NARUTO/カカサク 短編①
THE POLiCY/IDOLiSH7
付き合ってから初めての先生の家でのお泊まり。本当は泊まる予定はなかったのだが、急な大雨で泊まらざるをえなかった。可愛いルームウェアやスキンケア用品など、色々準備したかったのだが仕方ない。いまは先生の手料理を堪能している。
「うーん、美味しい! 先生って料理もできたのね!」
「一人暮らしが長かったから、一通りはできるよ」
「へぇ〜」
私は相槌を取りながらも気になっていた。一人暮らしの割には食器類が揃ってるのよね。茶碗とかセットものだし。まぁ、でもそれは料理をよくするからだろうと勝手に結論づけて私は晩ご飯を平らげた。そして、食べ終わり、私が食事のお礼にと皿洗いをしていると、先生が声を掛けてくる。
「お風呂入るでしょ? タオルとか用意しとくから、何か足りないものとかあったら言ってね」
「分かった。ありがとう」
食器を洗い終えると、先生の言葉通りに脱衣所へ向かった。服を脱ぎ浴室に入ると、ラベンダーのいい香りが広がる。どうやら入浴剤を入れてくれたようだ。その細やかな気遣いを嬉しく思いながら、まず髪を洗おうとシャンプーボトルに手を伸ばそうとして、ふとその手がとまる。シンプルなシャンプーボトルとピンク色のシャンプーボトルの2つが置いてあるのだ。ピンク色の方は私も知っている人気のメーカーのもので、明らかに女性用だ。たぶんだけど、シンプルなシャンプーボトルはおそらく先生のもので、ピンク色のものは私のために用意されたものだろう。ご丁寧に同シリーズのトリートメント、さらにはメイク落としや洗顔料、ボディウォッシュが揃っている。
「しかも、全部新品だわ……」
思わず声に出てしまった。いきなり泊まることになったのに準備が良すぎじゃないかしら……いや、事前に泊まるというのが分かっていたとしても、こんなに完璧に用意されてるなんて……。先生に女の影を感じ、落ち込んだ気持ちになる。先生は私より大人だし、モテるのは知ってるけど……。考え込んでしまい、「サクラ、足りないものとかある?」という扉の外からの先生の声で我に返る。「大丈夫!」と返事をし、とりあえず髪を洗わなきゃと、ピンク色のシャンプーボトルに再び手を伸ばした。一通り洗い終え、ちょうどいい湯加減のお風呂につかる。
「気持ちいい……」
だけど、私の心は先ほどのモヤモヤが晴れない。そのモヤモヤはお風呂に上がることで、さらに大きくなった。
用意された着替えは女の子ご用達のブランドの新品のルームウェア。もこもこ素材で肌馴染みもいい。てっきり先生のシャツだろうと勝手に思っていたので、驚くしかなかった。サイズもぴったりで、私のモヤモヤは増してしまった。
そんな気持ちを抱えたままリビングに戻ると、先生はソファで本を読んでいた。私の姿を見ると、「うん、可愛い。サクラに似合うと思ったんだ」と笑顔を見せる。
「俺もお風呂に入ってくるから。先に寝てていいからね」
そう言って先生は私の頭をひと撫ですると、浴室へ入っていく。私は先生の寝室に向かい、ベッドに入る。キングサイズのベッドは私が寝転んでも、十分な広さがあった。
「付き合う前に家に来たときはシングルサイズのベッドだったのに……」
いつからキングサイズになったのだろう。まぁ、先生の家を訪れたのは3年ぶりだから、変わっていてもおかしくはないのだが。あの頃はこうなるとは思っていなかったな……。思い耽っていると、先生がこちらにくる足音が聞こえてきたため、私は急いで寝たふりをする。先生がベッドに入るのが気配で分かった。
「もう寝たのか……おやすみ」
目を閉じているため分からないが、おそらくおでこにキスをされ、後ろから抱え込まれたようだ。しばらくすると、先生の寝息が聞こえてくる。いつのまにか私も背中に感じる先生のぬくもりで、深い眠りに入っていった。
―――――――――――――――――――
あの日以降、先生を避けている状態が続いてしまっていた。先生もいい歳だし、いままで色んな女性と付き合ってきたのは分かってる。いまは私だけっていうのも、言葉や行動できちんと伝えてくれるので心配はない。だけど、あまりにも女性への扱いや対応がスマートで、どうしても女の
影を感じてしまい、いつも通りに接することができないのだ。
先生にはっきりと言えばいいと思う。でも、嫉妬深い女にはなりたくない。避けてる時点で既にそういう女になっていることも分かってるけど、いまの私にはどうしたらいいのか分からなかった。
そんな思いを抱えながら、母親に頼まれた買い物を終え、自宅に戻る途中で、カカシ先生を遠くに見つけた。このままじゃいけないけど、いまはやっぱり会えない。先生に気づかれる前に身をひるがえそうとしたが、運悪く先生とバッチリ目が合ってしまった。先生がこちらに向かってこようとするので、私は急いできた道を引き返すが、あっという間に距離は縮まり、先生は私の腕を掴んだ。
「サクラ! 待てって!」
「ごめんなさい、先生。いま急いでいて……」
腕を振りほどこうとするが、先生の力が強くほどけなかった。
「俺、何かしたか?」
「そういうわけじゃないけど」
「俺の事、嫌いになった?」
「違うの! これは私の問題で……」
言葉に詰まっていると先生が私を優しく抱き締める。
「サクラが思っていること、言ってほしい」
「先生……」
「理由も分からず、避けられるのはけっこう辛いんだけど」
先生の切実な表情で、私は先生を避けていたことを反省した。
「ごめんなさい、先生。……お願いだから、嫌いにならないで」
「なるわけないでしょ」
「本当?」
「あぁ」
私はその言葉に安心し、ぽつりぽつりと話始める。
「あのね、先生の家に泊まりに行ったときにね、いきなりだったのにも関わらず、準備が良すぎたというか……」
「準備?」
「新品のシャンプーなどのヘアケアセットやルームウェアでしょ。男の人が使わないメイク落としなどが揃っているし、いい香りの入浴剤も入れてくれて。ほかにも、食器とかもペアのものが多いし、ベッドもシングルからキングサイズになっていて……女性に慣れているというか、他の女の影を感じちゃったの」
「なるほど、それで俺を避けていたのか……」
「先生がモテて、いままで色んな女の人と付き合っていたのは仕方ないって分かってる。でもいまは私を一番に大事にしてくれてるってこともちゃんと感じてる。でもどうしても気になっちゃって……」
「確かに俺は色んな女と付き合ってきたけど、家にあげたのはサクラが初めてだよ」
「そんなはず……」
「本当だよ。今までは外か向こうの家でしか会ってなかったから。俺、けっこう潔癖で他人をあまり家に入れたくなんだよ。でも、サクラはいままでの女とは違って、俺が初めて大事にしたいって思った子だから……家に入れるのももちろん平気だし、サクラがいつ来てもいいように、付き合った時に必要なものを紅に聞いて予め準備しといたんだよ」
「うそ……」
「うそだと思うなら紅に確認してもらってもいいよ」
「……」
「これで分かってくれた?」
「うん……」
「納得してるようには見えないけど」
「驚いてちゃって……」
放心している私に、「俺も。まさか気遣いすぎて、疑われるとは……」と先生は苦笑いをする。
「……じゃあ、本当に全部私のために用意したものなのね」
「うん。サクラに居心地よく過ごしてほしかったからね。でも今度からは一緒に買いに行こう。サクラの好みも知りたいし」
「うん! 私も先生の好きなもの知りたい!」
「泊りにもきてくれる?」
「もちろん!」
「それじゃあ、さっそく今日泊りに来てよ」
「えっ!?」
先生は私をお姫様抱っこすると、自宅に向かって歩き出す。
「ちょっと! 私、お母さんに頼まれた買い物の途中なんだけど」
「あとで俺が届けるから大丈夫」
笑顔で言う先生にため息をつく。これはもう離す気ないな。私は抵抗を早々に諦め、先生に身を委ねることにした。
付き合ってから初めての先生の家でのお泊まり。本当は泊まる予定はなかったのだが、急な大雨で泊まらざるをえなかった。可愛いルームウェアやスキンケア用品など、色々準備したかったのだが仕方ない。いまは先生の手料理を堪能している。
「うーん、美味しい! 先生って料理もできたのね!」
「一人暮らしが長かったから、一通りはできるよ」
「へぇ〜」
私は相槌を取りながらも気になっていた。一人暮らしの割には食器類が揃ってるのよね。茶碗とかセットものだし。まぁ、でもそれは料理をよくするからだろうと勝手に結論づけて私は晩ご飯を平らげた。そして、食べ終わり、私が食事のお礼にと皿洗いをしていると、先生が声を掛けてくる。
「お風呂入るでしょ? タオルとか用意しとくから、何か足りないものとかあったら言ってね」
「分かった。ありがとう」
食器を洗い終えると、先生の言葉通りに脱衣所へ向かった。服を脱ぎ浴室に入ると、ラベンダーのいい香りが広がる。どうやら入浴剤を入れてくれたようだ。その細やかな気遣いを嬉しく思いながら、まず髪を洗おうとシャンプーボトルに手を伸ばそうとして、ふとその手がとまる。シンプルなシャンプーボトルとピンク色のシャンプーボトルの2つが置いてあるのだ。ピンク色の方は私も知っている人気のメーカーのもので、明らかに女性用だ。たぶんだけど、シンプルなシャンプーボトルはおそらく先生のもので、ピンク色のものは私のために用意されたものだろう。ご丁寧に同シリーズのトリートメント、さらにはメイク落としや洗顔料、ボディウォッシュが揃っている。
「しかも、全部新品だわ……」
思わず声に出てしまった。いきなり泊まることになったのに準備が良すぎじゃないかしら……いや、事前に泊まるというのが分かっていたとしても、こんなに完璧に用意されてるなんて……。先生に女の影を感じ、落ち込んだ気持ちになる。先生は私より大人だし、モテるのは知ってるけど……。考え込んでしまい、「サクラ、足りないものとかある?」という扉の外からの先生の声で我に返る。「大丈夫!」と返事をし、とりあえず髪を洗わなきゃと、ピンク色のシャンプーボトルに再び手を伸ばした。一通り洗い終え、ちょうどいい湯加減のお風呂につかる。
「気持ちいい……」
だけど、私の心は先ほどのモヤモヤが晴れない。そのモヤモヤはお風呂に上がることで、さらに大きくなった。
用意された着替えは女の子ご用達のブランドの新品のルームウェア。もこもこ素材で肌馴染みもいい。てっきり先生のシャツだろうと勝手に思っていたので、驚くしかなかった。サイズもぴったりで、私のモヤモヤは増してしまった。
そんな気持ちを抱えたままリビングに戻ると、先生はソファで本を読んでいた。私の姿を見ると、「うん、可愛い。サクラに似合うと思ったんだ」と笑顔を見せる。
「俺もお風呂に入ってくるから。先に寝てていいからね」
そう言って先生は私の頭をひと撫ですると、浴室へ入っていく。私は先生の寝室に向かい、ベッドに入る。キングサイズのベッドは私が寝転んでも、十分な広さがあった。
「付き合う前に家に来たときはシングルサイズのベッドだったのに……」
いつからキングサイズになったのだろう。まぁ、先生の家を訪れたのは3年ぶりだから、変わっていてもおかしくはないのだが。あの頃はこうなるとは思っていなかったな……。思い耽っていると、先生がこちらにくる足音が聞こえてきたため、私は急いで寝たふりをする。先生がベッドに入るのが気配で分かった。
「もう寝たのか……おやすみ」
目を閉じているため分からないが、おそらくおでこにキスをされ、後ろから抱え込まれたようだ。しばらくすると、先生の寝息が聞こえてくる。いつのまにか私も背中に感じる先生のぬくもりで、深い眠りに入っていった。
―――――――――――――――――――
あの日以降、先生を避けている状態が続いてしまっていた。先生もいい歳だし、いままで色んな女性と付き合ってきたのは分かってる。いまは私だけっていうのも、言葉や行動できちんと伝えてくれるので心配はない。だけど、あまりにも女性への扱いや対応がスマートで、どうしても女の
影を感じてしまい、いつも通りに接することができないのだ。
先生にはっきりと言えばいいと思う。でも、嫉妬深い女にはなりたくない。避けてる時点で既にそういう女になっていることも分かってるけど、いまの私にはどうしたらいいのか分からなかった。
そんな思いを抱えながら、母親に頼まれた買い物を終え、自宅に戻る途中で、カカシ先生を遠くに見つけた。このままじゃいけないけど、いまはやっぱり会えない。先生に気づかれる前に身をひるがえそうとしたが、運悪く先生とバッチリ目が合ってしまった。先生がこちらに向かってこようとするので、私は急いできた道を引き返すが、あっという間に距離は縮まり、先生は私の腕を掴んだ。
「サクラ! 待てって!」
「ごめんなさい、先生。いま急いでいて……」
腕を振りほどこうとするが、先生の力が強くほどけなかった。
「俺、何かしたか?」
「そういうわけじゃないけど」
「俺の事、嫌いになった?」
「違うの! これは私の問題で……」
言葉に詰まっていると先生が私を優しく抱き締める。
「サクラが思っていること、言ってほしい」
「先生……」
「理由も分からず、避けられるのはけっこう辛いんだけど」
先生の切実な表情で、私は先生を避けていたことを反省した。
「ごめんなさい、先生。……お願いだから、嫌いにならないで」
「なるわけないでしょ」
「本当?」
「あぁ」
私はその言葉に安心し、ぽつりぽつりと話始める。
「あのね、先生の家に泊まりに行ったときにね、いきなりだったのにも関わらず、準備が良すぎたというか……」
「準備?」
「新品のシャンプーなどのヘアケアセットやルームウェアでしょ。男の人が使わないメイク落としなどが揃っているし、いい香りの入浴剤も入れてくれて。ほかにも、食器とかもペアのものが多いし、ベッドもシングルからキングサイズになっていて……女性に慣れているというか、他の女の影を感じちゃったの」
「なるほど、それで俺を避けていたのか……」
「先生がモテて、いままで色んな女の人と付き合っていたのは仕方ないって分かってる。でもいまは私を一番に大事にしてくれてるってこともちゃんと感じてる。でもどうしても気になっちゃって……」
「確かに俺は色んな女と付き合ってきたけど、家にあげたのはサクラが初めてだよ」
「そんなはず……」
「本当だよ。今までは外か向こうの家でしか会ってなかったから。俺、けっこう潔癖で他人をあまり家に入れたくなんだよ。でも、サクラはいままでの女とは違って、俺が初めて大事にしたいって思った子だから……家に入れるのももちろん平気だし、サクラがいつ来てもいいように、付き合った時に必要なものを紅に聞いて予め準備しといたんだよ」
「うそ……」
「うそだと思うなら紅に確認してもらってもいいよ」
「……」
「これで分かってくれた?」
「うん……」
「納得してるようには見えないけど」
「驚いてちゃって……」
放心している私に、「俺も。まさか気遣いすぎて、疑われるとは……」と先生は苦笑いをする。
「……じゃあ、本当に全部私のために用意したものなのね」
「うん。サクラに居心地よく過ごしてほしかったからね。でも今度からは一緒に買いに行こう。サクラの好みも知りたいし」
「うん! 私も先生の好きなもの知りたい!」
「泊りにもきてくれる?」
「もちろん!」
「それじゃあ、さっそく今日泊りに来てよ」
「えっ!?」
先生は私をお姫様抱っこすると、自宅に向かって歩き出す。
「ちょっと! 私、お母さんに頼まれた買い物の途中なんだけど」
「あとで俺が届けるから大丈夫」
笑顔で言う先生にため息をつく。これはもう離す気ないな。私は抵抗を早々に諦め、先生に身を委ねることにした。
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