると、今度はメイク道具を出しながら2人は何やら熱く語っていた。

「今時の子はませているわね~」
「まぁ、俺達の子供のころとは違うからな」
「それもそうね。でも、子供らしい可愛らしいところもあるのよ。さっき聞いちゃったんだけど、サクラちゃんっていつも裁縫セットや絆創膏、折り畳み傘とかを持ち歩いてるんだって」
「まぁ、確かに準備はいいかもな。でも、どうして?」
「好きな男の子が困っている時に助けてあげたいんだって。そしたら、そこから好意を抱いてくれるかもしれないでしょ?」
「へぇ~」
「まぁ、あなたには関係のない話だと思うけど」
「そうかもね……」

何やら考え込んでいるカカシだったけれど、私は特に気も留めずにいた。


それから、数日後。街を歩いていると、目の前にサクラちゃんがいるのに気付いた。声をかけようとすると、カカシがいきなり現れ、私より先に声を掛ける。

「サークラ! ちょうど良かった」
「カカシ先生! どうしたの?」
「いまって、裁縫セット持ってるんだっけ?」
「持ってるけど……何でそんなこと知ってるのよ」
「まぁまぁ、細かいことは気にしないで。それより服の袖、破れちゃったんだけど縫ってくれない?」
「自分で縫えばいいじゃない」
「いや~、そういうのが苦手でね。優等生のサクラなら得意かなと思って」
「……そういうことね。仕方ないから、縫ってあげる」
「そうこなくっちゃ!」

そう言って2人は近くのベンチに座ると、サクラちゃんがさっそくカカシの腕を取り、破れたところを縫い始める。私はなんとなく2人にばれないように様子を見てた。サクラちゃんは真剣な表情で縫っていて、カカシはそれをまじまじと見ている。お世辞にも手際がいいとはいえないが、一生懸命に縫っている姿を見ると心がほっこりとした。そして、ようやく縫い終わったみたいだ。

「終わったわよ」
「さすがサクラだね」
「当然でしょ! 少し不格好になっちゃったけど……破けているよりはましだと思うわ。あっ、先生。いま、糸を切るから動かないでね」
「はいはい」

作業を終えサクラちゃんが顔をあげると、思ったよりカカシの顔が近かったせいか、赤い顔をしながら驚いている。そんなことで顔が赤くなるなんて、初心すぎて可愛いわ……。そんなサクラちゃんに気づいているのか、いないのか、カカシが「この後、空いてる? お礼に餡蜜をおごるよ」と声を掛ける。

「えっ、いいの?」
「あぁ」
「やったー! 早く行きましょ!」

そう言ってサクラちゃんはカカシの手を引いて、足早に歩き出す。カカシはされるがままでサクラちゃんの後をついて行った。

「微笑ましいわ……」
「こんなところで何やってるんだ?」
「アスマ!」

びっくりして振り返ると、任務終わりらしいアスマがいた。

「別に。ちょっとカカシとサクラちゃんの様子を見ていただけよ」
「そんなことをしてるなんてよっぽど暇なんだな。せっかくだし、今から飲みに行くか」
「あら、いいわね」

そう言って私達も歩き出す。

「そういえば、カカシって裁縫苦手なのね」
「は? あいつ、手先は器用で、裁縫も得意なはずだが」
「えっ! でもさっき……」

私は先ほどのカカシとサクラちゃんの光景を思い出す。裁縫が得意なはずなのに、どうしてサクラちゃんに頼むのか……。それと同時に、私が数日前にカカシに言った言葉も蘇ってくる。

“「サクラちゃんっていつも裁縫セットや絆創膏、折り畳み傘とかを持ち歩いてるんだって」
「まぁ、確かに準備はいいかもな。でも、どうして?」
「好きな男の子が困っている時に助けてあげたいんだって。そしたら、そこから好意を抱いてくれるかもしれないでしょ?」
「へぇ~」”

あの時、カカシは何やら考え込んでいた。

「もしかして……カカシって……」
「どうした?」
「……ううん。なんでもないわ」

わざわざサクラちゃんに頼んだのは、たぶん……カカシがサクラちゃんを好きだから。おそらくこの勘は当たっている。

「なに、にやけてるんだ?」
「これから面白いことが起きそうだなって思って」
「どういう意味だ?」
「いずれ分かるわ。それより早く行きましょ」

今後のことを楽しみにしつつ、私もアスマの手を引いて、居酒屋へと向かった。
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