「ということはやはり…彼女に探偵として雇われた僕を愛人だと勘違いしたあなたが…そこからくる嫉妬心から殺意が芽生え…彼女がこの店に車で戻って来るのを駐車場で待ち伏せ、車に押し込んで焼殺したと考えざるを得ませんね」
安室はそう言った。
「てめぇ…」
「一応署まで任意同行していただけますか？」
「ちょっと待てって！
毛利！何とかしてくれよ!!」
「そう言われてもなぁ…」
「そんな…」
「さぁ…」
「分かったよ…」
頼太はしぶしぶ立ち上がると高木が外まで案内するようだ。
『でも…』
「どうしたの？理彩」
『頼太さんって…このレストランから外に出たっけって思って…』
「え？」
「どういう意味だね？理彩君」
『席からは離れて色々な席には行ったけど…
雨が降っていた外に行ったのかなって』
「え？」
『外は雨が降ったり止んだりしてるけど…例えばトイレに行くふりをして外に行ったとしてもどこかしら濡れてしまうはずです
ちょっと思い出したことがあって』
「思い出したこと？何かあるのか理彩？」
松田は理彩に聞く。
『パーティーが始まって少しした頃に安室さんがテーブルに皿を置こうとして落として頼太さんのズボンにケーキのクリームがついて…頼太さん…ケーキを靴で踏んでしまったことありましたよね？』
「えぇ、僕がわざと彼にやったんですけどね」
『もしですよ？
雨が降っている外に行ったら濡れた地面歩けば靴の底に付いたクリームとかって落ちませんか？』
「…!!」
「なるほどな…あり得る
おいあんた、ちょっと靴を脱いでくれ」
「え？あぁ」
靴を脱ぐ。
その靴を見る松田。
「靴の裏の溝に…これはクリームか？」
「それ、今理彩が言ってたケーキのクリームですよ！
チョコレートケーキだったし」
「それはいつの出来事かね？」
『初音さんがネイルサロンに出かける前です』
「つまり彼は店から出ていないことになる… これでは振り出しに戻ってしまうな…」
「分かりましたよ警部殿！」
「本当かね？毛利君!?」
「ばっちりと！」
ぷすっ
「はにゃ」
変な声を出す小五郎。
「お父さん？」
「いつものかね？」
がくっ
「伴場は犯人ではありませんよ警部殿」
「では誰が犯人何だね!?」
「理彩が言っていたことが伴場が犯人じゃないと言っている」
「ですが靴や服くらいいくらでも着替えは可能性じゃないですか？」
「それも考えた
実は伴場のフェイクじゃないかと疑いはしましたが靴に付いたケーキのクリームはそこの若い探偵が落としたのを偶然踏んだ物だ
証拠になるそれをわざわざ雨が降っている外に行って落とすミスをすれば台無しだ
だから確信したんですよ
伴場の無実をね」
「毛利…」
「ではDNAは!?
彼女の付け爪の先に彼のDNAとほぼ一致した皮膚が付いていたんですよ!?
彼がその時、彼女のそばにいたって証拠じゃないですか!?」
「付け爪についていたのは彼女自身の皮膚だった場合は考えねぇのか？探偵」
「な、何を言っているんですか!?
さっき言いましたが遺伝子情報のほぼ一致はありえません！
現在、同じ型のDNAの別人が現れる確率は4兆7000億人に１人とされていますし…
だいいち女性には男性だけが持つY染色体がないからすぐに分かりますよ!!」
「問題はその皮膚が雨や泥で汚染され、性別の部分が不明だからほぼ一致って結果が出ただけだろ」
「だとしても…そんな二人が偶然出会い、たまたま恋に落ちて結婚しょうとしたって言うんですか!?」
「出会ったのは偶然かもしれねぇが惹かれ合ったのは必然だったと思うぜ？何しろ二人は…「双子なんだからな」…えぇそうです」
「え!?」
松田が小五郎のセリフを遮ると爆弾発言をした。
「ふ…双子!?」
皆、驚愕。
「伴場、お前さっき言ってたよな？
二人は誕生日も血液型も同じで、時々黙っていてもお互いの考えていることが分かることがあるって」
「あぁ…だけどそれだけで双子だとは…」
「お前は知らないだろうがな
さっきこの安室が興味深いことを言ってたんだよ
初音さんからの依頼でお前のことを調べたら二人にはまだ共通点があったんだよ」
「え…」
「お前と初音さんは赤子の頃に同じホテルの火災現場から助け出され身元不明のまま教会で育てられた二人だったんだよ」
「え!?ホテル…火災？」
「なるほど…その火災で両親がなくなり赤子たちが双子だとは分からなかった…」
「しかし…双子だとDNAが同じになるのかね？」
「なるぜ目暮」
「本当かね？松田君!?」
「こいつら姉妹のように一卵性双生児ならな」
松田は理彩の肩に触れ蘭を指さす。
「そうか…蘭君と理彩君は双子だったな…」
「その場合は男同士かこいつらのように女同士の双子になるわけだが…稀にあるんだよな「異性一卵性双生児」…(こいつ…後で覚えておけよ)」
松田の言葉を安室が遮る。