「なぁ、理彩
こいつの年齢パッと見てどれくらいだと思う？」
松田は安室を指さす。
『え？安室さんですか？』
「正直にでいいからな」
『うーん…20代前半ですか？』
「……」
「ぷっあはは」
松田は突然笑い始めた。
『え？突然笑いだして？
えっと陣平さん？私何か変なこと言いました？』
「気にすんな
でもよかったな安室
やっぱり若く見られるってよ」
「あまり良くはないんですけどね…」
「いいじゃねぇか！
もうすぐ三十路なのに若く見られてさ」
「…はぁ…」
ため息をつく安室。
『え？あの…何かごめんなさい安室さん』
謝る理彩。
「いえ、気にしないで下さい理彩さん
慣れてますから」
「こいつの年齢の正解は俺と同じ29歳なんだとさ」
『同じ年なんですか!?』
「そうなるな」
『びっくりです』
「若く見られることが多いんだとよ」
「まぁ松田さんに理彩さんと同じように何歳に見えるかと質問をしたら20代前半に見えなくもないが自分と同じくらいだろって言って正解しましたけどね…」
『さすが陣平さん！』
「だろ！
同じ年だと分かったから色々話が弾んでな」
『それで短期間で仲良くなったってことですか？』
「そういうことだ
この前なんかここでコーヒー飲んで安室と話してた時にチビ探偵が来てな
毛利探偵の依頼の関係で盛り上がったな安室」
「えぇ」
『お父さんの依頼の関係？』
「その日は毛利探偵が依頼でいなかったんだが戸締まりせずに出ていったから安室が見張りみたいになっててチビ探偵が毛利探偵に呆れてたんだぜ
どうせ依頼人が美人とか依頼料を聞いて飛び出したんだろうってチビ探偵は言ってたな」
『それはいつもの病気です』
「そうだろうな
その日にチビ探偵から俺に連絡来てな
【やっぱりおじさんは依頼人目当てだったみたい
でもその人に恋人がいてショック受けて帰って来たよ】だとさ」
『はぁ…お父さんったら…
お母さんに報告しちゃおう』
「報告した時の妃さんの反応はどうなるんだっけか？」
『うーん…飼い猫のゴロちゃんを構いながら私に愚痴りますね』
「そうか…」
『それで後日お父さんと会うようなことがあればいつもの様に夫婦喧嘩です』
「大変だな理彩も…」
『あはは…そうですね』
「まぁそれでも離婚を選ばない妃さんは何か思うところがあるんだろうがな」
『お互い頑固で素直じゃないからすぐ口論になるしお父さんの女好きな浮気癖はお母さんをより怒らせてる原因だし…
さすがに昔のようには戻れないんじゃないかな？
この10年間、喧嘩の繰り返しですもん…
蘭はそうなると二人を早く仲直りさせたがるけどまた同じことの繰り返しになるから私はもう随分前に諦めました…
お母さんたちは今の距離感のままでいいんじゃないかな』
「いいのか!?理彩はそれで…」
『だって…(私が)きっかけになった喧嘩の原因だから言えないですよ…
でもお母さんたちがっていうより正直なところ私がもう今の距離感で満足してるのが大きいのかも…
それに蘭と私だってもう高校2年生だから、
今更家族が一緒に暮らしてもせいぜい成人になるまでの2～3年くらいしか過ごせないと思うから私達はこのままでいいんだと思います』
理彩は口に出さなかったが別居のきっかけは自分のせいであって姉の蘭にとっては両親は喧嘩になって別居になったことになっているのもあり今更同居は考えてないのだろうと思った。
「理彩無理すんなよ
両親に言いたいこととか愚痴があればいつもの様にいつでも聞いてやるから溜め込むなよ」
ポンポンと理彩の頭を撫でる松田。
『陣平さん…ありがとうございます』
「気にすんな」
「(何やら聞いていた別居の理由以外にも訳ありのようだな？毛利探偵の家族たちは…)」
安室は理彩の話を聞いて先日コナンと松田が話していたのと、さっきの料理に関しての喧嘩での別居以外にも何やら訳があることを気づいた。
そういえば松田が訳ありの別居だと言っていたと安室は思い出した。
『あ…安室さんごめんなさい…
暗くなる話をしてしまって…』
「いえ、大丈夫ですよ理彩さん
気にしないで下さい」
『あ…はい』
「さて帰るか？」
『そうですね
面倒なことになる前に帰った方がいいですね』
「またどうぞ」
『はい』
会計する。
「ありがとうございました」
カランカラン
「さてと駐車場に行かねぇとな」
『はい』
「どこか寄るところあるか？」
『ないです
あるなら陣平さんに任せますよ？
夕食のこともありますから』
「分かった」
歩き始めた。
しかも自然と手を繋ぐ二人。
『本当にポアロの常連さんになっちゃってたんですね？』
「だから言ったろ」
『でもおかげで陣平さんがよく頼むハムサンドのレシピゲットしたので今度挑戦します！
もちろん試食してくれますよね？』
「あぁ楽しみにしてるぜ」
『やったー』
二人は駐車場へ向かった。