NARUTO/カカサク 短編①
Rebirth-day/高垣彩陽
「ねぇ、サクラちゃん。私、カカシさんと付き合うことになったの」
仲良くしている近所のお姉さんからいきなりそう言われた。
「それは良かったですね」
宣言された瞬間、“あの先生でも恋愛するんだ。まぁ、何気にイケメンだしお姉さんも綺麗で、お似合いかもね”ぐらいの感想しか抱かなかった。
「カカシさんって案外マメなのね。記念日とかには必ずプレゼントをくれるのよ」
「へぇ~、意外ですね」
「でしょ。それにサクラちゃんから遅刻魔って聞いてるけど、私とのデートには遅刻したことないのよ」
「それはすごいです。やっぱりデートだからですかね」
「そうかもしれないわ」
だけど、毎回会うたびに惚気を聞かされると嫌になるのも必然で……。受け答えが適当になるのは許してほしい。会う度に惚気を聞かされれば、誰だってこうなるはずだ。前はオシャレの話や趣味の話をしていて楽しかったのに、最近は先生との惚気話ばかり。私はほぼ聞き役にまわっている。
「サクラちゃん?」
「あっ、ごめんなさい」
いけない! ボーっとしてたみたい。
「カカシさんとの結婚式にはもちろん来てね」
「あはは、ぜひ……」
もうそんな話になっているのか。私は愛想笑いをしつつ、肯定の返事をした。それにしても、お姉さんの話を聞く限り先生はマメらしい。私達の相手はすごく大雑把で適当なのに……全然想像がつかないかも。でも、やっぱり好きな人の前では違うんだろうな。なんだろう、少し面白くないかも。私の前でも少しぐらいそんな感じを出してくれたらいいのに。なんでそんなことを思うのか、この時の私には分からなかった。
その翌日。私は任務中にお姉さんに言われた言葉を思い出していた。先生が結婚か……。
「サクラ、俺の顔になんかついてる?」
「ううん、なんでも」
「? なら、いいけど」
無意識に先生を見つめてたようだ。私は反省しつつ、任務に戻ろうとするがやはり先生の事を考えてしまい、中々手につかない。おかげで終了予定時間を大幅にオーバーしてしまった。サスケくんとナルトに申し訳ない……2人は気にしてないって雰囲気だったけど。そんな不甲斐ない自分に落ち込んでいると、サスケくんとナルトを見送った先生が心配そうに私に声を掛けてきた。
「何かあったのか?」
「先生……別に何でもないわよ」
「そんなことないだろう」
先生は去ろうとする私の腕を掴む。どうやら言うまで離してくれなさそうだ。私は意を決して口を開いた。
「先生……結婚しちゃうの?」
「えっ? いきなりどうしたのよ」
「私の近所に住むお姉さんと付き合ってるんでしょ。お姉さんがカカシ先生と結婚するって言ってたから」
「……サクラはどう思う?」
「えっ、私?」
予想外の質問返しに面を食らう。
「俺、結婚していいと思う?」
「なんで私に聞くのよ。それは先生が決めることでしょ」
「まぁ、そうなんだけど……でも、俺はサクラに決めてほしいの。サクラがいいって言うなら結婚するし、嫌だって言うならしないよ」
「なにそれ……」
困惑しつつ先生を見つめるが、先生は真面目な表情を崩さず私の言葉を待っている。先生の考えていることは全く分からない。私は次の言葉が出ずにいた。
「そんなに悩むこと?」
「だって、先生の一生がかかってるんでしょ」
「そりゃあ、どーも。でも、簡単なことだよ。サクラが思ったまま答えればいいの」
私の思うままに……そんなの一つしかないじゃない。
「……嫌かも」
「かも?」
「嫌」
そう言うと先生は「分かった、結婚はしないよ」と微笑み、私の頭を撫でる。
「えっ、いいの?」
「うん。言ったでしょ、サクラが嫌ならしないって。それより何で嫌なの?」
「何でって言われても……そんなの分かんないわよ。でも、なんか嫌って思っちゃったんだから、仕方ないじゃない」
「ふ~ん。それより、餡蜜食べに行こうか」
「えっ、いきなり」
「嫌?」
「嫌じゃないけど」
「じゃあ、行こう」
そう言って先生は私の手を取ると、甘味屋へと向かって歩き出す。なぜか急に機嫌の良くなった先生を疑問に思いながらも、私も先生の手を握り返した。
後日、久しぶりにお姉さんと会った。先生と餡蜜を食べに行った以降、なかなか会わなかったのだ。
「お久しぶりですね」
「サクラちゃん……」
「最近会わないですけど、忙しいんですか?」
「まぁ、そんなところかしら……」
そう言うお姉さんの表情はどこか暗い。
「あの、どうかしました?」
「サクラちゃん、私カカシさんと別れたの」
「えっ!」
「君とは結婚できないって言われてね」
「そうなんですか……」
「それでもやっぱり好きだから、別れたくなかったんだけど」
そう言って私の方を見る。
「?」
「何でもない。とにかくそう言うことだから。それじゃあ私は行くわね」
そう言って足早にお姉さんは去っていく。あんなに仲良かったのに……もしかして私のせい? 不安に思いながらも、先生と別れたと聞いてホッとした気持ちがあることも事実で。私は自分のそんな気持ちに戸惑っていた。
その翌日。お母さんから頼まれた買い物をこなしていると、偶然先生に会った。
「カカシ先生!」
「奇遇だな、サクラ。買い物か?」
「うん。先生は?」
「俺もそんなとこかな。それより、また何かあったのか? 暗い顔してるぞ」
「嘘!?」
そんな素振りは見せていないはずなのに、先生は私のちょっとした変化にすぐ気づく。嬉しいような見逃してほしいような、これまた複雑な気持ちになる。これはもう仕方ないと昨日のことを話すことにした。
「先生。お姉さんと別れちゃったんだね」
「あ~、うん」
「もしかして私のせい?」
不安そうに先生を見上げると、安心させるように私の頭を撫でる。
「サクラのせいじゃないよ」
「でも……」
「サクラはさ、それを聞いた時どう思った?」
「え?」
「俺が別れたって聞いた時」
「それは……」
あの時と同じように、真面目な表情で私の言葉を待っている。
「……別れたのは私のせいかなってすごく不安になったけど……」
「けど?」
「それと同時にホッとしたのも事実。私、最低よね」
「最低じゃないよ。あと、もう一つ聞きたいんだけど。最近、俺のこととサスケのこと、どっちのことを多く考えた?」
「それは……先生かも」
「そうだよね」
「先生、何が言いたいの?」
「サクラはさ、俺の事が好きなんだよ」
「私が……先生を……」
先生の言葉に驚きが隠せない。私の好きな人はサスケくんのはず。それなのに……。
「だって俺に結婚してほしくないんでしょ」
「そりゃあ、まぁ……」
「それにサスケより俺の事を考えてるってさ。好きじゃなかったら、そんなに考えないでしょ」
「そうなのかな」
「そうだと思うよ。俺は好きだよ、サクラのこと」
「えっ!?」
これまた予想外の言葉に先生を見るが、先生はニコニコといつもの感じで笑うだけだ。
「サクラのこと好きだから、俺のことだけを考えて欲しいし、俺以外の誰にも取られたくない」
「先生……」
「サクラもきっと同じ気持ちでしょ?」
「言われてみれば……そうかもしれない」
「だったら、そうなんだよ」
先生は私の両手を取り、手の甲にキスをする。
「ちょっ、先生!」
「ドキドキしてる?」
「するに決まってるじゃない!」
「嫌?」
「嫌ではないけど……恥ずかしい……」
「なら、いいじゃない。付き合おうよ、サクラ」
私は恥ずかしさのあまり「え~と」と目を泳がすが、先生は私の手を握り続ける。
「まだ?」
「まだって……」
「俺が他の人のものになってもいいの?」
「それは嫌」
「じゃあ、いいじゃない」
「…………分かった」
「ん?」
「だから、先生と付き合う!」
私は半ばヤケになりながらも、先生に宣言する。こうなったらもう引き下がれない。きっと私の顔は真っ赤だろう。そんな私を見て、先生が嬉しそうに笑う。
「うん、これからよろしくね」
「ねぇ、サクラちゃん。私、カカシさんと付き合うことになったの」
仲良くしている近所のお姉さんからいきなりそう言われた。
「それは良かったですね」
宣言された瞬間、“あの先生でも恋愛するんだ。まぁ、何気にイケメンだしお姉さんも綺麗で、お似合いかもね”ぐらいの感想しか抱かなかった。
「カカシさんって案外マメなのね。記念日とかには必ずプレゼントをくれるのよ」
「へぇ~、意外ですね」
「でしょ。それにサクラちゃんから遅刻魔って聞いてるけど、私とのデートには遅刻したことないのよ」
「それはすごいです。やっぱりデートだからですかね」
「そうかもしれないわ」
だけど、毎回会うたびに惚気を聞かされると嫌になるのも必然で……。受け答えが適当になるのは許してほしい。会う度に惚気を聞かされれば、誰だってこうなるはずだ。前はオシャレの話や趣味の話をしていて楽しかったのに、最近は先生との惚気話ばかり。私はほぼ聞き役にまわっている。
「サクラちゃん?」
「あっ、ごめんなさい」
いけない! ボーっとしてたみたい。
「カカシさんとの結婚式にはもちろん来てね」
「あはは、ぜひ……」
もうそんな話になっているのか。私は愛想笑いをしつつ、肯定の返事をした。それにしても、お姉さんの話を聞く限り先生はマメらしい。私達の相手はすごく大雑把で適当なのに……全然想像がつかないかも。でも、やっぱり好きな人の前では違うんだろうな。なんだろう、少し面白くないかも。私の前でも少しぐらいそんな感じを出してくれたらいいのに。なんでそんなことを思うのか、この時の私には分からなかった。
その翌日。私は任務中にお姉さんに言われた言葉を思い出していた。先生が結婚か……。
「サクラ、俺の顔になんかついてる?」
「ううん、なんでも」
「? なら、いいけど」
無意識に先生を見つめてたようだ。私は反省しつつ、任務に戻ろうとするがやはり先生の事を考えてしまい、中々手につかない。おかげで終了予定時間を大幅にオーバーしてしまった。サスケくんとナルトに申し訳ない……2人は気にしてないって雰囲気だったけど。そんな不甲斐ない自分に落ち込んでいると、サスケくんとナルトを見送った先生が心配そうに私に声を掛けてきた。
「何かあったのか?」
「先生……別に何でもないわよ」
「そんなことないだろう」
先生は去ろうとする私の腕を掴む。どうやら言うまで離してくれなさそうだ。私は意を決して口を開いた。
「先生……結婚しちゃうの?」
「えっ? いきなりどうしたのよ」
「私の近所に住むお姉さんと付き合ってるんでしょ。お姉さんがカカシ先生と結婚するって言ってたから」
「……サクラはどう思う?」
「えっ、私?」
予想外の質問返しに面を食らう。
「俺、結婚していいと思う?」
「なんで私に聞くのよ。それは先生が決めることでしょ」
「まぁ、そうなんだけど……でも、俺はサクラに決めてほしいの。サクラがいいって言うなら結婚するし、嫌だって言うならしないよ」
「なにそれ……」
困惑しつつ先生を見つめるが、先生は真面目な表情を崩さず私の言葉を待っている。先生の考えていることは全く分からない。私は次の言葉が出ずにいた。
「そんなに悩むこと?」
「だって、先生の一生がかかってるんでしょ」
「そりゃあ、どーも。でも、簡単なことだよ。サクラが思ったまま答えればいいの」
私の思うままに……そんなの一つしかないじゃない。
「……嫌かも」
「かも?」
「嫌」
そう言うと先生は「分かった、結婚はしないよ」と微笑み、私の頭を撫でる。
「えっ、いいの?」
「うん。言ったでしょ、サクラが嫌ならしないって。それより何で嫌なの?」
「何でって言われても……そんなの分かんないわよ。でも、なんか嫌って思っちゃったんだから、仕方ないじゃない」
「ふ~ん。それより、餡蜜食べに行こうか」
「えっ、いきなり」
「嫌?」
「嫌じゃないけど」
「じゃあ、行こう」
そう言って先生は私の手を取ると、甘味屋へと向かって歩き出す。なぜか急に機嫌の良くなった先生を疑問に思いながらも、私も先生の手を握り返した。
後日、久しぶりにお姉さんと会った。先生と餡蜜を食べに行った以降、なかなか会わなかったのだ。
「お久しぶりですね」
「サクラちゃん……」
「最近会わないですけど、忙しいんですか?」
「まぁ、そんなところかしら……」
そう言うお姉さんの表情はどこか暗い。
「あの、どうかしました?」
「サクラちゃん、私カカシさんと別れたの」
「えっ!」
「君とは結婚できないって言われてね」
「そうなんですか……」
「それでもやっぱり好きだから、別れたくなかったんだけど」
そう言って私の方を見る。
「?」
「何でもない。とにかくそう言うことだから。それじゃあ私は行くわね」
そう言って足早にお姉さんは去っていく。あんなに仲良かったのに……もしかして私のせい? 不安に思いながらも、先生と別れたと聞いてホッとした気持ちがあることも事実で。私は自分のそんな気持ちに戸惑っていた。
その翌日。お母さんから頼まれた買い物をこなしていると、偶然先生に会った。
「カカシ先生!」
「奇遇だな、サクラ。買い物か?」
「うん。先生は?」
「俺もそんなとこかな。それより、また何かあったのか? 暗い顔してるぞ」
「嘘!?」
そんな素振りは見せていないはずなのに、先生は私のちょっとした変化にすぐ気づく。嬉しいような見逃してほしいような、これまた複雑な気持ちになる。これはもう仕方ないと昨日のことを話すことにした。
「先生。お姉さんと別れちゃったんだね」
「あ~、うん」
「もしかして私のせい?」
不安そうに先生を見上げると、安心させるように私の頭を撫でる。
「サクラのせいじゃないよ」
「でも……」
「サクラはさ、それを聞いた時どう思った?」
「え?」
「俺が別れたって聞いた時」
「それは……」
あの時と同じように、真面目な表情で私の言葉を待っている。
「……別れたのは私のせいかなってすごく不安になったけど……」
「けど?」
「それと同時にホッとしたのも事実。私、最低よね」
「最低じゃないよ。あと、もう一つ聞きたいんだけど。最近、俺のこととサスケのこと、どっちのことを多く考えた?」
「それは……先生かも」
「そうだよね」
「先生、何が言いたいの?」
「サクラはさ、俺の事が好きなんだよ」
「私が……先生を……」
先生の言葉に驚きが隠せない。私の好きな人はサスケくんのはず。それなのに……。
「だって俺に結婚してほしくないんでしょ」
「そりゃあ、まぁ……」
「それにサスケより俺の事を考えてるってさ。好きじゃなかったら、そんなに考えないでしょ」
「そうなのかな」
「そうだと思うよ。俺は好きだよ、サクラのこと」
「えっ!?」
これまた予想外の言葉に先生を見るが、先生はニコニコといつもの感じで笑うだけだ。
「サクラのこと好きだから、俺のことだけを考えて欲しいし、俺以外の誰にも取られたくない」
「先生……」
「サクラもきっと同じ気持ちでしょ?」
「言われてみれば……そうかもしれない」
「だったら、そうなんだよ」
先生は私の両手を取り、手の甲にキスをする。
「ちょっ、先生!」
「ドキドキしてる?」
「するに決まってるじゃない!」
「嫌?」
「嫌ではないけど……恥ずかしい……」
「なら、いいじゃない。付き合おうよ、サクラ」
私は恥ずかしさのあまり「え~と」と目を泳がすが、先生は私の手を握り続ける。
「まだ?」
「まだって……」
「俺が他の人のものになってもいいの?」
「それは嫌」
「じゃあ、いいじゃない」
「…………分かった」
「ん?」
「だから、先生と付き合う!」
私は半ばヤケになりながらも、先生に宣言する。こうなったらもう引き下がれない。きっと私の顔は真っ赤だろう。そんな私を見て、先生が嬉しそうに笑う。
「うん、これからよろしくね」
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