荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
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三輪くんを甘やかす
「陽介、この報告書は午前中までと伝えたはずだが?」
「げっマジ!?悪い忘れてた!」
「忘れてたじゃないだろう、その前にも何度も警告した。今書かないとその足斬り落とすぞ」
「ちょ、まてまて悪かったって!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ米屋くんが怒りの表情の三輪くんからどたどたと逃げ回る。それを蓮と一緒に紅茶を飲みながらのんびり眺めていた。珍しく三輪隊の作戦室が騒がしい。
「ねえ蓮、なんか最近三輪くんが30%増しくらいにピリピリしてるように見えるんだけど」
「そうね。隊長の仕事もあるけど、テストが近いから米屋くんの面倒を見るのが大変なんでしょう」
「あ、もうそんな時期か」
じゃあそろそろ私も影浦くんとかに勉強見てくれって頼まれるかな、と思っていればぽつりと蓮が呟く。
「三輪くん、たまには休んでもらいたいのよね」
「いつも忙しなく生きてるって感じがするもんねえ」
「蒼、なにか良いアイデアない?」
「うーん…」
紅茶を飲みつつじいっと三輪くんを観察する。休ませる、というかリラックスしてほしい感じだろう。三輪くんが好きな食べ物とかなら用意できるけど、と考えたところで三輪くんが好きな食べ物が特に思いつかない。蓮も同じようで、紅茶を飲みながら三輪くんを見ている。
「とりあえず甘やかしてみようか」
「そうね、それがいいかしら」
米屋くんをせっついて書類を書かせている三輪くんを見ながら、蓮と2人でそんな結論に至った。米屋くんが書類を書いている間は暇だろうし、さっそく甘やかしてみよう。
「三輪くーん」
「、はい」
「ちょっといいかしら」
「?」
蓮と一緒に手招きすれば、三輪くんは米屋くんを一瞥して近づいてくる。座って座って、と2人の間の席に座らせて彼の目の前にカットしたアップルパイと紅茶を差し出した。
「米屋くん待ってる間にお茶しよ。これ私が焼いたアップルパイ」
「え」
「これは私お薦めの紅茶よ。林檎によく合うの」
「え」
はいどうぞ、と2人掛かりで目の前にセッティングしていけば三輪くんがおろおろし始める。アップルパイに紅茶、という単語を聞いた米屋くんが椅子をがらがらっと回転させてこちらを振り向いた。
「えっいいな蒼さん蓮さん、オレの分は!?」
「もちろんあるけど」
「終わるまでは無しよ」
「了解…」
ぱあっと顔を輝かせた米屋くんを一瞬で追い返して、三輪くんにフォークを持たせる。そっと私を見上げたので、アップルパイ苦手だったかなと首を傾げた。
「ごめん、これ苦手だった?」
「あ、いえ、そういうわけでは」
アップルパイが苦手じゃないとなると、シナモンかな。結構シナモンは好き嫌いがあるし。
「今日のはシナモン控えめだから、食べやすいと思うけど…」
「ああ、この前は少し多かったわね」
私が言った言葉に蓮がこくりと頷いた。前回ここに持ってきたのは、ちょっとシナモンがきつかったのを思い出して苦笑いする。
「ごめんね。あれはちょっと失敗だった」
「それでも美味しかったわよ?今日のはもっと美味しいわ」
「ありがと」
ふふ、と蓮と笑い合っていれば三輪くんがおずおずとフォークを持ち直した。
「いただきます、」
「!どうぞ」
さく、と控えめにフォークをアップルパイに突き刺す三輪くんを、蓮と一緒に紅茶を飲みながら見つめる。今回のは林檎いっぱい入れたから美味しいはずだ、というか美味しい。
先にお茶してる私と蓮の手元には半分くらいになったアップルパイがある。
「、!」
アップルパイを口に運んだ三輪くんがぴくりとなにかに反応する。口に合わなかったかなと見ていれば、早いスピードでもぐもぐ咀嚼して今度は大きく1口分を切り取って口の中に放り込んだ。よかった、この反応は好感触っぽい。
「口に合った?」
「っ、はい、美味しいです」
「よかった」
紅茶を飲みながら聞いてみれば、ぱっと顔を上げた三輪くんがこくこくと頷く。ちょっとだけ年相応の顔が見れたことに口元が緩む。
「紅茶も冷めないうちに飲んで頂戴ね」
「はい」
蓮が勧めた紅茶もゆっくり飲み込んで、三輪くんがほうと息を吐く。蓮の紅茶も美味しいから、口に合ったみたいだ。蓮と目を見合わせてちいさく笑う。
「三輪くんの髪の毛ってつやつやしてるよね。シャンプーなに使ってるの?」
「名前は失念しましたが…黄色い透明なボトルにひまわりの写真が入ってるやつです」
「あら、それなら私と同じね」
「お揃いかー。蓮もつやつやだもんね」
今度私も使ってみようかなー、と思いながらアップルパイへとフォークを伸ばす。ごろりと零れた林檎を先に突き刺して口に運べば、じゅわりと果汁が溢れる。もぐもぐしながら正面を向いたら、三輪くんの口元にパイの欠片がくっついていた。
「ん」
「あら」
私が声を上げると同時に蓮も気づいたらしく、ふふ、と可愛らしい声で笑う。そんな私たちの様子に気が付いた三輪くんはきょとりと目を瞬かせた。
「?」
「口元に欠片がくっついているわよ」
「え、あっ」
ちょん、と蓮が自分の口元を指差しながら悪戯っぽく笑う。瞬時に理解して顔を真っ赤にした三輪くんが左手でばしっと口元を覆った。もごもご言いながら口周りをチェックする姿に、思わず笑みが零れる。
「蓮、三輪くんが可愛い…」
「ふふ、でしょう?ここなら見放題よ」
「あら羨ましい」
三輪くんにわからないように小さい声で自慢されて、素直に羨ましいと笑う。
「またお菓子もって遊びに来ようかな」
「それがいいわ」
「三輪くん、次のお菓子何が良い?出来るやつなら作ってくるよ」
「え、俺が決めて良いんですか」
「いいよー。このアップルパイは蓮のリクエストだし、1個前のフォンダンショコラは奈良坂くんのリクエストだったし」
何か好きなのあれば遠慮せず言ってごらん、と言えばしばらく考え込んでいた三輪くんがおずおずとこちらを見る。
「クッキーとか、ダメですか?あの、白黒の四角いやつが食べたいです」
「アイスボックスクッキーだね、了解」
じゃあそれ次いっぱい作ってくるね、と笑えば三輪くんがほんのり嬉しそうにはにかんだ。なにそれかっわいい!
(ねえ蓮、蓮!三輪くんが!可愛い!)
「ふふ」
あまりの可愛さに、隣に座る蓮の座っている椅子の座面をぺしぺし叩く。そんな私の様子を見た蓮が笑みを零した直後、後ろの方でがらがらと聞き覚えのある音がした。
「秀次終わった!」
「ん、そうか」
米屋くんが椅子から弾かれるようにこちらに向かってくる。その手には書き上がった報告書が握られていて、それを見た三輪くんが食べるペースを少し早める。
「蒼さんオレにもアップルパイください!」
「切り分けてあるから好きなの食べて」
「紅茶も淹れるわね」
「蓮さんあざっす!」
三輪くんがいそいそとアップルパイを食べ終え、米屋くんが書いた書類に目を通しつつ立ち上がる。入れ替わりに米屋くんが席について、切り分けられたアップルパイを引き寄せた。
「ご馳走様でした。書類提出しに行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
ぺこりと頭を下げた三輪くんを蓮と2人で手を振って送り出す。扉が閉まって三輪くんが見えなくなると、蓮に向かって小さく口を開く。
「お試し入隊したい」
「準備しておくわ」
ふふ、と笑う蓮と顔を見合わせて笑った。
20万hit御礼企画!
三輪くんを甘やかす
(蓮、一緒にクッキー作ろうか)
(ええ、そうしましょう)
20万hit御礼企画、寧々さまのリクエストでした!
三輪くん相手は中々書く機会が無かったので新鮮でした。
ありがとうございました!
「陽介、この報告書は午前中までと伝えたはずだが?」
「げっマジ!?悪い忘れてた!」
「忘れてたじゃないだろう、その前にも何度も警告した。今書かないとその足斬り落とすぞ」
「ちょ、まてまて悪かったって!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ米屋くんが怒りの表情の三輪くんからどたどたと逃げ回る。それを蓮と一緒に紅茶を飲みながらのんびり眺めていた。珍しく三輪隊の作戦室が騒がしい。
「ねえ蓮、なんか最近三輪くんが30%増しくらいにピリピリしてるように見えるんだけど」
「そうね。隊長の仕事もあるけど、テストが近いから米屋くんの面倒を見るのが大変なんでしょう」
「あ、もうそんな時期か」
じゃあそろそろ私も影浦くんとかに勉強見てくれって頼まれるかな、と思っていればぽつりと蓮が呟く。
「三輪くん、たまには休んでもらいたいのよね」
「いつも忙しなく生きてるって感じがするもんねえ」
「蒼、なにか良いアイデアない?」
「うーん…」
紅茶を飲みつつじいっと三輪くんを観察する。休ませる、というかリラックスしてほしい感じだろう。三輪くんが好きな食べ物とかなら用意できるけど、と考えたところで三輪くんが好きな食べ物が特に思いつかない。蓮も同じようで、紅茶を飲みながら三輪くんを見ている。
「とりあえず甘やかしてみようか」
「そうね、それがいいかしら」
米屋くんをせっついて書類を書かせている三輪くんを見ながら、蓮と2人でそんな結論に至った。米屋くんが書類を書いている間は暇だろうし、さっそく甘やかしてみよう。
「三輪くーん」
「、はい」
「ちょっといいかしら」
「?」
蓮と一緒に手招きすれば、三輪くんは米屋くんを一瞥して近づいてくる。座って座って、と2人の間の席に座らせて彼の目の前にカットしたアップルパイと紅茶を差し出した。
「米屋くん待ってる間にお茶しよ。これ私が焼いたアップルパイ」
「え」
「これは私お薦めの紅茶よ。林檎によく合うの」
「え」
はいどうぞ、と2人掛かりで目の前にセッティングしていけば三輪くんがおろおろし始める。アップルパイに紅茶、という単語を聞いた米屋くんが椅子をがらがらっと回転させてこちらを振り向いた。
「えっいいな蒼さん蓮さん、オレの分は!?」
「もちろんあるけど」
「終わるまでは無しよ」
「了解…」
ぱあっと顔を輝かせた米屋くんを一瞬で追い返して、三輪くんにフォークを持たせる。そっと私を見上げたので、アップルパイ苦手だったかなと首を傾げた。
「ごめん、これ苦手だった?」
「あ、いえ、そういうわけでは」
アップルパイが苦手じゃないとなると、シナモンかな。結構シナモンは好き嫌いがあるし。
「今日のはシナモン控えめだから、食べやすいと思うけど…」
「ああ、この前は少し多かったわね」
私が言った言葉に蓮がこくりと頷いた。前回ここに持ってきたのは、ちょっとシナモンがきつかったのを思い出して苦笑いする。
「ごめんね。あれはちょっと失敗だった」
「それでも美味しかったわよ?今日のはもっと美味しいわ」
「ありがと」
ふふ、と蓮と笑い合っていれば三輪くんがおずおずとフォークを持ち直した。
「いただきます、」
「!どうぞ」
さく、と控えめにフォークをアップルパイに突き刺す三輪くんを、蓮と一緒に紅茶を飲みながら見つめる。今回のは林檎いっぱい入れたから美味しいはずだ、というか美味しい。
先にお茶してる私と蓮の手元には半分くらいになったアップルパイがある。
「、!」
アップルパイを口に運んだ三輪くんがぴくりとなにかに反応する。口に合わなかったかなと見ていれば、早いスピードでもぐもぐ咀嚼して今度は大きく1口分を切り取って口の中に放り込んだ。よかった、この反応は好感触っぽい。
「口に合った?」
「っ、はい、美味しいです」
「よかった」
紅茶を飲みながら聞いてみれば、ぱっと顔を上げた三輪くんがこくこくと頷く。ちょっとだけ年相応の顔が見れたことに口元が緩む。
「紅茶も冷めないうちに飲んで頂戴ね」
「はい」
蓮が勧めた紅茶もゆっくり飲み込んで、三輪くんがほうと息を吐く。蓮の紅茶も美味しいから、口に合ったみたいだ。蓮と目を見合わせてちいさく笑う。
「三輪くんの髪の毛ってつやつやしてるよね。シャンプーなに使ってるの?」
「名前は失念しましたが…黄色い透明なボトルにひまわりの写真が入ってるやつです」
「あら、それなら私と同じね」
「お揃いかー。蓮もつやつやだもんね」
今度私も使ってみようかなー、と思いながらアップルパイへとフォークを伸ばす。ごろりと零れた林檎を先に突き刺して口に運べば、じゅわりと果汁が溢れる。もぐもぐしながら正面を向いたら、三輪くんの口元にパイの欠片がくっついていた。
「ん」
「あら」
私が声を上げると同時に蓮も気づいたらしく、ふふ、と可愛らしい声で笑う。そんな私たちの様子に気が付いた三輪くんはきょとりと目を瞬かせた。
「?」
「口元に欠片がくっついているわよ」
「え、あっ」
ちょん、と蓮が自分の口元を指差しながら悪戯っぽく笑う。瞬時に理解して顔を真っ赤にした三輪くんが左手でばしっと口元を覆った。もごもご言いながら口周りをチェックする姿に、思わず笑みが零れる。
「蓮、三輪くんが可愛い…」
「ふふ、でしょう?ここなら見放題よ」
「あら羨ましい」
三輪くんにわからないように小さい声で自慢されて、素直に羨ましいと笑う。
「またお菓子もって遊びに来ようかな」
「それがいいわ」
「三輪くん、次のお菓子何が良い?出来るやつなら作ってくるよ」
「え、俺が決めて良いんですか」
「いいよー。このアップルパイは蓮のリクエストだし、1個前のフォンダンショコラは奈良坂くんのリクエストだったし」
何か好きなのあれば遠慮せず言ってごらん、と言えばしばらく考え込んでいた三輪くんがおずおずとこちらを見る。
「クッキーとか、ダメですか?あの、白黒の四角いやつが食べたいです」
「アイスボックスクッキーだね、了解」
じゃあそれ次いっぱい作ってくるね、と笑えば三輪くんがほんのり嬉しそうにはにかんだ。なにそれかっわいい!
(ねえ蓮、蓮!三輪くんが!可愛い!)
「ふふ」
あまりの可愛さに、隣に座る蓮の座っている椅子の座面をぺしぺし叩く。そんな私の様子を見た蓮が笑みを零した直後、後ろの方でがらがらと聞き覚えのある音がした。
「秀次終わった!」
「ん、そうか」
米屋くんが椅子から弾かれるようにこちらに向かってくる。その手には書き上がった報告書が握られていて、それを見た三輪くんが食べるペースを少し早める。
「蒼さんオレにもアップルパイください!」
「切り分けてあるから好きなの食べて」
「紅茶も淹れるわね」
「蓮さんあざっす!」
三輪くんがいそいそとアップルパイを食べ終え、米屋くんが書いた書類に目を通しつつ立ち上がる。入れ替わりに米屋くんが席について、切り分けられたアップルパイを引き寄せた。
「ご馳走様でした。書類提出しに行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
ぺこりと頭を下げた三輪くんを蓮と2人で手を振って送り出す。扉が閉まって三輪くんが見えなくなると、蓮に向かって小さく口を開く。
「お試し入隊したい」
「準備しておくわ」
ふふ、と笑う蓮と顔を見合わせて笑った。
20万hit御礼企画!
三輪くんを甘やかす
(蓮、一緒にクッキー作ろうか)
(ええ、そうしましょう)
20万hit御礼企画、寧々さまのリクエストでした!
三輪くん相手は中々書く機会が無かったので新鮮でした。
ありがとうございました!
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