NARUTO/カカサク 短編①
深愛/水樹奈々
先生に別れを告げた翌日。綱手様から砂隠れでの長期任務があることを聞かされた。期間は約3年。本当は誰でも良かったのだが、カカシ先生を忘れたかった私はそれに立候補した。
そして、木ノ葉隠れを出て一年。砂隠れでの生活もだいぶ慣れてきた。とにかくこの一年は任務にがむしゃらに取り組んできた。カカシ先生のことを考えないように。
でもふとした瞬間に思い出すのは先生のことばかり。会わなければ忘れていくと思っていたのに、会わないほど気持ちが募っていく。何のために砂隠れまできたんだろう。
先生は既にきっと私よりいい人を見つけてるはず。もしくは色んな女の人と遊んでいるか。後者の方が可能性が高いかも。……不公平だよ、私はこんなにもまだ先生の事が好きなのに。
でも別れを選んだのは私自身。きっとあのままだったら同じ事の繰り返し。それだけは嫌だった。だからこれで良かったんだ……私は自分にそう言い聞かせ、砂隠れでの日々を過ごしていた。
今日も任務を終え、借りている部屋に戻ってくる。
「ふぅ~、疲れたな。もうこんな時間か」
時刻は深夜。部屋で寛いでいるとドアをノックする音が聞こえた。
「誰だろう?」
ドアをあけると我愛羅くんがいた。
「こんな時間にすまない。少し一緒に来てほしいとこがあるんだが、いいか?」
「えぇ、いいけど」
突然の訪問者に驚きながらも、私は簡単な準備を済ませ、部屋を出る。そして、我愛羅くんと並んで歩く。夜の砂隠れは人が出歩いておらず、静かだ。
「ここでの生活はどうだ?」
「だいぶ慣れたわ。この里の人達はみんな優しいし、それに我愛羅くんも私が生活しやすいように色々と手をまわしてくれたでしょ?」
「俺は大したことはしていない」
「謙遜しないで、そのおかげで私は伸び伸びと任務に集中することができたの。ありがとう」
「礼を言うのはこっちだ。俺達もお前のおかげで随分と助かってる」
「うふふ、なら良かった」
そんな他愛もない話をしていると、白いものが目の前を通り過ぎていった。
「これって……」
「雪だな。道理で寒いわけだ」
私達は立ち止まり、空を見上げる。雪がしんしんと空から降ってくる。
「砂隠れにも雪が降るのね」
「たまにだがな」
「そうなんだ。今年初雪だわ」
去年の初雪はカカシ先生と見たっけ。任務の帰り道に急に降ってきて、寒いからと手を繋いだのが懐かしい。あの頃はまさかこんなことになるとは思ってもいなかったな……。
しばらく雪を見て、私たちは再び歩き出す。
「木ノ葉は恋しくないのか?」
「うーん、寂しい時もあるけど、帰ろうと思えば帰れるし。それに、もう2度と会えないわけじゃないでしょ」
「なるほどな。……会いたい人とかはいないのか?」
「会いたい人……」
私はカカシ先生を思い浮かべるが、会ったところで意味はないと、首を横に振ってそれを掻き消す。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
「それにしてもどうしてそんな質問を?」
「……どうしてだろうな」
「うふふ、変な我愛羅くん」
会話しながら我愛羅くんについていくと、砂隠れが一望できる場所にたどり着いた。
「うわ~。ここからの眺め、すごく綺麗だわ」
「そうだろ。俺のお気に入りの場所だ」
「確かにこの場所は里を見渡すことができる特等席ね。そんな場所をどうして私に?」
「砂隠れのことをもっと知ってほしいと思ってな」
「なるほど。ありがとうね」
私は我愛羅くんに微笑むと、少し照れくさそうに我愛羅くんは「礼を言われるほどではない」と顔を背けた。私は再び景色に目を戻す。
「本当に綺麗ね……雪も降っているから、より幻想的だわ」
私がしばらく見惚れていると、同じく景色を見ていた我愛羅くんが私に話しかける。
「なぁ」
「うん?」
「ここにずっといてくれないか?」
「えっ……?」
「砂隠れ……いや、俺にはお前が必要なんだ」
真剣な眼で私を見つめる我愛羅くんに私は何て返したらいいか、分からなかった。
「えっと、それって任務の期間を延ばしてほしいってこと……?」
「いや、俺と結婚して砂隠れにいてほしいという意味だが……」
「えーーーーー!!!」
私は思わず叫んでしまい、我愛羅くんに深夜だからと注意される。
「ごめんなさい。でも、驚いちゃって……」
「俺の方こそいきなりですまない」
「えっと、一回整理していい? 我愛羅くんは私にお嫁さんになってほしいってこと?」
「そういうことだ」
「ということは、我愛羅くんが私のこと好きっていう認識で合ってる?」
自分で言っておいてなんだが、これで違っていたら恥ずかしい。
「好きじゃなきゃ、求婚なんてするわけないだろう」
「ですよねー」
驚きのあまり、思わず棒読みになってしまう。我愛羅くんが私に好意を抱いているなんて思ってもいなかった。
「……お前に忘れられない人がいるのは分かってる。そいつを忘れなくてもいい」
「忘れられない人って……?」
私はドキッとした。
「お前は時々遠くを切なそうに見つめている。それは会いたい人がいるからじゃないのか。自分で気づいていなかったのか?」
そりゃあ、カカシ先生のことを思い出すときはあった。でも、まさか感づかれていたとは……。
「もちろん、今すぐに返事をくれとは言わない。これは里同士の問題にもなるからな。まずはお前の気持ちが聞きたかっただけだ」
「我愛羅くん……分かった。少し考えさせて」
「あぁ。それよりもう戻るか。長居すると風邪を引いてしまうからな」
我愛羅くんは部屋まで送ってくれた。
「ありがとね、我愛羅くん」
「これぐらいどうってことない」
「それにちゃんと考えるから」
「あぁ、よろしく頼む」
私は我愛羅くんを見送ると、ベッドにダイブする。
我愛羅くん、私の事好きだったんだ。
私は顔が赤くなる。あんな真剣に告白されたのは初めてなのだ。サスケくんは結局片思いだったし、先生には私から告白したし……。
目を瞑って、我愛羅くんとの未来を思い描く。そして、我愛羅くんの隣にいる自分が容易に想像でき驚いた。風影の妻になるということはすごく大変なのは想像がつく。しかし、この春野サクラ。どんな困難だって乗り越えてきた自信があるため、今回も頑張れるはず。我愛羅くんはもちろん、砂隠れの人たちも優しいし、生活にもだいぶ慣れてきた。木ノ葉には帰ろうと思えば帰れるし、先生みたいに我愛羅くんは浮気はしないだろう。我愛羅くんの告白を受けてもいいんじゃないかと思い始めた。
でも、果たしてそれでいいのか? 私はカカシ先生が今でも好き。砂隠れにきて改めて感じたが、この気持ちはずっと消えることはないだろう。我愛羅くんはそれでもいいと言ってくれている。
私は一体どうしたら……。そう考えているうちに私はいつのまにか眠りに入っていった。
それからの日々、我愛羅くんは何事もなかったかのように接してきた。私の気持ちに答えが出るまで待ってくれてるのだろう。その優しさが嬉しかったが、いつまでもこのままではいけないのは分かってる。でも、まだ答えを出せないでいた。
ある雪の日。任務が早く終わり、家への道を歩いてると、公園で子供たちが雪で遊んでいるのが目に入ったため、私はなんとなくベンチに座りその光景を眺めることにした。
雪だるまや雪ウサギを作ったり、雪合戦をするなど、子供たちは思い思いに楽しんでいた。4・5歳ぐらいの女の子だろうか、手袋をしていなかったため、手が真っ赤になっていた。私は自分の手袋を貸そうと席を立ち上がろうとすると、近くで遊んでいた男の子がやってきて、その子に自分の手袋を渡していた。おそらく友達同士で、女の子は遠慮しつつも最終的にはそれを受け取っていた。男の子は戻っていたが、女の子はその子の後ろ姿を顔を赤くしてずっと見つめていた。おそらく寒さではなく、照れからの赤さだろう。
そういえば、全く同じことをカカシ先生にもされたことあるな。私は目を瞑り、遠い記憶を振り返る。楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、苦しかったこと……どの思い出にもカカシ先生はいる。
最初は一緒にいるだけで幸せだったのに、いつのまにか色々なことを求めるようになってしまった。カカシ先生は変わらなかったのに、変わってしまったのは私のほう。
先生は昔から女遊びがひどかった。それを分かっていたはずなのに、先生が私の告白を受け、優しくしてくれるから、私はいつのまにか“私だけにしてほしい”と思うようになってしまった。だから、浮気にも我慢できなかった。
私はそっと目を開ける。ついに答えを決めたのだ。こうしちゃいられないと、私はある場所に向かって歩き出した。
先生に別れを告げた翌日。綱手様から砂隠れでの長期任務があることを聞かされた。期間は約3年。本当は誰でも良かったのだが、カカシ先生を忘れたかった私はそれに立候補した。
そして、木ノ葉隠れを出て一年。砂隠れでの生活もだいぶ慣れてきた。とにかくこの一年は任務にがむしゃらに取り組んできた。カカシ先生のことを考えないように。
でもふとした瞬間に思い出すのは先生のことばかり。会わなければ忘れていくと思っていたのに、会わないほど気持ちが募っていく。何のために砂隠れまできたんだろう。
先生は既にきっと私よりいい人を見つけてるはず。もしくは色んな女の人と遊んでいるか。後者の方が可能性が高いかも。……不公平だよ、私はこんなにもまだ先生の事が好きなのに。
でも別れを選んだのは私自身。きっとあのままだったら同じ事の繰り返し。それだけは嫌だった。だからこれで良かったんだ……私は自分にそう言い聞かせ、砂隠れでの日々を過ごしていた。
今日も任務を終え、借りている部屋に戻ってくる。
「ふぅ~、疲れたな。もうこんな時間か」
時刻は深夜。部屋で寛いでいるとドアをノックする音が聞こえた。
「誰だろう?」
ドアをあけると我愛羅くんがいた。
「こんな時間にすまない。少し一緒に来てほしいとこがあるんだが、いいか?」
「えぇ、いいけど」
突然の訪問者に驚きながらも、私は簡単な準備を済ませ、部屋を出る。そして、我愛羅くんと並んで歩く。夜の砂隠れは人が出歩いておらず、静かだ。
「ここでの生活はどうだ?」
「だいぶ慣れたわ。この里の人達はみんな優しいし、それに我愛羅くんも私が生活しやすいように色々と手をまわしてくれたでしょ?」
「俺は大したことはしていない」
「謙遜しないで、そのおかげで私は伸び伸びと任務に集中することができたの。ありがとう」
「礼を言うのはこっちだ。俺達もお前のおかげで随分と助かってる」
「うふふ、なら良かった」
そんな他愛もない話をしていると、白いものが目の前を通り過ぎていった。
「これって……」
「雪だな。道理で寒いわけだ」
私達は立ち止まり、空を見上げる。雪がしんしんと空から降ってくる。
「砂隠れにも雪が降るのね」
「たまにだがな」
「そうなんだ。今年初雪だわ」
去年の初雪はカカシ先生と見たっけ。任務の帰り道に急に降ってきて、寒いからと手を繋いだのが懐かしい。あの頃はまさかこんなことになるとは思ってもいなかったな……。
しばらく雪を見て、私たちは再び歩き出す。
「木ノ葉は恋しくないのか?」
「うーん、寂しい時もあるけど、帰ろうと思えば帰れるし。それに、もう2度と会えないわけじゃないでしょ」
「なるほどな。……会いたい人とかはいないのか?」
「会いたい人……」
私はカカシ先生を思い浮かべるが、会ったところで意味はないと、首を横に振ってそれを掻き消す。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
「それにしてもどうしてそんな質問を?」
「……どうしてだろうな」
「うふふ、変な我愛羅くん」
会話しながら我愛羅くんについていくと、砂隠れが一望できる場所にたどり着いた。
「うわ~。ここからの眺め、すごく綺麗だわ」
「そうだろ。俺のお気に入りの場所だ」
「確かにこの場所は里を見渡すことができる特等席ね。そんな場所をどうして私に?」
「砂隠れのことをもっと知ってほしいと思ってな」
「なるほど。ありがとうね」
私は我愛羅くんに微笑むと、少し照れくさそうに我愛羅くんは「礼を言われるほどではない」と顔を背けた。私は再び景色に目を戻す。
「本当に綺麗ね……雪も降っているから、より幻想的だわ」
私がしばらく見惚れていると、同じく景色を見ていた我愛羅くんが私に話しかける。
「なぁ」
「うん?」
「ここにずっといてくれないか?」
「えっ……?」
「砂隠れ……いや、俺にはお前が必要なんだ」
真剣な眼で私を見つめる我愛羅くんに私は何て返したらいいか、分からなかった。
「えっと、それって任務の期間を延ばしてほしいってこと……?」
「いや、俺と結婚して砂隠れにいてほしいという意味だが……」
「えーーーーー!!!」
私は思わず叫んでしまい、我愛羅くんに深夜だからと注意される。
「ごめんなさい。でも、驚いちゃって……」
「俺の方こそいきなりですまない」
「えっと、一回整理していい? 我愛羅くんは私にお嫁さんになってほしいってこと?」
「そういうことだ」
「ということは、我愛羅くんが私のこと好きっていう認識で合ってる?」
自分で言っておいてなんだが、これで違っていたら恥ずかしい。
「好きじゃなきゃ、求婚なんてするわけないだろう」
「ですよねー」
驚きのあまり、思わず棒読みになってしまう。我愛羅くんが私に好意を抱いているなんて思ってもいなかった。
「……お前に忘れられない人がいるのは分かってる。そいつを忘れなくてもいい」
「忘れられない人って……?」
私はドキッとした。
「お前は時々遠くを切なそうに見つめている。それは会いたい人がいるからじゃないのか。自分で気づいていなかったのか?」
そりゃあ、カカシ先生のことを思い出すときはあった。でも、まさか感づかれていたとは……。
「もちろん、今すぐに返事をくれとは言わない。これは里同士の問題にもなるからな。まずはお前の気持ちが聞きたかっただけだ」
「我愛羅くん……分かった。少し考えさせて」
「あぁ。それよりもう戻るか。長居すると風邪を引いてしまうからな」
我愛羅くんは部屋まで送ってくれた。
「ありがとね、我愛羅くん」
「これぐらいどうってことない」
「それにちゃんと考えるから」
「あぁ、よろしく頼む」
私は我愛羅くんを見送ると、ベッドにダイブする。
我愛羅くん、私の事好きだったんだ。
私は顔が赤くなる。あんな真剣に告白されたのは初めてなのだ。サスケくんは結局片思いだったし、先生には私から告白したし……。
目を瞑って、我愛羅くんとの未来を思い描く。そして、我愛羅くんの隣にいる自分が容易に想像でき驚いた。風影の妻になるということはすごく大変なのは想像がつく。しかし、この春野サクラ。どんな困難だって乗り越えてきた自信があるため、今回も頑張れるはず。我愛羅くんはもちろん、砂隠れの人たちも優しいし、生活にもだいぶ慣れてきた。木ノ葉には帰ろうと思えば帰れるし、先生みたいに我愛羅くんは浮気はしないだろう。我愛羅くんの告白を受けてもいいんじゃないかと思い始めた。
でも、果たしてそれでいいのか? 私はカカシ先生が今でも好き。砂隠れにきて改めて感じたが、この気持ちはずっと消えることはないだろう。我愛羅くんはそれでもいいと言ってくれている。
私は一体どうしたら……。そう考えているうちに私はいつのまにか眠りに入っていった。
それからの日々、我愛羅くんは何事もなかったかのように接してきた。私の気持ちに答えが出るまで待ってくれてるのだろう。その優しさが嬉しかったが、いつまでもこのままではいけないのは分かってる。でも、まだ答えを出せないでいた。
ある雪の日。任務が早く終わり、家への道を歩いてると、公園で子供たちが雪で遊んでいるのが目に入ったため、私はなんとなくベンチに座りその光景を眺めることにした。
雪だるまや雪ウサギを作ったり、雪合戦をするなど、子供たちは思い思いに楽しんでいた。4・5歳ぐらいの女の子だろうか、手袋をしていなかったため、手が真っ赤になっていた。私は自分の手袋を貸そうと席を立ち上がろうとすると、近くで遊んでいた男の子がやってきて、その子に自分の手袋を渡していた。おそらく友達同士で、女の子は遠慮しつつも最終的にはそれを受け取っていた。男の子は戻っていたが、女の子はその子の後ろ姿を顔を赤くしてずっと見つめていた。おそらく寒さではなく、照れからの赤さだろう。
そういえば、全く同じことをカカシ先生にもされたことあるな。私は目を瞑り、遠い記憶を振り返る。楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、苦しかったこと……どの思い出にもカカシ先生はいる。
最初は一緒にいるだけで幸せだったのに、いつのまにか色々なことを求めるようになってしまった。カカシ先生は変わらなかったのに、変わってしまったのは私のほう。
先生は昔から女遊びがひどかった。それを分かっていたはずなのに、先生が私の告白を受け、優しくしてくれるから、私はいつのまにか“私だけにしてほしい”と思うようになってしまった。だから、浮気にも我慢できなかった。
私はそっと目を開ける。ついに答えを決めたのだ。こうしちゃいられないと、私はある場所に向かって歩き出した。
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