「事件のことだけじゃねぇんだ
今のあいつは自分のことも家族のこともあの会場にいた俺たちに紹介した親友のことさえも…
理彩はすべての記憶を失っている」
「はぁ!?」
「なっ!?」
「理彩ちゃんが!?」
「もちろん俺や杉下やお前らのこともすべてだな」
「そんなっ…記憶喪失!?」
「幸い日常生活に必要な知識は残っているから人に関係する記憶がないだけで普通の生活はできるそうだ」
「何で嬢ちゃんは記憶喪失なんかになったんだ？
巻き込まれたとは報告で聞いてるが!?」
「そうだな
佐藤が撃たれた時に理彩さんは血は見てるだろうけど…それだけで記憶喪失になるとは考えられないが」
「あるんだよ…他にも理由がな」
「「「え!?」」」
「昨年のことだ…
この部屋でちょうど理彩から聞いた話なんだがあいつは血以外にも苦手な物が実はあるんだよ」
「え？あるの!?まだ他にも!?」
「お前らと杉下が揃って初めて理彩と会った事件の時にあいつから何か聞いてはいねぇか？
血以外にも苦手なトラウマの話とか」
「嬢ちゃんと初めて会った事件？」
「確か…血が苦手で松田と知り合いで」
「父親が元刑事でくらいしか覚えてないや…あははは…」
「ならいい…
もう１つの理彩のトラウマは…拳銃だ」
「「「拳銃!?」」」
三人は驚く。
「ああ…理彩の父親の毛利探偵がまだ現役の刑事だった頃に拳銃絡みの事件が起きて理彩はその時の目撃者らしい」
「えー!?」
「どういうことだ松田!?」
「簡単にしか俺からは説明はできねぇが…
まだ俺が理彩と知り合う前のことであいつの両親が別居する前でな
毛利探偵が所轄の刑事だった頃で忙しく家に帰れない時があり奥さんの妃さんがよく着替えとか持って行っていたそうだ
理彩や双子の姉の方も妃さんと一緒に警察に来ることもあったらしいな
その時にはよく休憩中の目暮には話し相手になってもらっていたり遊んでもらっていたそうだ
あとは毛利探偵や目暮の上司だった松本管理官とも同様に話をしたり肩車してもらって遊んでもらっていたことがあるらしい
それに理彩から聞いた話では松本管理官の娘は理彩や双子の姉の中学時代の音楽の先生だったらしくお世話になったと言っていた」
「えー!?あの松本管理官!?
しかも娘さんが理彩ちゃんが中学の時の先生!?
何その偶然！」
「話を戻すが…
とある日事件はその警察で起きた
取調していた容疑者がトイレに行った時に同行した警官の拳銃を奪いトイレから出てきてたまたま近くにいた妃さんが人質になってしまったらしい
その場には妃さんと一緒に毛利探偵に会いに来ていた理彩たち双子姉妹もいた
幼い双子たちは目暮が気付き守ってくれたらしいがな」
「その時に何かあったのか？」
「毛利探偵が拳銃で人質の妃さんの足をまずは撃った
それにより人質が動けなくなり容疑者がパニックになっている間に容疑者の肩を撃ちその場にいた刑事たちが容疑者を取り押さえ逮捕した
その光景を理彩は目暮に守られながら目撃していたそうだ
姉の方はその出来事を最近まで忘れていたらしいがな
それからは拳銃とその拳銃を撃っていた父親が幼いながらに無意識に苦手になり両親は理彩の様子から原因に気付き別居を始めたそうだ」
「まさか！その時のことが原因で血が苦手になってしまったのか？」
「あぁ、そうだ
そして、その時に関係する拳銃も苦手になってしまったわけだ
そのせいで運動会や体育祭が苦痛だって理彩が言ってたしな」
「じゃあまさか！
今回理彩ちゃんが記憶喪失になってしまったもう１つの原因って…」
「そのまさかだ」
「理彩さんは事件発生時に拳銃とその拳銃で撃たれた佐藤の血…
佐藤が撃たれたのは自分のせいだという強い精神的ショックにより記憶喪失になってしまったと思われるってことか？」
「そうなるな…
拳銃なんか一般人のあいつには俺ら刑事と違って関わることはねぇからな
まぁ実際、拳銃に関係する事件にはそれ以降遭遇してねぇから理彩が拳銃が苦手だと俺らが気付かねぇのも無理はねぇけどな」
「なるほどな」
「ここからが本題だ」
「はあ？本題？」
「もしかしたら理彩は佐藤が撃たれた時に犯人の顔を見ている可能性がある」
「なっ!?」
「それは本当なのか松田!?」
「記憶喪失のあいつにその確認はできねぇが…
あくまでもまだそうかもしれねぇって段階だが犯人が理彩をこのまま見過ごすとは思えねぇ!!」
「じゃあ、嬢ちゃんが次に犯人に狙われるってことか!?」
「ああ…」
「そんなっ」