荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
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荒船くんが嫉妬する
「どこに行った…」
「……」
荒船くんが私の眼下を見回しながら走っていく。その足音が聞こえなくなった所で、壁に貼り付けていた身体を離してそっと腹ばいになった。現在地、ラウンジ近くの通気口内。現在の状況、荒船くんに追われている。
(…行ったな)
バッグワームを着込んで、息を殺して。伊達に隠密行動を得意とする風間隊にいたわけではないし、そう簡単には見つからないだろう。
(もう、なんで怒ってるのかなあ)
しばらく動かないでいよう、と格子の上から少しだけ後退して覗かれても見えない位置に移動する。
それから腕を組んだ上に顎を乗せて、深くため息を吐いた。
◆
『おーい、蒼』
「ん、はい」
通信機から聞こえてきた声に小さく返事をする。この声の主は冬島さんだ。視線の先にある格子の下には特に変化は見られない。
『お前いま何処にいる?荒船が探しに来たけど』
「…そこに荒船くんいます?」
『いや、追い返した』
冬島さんの所まで行ったのか、と溜め息を吐く。警戒して聞くも、そこにはいないとの事で現在地を告げる。
「…影浦隊作戦室近くの通気口の中です」
『通気口かよ』
私の居場所に冬島さんが笑う声が聞こえた。正直、こんなところに居るとは思わなかったのだろう。
『そこ後でどっから入ったか教えろよ』
「了解」
『つーか、荒船のヤツすっげえ機嫌悪かったけど』
「弟子がご迷惑をおかけしました」
冬島さんすっげえ怖かった、と笑う声に謝れば、それもまた笑い飛ばして冬島さんが続ける。
『蒼も随分機嫌悪そうだな。なに、喧嘩か?』
「違いますよ。わけもわからず怒った荒船くんに追い回されてるんです」
『へえ』
くく、と喉で笑う冬島さんが愉しそうな声を送ってくる。その後ろで、タタン!とキーボードが叩かれる音がした。直後に私の真下にびゅわりと冬島隊の隊章が浮かび上がって目を見張る。
「え」
『よし、捕捉完了。――…荒船、蒼そっちに転送すっからな』
『了解』
捕捉だと、と思った瞬間には荒船くんの声が聞こえてくる。つまりこの紋章は、冬島さんのスイッチボックスか!
「えっなに冬島さんそっち側だったんですか」
『蒼悪いな、冬島さん荒船に買収されてんだわ』
「わー」
買収されてたかあ、と呟いた瞬間、スイッチボックスが起動して暗闇の中に吸い込まれた。
◆
「わ」
ばふっと落ちてきたのは黒いベイルアウト用のベッドで、仰向けに落ちてきた私の目の前には腕を組んで仁王立ちした荒船くんが待ち構えていた。見覚えのあるここは、荒船隊の作戦室だ。
「蒼さん、お待ちしていました」
「…お待たせいたしました…」
冷たい視線で見下ろされ、居心地の悪さにベッドの上で正座する。出口は塞がれてるし、もう逃げられない。覚悟を決めようと深く息を吐き出した。
「なんで俺が怒ってるかわかりますか」
「わからないです…説明を求めてもよろしいでしょうか…」
怒ってるのはびしびし伝わってくるんだけど、何が理由で怒っているのかは見当がつかない。サイドエフェクトを使えばわかるんだろうけれど、それは卑怯な気がするから使わない。
「…昨日の夕方」
「夕方?」
物凄く低い声で呟かれた言葉に、なにがあったかと思い出す。昨日は4時くらいからやってきた米屋くんとか三輪くんと模擬戦して、5時過ぎにラウンジで休憩して、その後は准と入隊式の打ち合わせ、ついでに一緒にご飯だった。
「あ、連絡なしに准とご飯食べたのがまずかった…?」
「違います。それ以外に思いつきませんか」
「うん…」
そもそも昨日は荒船くんとラウンジでしか会っていないし、その辺ではなにも無かったはずだ。
「………」
困り果ててそろりと荒船くんを見上げると、じっとこちらを見降ろしていた荒船くんが小さく呟いた。
「……俺と別れた後、嵐山さんと抱き合ってるのを見ましたが」
「え?…あっ、もしかして階段のとこ?」
「はい」
思い当たる節があって声を上げる。もしかしてと訊いた問いには頷かれて、それで怒ってたのかと納得した。そうか、あれだったのか。
「ごめん…あれ、准に後ろから呼ばれて、振り向いた私が階段から足を踏み外して落ちた所を受け止めてもらったんです…」
「…は?」
「監視カメラ見て確認してもらってかまいません…」
やましいことはない、と告げればこちらを見降ろしていた荒船くんの顔がじわりと朱くなっていく。誤解させてたのか。
「ごめん、まぎわらしいとこ見せた」
「い、え…すみません、早とちりしました…」
ごめんね、と頭を下げれば小さい声で荒船くんに謝られる。そのまま壁に背を付けてずるずるしゃがみ込んでしまった荒船くんに近づいていけば、小さい声で呟くのが聞こえた。
「あーくそ、すっげえ嫉妬してました…」
「ごめん、私がもうちょっと気を付けてればよかった」
「そうですけど、って」
顔を上げた荒船くんに、安堵とか不満とかが入り混じった瞳で見上げられる。私の顔を見た荒船くんは、途端にむっと不機嫌そうな顔になった。
「なんで笑ってるんです」
「ごめん、怒ってた理由がわかって安心したのと…荒船くんが心底好きだなと」
「、なんで今そういうこと言うんです…」
彼にしては珍しくか細い声でそう言うと、荒船くんはまたゆっくりとうつむいてしまった。ベッドから降りて彼の目の前に膝を折ろうとしたら、ぐいっと引き寄せられて荒船くんの腕の中に引き込まれた。
「わ、」
「蒼さん、」
ぎゅう、と抱きしめられて戸惑っていれば荒船くんに小さく名前を呼ばれる。顔が見えないけど荒船くんの背中に腕を回せば、ぽそぽそ小さい声で荒船くんが呟いた。
「この際だから言いますけど、俺、どうしようもないくらい蒼さんに惚れてるんです。それこそ、さっきのが俺の誤解だってわかって…それでも蒼さんにさわった嵐山さんに妬くくらい、蒼さんが好きです」
「うん…」
「…だから、少しだけ我儘言わせてくれますか」
「わがまま?」
「もうちょっと、このまま抱きしめさせてください」
「、うん」
いくらでも、と頷いて荒船くんに回す腕に力を込めた。
20万hit御礼企画!
荒船くんの嫉妬
(荒船くん、明日時間あればデートしませんか)
(、します)
20万hit御礼企画、憩さんリクエストでした!
荒船くんは独占欲強そうだよねという感じでした。
ありがとうございました!
「どこに行った…」
「……」
荒船くんが私の眼下を見回しながら走っていく。その足音が聞こえなくなった所で、壁に貼り付けていた身体を離してそっと腹ばいになった。現在地、ラウンジ近くの通気口内。現在の状況、荒船くんに追われている。
(…行ったな)
バッグワームを着込んで、息を殺して。伊達に隠密行動を得意とする風間隊にいたわけではないし、そう簡単には見つからないだろう。
(もう、なんで怒ってるのかなあ)
しばらく動かないでいよう、と格子の上から少しだけ後退して覗かれても見えない位置に移動する。
それから腕を組んだ上に顎を乗せて、深くため息を吐いた。
◆
『おーい、蒼』
「ん、はい」
通信機から聞こえてきた声に小さく返事をする。この声の主は冬島さんだ。視線の先にある格子の下には特に変化は見られない。
『お前いま何処にいる?荒船が探しに来たけど』
「…そこに荒船くんいます?」
『いや、追い返した』
冬島さんの所まで行ったのか、と溜め息を吐く。警戒して聞くも、そこにはいないとの事で現在地を告げる。
「…影浦隊作戦室近くの通気口の中です」
『通気口かよ』
私の居場所に冬島さんが笑う声が聞こえた。正直、こんなところに居るとは思わなかったのだろう。
『そこ後でどっから入ったか教えろよ』
「了解」
『つーか、荒船のヤツすっげえ機嫌悪かったけど』
「弟子がご迷惑をおかけしました」
冬島さんすっげえ怖かった、と笑う声に謝れば、それもまた笑い飛ばして冬島さんが続ける。
『蒼も随分機嫌悪そうだな。なに、喧嘩か?』
「違いますよ。わけもわからず怒った荒船くんに追い回されてるんです」
『へえ』
くく、と喉で笑う冬島さんが愉しそうな声を送ってくる。その後ろで、タタン!とキーボードが叩かれる音がした。直後に私の真下にびゅわりと冬島隊の隊章が浮かび上がって目を見張る。
「え」
『よし、捕捉完了。――…荒船、蒼そっちに転送すっからな』
『了解』
捕捉だと、と思った瞬間には荒船くんの声が聞こえてくる。つまりこの紋章は、冬島さんのスイッチボックスか!
「えっなに冬島さんそっち側だったんですか」
『蒼悪いな、冬島さん荒船に買収されてんだわ』
「わー」
買収されてたかあ、と呟いた瞬間、スイッチボックスが起動して暗闇の中に吸い込まれた。
◆
「わ」
ばふっと落ちてきたのは黒いベイルアウト用のベッドで、仰向けに落ちてきた私の目の前には腕を組んで仁王立ちした荒船くんが待ち構えていた。見覚えのあるここは、荒船隊の作戦室だ。
「蒼さん、お待ちしていました」
「…お待たせいたしました…」
冷たい視線で見下ろされ、居心地の悪さにベッドの上で正座する。出口は塞がれてるし、もう逃げられない。覚悟を決めようと深く息を吐き出した。
「なんで俺が怒ってるかわかりますか」
「わからないです…説明を求めてもよろしいでしょうか…」
怒ってるのはびしびし伝わってくるんだけど、何が理由で怒っているのかは見当がつかない。サイドエフェクトを使えばわかるんだろうけれど、それは卑怯な気がするから使わない。
「…昨日の夕方」
「夕方?」
物凄く低い声で呟かれた言葉に、なにがあったかと思い出す。昨日は4時くらいからやってきた米屋くんとか三輪くんと模擬戦して、5時過ぎにラウンジで休憩して、その後は准と入隊式の打ち合わせ、ついでに一緒にご飯だった。
「あ、連絡なしに准とご飯食べたのがまずかった…?」
「違います。それ以外に思いつきませんか」
「うん…」
そもそも昨日は荒船くんとラウンジでしか会っていないし、その辺ではなにも無かったはずだ。
「………」
困り果ててそろりと荒船くんを見上げると、じっとこちらを見降ろしていた荒船くんが小さく呟いた。
「……俺と別れた後、嵐山さんと抱き合ってるのを見ましたが」
「え?…あっ、もしかして階段のとこ?」
「はい」
思い当たる節があって声を上げる。もしかしてと訊いた問いには頷かれて、それで怒ってたのかと納得した。そうか、あれだったのか。
「ごめん…あれ、准に後ろから呼ばれて、振り向いた私が階段から足を踏み外して落ちた所を受け止めてもらったんです…」
「…は?」
「監視カメラ見て確認してもらってかまいません…」
やましいことはない、と告げればこちらを見降ろしていた荒船くんの顔がじわりと朱くなっていく。誤解させてたのか。
「ごめん、まぎわらしいとこ見せた」
「い、え…すみません、早とちりしました…」
ごめんね、と頭を下げれば小さい声で荒船くんに謝られる。そのまま壁に背を付けてずるずるしゃがみ込んでしまった荒船くんに近づいていけば、小さい声で呟くのが聞こえた。
「あーくそ、すっげえ嫉妬してました…」
「ごめん、私がもうちょっと気を付けてればよかった」
「そうですけど、って」
顔を上げた荒船くんに、安堵とか不満とかが入り混じった瞳で見上げられる。私の顔を見た荒船くんは、途端にむっと不機嫌そうな顔になった。
「なんで笑ってるんです」
「ごめん、怒ってた理由がわかって安心したのと…荒船くんが心底好きだなと」
「、なんで今そういうこと言うんです…」
彼にしては珍しくか細い声でそう言うと、荒船くんはまたゆっくりとうつむいてしまった。ベッドから降りて彼の目の前に膝を折ろうとしたら、ぐいっと引き寄せられて荒船くんの腕の中に引き込まれた。
「わ、」
「蒼さん、」
ぎゅう、と抱きしめられて戸惑っていれば荒船くんに小さく名前を呼ばれる。顔が見えないけど荒船くんの背中に腕を回せば、ぽそぽそ小さい声で荒船くんが呟いた。
「この際だから言いますけど、俺、どうしようもないくらい蒼さんに惚れてるんです。それこそ、さっきのが俺の誤解だってわかって…それでも蒼さんにさわった嵐山さんに妬くくらい、蒼さんが好きです」
「うん…」
「…だから、少しだけ我儘言わせてくれますか」
「わがまま?」
「もうちょっと、このまま抱きしめさせてください」
「、うん」
いくらでも、と頷いて荒船くんに回す腕に力を込めた。
20万hit御礼企画!
荒船くんの嫉妬
(荒船くん、明日時間あればデートしませんか)
(、します)
20万hit御礼企画、憩さんリクエストでした!
荒船くんは独占欲強そうだよねという感じでした。
ありがとうございました!