荒船と出水の師匠シリーズ
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テレビか何かで、『頭を撫でる事は良い』という情報を入手した。
細かい所は良く覚えていないが、なんか良いらしい。
他人と触れ合う事で何かしらの脳内物質が出たり安心効果があったりするんだろう。
「あー…いいな、これ」
「お気に召したようでなにより」
と言う事で私は現在、本部内太刀川隊の作戦室にてソファに座り、膝に乗せたクッションに頭を乗せて寝転ぶ慶の頭を撫でまわしていた。
「なんかこれ、安心する…」
「ほう」
「あー…やべ…眠くなってきた…」
「この後出水くんと任務でしょ、寝ても起こさないぞ」
「出水なら起こしてくれるだろ…」
「人任せか」
もさもさした髪を梳くように撫でながら言えば、「うー」というよくわからない返事が返ってくる。
ごそりと動いた慶の両手がクッションから離れ、私の腰へと絡みついた。あ、寝ぼけてるなこれ。
「慶、私は抱き枕じゃないぞ」
「んー…」
「限りなく邪魔ですぞ」
剥がそうとしても剥がれないので、腕はもう放置した。
諦めて慶の頭を引き続き撫でていると、作戦室の扉が開いた。
「太刀川さー、…っんん!?」
「あ、出水くん。お邪魔してまーす」
作戦室に入ってきたのは出水くんだった。
出水くんは私と、私の腰に手を回して抱き着く慶を見て駆け寄って来た。ちなみに慶は先程から完全に寝入っている。
「ちょ、何してるんすか」
「頭撫でてたら落ちた」
「え?なんでまた」
「頭を撫でると良いって聞いたから実践中。慶の頭が少しでも改善されればいいなと」
「へー」
慶の頭を撫でつつ出水くんにそう説明すれば、納得したような声を出しながら慶をつっついた。つつかれた慶は微動だにしない。
「あー、本当だ。本気で寝てますねこの人」
「まあ、最近レポートやら任務やらで追われてたからね」
仕方ないでしょ、ともふもふしている慶の頭をぽんぽん叩いて言えば出水くんが口を開いた。
「ねえ、それ俺にもやってくださいよ」
「いいけど、これどかないよ?」
「足元に座るんで良いです」
「足元で良いのか」
足元でいいと言い切った出水くんはどこかに仕舞ってあったらしいラグを私の足元に持ってきて、その上に座り込んだ。
「お願いします」
慶と同じクッションを抱えてソファに乗せ、期待した目でこちらを見上げる出水くんに、あいてる右手をそっと伸ばす。
ワックスかなにかでセットしてあるんだろうな、と思いつつ伸ばした手は、思ったよりも柔らかな感触に触れた。
「あ、ふわふわ」
「今は何もつけてないっすからね」
「そっか」
柔らかな髪を梳くように撫で始めると、出水くんがゆっくりと目を閉じた。む、まつげ長い。
「ん…これ良いっすね」
「出水くんもお気に召したようでなにより」
すうすうという慶の寝息をBGMに、しばし静かに頭を撫で続けていると、出水くんの頭が前傾し始め、ゆっくりと抱えたクッションに埋もれていく。
「出水くん?」
「う、だめっすこれ…」
太刀川さんがオチたのわかる…、とクッションに顔を埋めたまま呻くように言ったきり出水くんの動きが停止した。
「君もか」
そのまま寝息を立て始めた出水くんに、呟く。
確か5時から任務だったか、と時計を確認する。まだ4時20分か。
「たまにはいいか」
もうしばらく寝かせてやろう、と寝入る2人の頭を撫で続けた。
ついでに後で寝顔の写真撮ってやろう。
頭を撫でる
1、太刀川隊
(女王がイケメンを侍らせてる様にしか見えないですよお)
(あ、国近ちゃん)
(ついでに私も撫でて下さいよー)
(よしおいでー)
.
あらすじ。
頭を撫でると良いというアバウトな情報を手に入れたので太刀川隊を撫で回してきた。以上。
「ということで撫でさせて」
「膝枕してくれるならいいですよ」
「それくらいお安い御用さ」
L字型のソファの真ん中に座って膝を差し出せば、菊地原くんが横向きに頭を乗せた。
菊地原くんの長い髪がさらりと流れる。
「歌川くんは反対側で良い?」
「はい」
「歌川はクッション使いなよね」
「お前なあ…」
片膝ずつ貸せばいいかと思っていたら菊地原くんがうつ伏せになって私の両膝の上に乗り上げて、歌川くんに向かってクッションを投げた。
クッションを受け止めた歌川くんは呆れたような顔をして、占領された私の膝に立てかけるようにクッションを置いた。
「失礼します」
「はい、どうぞー」
歌川くんはソファに横向きにクッションに倒れこんだ。
その頭頂部を見つめる菊地原くんは膝の上で腕を組んで顎を乗せた。どうやらこの体勢のまま動かなそうだ。
「では失礼」
「はい」
「どうぞー」
一言断ってから、二人の頭に手を伸ばす。
ふわりとした感触を伝えてきたのは菊地原くんの長くてさらさらな髪の毛。対する歌川くんは少し固めの感触。ワックス使ってるからかな。
「歌川くんごめん、髪の毛崩れちゃう」
「いいですよ、後で直しますから」
「遠慮なくやっちゃってください、ぼくが許します」
「そう?」
「お前はなんでそう偉そうなんだ」
二人のやりとりに笑いながら、両手を動かす。
ふわふわした菊地原くんの髪をすくように撫でつつ、歌川くんの髪を極力崩さないように纏めてある方へ流すように撫でる。
撫で始めれば二人は目を閉じて静かになったので、しばらく無言で頭を撫で続けると歌川くんが口を開いた。
「…これは、太刀川隊がやられたのもわかりますね…」
「そう?」
歌川くんも眠くなってきているのか、しゃべる速度は普段よりゆっくりだ。
膝の上の菊地原くんも、ふあ、と欠伸をする。
「すっごく眠い」
「いいよ寝ても。時間まだあるでしょ?蒼也さん来たら起こしてあげるし」
「ですが、」
「じゃあお願いします。おやすみなさい」
「はいおやすみ」
お昼寝を渋る歌川くんとは正反対に、菊地原くんはさっさと就寝宣言をして黙り込んだ。
菊地原くんを呆然と見つめる歌川くんを見て、この子らは本当、いちいち可愛いなあと口元が弧を描いた。
「歌川くんもおやすみー」
「ああ、もう…わかりました。おやすみなさい」
歌川くんの頭を撫でながら言えば、半ばやけになった歌川くんも宣言して目を閉じる。
それに上機嫌になるけど、撫でる手は一定のリズムを崩さない様にゆっくり動かす。
せっかく眠れそうなのに邪魔しちゃ悪いからね。
「…」
「すー…」
「……なんだかんだ言って歌川の方が先に落ちたじゃん」
しばらくして聞こえてきた寝息に、眠っていなかったらしい菊地原くんが呟いた。
その声に極限まで小さくした声で応える。菊地原くんの耳なら問題なく拾える音量だろう。
「最近夜間任務多かったんでしょ?」
「はい」
「菊地原くんは学校とかでうまく睡眠とってそうだけど、歌川くんは真面目だから寝てないんだろうね」
「歌川、そういうとこ不器用ですからね」
二人の頭をゆっくり撫で、菊地原くんにも睡眠を促す。
うまく寝ていると言っても、きっと身体は疲れているはずだ。
「菊地原くんもお疲れでしょ、少し寝たら?」
「そうします」
素直に頷いた菊地原くんがそれっきり静かになり、少しして寝息が聞こえてきた。
撫でる手は止めずに、静かに二人の寝顔を眺めていると、後ろにある作戦室の扉が開いた音がした。
振り返れば、書類に目を落としながら入ってきた蒼也さんはソファに座っている私の姿を見つけて口を開いた。
「なんだ、来ていたのか」
「蒼也さん、お邪魔してます」
そう言いながら、近づいてくる蒼也さんに歌川くんの頭を撫でる手を一旦止めて、口元に人差し指を立てて静かにする様に促す。それをみた蒼也さんは一度歩みを止めて私に小声で聞く。
「寝ているのか」
「ええ、二人とも」
そう言うと極力足音を殺して近づいてきた蒼也さんが、私の後ろからソファを覗き込み、静かに寝息を立てる二人を見て、ああ、と頷いた。
「やはり無理をさせていたな」
「今日の任務は何時からです?」
「2時間後だ。それまで悪いが寝かせておいてくれるか」
「もちろんです」
そう答えれば、蒼也さんが目元を細めて私の頭を撫でた。
そして、「俺はその間にこの書類を片付ける」と持っていた書類の束をテーブルに置き、私たちの座っているソファの反対側、一人用ソファに座り込んだ。
「蒼也さんもあとで頭を撫でさせてください」
「なんでだ」
「頭を撫でるとなんか良いらしいんです」
「随分アバウトだな」
小さく笑った蒼也さんが、あとでな、と呟く。
蒼也さんに許可を貰ったから、あとで歌歩ちゃんもまとめて頭を撫でまわそうと心に決める。せっかくなら全員の頭を撫でまわしたいし。
そう思いながらすやすやと寝息を立てる二人の頭を撫でていると、2時間なんてあっという間に過ぎ去っていった。
頭を撫でる
2、風間隊
(しかしよく寝ているな)
(お疲れなんでしょう)
.
あらすじ。
頭を撫でるといいというアバウトな情報を入手後、太刀川隊に続き風間隊も撫でまわしてきた。以上。
「あ~。なるほど、そういうことか」
「そういうことです」
小さく頷く私の前には完全に寝入っている三輪くんと奈良坂くんを見下ろす米屋くんが居た。
この時点で既に私の膝はフルレンタルされている。右に奈良坂くん、左に三輪くんだ。
「えーいいな、俺にもやってくださいよー」
「むしろメインは米屋くんの予定なんだけどさ」
三輪隊の作戦室に来たら奈良坂くんと古寺くんのスナイパー組しかいなくて。
それでも一応説明したら「じゃあオレにもしてください」と奈良坂くんが言ってきたのだ。彼は餌付けに成功したら途端に懐くようになった。
「古寺くんも撫でてたんだけど、用事があるとかで出てっちゃったんだよね」
それからしばらく奈良坂くんのさらさらヘアーを堪能していたら、三輪くんがやってきてとんでもないものを見てしまった!みたいな顔で固まったんだよなあ。全力で二度見された。
「秀次、よく撫でさせてくれましたね?」
「遠慮してたんだけど、奈良坂くんに引っ張られてあれよあれよと」
「マジか」
唸る三輪くんに5分だけですよと許可を貰って撫でてたら、なんと彼は3分くらいで落ちたのだ。それからかれこれ15分は経ってるけど、まあいいだろうと起こさずにいる。ちなみに奈良坂くんは三輪くんを引っ張り込んでからすぐに静かに寝息を立て始めている。
「、ん…」
「「あ」」
身じろいだ三輪くんが、ゆるゆると瞼を持ち上げた。話し声がうるさかったか、と米屋くんと私が静かになると、三輪くんはまたゆっくりと瞼を閉じて、今度は思いっきり見開いた。
「ッ!」
そのままがばっと起き上ったものだから、身体が揺れて奈良坂くんまで目を覚ましてしまった。
「陽介…?」
「よお、お前ら随分ぐっすり寝てたな」
「…まだ時間があるだろう、もうすこし」
顔だけ傾けて時計を確認した奈良坂くんは、任務までの時間がまだ余っていると判断してもう一度膝の上で目を閉じた。
対する三輪くんは、私の膝から転げ落ちるように降りて立ち上がり、何とも言えない悔しげな表情でわなわなしている。
「い、ったいどれくらい…」
「15分くらいかな」
「そんなに…!」
私に対して寝顔をさらしたのがショックだったらしい三輪くんは、「すみませんでした!」と叫んで踵を返して作戦室から出て行ってしまった。
「ああ…行ってしまった…」
「アレは恥ずかしがって逃げたんだろーなー」
からから笑う米屋くんが、三輪くんを見送ってこちらを見た。私の膝には空きが出来たから、頭を撫でて欲しいのだろう。
「撫でる?」
「もちろんっ!」
お邪魔しまーす、なんて三輪くんが居た場所にごろんと転がる。そういえば、カチューシャちょっと邪魔になっちゃうな。
「米屋くん、カチューシャとってもいいかな」
「あ、すんません」
取ります取りますと言った米屋くんが、ひょいとカチューシャを取って横のサイドテーブルへ放った。その時に普段上げられている髪の毛がぱさりと落ちてきて、普段は見ない髪型になって感嘆の声を上げる。
「おー」
「ん?」
「カチューシャ取ると誰だかわからなくなるね」
「あー、それよく言われます」
笑みを零した米屋くんが、今度こそお邪魔しますーと私の膝の上に頭を乗せる。
「じゃあちょっと撫でさせてねー」
「お願いしまーす」
そうやって米屋くんのぱさぱさした髪を撫でさせてもらっていれば、すぐに任務の時間がやってきてしまった。
何とも言えない表情をした三輪くんが古寺くんと共に帰ってくると、自然に奈良坂くんが目を覚まして起き上がる。
「ありがとうございました」
「いいえー」
「陽介、起きろ」
「んあ?」
奈良坂くんは寝起きとは思えない機敏な動きでぐっすり寝ていた米屋くんを起こす。米屋くんはもしょもしょ言いながらもゆっくりと頭を起こした。
任務へ向かう彼らの邪魔になってはいけないと、私も立ち上がって伸びをする。
「さて、じゃあ任務頑張ってね。撫でさせてくれてありがとう、お邪魔しました!」
送り出してくれる彼らに手を振って、三輪隊の作戦室を後にした。
頭を撫でる
3、三輪隊
(あ、蓮!ちょっと頭撫でさせて)
(あら、じゃあ私も撫でさせてもらうわ)
月見さんとはいつかのんびり絡ませたい
あらすじ。頭を撫でるとなんかイイらしいと聞きかじったので太刀川隊と風間隊、三輪隊の頭を撫でてきた。以上。
「だってよ」
「ということでお邪魔しております」
「ああ…」
仁礼ちゃんと一緒に、影浦隊の作戦室にあるこたつの中から挨拶をする。来た時は仁礼ちゃんしかいなかったけれど、勧められてこたつでまったりしていたら絵馬くんがスナイパーの合同訓練から帰ってきたところだった。
「絵馬くん、頭撫でさせてくれる?」
「減るモンじゃねーしな」
「えー…」
誘ってみるも、絵馬くんはあんまり乗り気じゃなさそうだ。無理強いするつもりはないし、本人が嫌なら仕方ない、諦めるか。
「嫌ならいいよー、ごめんね」
「いえ…ヒカリは?」
「ユズルが来るまで、さんざん撫でてもらったに決まってるだろう!」
これでアタシのステータスも上昇間違いなしだ!と笑う仁礼ちゃんに釣られて笑いを零していれば、絵馬くんがこちらへ近づいてきた。
「…ちょっとだけなら」
「え、いいの?」
頷いて換装を解く絵馬くんを見ながら「やったー」と思っていれば、仁礼ちゃんもごそごそ近づいてねだって来た。
「アタシももう1回!」
「もちろん」
「じゃあさっきアタシが膝枕してもらったから、今度はユズルの番だな!」
「えっ」
「遠慮しなくていいぞ!アタシは散々撫でてもらったからな!」
困惑する絵馬くんを、有無を言わせず引っ張って私の膝の上に転がす仁礼ちゃん。
アタシはこっちでいいから!とこたつに潜り込んで上半身を出した仁礼ちゃんと反対に、膝の上の絵馬くんはがっちがちに固まっている。
「絵馬くん、ほんとにいいの?」
「いいですもう…」
好きにして下さい、と溜め息を吐いた絵馬くんに苦笑して、このまま頭を撫でさせてもらう事にする。
「では失礼して」
俯せになって強請る二礼ちゃんの頭を左手で撫でつつ、こたつの方を向いている絵馬くんの側頭部に右手を滑らせた。
◆
しゅんと扉が開く音がした瞬間、大人しく撫でられていた絵馬くんが飛び起きて思いっきり頭突きを食らった。
「うぐっ!」
「いっ、あ、ごめんなさい!」
ごちって鳴った!ごちって!と強打した額を押さえて蹲る。
びくっと震えた衝撃でも、さきほどから夢の国に旅立っている二礼ちゃんはぴくりとも反応しなかった。この子すごい。びりびりした痛みに耐えていれば、絵馬くんのおろおろする声と、呆れたような声が降って来た。
「なにしてんだ、お前等」
「影浦くん…!」
「ゾエさんもいますよー」
顔を上げれば、影浦くんと北添くんの2人の姿が見えたので、額を押さえながら頭を下げた。
「お邪魔しております…」
「おー、デコ赤くなってんぜ」
「ユズル、石頭だからたんこぶ出来ちゃうかもねえ」
「ごめんなさい…」
へにゃりと項垂れた絵馬くんが再度謝ってくるけれど、別に怒ってはいないのだ。しゃがみこんだ絵馬くんの頭をわしわし撫でて言う。
「大丈夫…!影浦くんの頭を撫でさせてもらえれば…!」
「なんでそうなる」
不満げな声を上げた影浦くんが言ったところで、この2人にはまだ説明していなかったことに気付く。絵馬くんを撫でていた手を膝に置いて、2人に向き直った。
「実はいま、皆の頭を撫でる旅の途中でして…」
「なんでだ」
「頭を撫でるとなんかイイらしく。撫でさせてください」
影浦隊は君たち2人でコンプリートなんだ!と言えば北添くんがのんびりと言った。
「いいじゃんカゲ、撫でてもらえば?」
「ああ?ならゾエ、手前もだぞ」
「はいはい」
面倒くせえと言った影浦くんは、それでも私の前にしゃがみ込んだけど、北添くんはなぜか私の後ろに回ってきた。首を傾げれば、北添くんはにこにこしながら口を開く。
「撫でてばっかりでつまらないでしょ?先にゾエさんが撫でてあげますよ~」
「わーい。じゃあ私の膝は影浦くんに貸しましょう」
「…あー」
膝枕かよ、と思っているのがばしばし伝わってくるけれど、影浦くんは大人しく私の膝の上に頭を乗せて寝っころがった。上を向くと北添くんが見えるから、さっきの絵馬くんみたいにこたつの方を向いた横向きだ。
「じゃあ失礼ー」
「おー」
「ゾエさんも失礼しまーす」
「はーい」
北添くんの大きなてのひらに撫でられながら、影浦くんの跳ねる髪の毛をそっと撫でる。絵馬くんが持ってきてくれたお茶を飲みつつ、影浦くんの頭を撫でるのを楽しむことにした。
頭を撫でる
4.影浦隊
(すー…)
(オイ、アンタが寝てどうする)
あらすじ。頭を撫でるとイイと聞いたので、太刀川隊を筆頭に風間隊、三輪隊、影浦隊のメンバーの頭を撫でまわしてきた。
「わかっていたとはいえ、北添くんの魔力は危険だった…」
うっかり私が眠ってしまって、影浦くんを撫でる手がおざなりになってしまったからな、と反省する。
でも満足したしいいか、とラウンジでビスケットを摘まみながらカフェオレを飲んでいた。
「―…あ」
「ん?」
いた、という呟きに顔を上げると、荒船くんがやってくるのが見えた。
「お疲れ様です。前いいですか」
「お疲れさま、どうぞ座って」
一直線に私の元へやってきた荒船くんは、私が勧めると前のソファに座り込んだ。
「ビスケットどうぞ。今日は何か用事?」
「頂きます。あの、用事というか…」
今日は特に約束してないよね?と首を傾げると、荒船くんはビスケットを齧りながら珍しく言い淀んだ。言葉の続きを待てば、荒船くんはちょっとだけ視線を彷徨わせてから、口を開いた。
「出水に聞いたんですけど、」
「うん」
「今日、いろんな人の頭を撫でてるらしいじゃないですか」
「ああ、やってたよ」
その話か、と荒船くんに頷く。頭を撫でると良いらしいんだ、と言って太刀川隊が一番初めで、風間隊と三輪隊、あとは影浦隊も撫でてきたよと指を折りながら告げる。
「それで、」
「ん?」
「…その、」
ほんと珍しいな、と荒船くんを見る。ここまで荒船くんが言いよどむなんて、何があったんだろうと首を傾げる。じっと見ていれば、ようやく決意したらしい荒船くんがこちらを見た。
「…俺も、撫でてくれませんか」
「え」
思いがけない言葉に驚きを隠せない声が出てしまった。その声を聞くと同時に、荒船くんがばっと立ち上がる。
「なんでもないです失礼します」
「ちょ、ちょ待って待って!」
走り出しそうな勢いで席を立った荒船くんの袖をひっつかんで静止を掛ける。荒船くんが言い淀んでいたのはこのお願いがしたかったからか。引きちぎれそうな隊服の袖を必死に引っ張れば、荒船くんはなんともいえない顔でこちらを見下ろした。
「……笑いませんか」
「笑わないよ。ごめん、びっくりしちゃって」
座って、ともう一度勧めれば荒船くんはゆっくりとソファに腰を下ろした。荒船くんが逃げない内にと、周りに聞こえないくらいの声でお願いをする。
「撫でていいなら、ぜひ撫でさせてください」
「……お願いします」
同じく小さな声で荒船くんが了承の言葉を呟く。ここでいい?と聞けば小さく頷いたので、ここで撫でさせてもらう事にした。どうせ私に用がある人以外は、この奥の席にやってこないし。
「どうしよっかな、ここだと膝が貸せないから…テーブルに腕組んで頭乗せてくれる?」
「ん、はい」
帽子を取った荒船くんが、テーブルに乗せて組んだ腕の上に伏せ、こちらを見上げた。
「では、ちょっと失礼」
「はい」
そっと伸ばしたてのひらで、荒船くんの髪の毛に触れる。思ったよりつんつんしていない感触におおと思いながら、手のひら全体で荒船くんの頭を撫でさせてもらう。
「…」
「…」
早々に目を閉じた荒船くんが、少しだけ安堵の表情を浮かべている。18歳の男子高校生が年上に頭を撫でてくれってお願いしたんだもの、勇気がいるよなあ。当真くんとか、犬飼くんならすぐ言ってきそうだけど。
「…きもちいい、です」
「お、よかった」
ぽつりと零された言葉に笑みをこぼす。とりあえずは荒船くんが満足するまで撫でてあげようと、空いてる手でカフェオレを一口飲み込んだ。
頭を撫でる
5.荒船くん
(すー…)
(荒船くん、起きないな…)
頭を撫でる編、これにてお仕舞い!
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