NARUTO/カカサク 短編①
HONEY/浜崎あゆみ
「えー! またカカシ先生……これでもう何回目よ」
いま発売している“忍ウエハース”。ウエハースに忍カードがランダムで1枚ついてくるお菓子だ。忍カードには歴代から最近までの忍達が出ている。ラインナップには、ナルトやサスケくん、私やカカシ先生もいる。私はもちろんサスケくんが欲しいのに、なぜかいつも出るのはカカシ先生。どれだけ私の邪魔してくれるのよ……。ため息をついていると、後ろからいのが声をかけてくる。
「あんたまた買ったの? 懲りないわね~」
「だってどうしてもサスケくんがほしいんだもん」
「もう諦めなさいよ。あんたとは縁がなかったってことよ」
「そんな~」
「でも、こうもカカシ先生ばっかり出るとはね……。カカシ先生とは縁があったりして」
「あはは、ないない。それにしてもこの大量のカカシ先生カードどうしよう……」
「売ったら? あの先生、人気あるみたいだし」
「それも考えたんだけど、せっかく私の所にきてくれたのにって思ったらなんだか気が引けて……」
「ふーん。まぁ、あんたの好きにすれば」
そう言っていのは去っていく。私は手元にあるカカシ先生のカードを見つめる。
「こう見ると先生って……マスクしてるから分かりづらいけど、けっこうかっこいいかも。それに先生には色々と助けられたのよね」
私は先生と過ごした時間を振り返る。辛いときにはいつもそばにいてくれたし、頑張った時には褒めてくれるし、あんみつも奢ってくれたりしたな……最近はお互い忙しいからそういうことはあんまりなくなったけど。そう思うとなんだか少し寂しい感じがした。
「何だろう、この気持ち……。あっ、もうこんな時間」
私は急いでその場を片づけると、職場に戻った。
――――――――――――――
執務室で仕事をしていると、アスマが報告書を出しにやってきた。そして、報告を終えた後に机にある大量のカードを指差し、俺に問いかける。
「カカシ、それは……」
「あ~、これ。いま流行りの忍ウエハース。サンプルとして大量にもらったんだよね」
「お前、甘いもの嫌いじゃなかったか?」
「中身はチョウジに全部あげたよ。カードはいらないみたいだから俺が引き取ったんだけど……なぜか全部サクラだったんだよね」
「ランダムのはずだろ……まさか不良とか?」
「俺もそう思って確認したんだけど、他はそんなことないらしくてね。まぁ、偶然サクラばっかりだったってことだよ」
「そんなことあるのか……」
「ね~。俺もびっくりしたよ」
「そんなにあるなら他のやつにあげたらどうだ? サクラのカード、人気らしいぞ」
「えっ! そうなの?」
「あぁ。この前の人気投票でも3位だったみたいだからな」
「ふ~ん」
人気があるとは意外だ。いや、でも最近のサクラは確かに可愛くなったと見かけるたびに思う。もともと可愛い子だなとは思っていたが、なにせサスケ愛が強かったから、その強烈な印象の方が強くて……。下忍の頃からサクラを知っている俺としては、嬉しいような寂しいようなそんな感情を抱いていた。
「俺が1枚もらってやろうか? 知り合いにサクラの事が好きなやつがいてな」
「……それって、誰?」
「誰って……。ほら、お前も会ったことのある、あの金髪の上忍だよ。怪我した時にサクラに診てもらってから、ファンなんだとよ。イケメンだし、ああ見えて真面目でしっかりしているから案外サクラとお似合いかもな」
「……ダメ」
「は?」
「だから、ダメ」
「何でだ?」
「それなら自分で手に入れなきゃでしょ」
「そうだが、あげるぐらい別にいいだろう。買っても、中々出ないって嘆いていたしな」
「とにかくダメ。それに、俺の所にせっかくきてくれたからね。わざわざ他人にあげたりしないよ」
「そういうものか」
「そういうもん」
アスマは不思議そうな顔をしながらも、これ以上無駄だと悟ったのか、「分かったよ。それじゃあな」と出ていった。俺はそばにあるサクラのカードに目を向ける。
「やっぱり可愛くなったよなー」
昔は何かと構っていたが、最近は俺もサクラも忙しくてなかなかそんな機会もなく……。ようやく仕事も落ち着いてきたし、たまには会いに行ってみるかと決心した。
――――――――――――――
「……ってことがあったんだよな。カカシのやつ、サクラを誰にも渡したくないって素直に言えばいいのにな」
「サクラもそんな感じだったのよ。なんだかんだ言いつつ手離したくないのバレバレよね~」
「サクラもってことは、あの2人……」
「いや、まだそこまではお互い自覚していないんじゃない? でも、もしかしたら面白い方向に転ぶかもね」
「……お前、何かしたのか?」
「何もしてないわよ。ただ、2人にお互いのカードを持ってるわよって教えてあげただけ」
「お前な~」とため息をつくアスマ先生に「大丈夫! きっとうまくいくわ!」と根拠のない自信を投げる。
2人が付き合ったと聞いたのはそれから数か月後の事だった。大量のウエハースを抱えているサクラを見つけ、声を掛ける。
「サクラ、そのウエハースどうしたの?」
「忍ウエハースの第2弾が出たから、箱買いしちゃった! カカシ先生のカードを集めるの」
「あはは、そうなのね……」
そういえば、カカシ先生もサクラのカードを集めるためにウエハースを大量買いしてるってアスマ先生から聞いたっけ。付き合ってるのにお互いのカードを集めるなんて……。
「似た者同士ね」
「えっ? 何か言った?」
「ううん、何でも。それにしても、まさかカカシ先生とあんたが付き合うことになるなんて驚いたわ。あんなにサスケくんって言ってたのに」
「ね! 私も自分でびっくりしたわ。でも、いつだって私のそばにいて支えてくれていたのがカカシ先生で……いつのまにか先生の事が好きだったんだってようやく気づいたの。まさか先生も私の事が好きだったなんて驚いたけど……」
「でも、さっきはああ言ったけど、私はあんたとカカシ先生がくっつくんじゃないかなぁとは少し思ってたけどね」
「え!? どうして?」
「ウエハースでカカシ先生しか出てないって愚痴りながらも、そのカードをなんだかんだで大切そうにしてるんだもん」
「だって……」
「まぁ、あんたが幸せそうならそれでいいわ。でも、付き合ったきっかけは何だったの?」
「カカシ先生が久しぶりにご飯に誘ってくれたの。それで一緒にご飯を食べている最中に忍ウエハースの話題になって……。カカシ先生が私のカードを大量に持ってるっていのが前に言っていたでしょ。だから、本当かどうか聞いてみたの。そしたら、サクラも俺のカード持ってるでしょって返されて……。何で知ってたかは分からないんだけど」
カカシ先生に教えたのは私なんだけど。まぁ、それは言わなくていいか。
「お互いのカードしか出ないなんて、なんだか2人で大笑いしちゃって。それから何かいい雰囲気になって……」
「それで付き合うことになったと」
「ううん。その時はまだよ。それから頻繁に会ったり、一緒に出掛けたりするようになって、何回目かの時に先生から告白されたの」
「なるほどね~。青春してるじゃない」
「えへへ。実はこの後もカカシ先生と会う約束してるの」
「だから今日はそんなにおしゃれなのね。いつもはてきとうな感じなのに」
「失礼ね! いつもきちんとしてるわよ」
「そうは見えないけど~」
そう軽口をたたきながら、私はアスマ先生にこのことを報告しようとその場を後にすることにした。
「えー! またカカシ先生……これでもう何回目よ」
いま発売している“忍ウエハース”。ウエハースに忍カードがランダムで1枚ついてくるお菓子だ。忍カードには歴代から最近までの忍達が出ている。ラインナップには、ナルトやサスケくん、私やカカシ先生もいる。私はもちろんサスケくんが欲しいのに、なぜかいつも出るのはカカシ先生。どれだけ私の邪魔してくれるのよ……。ため息をついていると、後ろからいのが声をかけてくる。
「あんたまた買ったの? 懲りないわね~」
「だってどうしてもサスケくんがほしいんだもん」
「もう諦めなさいよ。あんたとは縁がなかったってことよ」
「そんな~」
「でも、こうもカカシ先生ばっかり出るとはね……。カカシ先生とは縁があったりして」
「あはは、ないない。それにしてもこの大量のカカシ先生カードどうしよう……」
「売ったら? あの先生、人気あるみたいだし」
「それも考えたんだけど、せっかく私の所にきてくれたのにって思ったらなんだか気が引けて……」
「ふーん。まぁ、あんたの好きにすれば」
そう言っていのは去っていく。私は手元にあるカカシ先生のカードを見つめる。
「こう見ると先生って……マスクしてるから分かりづらいけど、けっこうかっこいいかも。それに先生には色々と助けられたのよね」
私は先生と過ごした時間を振り返る。辛いときにはいつもそばにいてくれたし、頑張った時には褒めてくれるし、あんみつも奢ってくれたりしたな……最近はお互い忙しいからそういうことはあんまりなくなったけど。そう思うとなんだか少し寂しい感じがした。
「何だろう、この気持ち……。あっ、もうこんな時間」
私は急いでその場を片づけると、職場に戻った。
――――――――――――――
執務室で仕事をしていると、アスマが報告書を出しにやってきた。そして、報告を終えた後に机にある大量のカードを指差し、俺に問いかける。
「カカシ、それは……」
「あ~、これ。いま流行りの忍ウエハース。サンプルとして大量にもらったんだよね」
「お前、甘いもの嫌いじゃなかったか?」
「中身はチョウジに全部あげたよ。カードはいらないみたいだから俺が引き取ったんだけど……なぜか全部サクラだったんだよね」
「ランダムのはずだろ……まさか不良とか?」
「俺もそう思って確認したんだけど、他はそんなことないらしくてね。まぁ、偶然サクラばっかりだったってことだよ」
「そんなことあるのか……」
「ね~。俺もびっくりしたよ」
「そんなにあるなら他のやつにあげたらどうだ? サクラのカード、人気らしいぞ」
「えっ! そうなの?」
「あぁ。この前の人気投票でも3位だったみたいだからな」
「ふ~ん」
人気があるとは意外だ。いや、でも最近のサクラは確かに可愛くなったと見かけるたびに思う。もともと可愛い子だなとは思っていたが、なにせサスケ愛が強かったから、その強烈な印象の方が強くて……。下忍の頃からサクラを知っている俺としては、嬉しいような寂しいようなそんな感情を抱いていた。
「俺が1枚もらってやろうか? 知り合いにサクラの事が好きなやつがいてな」
「……それって、誰?」
「誰って……。ほら、お前も会ったことのある、あの金髪の上忍だよ。怪我した時にサクラに診てもらってから、ファンなんだとよ。イケメンだし、ああ見えて真面目でしっかりしているから案外サクラとお似合いかもな」
「……ダメ」
「は?」
「だから、ダメ」
「何でだ?」
「それなら自分で手に入れなきゃでしょ」
「そうだが、あげるぐらい別にいいだろう。買っても、中々出ないって嘆いていたしな」
「とにかくダメ。それに、俺の所にせっかくきてくれたからね。わざわざ他人にあげたりしないよ」
「そういうものか」
「そういうもん」
アスマは不思議そうな顔をしながらも、これ以上無駄だと悟ったのか、「分かったよ。それじゃあな」と出ていった。俺はそばにあるサクラのカードに目を向ける。
「やっぱり可愛くなったよなー」
昔は何かと構っていたが、最近は俺もサクラも忙しくてなかなかそんな機会もなく……。ようやく仕事も落ち着いてきたし、たまには会いに行ってみるかと決心した。
――――――――――――――
「……ってことがあったんだよな。カカシのやつ、サクラを誰にも渡したくないって素直に言えばいいのにな」
「サクラもそんな感じだったのよ。なんだかんだ言いつつ手離したくないのバレバレよね~」
「サクラもってことは、あの2人……」
「いや、まだそこまではお互い自覚していないんじゃない? でも、もしかしたら面白い方向に転ぶかもね」
「……お前、何かしたのか?」
「何もしてないわよ。ただ、2人にお互いのカードを持ってるわよって教えてあげただけ」
「お前な~」とため息をつくアスマ先生に「大丈夫! きっとうまくいくわ!」と根拠のない自信を投げる。
2人が付き合ったと聞いたのはそれから数か月後の事だった。大量のウエハースを抱えているサクラを見つけ、声を掛ける。
「サクラ、そのウエハースどうしたの?」
「忍ウエハースの第2弾が出たから、箱買いしちゃった! カカシ先生のカードを集めるの」
「あはは、そうなのね……」
そういえば、カカシ先生もサクラのカードを集めるためにウエハースを大量買いしてるってアスマ先生から聞いたっけ。付き合ってるのにお互いのカードを集めるなんて……。
「似た者同士ね」
「えっ? 何か言った?」
「ううん、何でも。それにしても、まさかカカシ先生とあんたが付き合うことになるなんて驚いたわ。あんなにサスケくんって言ってたのに」
「ね! 私も自分でびっくりしたわ。でも、いつだって私のそばにいて支えてくれていたのがカカシ先生で……いつのまにか先生の事が好きだったんだってようやく気づいたの。まさか先生も私の事が好きだったなんて驚いたけど……」
「でも、さっきはああ言ったけど、私はあんたとカカシ先生がくっつくんじゃないかなぁとは少し思ってたけどね」
「え!? どうして?」
「ウエハースでカカシ先生しか出てないって愚痴りながらも、そのカードをなんだかんだで大切そうにしてるんだもん」
「だって……」
「まぁ、あんたが幸せそうならそれでいいわ。でも、付き合ったきっかけは何だったの?」
「カカシ先生が久しぶりにご飯に誘ってくれたの。それで一緒にご飯を食べている最中に忍ウエハースの話題になって……。カカシ先生が私のカードを大量に持ってるっていのが前に言っていたでしょ。だから、本当かどうか聞いてみたの。そしたら、サクラも俺のカード持ってるでしょって返されて……。何で知ってたかは分からないんだけど」
カカシ先生に教えたのは私なんだけど。まぁ、それは言わなくていいか。
「お互いのカードしか出ないなんて、なんだか2人で大笑いしちゃって。それから何かいい雰囲気になって……」
「それで付き合うことになったと」
「ううん。その時はまだよ。それから頻繁に会ったり、一緒に出掛けたりするようになって、何回目かの時に先生から告白されたの」
「なるほどね~。青春してるじゃない」
「えへへ。実はこの後もカカシ先生と会う約束してるの」
「だから今日はそんなにおしゃれなのね。いつもはてきとうな感じなのに」
「失礼ね! いつもきちんとしてるわよ」
「そうは見えないけど~」
そう軽口をたたきながら、私はアスマ先生にこのことを報告しようとその場を後にすることにした。
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