『そろそろ…１年になるんだよね…』
理彩はカレンダーを見て呟いた。


「チェクメイト」
「あ…
ちっ…負けかよ」
今日もやることがなく暇な特命係。
チェスをしていた杉下と松田。
「途中まではよかったんですけどね松田君」
「はいはい
どうせ俺は詰めが甘いんだろ杉下」
「そうは思ってませんよ？」
「どうだか…」
「では、もう一勝負しますか？」
「いや、飽きたからパス」
「おや…君、飽きるのが早すぎますね」
「うるせぇ」
「これはこれは失礼しました」
松田は自分の席に戻る。
杉下はチェスを元に戻し紅茶を飲み始めた。
ふと携帯を開く松田。
日付を見た。

【「松田君、伊達さんが!!」】
【「班長がどうした？佐藤」】
【「張り込みの帰りに交通事故に遭ったって！」】
【「事故!?」】
【「病院に搬送されたけど…当たり処が悪かったみたいで亡くなったって目暮警部からさっきみんなに報告があって！」】
【「そうか…
殺しても死にそうにねぇあいつがな…
世の中、何が起きるか分かんねぇな」】
【「そうよね…
確か二人は同期なんでしょ？
よく伊達さんが言ってたし！
報告した方がいいと思って来たのよ」】
【「知らせサンキュー」】
佐藤は去って行く。


「もう…1年経つのか…」
と呟く松田。
「どうかしましたか？」
松田の呟きを拾う杉下。
「あんまり気にすんな
ただあることを思い出しただけだから」
「あること？」
「同期の奴の事故死をな」
「…あぁ、確か昨年の今頃でしたかねぇ？」
「そういうことだ」




この日、少年探偵団は防犯パンフレットの撮影のために警視庁に来ていた。
だが灰原は写真に写るわけにはいかないからと付き添いで来ていた阿笠をみんなには風邪だと言って灰原と一緒に帰したコナン。
「博士はやっぱり風邪だとさ」
「えー残念です」
「僕も残念だよ
せっかく噂の阿笠博士に会えると思ったのにね」
「安室さん!?」
コナンに声をかけたのは安室だった。
「どうしてここに？」
「毛利先生から聞いたんだ
今日、少年探偵団が阿笠博士に連れられて警視庁にパンフレットの撮影に来るってね
僕はちょうど警視庁に来るように言われてたから…まぁもう終わったけどね」
「何で警視庁に？」
「この前のコナン君が誘拐された件で改めて事情を聞かれたんだよ
帰ろうとしたら松田刑事に会ってね
車は大切にしろって説教されたけどね」
「あはは…あれは…やり方がね…
松田刑事は車好きだから仕方ないかもね」
「そうだね…
まぁ別の用もあったけど」
「別の用？」
「まぁそれは気にしないでくれ
もう用はなくなったから」
「？」
安室は歩き去った。
「おい、コナン？」
「ん？」
「誰だよ？あの兄ちゃん？」
「小五郎のおっちゃんに弟子入りした探偵だよ」
「探偵!?」
「へぇー」
「イケメンさんだったね」
「それより高木刑事は？」
「それが…何度電話しても出ないんですよ」
「うん」
「ん？光彦？
お前何を持ってるんだ？」
「あっ、これですか？
さっき知らない人から高木刑事からのプレゼントだって言われて渡されたんです」
「はぁ!?」
コナンは詳しく光彦から話を聞くと…
警視庁の前で見知らぬ男性から高木刑事からのプレゼントだと言われて箱を渡されたらしいのだ。
事情を話して佐藤刑事にそれを渡すとそこにはどこかに縛られた高木の映像だった。

捜査一課は急ぎ調べ始めた。
調べていくうちに高木が行き先を告げずに休暇を取っていたことが分かり、さらには資料室で高木が何かの事件を調べていたという。
しかも高木は涙ぐみ資料室から出て来たのを見たというある刑事による目撃証言まで出てきた。

「え？高木刑事がある事件を調べてた？」
翌日、気になったコナンは警視庁にやって来た。
そして佐藤から事情を聞いた。
「えぇ、調べていた事件は全部昨年の2月に起きた女性の自殺でね」
「自殺？」
「所轄で全部自殺になった案件ばかりなのよ
調べていたのは昨年の今頃に起きた首吊り自殺の3件なんだけど…
女性たちに共通点はないけどほぼ同じ日に起きていてね」
「そっか」
佐藤は簡単にだが3件の自殺のことをコナンに話してくれた。
「この3件の中で高木刑事が関係するのってないの？」
「そうね…あるとしたら」
「え？あるの？」
「えぇ、ホステスをしていた女性が自殺した女性の中にいるんだけど
彼女は男に色々貢いでいたらしいんだけど…その相手が結婚詐欺師だって知ったらしくて…
自暴自棄になり首を吊って自殺したそうよ」
「それで？」
「その貢いでいた結婚詐欺師は借金のトラブルで人を刺し殺してて殺人犯として逮捕したのよ
確か捕まえたのは伊達さんだったかな」
「伊達さん？」
コナンは知らない名前に首をかしげる。