NARUTO/カカサク 短編①
シンデレラガール/King & Prince
仕事に追われる日々で、職場と家の往復。私は代わり映えもない、刺激のない毎日を日々過ごしていた。
ある日、報告書を出すために六代目火影の元へ訪れる。私の上司だったカカシ先生は、いまではすっかり雲の上の人物だ。必要事項を話し、「それじゃあ火影様、お願いしますね」と言って去ろうとした瞬間、「サクラ」と呼び止められた。
「どうしました?」
「もうすぐ誕生日でしょ。誕生日プレゼントは何がいい?」
そういえばそうだ。仕事が忙しく、すっかり忘れてた。
「別に気を遣わなくていいですよ。火影様はお忙しいでしょ。欲しいものも特にないし」
「その火影様ってやめてよ~。本当に何かないの?」
私は考える。ふと昔思い描いていた夢を口に出してみる。
「……お姫様みたいに過ごしたいな」
「お姫様?」
「そう、よくお伽話とかであるじゃない。普通の女の子がひょんなことから、綺麗なドレスを着ることになって、王子様にエスコートされるの。昔は憧れてたなー。いまはさすがに現実見てるけど。まぁ、冗談だから気にしないで」
私はそう言うと職場に戻る。そして、仕事の忙しさから、この時の会話はすっかり忘れていた。
誕生日当日。職場のみんなに“気にしないでいい”と言ったのに、なぜか休みにされてしまった。せっかくだからと誰かと過ごしたかったが、いのやヒナタは任務や用事やらで予定が合わなかった。なので、私は1日のんびりと部屋で過ごすことにした。紅茶を飲みながら、ソファで本を読んでいると、突然チャイムが鳴る。
「はーい」
“誰だろう?”と思いながらドアを開けると、目の前にはカカシ先生がいた。いつもの服装ではない。白いタキシードを着ていて、花束を持っている。まるで本に出てくる王子様みたいだ。
「サクラ、お誕生日おめでとう」
そう言って花束を差し出してくるので、思わず受け取る。そして、私は怪訝な顔で尋ねる。
「……ありがとう……。それより、その恰好なに? コスプレ?」
「そんな顔しないでよ。サクラの夢を叶えるために着飾ったのに」
「は?」
「言ったでしょ。お姫様みたいに過ごしたいって」
「……あっ!」
私はあの時の会話を思い出す。確かに言ったわ。でも、まさか実行されるとは思っていなかった。
「とりあえず行くよ。まずは格好からだね」
「えっ、ちょっと」
私は先生に連れられるままに一軒のお店に入る。先生は店員さんを呼ぶと“この子、お願いね”と私を店員さんに引き渡す。店員さんに連れてこられた部屋にはたくさんの綺麗なドレスが並んでいる。
「この中から好きなのを選んでくださいね」
「えっと……」
戸惑っていると、店員さんが気を遣っていくつかドレスを選んでくれた。私は試着をしながら、一番気に入ったものを選ぶ。
「すごくお似合いですよ! 次はヘアメイクですね」
そして、ドレッサーの前に座らされると、ヘアメイクを施される。とにかくされるがままの状態。しばらくして「できましたよ」と声を掛けられ、顔を上げると、鏡にはいつもと違う自分がうつる。「これが私……」としばらく放心していると、「さぁ、お連れ様がお待ちですよ」とニコニコと笑う店員さんに促され、私はドキドキしながら先生のもとへ向かう。
私の姿を見た先生は目を見開いていて固まっている。
「……やっぱり似合わないかな?」と私が不安そうに問いかけると、先生はハッとして「いや、その逆だよ。すごく似合ってるよサクラ」と微笑む。
「……本当に?」
「ほんとほんと」
「何か先生の本当って軽いのよね~」
「ひどいな~」
私は頬が赤いのを隠すために軽口をたたくと、先生もそれにのってくる。店員さんはその光景を微笑ましく見ていた。
「それじゃあ準備もできたし、行きますか」
先生は私の手を引いて歩き出す。先生と手を繋ぐのって久しぶりかも……。そう思いながら歩いていると、ある一軒のお店の前でとまる。本でしか見たことのないような外観のお店で、例えるなら西洋のお城みたいな感じだ。
「ここって……」
「レストランだよ。店主が西洋文化が好きで、それをイメージして建てたんだって。内装もすごいんだよ」
そう言って先生は私の手をひいたまま、お店に入る。お店の中は先生の言った通り、天井にはシャンデリアがあり、中央には大階段、壁には絵画が飾られている。
「木ノ葉にこんな場所があるなんて……」
私が見惚れていると、品の良さそうなおじさまが声を掛けてきた。どうやら店主のようだ。
「いらっしゃい、カカシさん。その子が例の子かい?」
「そうそう。今日はよろしくお願いします」
「任せてくれ。お嬢さん、楽しんでいってくださいね」
案内された部屋には、大きな食卓の上に色んな料理が並べられている。そして、私達のほかにも何人かお客さんがいるようだ。
「ここはビュッフェ形式なんだ」
そう言って、先生は皿に料理を分けていく。私もそれに倣い、気になる料理を盛り付けていく。取り終えると、さっそく料理を口に運ぶ。
「う〜ん、美味しい! こんなの食べたことないわ」
「料理も西洋のものばかりらしいからね」
「これとかは何かしら?」
「エビのアヒージョだって」
「へぇ~」
食べたことのない料理ばかりだったが、どれも絶品だった。デザートも食べ終えると、タイミングよくオーケストラの生演奏がはじまる。
「本当に本の中の世界みたい」
「そうだね。せっかくだから、一曲どう?」
「えっ?」
「一緒に踊らない?」
周りのお客さんも何組か踊り出している。
「私、無理よ。ダンスなんてしたことないし」
「俺がリードするから大丈夫」
「でも……」
「いいから」
先生に手を引かれ、みんなが踊っている場所に連れて行かれる。すると先生は私を上手くリードしながら踊り出した。最初は戸惑っていた私も、いつのまにか一緒に楽しんでいた。曲が終わり、私達は一息つく。
「先生にこんな特技があったとわね。よく誰かと踊るの?」
「まさか、初めてだよ」
「初めて? 嘘でしょ……。あんなにスムーズにリードしてたじゃない」
「練習したんだよ。今日のために」
「どうしてそこまで……」
「どうしてだと思う?」
先生の問いかけに私は悩みこむ。
「……それよりテラスに行かない? 踊って暑くなったでしょ」
先生は私をテラスに連れて行く。なんだか今日は先生に連れられてばかりかも。もちろん嫌ではないけど。
テラスに出ると、陽はすっかり落ち、星空が私達を照らしていた。他にお客さんは誰もおらず、まるで世界に2人だけしかいないような静けさで少し緊張した。私はそれを悟られないように先生に話しかける。
「先生、私の願い事を叶えてくれてありがとうね。おかげで忘れられない誕生日になったわ」
「サクラの夢は叶った?」
「えぇ、想像以上よ」
「なら良かった。でもまだ終わりじゃないよ」
「えっ?」
「目を瞑って」
私は言われるがままに目を瞑ると、先生が私の背後にまわり、首にひんやりとしたものをつけられる。
「もういいよ」
先生の合図で目を開け、首元をみると綺麗なダイヤがついたネックレスが私の首元を彩っていた。
「先生、これって……」
「俺からのプレゼント。お誕生日おめでとう、サクラ」
先生は優しく微笑む。
「ありがとう。でも、教え子だからってここまでしてくれなくていいのよ」
「俺はただの教え子のためにここまでしないよ」
「……それってどういう意味?」
「どういう意味だと思う?」
「またその返しなのね……」
考え込んでいる私を見て、先生はニコニコと微笑んでいる。
もしかしてだけど、そうだったら嬉しいけど、でもまさか……。私は期待と不安が入り混じった目を先生に向ける。それを受け止めた先生は、片膝をついて私の手の甲にキスをする。
「好きだよ、サクラ。俺だけのお姫様になってくれる?」
先生の真剣な瞳が私を射抜く。
「うそ、だって……まさか……」
顔がどんどん熱くなる。信じられないと思い、頬をつねってみる。……うん、痛い。
「あはは、夢じゃないよ」
先生は頬をつねっていた私の手を優しく取り、握る。
「それで、返事が欲しいんだけど」
先生は上目遣いに私を見上げる。なにその顔、可愛い。もうこう思う時点で私の答えは既に決まっていたようだ。
「……はい!」
こうして今日から私の王子様はカカシ先生になったのだった。
仕事に追われる日々で、職場と家の往復。私は代わり映えもない、刺激のない毎日を日々過ごしていた。
ある日、報告書を出すために六代目火影の元へ訪れる。私の上司だったカカシ先生は、いまではすっかり雲の上の人物だ。必要事項を話し、「それじゃあ火影様、お願いしますね」と言って去ろうとした瞬間、「サクラ」と呼び止められた。
「どうしました?」
「もうすぐ誕生日でしょ。誕生日プレゼントは何がいい?」
そういえばそうだ。仕事が忙しく、すっかり忘れてた。
「別に気を遣わなくていいですよ。火影様はお忙しいでしょ。欲しいものも特にないし」
「その火影様ってやめてよ~。本当に何かないの?」
私は考える。ふと昔思い描いていた夢を口に出してみる。
「……お姫様みたいに過ごしたいな」
「お姫様?」
「そう、よくお伽話とかであるじゃない。普通の女の子がひょんなことから、綺麗なドレスを着ることになって、王子様にエスコートされるの。昔は憧れてたなー。いまはさすがに現実見てるけど。まぁ、冗談だから気にしないで」
私はそう言うと職場に戻る。そして、仕事の忙しさから、この時の会話はすっかり忘れていた。
誕生日当日。職場のみんなに“気にしないでいい”と言ったのに、なぜか休みにされてしまった。せっかくだからと誰かと過ごしたかったが、いのやヒナタは任務や用事やらで予定が合わなかった。なので、私は1日のんびりと部屋で過ごすことにした。紅茶を飲みながら、ソファで本を読んでいると、突然チャイムが鳴る。
「はーい」
“誰だろう?”と思いながらドアを開けると、目の前にはカカシ先生がいた。いつもの服装ではない。白いタキシードを着ていて、花束を持っている。まるで本に出てくる王子様みたいだ。
「サクラ、お誕生日おめでとう」
そう言って花束を差し出してくるので、思わず受け取る。そして、私は怪訝な顔で尋ねる。
「……ありがとう……。それより、その恰好なに? コスプレ?」
「そんな顔しないでよ。サクラの夢を叶えるために着飾ったのに」
「は?」
「言ったでしょ。お姫様みたいに過ごしたいって」
「……あっ!」
私はあの時の会話を思い出す。確かに言ったわ。でも、まさか実行されるとは思っていなかった。
「とりあえず行くよ。まずは格好からだね」
「えっ、ちょっと」
私は先生に連れられるままに一軒のお店に入る。先生は店員さんを呼ぶと“この子、お願いね”と私を店員さんに引き渡す。店員さんに連れてこられた部屋にはたくさんの綺麗なドレスが並んでいる。
「この中から好きなのを選んでくださいね」
「えっと……」
戸惑っていると、店員さんが気を遣っていくつかドレスを選んでくれた。私は試着をしながら、一番気に入ったものを選ぶ。
「すごくお似合いですよ! 次はヘアメイクですね」
そして、ドレッサーの前に座らされると、ヘアメイクを施される。とにかくされるがままの状態。しばらくして「できましたよ」と声を掛けられ、顔を上げると、鏡にはいつもと違う自分がうつる。「これが私……」としばらく放心していると、「さぁ、お連れ様がお待ちですよ」とニコニコと笑う店員さんに促され、私はドキドキしながら先生のもとへ向かう。
私の姿を見た先生は目を見開いていて固まっている。
「……やっぱり似合わないかな?」と私が不安そうに問いかけると、先生はハッとして「いや、その逆だよ。すごく似合ってるよサクラ」と微笑む。
「……本当に?」
「ほんとほんと」
「何か先生の本当って軽いのよね~」
「ひどいな~」
私は頬が赤いのを隠すために軽口をたたくと、先生もそれにのってくる。店員さんはその光景を微笑ましく見ていた。
「それじゃあ準備もできたし、行きますか」
先生は私の手を引いて歩き出す。先生と手を繋ぐのって久しぶりかも……。そう思いながら歩いていると、ある一軒のお店の前でとまる。本でしか見たことのないような外観のお店で、例えるなら西洋のお城みたいな感じだ。
「ここって……」
「レストランだよ。店主が西洋文化が好きで、それをイメージして建てたんだって。内装もすごいんだよ」
そう言って先生は私の手をひいたまま、お店に入る。お店の中は先生の言った通り、天井にはシャンデリアがあり、中央には大階段、壁には絵画が飾られている。
「木ノ葉にこんな場所があるなんて……」
私が見惚れていると、品の良さそうなおじさまが声を掛けてきた。どうやら店主のようだ。
「いらっしゃい、カカシさん。その子が例の子かい?」
「そうそう。今日はよろしくお願いします」
「任せてくれ。お嬢さん、楽しんでいってくださいね」
案内された部屋には、大きな食卓の上に色んな料理が並べられている。そして、私達のほかにも何人かお客さんがいるようだ。
「ここはビュッフェ形式なんだ」
そう言って、先生は皿に料理を分けていく。私もそれに倣い、気になる料理を盛り付けていく。取り終えると、さっそく料理を口に運ぶ。
「う〜ん、美味しい! こんなの食べたことないわ」
「料理も西洋のものばかりらしいからね」
「これとかは何かしら?」
「エビのアヒージョだって」
「へぇ~」
食べたことのない料理ばかりだったが、どれも絶品だった。デザートも食べ終えると、タイミングよくオーケストラの生演奏がはじまる。
「本当に本の中の世界みたい」
「そうだね。せっかくだから、一曲どう?」
「えっ?」
「一緒に踊らない?」
周りのお客さんも何組か踊り出している。
「私、無理よ。ダンスなんてしたことないし」
「俺がリードするから大丈夫」
「でも……」
「いいから」
先生に手を引かれ、みんなが踊っている場所に連れて行かれる。すると先生は私を上手くリードしながら踊り出した。最初は戸惑っていた私も、いつのまにか一緒に楽しんでいた。曲が終わり、私達は一息つく。
「先生にこんな特技があったとわね。よく誰かと踊るの?」
「まさか、初めてだよ」
「初めて? 嘘でしょ……。あんなにスムーズにリードしてたじゃない」
「練習したんだよ。今日のために」
「どうしてそこまで……」
「どうしてだと思う?」
先生の問いかけに私は悩みこむ。
「……それよりテラスに行かない? 踊って暑くなったでしょ」
先生は私をテラスに連れて行く。なんだか今日は先生に連れられてばかりかも。もちろん嫌ではないけど。
テラスに出ると、陽はすっかり落ち、星空が私達を照らしていた。他にお客さんは誰もおらず、まるで世界に2人だけしかいないような静けさで少し緊張した。私はそれを悟られないように先生に話しかける。
「先生、私の願い事を叶えてくれてありがとうね。おかげで忘れられない誕生日になったわ」
「サクラの夢は叶った?」
「えぇ、想像以上よ」
「なら良かった。でもまだ終わりじゃないよ」
「えっ?」
「目を瞑って」
私は言われるがままに目を瞑ると、先生が私の背後にまわり、首にひんやりとしたものをつけられる。
「もういいよ」
先生の合図で目を開け、首元をみると綺麗なダイヤがついたネックレスが私の首元を彩っていた。
「先生、これって……」
「俺からのプレゼント。お誕生日おめでとう、サクラ」
先生は優しく微笑む。
「ありがとう。でも、教え子だからってここまでしてくれなくていいのよ」
「俺はただの教え子のためにここまでしないよ」
「……それってどういう意味?」
「どういう意味だと思う?」
「またその返しなのね……」
考え込んでいる私を見て、先生はニコニコと微笑んでいる。
もしかしてだけど、そうだったら嬉しいけど、でもまさか……。私は期待と不安が入り混じった目を先生に向ける。それを受け止めた先生は、片膝をついて私の手の甲にキスをする。
「好きだよ、サクラ。俺だけのお姫様になってくれる?」
先生の真剣な瞳が私を射抜く。
「うそ、だって……まさか……」
顔がどんどん熱くなる。信じられないと思い、頬をつねってみる。……うん、痛い。
「あはは、夢じゃないよ」
先生は頬をつねっていた私の手を優しく取り、握る。
「それで、返事が欲しいんだけど」
先生は上目遣いに私を見上げる。なにその顔、可愛い。もうこう思う時点で私の答えは既に決まっていたようだ。
「……はい!」
こうして今日から私の王子様はカカシ先生になったのだった。
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