荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
菊地原くんと小春日和
春の陽気が差し込む自室の窓辺。天気がいいからと移動させたソファの上に仰向けに寝そべり、日向ぼっこを楽しんでいた。
「良いかぜ…」
半分ほど開けた窓からは、春の暖かい風がそよりと入り込んでカーテンを揺らしている。なんという幸せ、と春を感じながら諏訪さんに借りた小説を読んでいれば、ぴこんという電子音が聞こえた。
「んー?」
同じく移動させたテーブルの上にある携帯を手探りで引き寄せて画面を見る。表示されているのは風間隊の後輩、菊地原くんからのメッセージだった。
『ぼくいま暇してるんですけど、蒼さんどこにいます?ちょっと相手して下さいよ』
「お、珍しい。しますとも」
部屋に居るからおいでーと返信すれば、すぐに『了解』と返ってくる。菊地原くんが来るなら移動させていないソファも窓辺に持ってくるか、と身体を起こして立ち上がった。
ぐうっと身体を伸ばして眠気を払い、栞を挟んだ本と入れ替わりに同じくテーブルに置いていたトリガーを拾う。
「トリガー起動」
しゅん、と生身からトリオン体に換装する。生身だとソファなんかの重い物の移動は難しいけど、トリオン体なら楽勝だしとソファに手を掛けて、持ち上げようとしたところでチャイムが鳴った。
「あれ、はやいな」
とりあえずソファを移動させるのは後回しにして、玄関へ向かう。鍵を開けて扉を開いたら、私服姿の菊地原くんが立っていた。
「早かったね、どうぞ入って」
「おじゃまします」
玄関に入って来た菊地原くんは、私の姿をみて首を傾げた。
「なんでトリオン体なんです?」
「ソファを移動させようとしてたとこだったもんで」
「なんだ、それくらいぼくがやりますよ」
靴を揃えた菊地原くんが、私のあとについて来ながらそう言う。
「重いよ?」
「大丈夫ですよ。これですか?」
「うん」
リビングに入れば、菊地原くんが私と同じようにトリガーを起動する。風間隊の隊服を身にまとった彼は、私が運ぼうとしていたソファを軽々と持ち上げた。
「で、これどこに運べばいいんですか」
「こっちの窓のとこにお願い」
「了解」
先導する私の後を菊地原くんがソファを抱えたまま、すたすたとついてくる。指定したところへソファを置いてもらったので、先に換装を解いた。
「助かっちゃった」
「いーえ。蒼さんに怪我でもされたら困りますし」
「ありがとう。いま飲み物持ってくるから座ってて」
同じように換装を解いた菊地原くんをソファに促して、キッチンへ向かう。良い天気だし、春を満喫するかと戸棚から緑茶のティーバックを引っ張り出す。ケトルを引き寄せて、ティーポットにお湯を注いだ。
「えーと、お茶菓子は…」
緑茶を抽出している間に、冷蔵庫を開けて昨日城戸さんから貰った豆大福を引っ張り出す。菊地原くん、わりと好き嫌いがあるけどこれ大丈夫かな。
「菊地原くーん」
「なんです?」
「豆大福食べられる?」
「平気ですよ」
問いかけた声には平然とした答えが返ってきた。ならば持っていこう、と豆大福の乗ったお皿と、いい色になった緑茶を注いだマグカップをお盆に乗せて窓辺へと戻った。
「おまたせ」
「ありがとうございます」
マグカップと豆大福を菊地原くんの前に置けば短くお礼が返ってくる。彼の前に置いたソファに座り、マグカップを引き寄せた。
「豆大福は城戸さんに貰ったから、たぶんいいとこのだよ」
「ん、いただきます」
お茶をひとくち飲み込んでから、先に豆大福に手を伸ばした菊地原くんを追うように豆大福のお皿を持ち上げた。
指先でつまめば、もっちりとした触感が伝わってくる。粉を落とさないように気を付けて、豆大福にかぶりついた。
「んんー!」
やわらかな求肥の下に、甘すぎない餡子がぎっしりと詰まっている。口の中に広がるやさしい美味しさに、さすが城戸さん…!と心の中で親指を立てる。菊地原くんにも目をやれば、彼もこの豆大福を一心不乱に咀嚼しているところだった。
「、おいしいですね」
「ね!」
もぎゅもぎゅと豆大福を咀嚼して、熱い緑茶を飲み込む。開けっ放しの窓からは暖かい日差しと柔らかな風。うー、春だ。もうすぐ桜も咲くだろうし、お花見行きたいなあ。
「ねえ、今度風間隊の皆でお花見行かない?」
「あんまり煩い所は嫌ですよ」
「それはもちろん警戒区域内ですよ。何か所か桜があるとこ知ってるし、静かにお花見出来るし」
「ああ、それなら」
こくりと頷いた菊地原くん。警戒区域内ならば彼の耳が苛まれる事もないだろうし、私も許可が取りやすい。桜の開花予報見ておかなきゃな、とお茶を飲み込む。
「警戒区域だと、どの辺に桜があるんです?」
「大きい所だと学校系の所はだいたいあるし、南西の家の庭に大きな枝垂桜があったり、他にもちょいちょい」
「へー」
じゃあ良さそうなところ教えてください、と菊地原くんが言うのに頷く。半分残っていた豆大福をもぐもぐ食べて、白い粉のついた指を拭ってからテーブル端に置いたタブレットを引き寄せた。ぽちりと電源ボタンを押して、警戒区域のマップを呼び出す。
「それじゃ近くからね」
「はい」
同じように豆大福を食べきった菊地原くんと、お茶を飲みながらお花見の場所を決めるべくタブレットを覗き込んだ。
10万hit御礼企画
菊地原くんと小春日和
(ここにしよっか)
(お弁当は作ってくれるんですか)
(お望みなら作りますよ)
10万hit御礼企画、アルトさんリクエストでした。
ありがとうございました!
春の陽気が差し込む自室の窓辺。天気がいいからと移動させたソファの上に仰向けに寝そべり、日向ぼっこを楽しんでいた。
「良いかぜ…」
半分ほど開けた窓からは、春の暖かい風がそよりと入り込んでカーテンを揺らしている。なんという幸せ、と春を感じながら諏訪さんに借りた小説を読んでいれば、ぴこんという電子音が聞こえた。
「んー?」
同じく移動させたテーブルの上にある携帯を手探りで引き寄せて画面を見る。表示されているのは風間隊の後輩、菊地原くんからのメッセージだった。
『ぼくいま暇してるんですけど、蒼さんどこにいます?ちょっと相手して下さいよ』
「お、珍しい。しますとも」
部屋に居るからおいでーと返信すれば、すぐに『了解』と返ってくる。菊地原くんが来るなら移動させていないソファも窓辺に持ってくるか、と身体を起こして立ち上がった。
ぐうっと身体を伸ばして眠気を払い、栞を挟んだ本と入れ替わりに同じくテーブルに置いていたトリガーを拾う。
「トリガー起動」
しゅん、と生身からトリオン体に換装する。生身だとソファなんかの重い物の移動は難しいけど、トリオン体なら楽勝だしとソファに手を掛けて、持ち上げようとしたところでチャイムが鳴った。
「あれ、はやいな」
とりあえずソファを移動させるのは後回しにして、玄関へ向かう。鍵を開けて扉を開いたら、私服姿の菊地原くんが立っていた。
「早かったね、どうぞ入って」
「おじゃまします」
玄関に入って来た菊地原くんは、私の姿をみて首を傾げた。
「なんでトリオン体なんです?」
「ソファを移動させようとしてたとこだったもんで」
「なんだ、それくらいぼくがやりますよ」
靴を揃えた菊地原くんが、私のあとについて来ながらそう言う。
「重いよ?」
「大丈夫ですよ。これですか?」
「うん」
リビングに入れば、菊地原くんが私と同じようにトリガーを起動する。風間隊の隊服を身にまとった彼は、私が運ぼうとしていたソファを軽々と持ち上げた。
「で、これどこに運べばいいんですか」
「こっちの窓のとこにお願い」
「了解」
先導する私の後を菊地原くんがソファを抱えたまま、すたすたとついてくる。指定したところへソファを置いてもらったので、先に換装を解いた。
「助かっちゃった」
「いーえ。蒼さんに怪我でもされたら困りますし」
「ありがとう。いま飲み物持ってくるから座ってて」
同じように換装を解いた菊地原くんをソファに促して、キッチンへ向かう。良い天気だし、春を満喫するかと戸棚から緑茶のティーバックを引っ張り出す。ケトルを引き寄せて、ティーポットにお湯を注いだ。
「えーと、お茶菓子は…」
緑茶を抽出している間に、冷蔵庫を開けて昨日城戸さんから貰った豆大福を引っ張り出す。菊地原くん、わりと好き嫌いがあるけどこれ大丈夫かな。
「菊地原くーん」
「なんです?」
「豆大福食べられる?」
「平気ですよ」
問いかけた声には平然とした答えが返ってきた。ならば持っていこう、と豆大福の乗ったお皿と、いい色になった緑茶を注いだマグカップをお盆に乗せて窓辺へと戻った。
「おまたせ」
「ありがとうございます」
マグカップと豆大福を菊地原くんの前に置けば短くお礼が返ってくる。彼の前に置いたソファに座り、マグカップを引き寄せた。
「豆大福は城戸さんに貰ったから、たぶんいいとこのだよ」
「ん、いただきます」
お茶をひとくち飲み込んでから、先に豆大福に手を伸ばした菊地原くんを追うように豆大福のお皿を持ち上げた。
指先でつまめば、もっちりとした触感が伝わってくる。粉を落とさないように気を付けて、豆大福にかぶりついた。
「んんー!」
やわらかな求肥の下に、甘すぎない餡子がぎっしりと詰まっている。口の中に広がるやさしい美味しさに、さすが城戸さん…!と心の中で親指を立てる。菊地原くんにも目をやれば、彼もこの豆大福を一心不乱に咀嚼しているところだった。
「、おいしいですね」
「ね!」
もぎゅもぎゅと豆大福を咀嚼して、熱い緑茶を飲み込む。開けっ放しの窓からは暖かい日差しと柔らかな風。うー、春だ。もうすぐ桜も咲くだろうし、お花見行きたいなあ。
「ねえ、今度風間隊の皆でお花見行かない?」
「あんまり煩い所は嫌ですよ」
「それはもちろん警戒区域内ですよ。何か所か桜があるとこ知ってるし、静かにお花見出来るし」
「ああ、それなら」
こくりと頷いた菊地原くん。警戒区域内ならば彼の耳が苛まれる事もないだろうし、私も許可が取りやすい。桜の開花予報見ておかなきゃな、とお茶を飲み込む。
「警戒区域だと、どの辺に桜があるんです?」
「大きい所だと学校系の所はだいたいあるし、南西の家の庭に大きな枝垂桜があったり、他にもちょいちょい」
「へー」
じゃあ良さそうなところ教えてください、と菊地原くんが言うのに頷く。半分残っていた豆大福をもぐもぐ食べて、白い粉のついた指を拭ってからテーブル端に置いたタブレットを引き寄せた。ぽちりと電源ボタンを押して、警戒区域のマップを呼び出す。
「それじゃ近くからね」
「はい」
同じように豆大福を食べきった菊地原くんと、お茶を飲みながらお花見の場所を決めるべくタブレットを覗き込んだ。
10万hit御礼企画
菊地原くんと小春日和
(ここにしよっか)
(お弁当は作ってくれるんですか)
(お望みなら作りますよ)
10万hit御礼企画、アルトさんリクエストでした。
ありがとうございました!