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NARUTO/カカサク 短編①

regret/星村麻衣

サスケくんが結婚した。私ではない相手と。

今日はその結婚式だった。式も無事に終わり、私は真っすぐに家に帰る気持ちになれず、里を見渡せる高台にきていた。高台から見える景色は私の心とは裏腹に晴れ渡っていた。

「あ~あ、これで本当に終わっちゃった」

一人で来ているのでもちろん返事はない。

「サスケくん、かっこよかったな~」

それでも言葉を出さずにいられないのは、口を閉じていると涙が溢れそうだったから。

「でも、引き出物が新郎新婦の写真がプリントされたグッズっていうのは本当あり得ないわよ。あんなものいらないっつーの」

引き出物を見た時の私といのの反応を2人に見せたかったわ。ドン引きした顔だったもの。

「どっちの意見だったのかしら。もし女の方だったら、サスケくん、見る目なさすぎ」
「本当そうだよね~」
「そうよ。私の方が……って? え?」

返ってくるはずのないひとり言に返事がきたため、私は後ろを振り向く。そこには同じく結婚式帰りのカカシ先生がいた。

「カカシ先生。どうして……」
「サクラの様子が気になってね。後をつけてきちゃった」

悪びれる様子もなくカカシ先生は言う。

「いつから?」
「“あ~あ”のところからかな」
「つまり最初からね……」

私はため息をつく。

「お疲れ様。サクラ」
「お疲れ様。先生」

先生は私の隣にやってくるが、挨拶を交わした以降、しゃべる気配はない。私も口を開かなかった。だけど、なぜか心地良い時間が流れる。この空気感、安心する……。2人して景色を見ていると、唐突にカカシ先生が話し出す。

「サスケはサクラと結婚すると思ってたよ」
「……」
「お前とサスケが付き合い始めたと聞いたときは安心した。お前の気持ちを俺はよく知っていたからね。だから、別れたと聞いたときは驚いたな」
「……」
「でも、どうせすぐによりを戻すだろうと思っていた。だけど、サスケは別のやつと結婚した」
「……」
「どうしてお前はサスケと別れたんだ? あんなに好きだっただろ?」

カカシ先生が私の方へ向き、問いかける。

「……」
「サクラ」

答えないでいると、少し強い口調で私を呼ぶ。私は観念し、先生の方へ向く。

「……えぇ、好きだった。カカシ先生の言う通りよ。何なら今でも大好き。でも、私はサスケくんの心が離れていくのに気付けなかった。自分の事しか見えていなかったのよ。サスケくんに別れを告げられた時、無理にでも引き止めれば良かった。なのに、私は強がってしまった。あの時、意地を張っていなければ、もしかしたら今も隣にいられたかもしれないのに……」
「サクラ……」
「先生、私ね、ひどい女なの。サスケくんに幸せになってほしくないの。私を選ばなかったことを後悔してほしいと思ってるの。最低でしょ?」
「それだけサスケのこと好きだったっていうことだろ」
「でも……」
「それを言うなら俺の方が最低だよ。こんなに弱っているサクラにつけこもうとするんだから」
「……えっ?」

信じられないという顔をしていると、先生は私を優しく抱き締める。私はあまりの展開に頭がついていかなかった。うそでしょ。だって、いままでそんな素振り見せたこと……。

「俺はお前のことがずっと前から好きだったよ。だけど、お前はサスケしか見えていなかったからね。俺もこの気持ちを明かすつもりはなかった。だけど、お前はサスケと別れ、こんなところに一人でいる。ほっとけるわけないだろ」
「先生……」
「サスケを忘れなくてもいい。その全てを受け止めるから。俺と付き合おう、サクラ」

腕の強さと口調、雰囲気から先生が本気だということが伝わってくる。驚いたけど、嫌な感じはしない。むしろ嬉しさがだんだんとこみ上げてくる。思わず頷きそうになってしまう。でも、私は……。

「……ダメよ、さっきも言ったでしょ。私は大事な仲間の幸せを祝えない、最低な女なの。こんな私、好かれる筋合いがない。それに先生は火影でしょ。私は何のとりえもないただの医療忍者。先生に相応しくないわ」

そう言い先生の腕から逃れようとするが、先生の力が強くて離れることができなかった。

「それを決めるのは俺だよ。俺は“春野サクラ”がいいんだ。それに仲間の幸せを祝えないサクラと、弱ってるときにつけこもうとする卑怯な俺。ある意味ぴったりだと思わない?」

腕の力をそのままに、先生が優しく微笑んで言う。“うん”というまで離す気はなさそうだ。

「……後悔しても知らないからね」
「しないよ」
「仕方ないから、付き合ってあげる」
「ありがとう」

そう言って先生は嬉しそうに笑った。私もそれにつられて笑う。そして、私たちは手を繋いで歩き出した。

「私ってやっぱり最低な女かも」
「どうして?」
「だって、あんなにサスケくんのことを想っていたはずなのに、いまはカカシ先生のことで頭がいっぱいなんだもの」
「それは良いことだと思うけど。これからはずっと俺の事しか考えられないようにしてあげる」
「すごい自信ね」
「まぁね。期待しててよ」

そう言ってカカシ先生は怪しく微笑んだ。
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