5部
夢小説設定
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シチリア島ラグーザにある歴史ある石造りの一軒家に1人の女性が匿われていた。その女性はギャング組織を足抜けして逃亡している身なのだ。組織を捨て、仲間を捨て、自由を捨ててまでも彼女は逃げたかった。
ギャング組織に所属していた時は主に暗殺を生業として生きていた彼女だったが人並みの幸せを夢に見ていた、だが現実はそう甘くはない。足抜けをすると言う事は自殺行為以外の何物でもなく、自由の代わりに死を背負うリスクがある。
「夢主ちゃん、ご飯が出来たよ」
「ありがとう」
パンとハム、パスタが並んだ食卓を見てお腹が鳴る。夢主は席につきお祈りをしてから食べ始めた。素朴で美味しい料理を噛み締める。
「今日の夜、ここを出て行きます」
そう夢主が言うと、一緒に食べていた初老の女性は食事の手を止めて夢主の手を握った。心配そうな目をしている。
「今までありがとう。こんな私を匿ってくれて…これ以上は迷惑をかけたくないの…」
「ずっと居てくれても良いんだよ…」
「あなたを危険に晒したくないの…分かってほしい。私は命を狙われる身、だからここを出て行くね」
「……わかったわ」
深夜、月も無い暗闇に紛れて夢主は移動をする。谷を越えて山を掻き分け慎重に進む。
「夢主…こんな所にいたのか…」
ピタリと足を止める。背中に冷たい汗が流れたような気になり、ゆっくりと声のした後方を見た。そこにはかつての仲間であったプロシュートが立っていた。
「帰るぞ」
「私は帰らない」
「わがままに付き合ってる暇はねぇんだよ…」
「…わがままじゃあない!! 私は私の意志で組織を、チームを抜けた…見つかったのなら戦うのみ」
夢主は身を構えたが、身体のいう事が効かないのに気づき全てを悟った。プロシュートのスタンド攻撃は随分と前から発動されていた様だ。山を登り体温が高くなっている分、老化のスピードが早い。油断した、と後悔したが手遅れだった。
「ほら、帰るぞ」
「ここで死ぬ方がマシ…」
「…マンモーナ…兄貴の言う事を聞いてくれ…」
最後の力を振り絞りスタンドを発動させて夢主は自分へと攻撃を放つ…だが阻止をされ地面に仰向けに倒れ込んだ。
「俺達の何が駄目だったんだァ?」
「…答えない」
「何で裏切った…?」
「…」
「そうか…お前の覚悟は受け取った。だがな…簡単には死なせねぇよ…リゾットからも言われてるんだ。見つけたら生かして連れて来いってな」
“生きて帰って来い”それは何よりも恐ろしい言葉に夢主は目尻に涙を浮かべた。だが自分で拭くことも立ち上がる事も出来ない今の弱い自分では従う以外に方法はない。
プロシュートは近づき夢主を横抱きにした。そして額にキスを落として綺麗な笑みを浮かべていた。鼻歌を歌いながら歩いていくプロシュートを見ながら夢主は諦めたように目を閉じた。
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