荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
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荒船くんと結婚生活
「――…ただいま」
「!」
キッチンで晩御飯の用意をしていれば、玄関の扉が開く音と共に落ち着いた低い声が聞こえた。手元の火を止めて、ぱたぱた玄関へ向かえば靴を脱いでいる荒船くんがいた。
「荒船くんおかえりー」
「ただいまです。…蒼さん、荒船くん、じゃないでしょう?」
「あ」
笑いながらそう言われて、私の苗字も七草から荒船になったのを思い出す。それでも名前を呼ぶのがちょっと気恥ずかしくて、まごつきながらもう1度呼び直す。
「て、哲次、おかえり…」
「ただいま、蒼さん。…お帰りのキスはしてくれないんですか?」
「えっ」
ぶわっと顔が赤くなったのを見て愉しげに目を細めた荒船くん、もとい哲次が私が届きやすいようにと腰を折った。じっと期待の籠った紫色の瞳で見つめられて、ううと唸ってからぎゅっと目を閉じて頬に唇を寄せた。
「、唇には?」
「~~っ、あとで…!」
「ふ、了解」
耳元で低く聞かれて、色を含んだその声にぴゃっと離れて逃げ出す。後ろで哲次が含み笑いしているのを聞きながらキッチンに駆け込んで、冷蔵庫の前に倒れるようにしゃがみこんだ。
(心臓に!悪いっ!)
ばくばく鳴る心臓をぎゅっと押さえて、しゃがんだまま深呼吸する。ふーと長く息を吐いて、ご飯の準備をしようと立ち上がった。もうほとんど出来てるから、あとはテーブルに持っていくくらいだ。頑張れ蒼、平静を保て平静を。
「蒼さん、手伝う事ありますか」
「っあ、じゃあこれ持ってってくれるかな」
「了解」
手を洗ってきたらしい哲次がひょこっとキッチンにやってきたので、盛りつけ終わったご飯類を持っていってもらうことにする。
「今日はハンバーグですか」
「食堂で見たら食べたくなっちゃって」
「ああ、日替わり定食これでしたもんね」
良い匂いがする、と言いながら哲次が本日のメインメニュー、大葉と大根おろしの和風ハンバーグを運んでいく。その後を冷奴サラダとご飯類を乗せたお盆を持って追いかけて、テーブルに並べていく。
「あ、冷奴」
「今日はサラダに乗せちゃいました」
「うまそうです」
嬉しそうに微笑んだ荒船くんに笑い返して、食事の準備を整えていく。小鉢によそったおかずたちに、お箸に小皿、お茶なんかも用意して食卓につく。
「いただきます」
「いただきまーす」
2人で手を合わせてから箸に手を伸ばす。ハンバーグより先に豆腐サラダに手を伸ばして、冷奴を4つに切り分ける。ドレッシング代わりのめんつゆをくるりと回し掛けして、切り分けた豆腐を崩さないように口に運ぶ。
「ん!」
「、ん。この豆腐旨いですね」
「美味しいねー」
ちょっと高かったけど良かった、と濃厚な豆腐をもぐもぐ咀嚼する。荒船くんも美味しそうに食べているし、良かった良かった。
「そうそう、今日はちょこっと哲次を見たよ」
「え、いつですか」
「合同練習で指揮取ってたとこ。格好良かった」
「ああ…」
無事に完璧万能手にまで這い上がった哲次は、独自のメソッドを完成させてついこの前から完璧万能手を量産する計画を始めていた。今日はその訓練をやっていたので、ちょっとその場面を見ていたのだ。
「どこで見てたんです?」
「今日は午前中モニター室にいたので」
ばっちり見させてもらいました、と笑えば「仕事して下さい」と笑われてしまった。
「してたよー、片手間に見てただけ」
「片手間にばっちり見てたんですか」
「見てましたね」
格好良いもの、と笑えば哲次がふっと笑う。それから冷奴を口に運んで、お返しのように口を開いた。
「俺だって、今日は蒼さん見たんですよ」
「あれ、どこで?」
「冬島さんを追い立てながら開発室に入っていくところですね」
「そ、そんなところを…」
お見苦しいやつ…!と呻く私を見ながら哲次が楽しげに笑った。その顔見れたから別にいいんですけど、ともにょもにょ言いながらハンバーグに箸を伸ばした。
◆
「美味しかったです、ご馳走様でした」
「お粗末さまでしたー」
ハンバーグも美味しく食べきって、幸せに膨らんだお腹をさする。我ながらおいしく出来てよかった、と思っていれば私の様子を見ていた哲次が笑いながら席を立つ。
「今日は俺が皿洗いしますね。蒼さんは先にお風呂どうぞ」
「いいの?ありがとう」
それならお言葉に甘えて、と席から立ち上がってお皿なんかをシンクへ持っていく。シャツの袖を捲くる哲次にお皿を任せて一足先にお風呂に向かうことにした。
哲次が帰ってくる前にお風呂は溜めてあるからと寝室から着替えを持ってバスルームへ向かった。
「今日の入浴剤はなににしようかなー」
昨日は緑の入浴剤だったから、今日は青色のにしようと個包装の入浴剤を選んでお湯の張ったバスタブに放り込む。しゅわしゅわ泡立つ入浴剤が溶け切る前に服を脱いでバスルームに足を踏み入れた。
「ふふーん」
暖かい湯気が満ちるバスルームの床をぺたぺた鳴らしてシャワーのコックを捻る。ざあっと出てきたお湯をかぶって、濡れた髪の毛を適当に纏め上げてからバスタブの中に足を入れた。
「はー…」
良いお湯、と首元まで青いお湯に浸かる。1日の疲れがお湯に溶けてくー、とお湯の中でまったりしていたら扉の外からがたがた音がしてきた。
「あれ、哲次?」
『なんです?』
問いかければ、普通に哲次の声がして首を傾げる。
「なぜこちらに」
『なぜって、俺も一緒に入るんですけど』
「んん!?」
至極当然といった風の台詞の後に、ごそごそ服を脱ぐ音がして、ぼかしが掛かった扉越しに見える哲次の身体に肌色が増えていく。
『いつも一緒に入るでしょう』
「あれそうだっけ!?」
おかしいなお風呂はいつも1人だったはず、とぐるぐる考えている間にシルエットが肌色一色になってしまった哲次の手が扉にかかった。
「や、やっぱりだめっ!」
哲次があけようとした扉をこちら側から押さえつけようとしたら、思いのほか大きく響いた自分の声にびっくりして目をあけた。
「…う?」
ぼんやりした視界に映ったのは、照明が落とされた私の部屋の見慣れた天井。
「…んえ?」
真っ暗な部屋には私の他に誰かがいる気配はない、し、よく考えてみればまだ結婚とかしてない。ばっと布団から左手を出して見るけど、指輪とかもしてない。ベッドサイドもなにもない。つまり。
「……なんっっっという夢を見てるんだ…」
最近荒船くんと過ごす時間が少ないからか、欲求不満か…と唸る。明日、ようやく荒船くんと過ごす時間があるんだけど、これは顔をまともに見れそうにない…と布団の中で頭を抱えた。
20万hit御礼企画!
荒船くんとの結婚生活
(今日はなんでこっちを見てくれないんです?)
(ちょっと…理由が…)
由希さまリクエスト、荒船くんとの結婚生活でした。
リクエストありがとうございました!
「――…ただいま」
「!」
キッチンで晩御飯の用意をしていれば、玄関の扉が開く音と共に落ち着いた低い声が聞こえた。手元の火を止めて、ぱたぱた玄関へ向かえば靴を脱いでいる荒船くんがいた。
「荒船くんおかえりー」
「ただいまです。…蒼さん、荒船くん、じゃないでしょう?」
「あ」
笑いながらそう言われて、私の苗字も七草から荒船になったのを思い出す。それでも名前を呼ぶのがちょっと気恥ずかしくて、まごつきながらもう1度呼び直す。
「て、哲次、おかえり…」
「ただいま、蒼さん。…お帰りのキスはしてくれないんですか?」
「えっ」
ぶわっと顔が赤くなったのを見て愉しげに目を細めた荒船くん、もとい哲次が私が届きやすいようにと腰を折った。じっと期待の籠った紫色の瞳で見つめられて、ううと唸ってからぎゅっと目を閉じて頬に唇を寄せた。
「、唇には?」
「~~っ、あとで…!」
「ふ、了解」
耳元で低く聞かれて、色を含んだその声にぴゃっと離れて逃げ出す。後ろで哲次が含み笑いしているのを聞きながらキッチンに駆け込んで、冷蔵庫の前に倒れるようにしゃがみこんだ。
(心臓に!悪いっ!)
ばくばく鳴る心臓をぎゅっと押さえて、しゃがんだまま深呼吸する。ふーと長く息を吐いて、ご飯の準備をしようと立ち上がった。もうほとんど出来てるから、あとはテーブルに持っていくくらいだ。頑張れ蒼、平静を保て平静を。
「蒼さん、手伝う事ありますか」
「っあ、じゃあこれ持ってってくれるかな」
「了解」
手を洗ってきたらしい哲次がひょこっとキッチンにやってきたので、盛りつけ終わったご飯類を持っていってもらうことにする。
「今日はハンバーグですか」
「食堂で見たら食べたくなっちゃって」
「ああ、日替わり定食これでしたもんね」
良い匂いがする、と言いながら哲次が本日のメインメニュー、大葉と大根おろしの和風ハンバーグを運んでいく。その後を冷奴サラダとご飯類を乗せたお盆を持って追いかけて、テーブルに並べていく。
「あ、冷奴」
「今日はサラダに乗せちゃいました」
「うまそうです」
嬉しそうに微笑んだ荒船くんに笑い返して、食事の準備を整えていく。小鉢によそったおかずたちに、お箸に小皿、お茶なんかも用意して食卓につく。
「いただきます」
「いただきまーす」
2人で手を合わせてから箸に手を伸ばす。ハンバーグより先に豆腐サラダに手を伸ばして、冷奴を4つに切り分ける。ドレッシング代わりのめんつゆをくるりと回し掛けして、切り分けた豆腐を崩さないように口に運ぶ。
「ん!」
「、ん。この豆腐旨いですね」
「美味しいねー」
ちょっと高かったけど良かった、と濃厚な豆腐をもぐもぐ咀嚼する。荒船くんも美味しそうに食べているし、良かった良かった。
「そうそう、今日はちょこっと哲次を見たよ」
「え、いつですか」
「合同練習で指揮取ってたとこ。格好良かった」
「ああ…」
無事に完璧万能手にまで這い上がった哲次は、独自のメソッドを完成させてついこの前から完璧万能手を量産する計画を始めていた。今日はその訓練をやっていたので、ちょっとその場面を見ていたのだ。
「どこで見てたんです?」
「今日は午前中モニター室にいたので」
ばっちり見させてもらいました、と笑えば「仕事して下さい」と笑われてしまった。
「してたよー、片手間に見てただけ」
「片手間にばっちり見てたんですか」
「見てましたね」
格好良いもの、と笑えば哲次がふっと笑う。それから冷奴を口に運んで、お返しのように口を開いた。
「俺だって、今日は蒼さん見たんですよ」
「あれ、どこで?」
「冬島さんを追い立てながら開発室に入っていくところですね」
「そ、そんなところを…」
お見苦しいやつ…!と呻く私を見ながら哲次が楽しげに笑った。その顔見れたから別にいいんですけど、ともにょもにょ言いながらハンバーグに箸を伸ばした。
◆
「美味しかったです、ご馳走様でした」
「お粗末さまでしたー」
ハンバーグも美味しく食べきって、幸せに膨らんだお腹をさする。我ながらおいしく出来てよかった、と思っていれば私の様子を見ていた哲次が笑いながら席を立つ。
「今日は俺が皿洗いしますね。蒼さんは先にお風呂どうぞ」
「いいの?ありがとう」
それならお言葉に甘えて、と席から立ち上がってお皿なんかをシンクへ持っていく。シャツの袖を捲くる哲次にお皿を任せて一足先にお風呂に向かうことにした。
哲次が帰ってくる前にお風呂は溜めてあるからと寝室から着替えを持ってバスルームへ向かった。
「今日の入浴剤はなににしようかなー」
昨日は緑の入浴剤だったから、今日は青色のにしようと個包装の入浴剤を選んでお湯の張ったバスタブに放り込む。しゅわしゅわ泡立つ入浴剤が溶け切る前に服を脱いでバスルームに足を踏み入れた。
「ふふーん」
暖かい湯気が満ちるバスルームの床をぺたぺた鳴らしてシャワーのコックを捻る。ざあっと出てきたお湯をかぶって、濡れた髪の毛を適当に纏め上げてからバスタブの中に足を入れた。
「はー…」
良いお湯、と首元まで青いお湯に浸かる。1日の疲れがお湯に溶けてくー、とお湯の中でまったりしていたら扉の外からがたがた音がしてきた。
「あれ、哲次?」
『なんです?』
問いかければ、普通に哲次の声がして首を傾げる。
「なぜこちらに」
『なぜって、俺も一緒に入るんですけど』
「んん!?」
至極当然といった風の台詞の後に、ごそごそ服を脱ぐ音がして、ぼかしが掛かった扉越しに見える哲次の身体に肌色が増えていく。
『いつも一緒に入るでしょう』
「あれそうだっけ!?」
おかしいなお風呂はいつも1人だったはず、とぐるぐる考えている間にシルエットが肌色一色になってしまった哲次の手が扉にかかった。
「や、やっぱりだめっ!」
哲次があけようとした扉をこちら側から押さえつけようとしたら、思いのほか大きく響いた自分の声にびっくりして目をあけた。
「…う?」
ぼんやりした視界に映ったのは、照明が落とされた私の部屋の見慣れた天井。
「…んえ?」
真っ暗な部屋には私の他に誰かがいる気配はない、し、よく考えてみればまだ結婚とかしてない。ばっと布団から左手を出して見るけど、指輪とかもしてない。ベッドサイドもなにもない。つまり。
「……なんっっっという夢を見てるんだ…」
最近荒船くんと過ごす時間が少ないからか、欲求不満か…と唸る。明日、ようやく荒船くんと過ごす時間があるんだけど、これは顔をまともに見れそうにない…と布団の中で頭を抱えた。
20万hit御礼企画!
荒船くんとの結婚生活
(今日はなんでこっちを見てくれないんです?)
(ちょっと…理由が…)
由希さまリクエスト、荒船くんとの結婚生活でした。
リクエストありがとうございました!