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NARUTO/カカサク 短編①

その時世界はキミだらけのレイン/SCANDAL


テレビ局に勤めて早数年。
私は「家、お邪魔してもイイですか?」のディレクターだ。
今夜も夜の街で取材対象者を探していた。

まわりを見渡していると、桃色の髪が目立つ、足早に歩く可愛らしい女の人を見つけた。
よしっ! あの子に声かけてみよう。

「あの〜、すみません。私、テレビ木ノ葉のものなんですが、お話伺ってもいいですか?」

怪しまれないようにすぐに名刺を差し出す。
一瞬顔をしかめられたが、私が女というのと、名刺を見たことでとりあえずは安心したようだ。

「私で良かったら、いいですよ」
「ありがとうございます! 『家、お邪魔してもイイですか?』という番組なんですが……」
「えっ! 私見てますよ。あれですよね、一般人の家にお邪魔するやつ」
「そうです! 足早に歩くのが気になって、つい声を掛けてしまいました」
「そうなんですね。仕事が長引いてしまって……いま帰るとこなんです」
「なるほど。それでさっそくなんですが、家、お邪魔していいですか?」
「あはは~、テレビで見た通りいきなりですね。ぜひ! と言いたいんですが、恋人と同棲してまして」
「恋人ですか」
「その恋人に許可を取らないと……」
「サクラー! 心配で迎えにきちゃった」

銀髪でマスクをした男の人がこちらに近づいてくる。

「先生! わざわざきてくれたのね。それよりちょうど良かった」

女の人の恋人だろうか、男の人にいまの状況を説明している。
男の人は「でも〜」と渋っている様子だったが、女の人のおねだりには勝てないようで承諾してくれた。

「ありがとう!」

女の人はそう言って飛びつき、男の人はそれをやすやすと受け止める。
私がじっと見てると、気づいたようで「ごめんなさい」と女の人が離れる。

「大丈夫ですよ。仲いいんですね」
「恥ずかしいところをお見せしました……。許可も下りたので、行きましょうか」

女の人と男の人は自然と手を繋いで歩き出す。
本当に仲いいんだな~と思いながら、私はそれに続く。

家に行く途中で2人の名前を聞いた。
女の人がサクラさん、男の人がカカシさんというらしい。


家に着くと、そこは1LDKで、部屋の中はきれいに整頓されていた。

「先生が住んでいたところに、私が一緒に住み始めたんです。いまお茶淹れるので、リビングで休んでいてください」

私はお言葉に甘え、リビングに腰をおろし、サクラさんの方を見る。
お茶が高いところにあるようで、サクラさんがそれを取るのに苦戦していると、後ろからカカシさんがそれをさっと取る。

「ありがとう、先生」
「どういたしまして。でも言ってるでしょ、高いところにあるものは俺が取るって」
「でも……」
「でもじゃない。サクラが無理して怪我でもしたら俺、正気じゃいられなくなっちゃうよ」
「大げさね~」

そして、カカシさんもリビングに来て、本を読みはじめた。
その本はイチャイチャパラダイス。18禁小説……モザイクが必要かどうか上司に確認しなきゃ。

「お待たせしました」
「ありがとうございます」

お茶を淹れてくれたサクラさんは、カップを私のところに置くと、カカシさんの隣に座る。
カカシさんは本を片手に、もう片方の手をサクラさんの腰に手をまわし、くっつく。
反応しないサクラさんを見ると、日常の光景みたいだ。

それにしても、息つくようにいちゃつくなこの2人。
まぁ、それにつっこむのは野暮なので、取材を進めることにした。

「さっそくですが、質問させていただきますね。お2人の馴れ初めは? 呼び方でなんとなく想像つくんですが……」
「ですよね。上司と部下だったんです。私の担当上忍がカカシ先生で、私とあと2人が班員で。私達は七班って呼ばれてました」
「へぇ〜。あっ、もしかしてあの写真って……」

今と容姿があまり変わらないカカシさんと髪が長く少し幼いサクラさん、黄色の髪の男の子と、黒髪の男の子が仲悪そうに写っている写真を指差す。

「えぇ、七班の写真です。先生がいつも遅刻してくるから、私達はいつもあまりものの任務だったんです。草むしりやペット探しとか。それにナルトとサスケくん。えっと、黄色い髪の方がナルトで、黒髪の方がサスケくんです。2人がよく喧嘩していてそれを止めるのが大変だったですけど、いざという時に2人は息ぴったりで……仲が良いのか悪いのか」

サクラさんは写真を見ながら、懐かしそうに語る。

「そうなんですね。あっ、そうだ! 冷蔵庫の中身見ていいですか?」
「いいですよ」


私とサクラさんはキッチンに移動する。
冷蔵庫を開けると、こちらもきれいに整理整頓されている。
ただ、茄子と餡蜜が大量にあるのが気になった。

「茄子と餡蜜がたくさんありますね……」
「茄子は先生の好きなものなので、常備してるんです。餡蜜は私の好きなもので先生がよく買ってきてくれて」
「お2人ともお互いの好きなものを買ってくるんですね。料理はサクラさんがするんですか?」
「はい。先生の方が忙しいので、基本的には私です。先生が作るときもありますよ。私より上手くて嫉妬しちゃいますが……」
「俺はサクラの料理が一番美味しいと思うけどね」

てっきり本を読んでいて話を聞いていないと思っていたカカシさんが、リビングから声をかける。

「もうっ! 先生ったら、そういうこと平気で言うんだから」

照れたように笑うサクラさんは可愛かった。


私達はリビングに戻る。

「じゃあ、質問に戻りますね。同棲して良かったことは?」
「やっぱり一緒にいる時間が長くなったことですかね。お互い仕事が忙しくて中々会う時間がなかったので。あとは朝起きた時に……いや、やっぱりなんでもないです」
「えっ、ちょっとその先気になります」
「気にしないでください。よくよく考えたら恥ずかしいなって」
「俺も聞きたいな、サクラ。もし言わなかったら……」

そう言ってカカシさんがサクラさんに耳打ちする。

「……分かった! 言うから!」

サクラさんは顔を赤くしていた。なんて言われたんだろう?

「えっとですね、朝起きて隣にいる先生の寝顔を見た時に幸せだなーって思っちゃうんです」
「同棲する前から見てたじゃない」
「そうなんだけど! やっぱり同棲する前と後では、うまく言えないけど……なんか違うのよ」
「そういうものなんですね。カカシさんは?」
「俺は、サクラと毎日エッチな「先生、ストップ! ごめんなさいね〜」

サクラさんがその先を言わせるものかと、カカシさんの口を塞ぐ。

「あはは。番組的にも厳しいので、それ以外でお願いします」
「それ以外か……。まぁ、サクラと同じになっちゃうけど、毎日一緒にいられることかな。サクラと少しでも長くいるために毎日早く仕事終わらせようと頑張ってるからね」
「そうなんですね。それじゃあ、大変なことは?」
「うーん、今すぐにはぱっと思いつかないかな。……いや、やっぱりありました。お風呂上がりにいつも服を着ないで出てくるのはやめてほしいって先生に言ってるのにやめないんです」
「下は履いてるじゃない。それにすぐ脱ぐから意味ないかなって」
「意味なくないの!」
「それは大変ですね。カカシさんは?」
「俺は毎日サクラが寝かせてくれな「だから! 何でそういうことばっかり言うの!」

サクラさんがカカシさんの頭を殴り、「本当にすみません」と私に向かって顔を赤くしながら謝る。

「いいえ、大丈夫です……」

私は苦笑いで返すことしかできなかった。

「気を取り直して。最近、キュンとしたことはありますか?」
「え~と、あっ、ありました! 私が食器の洗い物をしていて袖が濡れそうになったときに、先生が後ろから袖をまくってくれたんです。少女漫画を読んで憧れていたシチュエーションだったので、それはキュンとしましたね」
「わ~、確かにキュンとしますね! カカシさんは?」
「俺はね~「先生、変なこといったらまた殴るからね」
「……分かってるよ」

今度は事前にサクラさんがカカシさんに釘をさしていた。

「一緒に寝ていた時に『カカシ先生……大好き。もっとキスして』って寝言を言ってたことかな。さらにすり寄ってくるから、ドキドキして我慢するのが大変だったよ」
「えっ! うそでしょ!?」

サクラさんは顔を真っ赤にしながら、カカシさんに掴みかかる。

「あはは、ごめん。“もっとキスして”って言ったのはうそ」
「からかったのね……」
「でも、寝言で俺の名前を呼んでいたのと、大好きって言っていたのは本当だよ。嬉しかったな~」
「そうなのね……恥ずかしい……」
「でも、起きているときも言ってほしいな」
「……考えとくわ」

顔を赤くして俯くサクラさんをカカシさんが抱き締めている。

なにかな、この空間。私、少女漫画の世界にトリップしてる?
そんなことを考えながら、ふと時計をみると、いい時間になっていた。

「あっ、もうこんな時間ですね。長居してすみません」
「いえいえ。あんまりお構いできずこちらこそ申し訳ないです……」

私は荷物を持って立ち上がる。

「あっ、ちょっと待ってください!」

そう言ってサクラさんはキッチンから餡蜜を持ってきて、私に差し出す。

「たくさんあるので良かったら。ここの餡蜜美味しいんですよ」
「えっ、でも……」
「そうだよ、サクラ。サクラのために買ってきたんだから」
「まだたくさんあるでしょ。せっかく家に来てくれたんだからこれぐらいいいじゃない」
「それはそうだけど……」
「先生、また買ってきてくれるんでしょ?」
「もちろん。サクラのためだもん」
「なら、いいじゃない」
「……じゃあ、ありがたくいただきますね」

私は餡蜜を受け取り、玄関に向かうと、2人もついてきてくれた。
相変わらずカカシさんはサクラさんの腰に手をまわしている。

「それでは放送日時などが決まりましたら、またご連絡しますね。この度はありがとうございました!」

カカシさんはペコっと軽く頭を下げ、サクラさんは手を振って笑顔でお見送りしてくれた。


仕事帰りの可愛らしい女性についていったら……
まさに理想の恋人同士と言えるようなお2人に出会いました。これからもお幸せに!
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