5部
夢小説設定
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イタリアのシチリア島、パレルモに家族と旅行に訪れた私は1人の同い年くらいの少年に出会った。その少年は銀色の髪に、黒い目が特徴的で私は美しい子供だな、と思った。少年は歩きながら泣いており、気になった私は声をかける。
「大丈夫? 何で泣いているの?」
「…言いたくない」
「そっか、聞いてごめんね。君の涙が止まるまで側にいてもいいかな?」
そう聞くと少年は頷いた。
「私の名前は夢主。君の名前は?」
「リゾット・ネエロ…」
少年リゾットと共にパレルモの海岸沿いで座って過ごした。リゾットはその間も大きな目からポロポロと涙を流しており、夢主は何も言わずに側で座っていた。その間に夢主は自販機でエスタテという飲み物を買ってきてリゾットに渡し、ストローを刺して2人は飲んだ。
リゾットの顔にも笑顔が戻ってきて、素直に夢主は嬉しかった。それからリゾットに連れられて色々な場所を回った。地元の子供達が遊ぶ場所や隠れ家に連れていってもらい、リゾットと一緒に遊ぶ。
夕方になる頃に夢主は家族にリゾットを紹介した。初めて出来たイタリア人の友人に両親も喜んでいた。そろそろお別れの時間だとリゾットに伝えると寂しそうな顔をしている。
「夢主、またここに来るか?」
「うん! またリゾットに会いに来るよ」
夢主はリゾットに約束のおまじないとして指切りを教えて、2人は小指を結んだ。夢主は帰りの船に乗り込みリゾットに手を振るが、その頃には夢主も寂しくなり泣きながら手を振っていた。
その後、リゾットは夢主達が見えなくなるまで見送っていたのである。
ーーーーーー時は流れて、
夢主が社会人になった頃、長期休暇を取ってイタリアのネアポリスへ旅行に行こうと考えていた。飛行機のチケットを予約したり、ホテルの予約を取ったりプランを考えたりと夢主は楽しく用意をする。当日、忘れ物が無いかをチェックして空港へと向かった。日本の空港からスイスを経由してネアポリスへと入る14時間のフライトを終え、夕方に到着した。
長距離の飛行機移動は久しぶりだったので疲れてしまった夢主はホテルへと直行してチェックインを済ませた。シンプルな部屋のセミダブルにダイブすると、直ぐに目蓋が落ちる。慌てて目覚まし時計をセットして眠りに就いた。
次に目を覚ますと朝の8時だった。15時間眠ってしまった夢主の頭はボーッとしている。シャワーを浴びてから、用意をしてホテルから近いバールへと向かった。クロワッサンとカプチーノを注文してゆっくりと食べた。バールから出ると、観光名所である大聖堂へと歩いて行く。
その道中、夢主はふと少年リゾットの事を思い出した。そういえば、あの時に会いに行くと指切りをして約束していたのが懐かしく感じた。リゾットに会いたいが名前だけでは探せないだろう。それに今回はシチリア島ではなくネアポリスに来たので会うことはまず不可能だ。
「懐かしいな~リゾット元気かな」と独り言を呟いたのを、すれ違った男性が聞いていた。その事に夢主は気づいていない。
夢主の独り言を聞いた男性は日の当たらない裏通りに入ると建物の扉を開けて入った。
「珍しいなプロシュート、昼前に来るなんて」
「気分だ、それよりもイルーゾォは一日中アジトにいるのか?」
「俺は鏡があれば何処でもいいんだよ」
「そうかよ、それよりリゾットはどこだ?」
「リゾット? もうすぐ来るんじゃないか」
プロシュートと呼ばれた男は、通りすがりのアジア人の女が呟いていた名前に聞き覚えがあった。暗殺チームのリーダーであるリゾットの事なのか分からないが、本人に直接聞きたいのだ。しばらく待っているとアジトの扉が開き、リーダーのリゾット・ネエロが入ってきた。
「リゾット、聞きたいことがある」
「何だ、プロシュート」
「アジア人の女に知り合いはいるか?」
「何の話だ?」
プロシュートは先ほどすれ違ったアジア人の女について、リゾットに説明する。その間、リゾットは黙って聞いていた。プロシュートが話終えるとリゾットは「どこですれ違った?」と聞いてきたので、やはり知り合いなのかとプロシュートと横で聞いていたイルーゾォは思った。
「大聖堂の手前ですれ違ったから、観光にでも行くんじゃねぇか?」
「…そうか、少し出掛けてくる」
そう言ってリゾットはアジトを出ていってしまった。残された2人はリゾットを見送った後に顔を見合わせる。
夢主は大聖堂から出るとベンチに座りぼーっと風景を眺めていた。ただ何をするでもなく座って過ごすのが夢主は好きだった。
「夢主か?」
後ろから名前を呼ばれて驚いて振り返るが、知らない男性がこちらを見て立っていた。
「…どちら様ですか?」
「覚えていない、か…」
銀色の髪に変わった黒い目を持つ背の高い男性を見つめていると、少年リゾットに似ている事に気がついた。
「え? もしかしてリゾット・ネエロ?」
「そうだ」
「嘘…会えるとは思わなかった…久しぶりだね」
リゾットと夢主は近くのカフェへと移動する。テラス席に座ると夢主はリゾットに話しかけた。
「シチリア島には住んでいないの?」
「あぁ、今はネアポリスに住んでいる。夢主は日本に住んでいるのか?」
「そう、旅行でネアポリスに来たの。そしたらリゾットに会えた。凄く嬉しい」
「俺も嬉しい、と思っている」
それから2人は昔話に花を咲かせ、あっという間に時間が過ぎていく。夕方になった頃、リゾットは夢主を夕食に誘った。夢主は喜んで受け入れ、待ち合わせ場所と時間を決めて別れる。
夢主は急いでホテルへと戻り、少しお洒落なロングワンピースに着替える。
「先に待ち合わせ場所に行くか…」
鏡の前でワンピースの裾を直して深呼吸をする。ホテルから出て、待ち合わせ場所へと向かった。すると早目に来たのにリゾットが先にいたので驚いた。
「リゾット、待たせた?」
「いや、今来たところだ」
リゾットの案内でトラットリアへと入る。まだ夕食には早くアペリティーボを楽しむ。お酒を飲みながら、夢主は仕事の事やイタリア旅行のプランなどを話していた。その間、リゾットは黙って聞いてくれていた。
「リゾットは何の仕事をしてるの?」
「…チームをまとめて仕事をしている」
「凄いね、リゾットはしっかりしてるからリーダーになったんだね。昔は泣いてたのに」
「それは言うな。少し恥ずかしい」
夕食を食べて酔いを冷ますために2人で散歩をする。ふと横を見るとリゾットがおらず、そのまま後ろを振り向くとリゾットが立ち止まっていた。夢主は「どうしたの?」と声をかけ、リゾットの側へと行く。
「…夢主、好きだ」
「へ?」
夢主はリゾットからの突然の告白に驚いて固まってしまう。だんだんと顔が熱くなり恥ずかしくなる。夢主は両手で顔を隠して「へ? 何で?」と呟いていた。
リゾットはそんな夢主の両手首を掴み、顔を見て「ずっと昔から好きだったんだ」と真っ直ぐな目で愛の告白をした。
「わ、わたしもリゾット好き」
夢主は片言で答えを返したあと、リゾットから距離を取った。
「なぜ、逃げる?」
「だって…リゾットがぁ…」
そう言って夢主は走り出した。リゾットはそれを見ながら笑顔を溢して夢主の後を追ったのだった。
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