荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
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加古さんと炒飯を
目の前にふよりと漂う白い湯気。食欲を誘うごま油と、からりと揚げられたにんにくの香り。黒江ちゃんと2人並んで、目の前の炒飯をれんげいっぱいに掬って口へ運んだ。
「おいしい!」
「おいしいです」
「そう?気に入ってくれて良かったわ」
私の言葉に嬉しげに目を細めた望さんも、自分の前に置かれた炒飯にれんげを伸ばした。
ただいま、加古隊作戦室にてお昼ご飯をご馳走になっている最中。書類を届けに来たのが丁度お昼時だったので、望さんの好意に甘えた感じだ。
「本当に美味しいです…!いいな、黒江ちゃんいつもこんな美味しい炒飯食べてるんだ」
「時々違う炒飯も食べますけどね」
もぐもぐもぐ、と頬を膨らませながら炒飯を食べる黒江ちゃんが呟く。違う炒飯と言えば、よく堤さんとか慶が犠牲になってるっていう創作炒飯の事だろう。
「望さん、どうしてあの組み合わせを考え付くんですか?」
「そうね…案外合うんじゃないかしらと思った組み合わせとか、食べさせる人の苦手な食べ物を混ぜて作ったりかしら。もちろん好きな食べ物を合わせる事もあるわよ」
「へー」
そんな創作工程が…と思っていれば黒江ちゃんが言う。
「堤さんと二宮さんが好きだからって、いくらとカスタードを合わせたことがありましたね」
「え、それは怖いくらい味の想像がつかないですけど」
「うふふ。でも食べてくれるもの」
にこりと機嫌良さ気に笑う望さん。この笑顔で死人が出るのだ。人は見かけによらない…。
「今度、蒼にも何か作ろうかしら?」
「あ、じゃあお手柔らかにお願いします」
1回くらいは食べてみたいと頷けば、望さんは機嫌良さ気に笑って、反対に黒江ちゃんは信じられないような物を見た顔でぴくりと頬をひきつらせた。
◆
あれから数日後。
午前中の任務が加古隊とかぶったので、早くも創作炒飯を作ってもらう事になった。
「今日の望さん、すごい上機嫌だね」
「自らあの創作炒飯を食べたいって言う人が出現しましたからね。気合入ってるんでしょう」
お気の毒様です、と神妙な顔をした黒江ちゃんが呟く。隊室の手触りの良いソファに2人並んで、簡易キッチンで上機嫌に鍋をふるう望さんの後ろ姿を見ていた。
「黒江ちゃん、今日作ってくれる炒飯はどんなのか知ってる?」
「秘密だそうです。でも多分、この前聞いたチーズは入ってるかと」
「だろうねえ」
前回、帰り際に聞かれた好きな食べ物に「最近チーズにはまってる」と言ったからだろう。実際ここから見えるキッチンの片隅には何種類かのチーズがドン!と置かれている。
「今までで一番きついなって思ったのは?」
「イカの塩辛とすじこの炒飯を苺ゼリーで固めたものです」
「出会っちゃいけない組み合わせに聞こえる」
望さん、味の想像がつかない炒飯作るのうまいなあふふふ。なんて現実逃避をしてから、ふとその炒飯の犠牲者が気になった。私の視線を感じてか、黒江ちゃんが呟く。
「食べたのは堤さんです。動かなくなったので太刀川さんが回収しに来て、二次被害が」
「うわあ…どうしようちょっとドキドキしてきた」
「もう遅いですよ」
心臓の鼓動が加速してきたのを実感していれば、キッチンから望さんが戻ってきた。手にふわふわと湯気を立てる、白い炒飯(らしきもの)を携えて。ああ、黒江ちゃんの分もちゃんとある…
「お待たせ蒼、出来たわ」
「ありがとうございます」
「今回は甘い雰囲気で作ったの」
「おお…」
ことりと私達の前に置かれたのは、大量のチーズ(多分)が下の炒飯が見えないほど掛けられて、右半分へは斜めにパステルカラーの金平糖がちりばめられ、ついでに左半分へはファンキーな色をしたゼリービーンズが杭のように並んで突き刺さっているものだった。
ついでというか、生クリームで綺麗にデコレーションされてる…。これ初見なら絶対ケーキと間違える。
「望さん、これ写真撮ってもいいですか?」
「ええ、勿論よ」
にこにこ笑う望さんに許可をもらい、携帯のカメラで白い炒飯を撮影する。何枚か写真を撮って、よしと気合を入れてスプーンを持った。れんげでないのは雰囲気的なものだろう。
「いただきます」
「…いただきます」
私がスプーンを持ったのを確認して、黒江ちゃんも同じようにスプーンを持った。言い出したのだから、私から食べなくては。とりあえず端っこからと手前側の一部をすくい上げると、チーズがとろけて糸を引いた。そうしてやっと見えた内部は、あの美味しそうないたって普通の炒飯。
「ふふ」
全く同じ炒飯を持ってきた望さんは、上機嫌に笑いながら私たちを見ている。意を決して、すくい上げた白い炒飯を口に運んだ。
「…!」
上に掛かっていたのはモッツァレラチーズのようだ。ふわっとしたチーズの香りと甘さがない生クリームが、その下の香ばしい炒飯と混ざる。あ、あれ…これは思ったより…?
「…望さん」
「なあに?」
「これ、結構好きかもしれません…」
「!ほんと」
思ってたより美味しい…と告げれば、望さんは目を細めて笑った。隣を見れば、黒江ちゃんももぐもぐと白い炒飯を食べていた。
「上のチーズと生クリームが甘くないから、わりと合う…」
炒飯の天辺で存在感を放つ金平糖たちは、いっそ箸休め程度に齧れば気にならない気がするし。ちょっとどころかすごく油分オーバーな気がするけれど、そこは冷たい烏龍茶でごまかす。分解してくれ。
「良かったわ、そこまで喜んでくれる人はなかなかいないの」
「今回のは結構美味しいと思います」
「あら、双葉も?」
「はい」
黒江ちゃんも炒飯を頬張りながら頷いている。そんな2人を見ながら、これは数少ない当たりの創作炒飯だということを噛み締める。望さんの気分に感謝だ。
「蒼、気が向いたらまた来て頂戴」
「はい、また遊びに来ますね」
今度は手土産持ってきますと頷いて、白い炒飯を食べ進めていった。
10万hitリクエスト企画
加古さんの創作炒飯初体験
(慶さん聞いて、望さんの創作炒飯食べてきた)
(なんで無事なんだ)
(それが美味しくて)
10万hit御礼企画、置き傘さんのリクエストでした!
創作炒飯を創作するのが大変でした
目の前にふよりと漂う白い湯気。食欲を誘うごま油と、からりと揚げられたにんにくの香り。黒江ちゃんと2人並んで、目の前の炒飯をれんげいっぱいに掬って口へ運んだ。
「おいしい!」
「おいしいです」
「そう?気に入ってくれて良かったわ」
私の言葉に嬉しげに目を細めた望さんも、自分の前に置かれた炒飯にれんげを伸ばした。
ただいま、加古隊作戦室にてお昼ご飯をご馳走になっている最中。書類を届けに来たのが丁度お昼時だったので、望さんの好意に甘えた感じだ。
「本当に美味しいです…!いいな、黒江ちゃんいつもこんな美味しい炒飯食べてるんだ」
「時々違う炒飯も食べますけどね」
もぐもぐもぐ、と頬を膨らませながら炒飯を食べる黒江ちゃんが呟く。違う炒飯と言えば、よく堤さんとか慶が犠牲になってるっていう創作炒飯の事だろう。
「望さん、どうしてあの組み合わせを考え付くんですか?」
「そうね…案外合うんじゃないかしらと思った組み合わせとか、食べさせる人の苦手な食べ物を混ぜて作ったりかしら。もちろん好きな食べ物を合わせる事もあるわよ」
「へー」
そんな創作工程が…と思っていれば黒江ちゃんが言う。
「堤さんと二宮さんが好きだからって、いくらとカスタードを合わせたことがありましたね」
「え、それは怖いくらい味の想像がつかないですけど」
「うふふ。でも食べてくれるもの」
にこりと機嫌良さ気に笑う望さん。この笑顔で死人が出るのだ。人は見かけによらない…。
「今度、蒼にも何か作ろうかしら?」
「あ、じゃあお手柔らかにお願いします」
1回くらいは食べてみたいと頷けば、望さんは機嫌良さ気に笑って、反対に黒江ちゃんは信じられないような物を見た顔でぴくりと頬をひきつらせた。
◆
あれから数日後。
午前中の任務が加古隊とかぶったので、早くも創作炒飯を作ってもらう事になった。
「今日の望さん、すごい上機嫌だね」
「自らあの創作炒飯を食べたいって言う人が出現しましたからね。気合入ってるんでしょう」
お気の毒様です、と神妙な顔をした黒江ちゃんが呟く。隊室の手触りの良いソファに2人並んで、簡易キッチンで上機嫌に鍋をふるう望さんの後ろ姿を見ていた。
「黒江ちゃん、今日作ってくれる炒飯はどんなのか知ってる?」
「秘密だそうです。でも多分、この前聞いたチーズは入ってるかと」
「だろうねえ」
前回、帰り際に聞かれた好きな食べ物に「最近チーズにはまってる」と言ったからだろう。実際ここから見えるキッチンの片隅には何種類かのチーズがドン!と置かれている。
「今までで一番きついなって思ったのは?」
「イカの塩辛とすじこの炒飯を苺ゼリーで固めたものです」
「出会っちゃいけない組み合わせに聞こえる」
望さん、味の想像がつかない炒飯作るのうまいなあふふふ。なんて現実逃避をしてから、ふとその炒飯の犠牲者が気になった。私の視線を感じてか、黒江ちゃんが呟く。
「食べたのは堤さんです。動かなくなったので太刀川さんが回収しに来て、二次被害が」
「うわあ…どうしようちょっとドキドキしてきた」
「もう遅いですよ」
心臓の鼓動が加速してきたのを実感していれば、キッチンから望さんが戻ってきた。手にふわふわと湯気を立てる、白い炒飯(らしきもの)を携えて。ああ、黒江ちゃんの分もちゃんとある…
「お待たせ蒼、出来たわ」
「ありがとうございます」
「今回は甘い雰囲気で作ったの」
「おお…」
ことりと私達の前に置かれたのは、大量のチーズ(多分)が下の炒飯が見えないほど掛けられて、右半分へは斜めにパステルカラーの金平糖がちりばめられ、ついでに左半分へはファンキーな色をしたゼリービーンズが杭のように並んで突き刺さっているものだった。
ついでというか、生クリームで綺麗にデコレーションされてる…。これ初見なら絶対ケーキと間違える。
「望さん、これ写真撮ってもいいですか?」
「ええ、勿論よ」
にこにこ笑う望さんに許可をもらい、携帯のカメラで白い炒飯を撮影する。何枚か写真を撮って、よしと気合を入れてスプーンを持った。れんげでないのは雰囲気的なものだろう。
「いただきます」
「…いただきます」
私がスプーンを持ったのを確認して、黒江ちゃんも同じようにスプーンを持った。言い出したのだから、私から食べなくては。とりあえず端っこからと手前側の一部をすくい上げると、チーズがとろけて糸を引いた。そうしてやっと見えた内部は、あの美味しそうないたって普通の炒飯。
「ふふ」
全く同じ炒飯を持ってきた望さんは、上機嫌に笑いながら私たちを見ている。意を決して、すくい上げた白い炒飯を口に運んだ。
「…!」
上に掛かっていたのはモッツァレラチーズのようだ。ふわっとしたチーズの香りと甘さがない生クリームが、その下の香ばしい炒飯と混ざる。あ、あれ…これは思ったより…?
「…望さん」
「なあに?」
「これ、結構好きかもしれません…」
「!ほんと」
思ってたより美味しい…と告げれば、望さんは目を細めて笑った。隣を見れば、黒江ちゃんももぐもぐと白い炒飯を食べていた。
「上のチーズと生クリームが甘くないから、わりと合う…」
炒飯の天辺で存在感を放つ金平糖たちは、いっそ箸休め程度に齧れば気にならない気がするし。ちょっとどころかすごく油分オーバーな気がするけれど、そこは冷たい烏龍茶でごまかす。分解してくれ。
「良かったわ、そこまで喜んでくれる人はなかなかいないの」
「今回のは結構美味しいと思います」
「あら、双葉も?」
「はい」
黒江ちゃんも炒飯を頬張りながら頷いている。そんな2人を見ながら、これは数少ない当たりの創作炒飯だということを噛み締める。望さんの気分に感謝だ。
「蒼、気が向いたらまた来て頂戴」
「はい、また遊びに来ますね」
今度は手土産持ってきますと頷いて、白い炒飯を食べ進めていった。
10万hitリクエスト企画
加古さんの創作炒飯初体験
(慶さん聞いて、望さんの創作炒飯食べてきた)
(なんで無事なんだ)
(それが美味しくて)
10万hit御礼企画、置き傘さんのリクエストでした!
創作炒飯を創作するのが大変でした