荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
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18歳組とストーカー被害
少し早足で街中を歩いていたら、前方に見知った後輩が歩いていることに気付いた。これ幸いと近づいて行って声を掛ける。
「辻くん」
「っ、蒼さん?」
雑踏の中でもちゃんと聞こえたらしい辻くんが振り向く。私と視線が合うと、近づくまで足を止めて待っていてくれた。申し訳ないからちょっとだけ離れた場所で足を止めれば、辻くんは少しだけほっとした表情になった。
「引き止めてごめんね、辻くん今から本部行く?」
「はい、あの、これから任務なので…」
「それなら、本当に申し訳ないんだけど、本部まで一緒に行ってもいいかな。あんまり近づかないから」
「…か、かまいません」
辻くんがギシギシした動きで頷いてくれて、内心でほっと胸をなでおろした。よかった、と小さく呟いた私の声を拾ったらしい辻くんが怪訝な顔をする。
「、何かあったんですか?」
「あー…あの、ちょっと後をつけられてまして…」
「…」
そう告げれば、辻くんがすっと辺りを見渡したのが見えた。とりあえず立ち止まっていたら邪魔になってしまうし、辻くんを促して一緒に歩き出す。私は彼の3歩くらい横だ。
「特徴とか覚えていますか」
「うん。身長175くらいで、王子隊の樫尾くんみたいな黒髪をした眼鏡の若い男の人。今日は白のニット帽かぶってた」
多分10mくらい後ろ、と男の特徴を伝えれば辻くんが驚いたように呟く。
「今日はって…1回じゃないんですか」
「ここ1か月くらい、街に出てくると高確率でエンカウントしてて…」
今のとこ実害は無いんだけどと告げれば、辻くんが1歩分私の方に近づいた。え、と彼を見上げれば私と視線を合わせないまま硬い表情で呟く。
「ちゃ、ちゃんと守ります」
「、ありがとう」
すごい勇気を出してくれた様子に笑みをこぼして、一緒にボーダー本部へと向かって行った。
◆
「影浦くん、本日はなにをお求めで?」
「あー、もうすぐヒカリの誕生日だろ。だけどあいつの趣味よくわかんねえから助言してくれ」
「了解」
あれから数日後、影浦くんに誘われて街へ出てきていた。休日ともあって人が多いし、影浦くんは人ごみとか嫌うから珍しいなと思いつつ彼の隣を歩く。今日はまだ視線を感じない。
「目星はついてる?」
「いや、見ながら決めようと思ってる」
人ごみをひょいひょいすり抜けて目的地へと向かう。混んでるから影浦くんの後ろだったり、横だったりをちょこまか動いていたら手が差し出された。
「はぐれるからつかまっとけ」
「あ、うん。ありがとう」
正直もみくちゃにされそうになってたから助かった、と影浦くんの手を握らせてもらう。すると途端に影浦くんが機嫌悪そうに舌打ちした。
「えっ」
「なんでもねえよ」
「や、なんでもなくないでしょ」
もしかしたら、あの男が現れて影浦くんに嫌な視線を向けてるのかもしれない。付き纏われてるのは誰にも言ってないから知るはずもないのだ。
「荒船の視線が刺さっただけだ」
「…荒船くん?」
おろおろする私に影浦くんが吐き捨てるように呟いた。なんで荒船くんが、と呟けば影浦くんが小さく零す。
「蒼サン、ここんとこ男に付き纏われてんだろ」
「…、なんでそれ知ってるの」
「犬飼が情報持ってきた」
辻くんから回って来たのか、と眉を下げれば影浦くんががしがし頭をかきながら呟く。
「それが俺らの耳に入って、荒船がすっげえ怒ってよ」
「じゃあ、荒船くんが居るのって…」
俺ら、つまり18歳組には話が回ってしまったのだろう。ということは、影浦くんと2人でわざわざエンカウント率の高い街中に出てきた理由に行きついてしまった。
「蒼サンには悪ィが、誘き出してる真っ最中だな」
「うっわ…」
「荒船が群を抜いて怒ってっけど、俺らだって怒ってねえわけじゃねえんだぜ」
影浦くんに手を引かれながら、少し広くなっている場所へやってくると影浦くんは空いていたベンチに座り込んだ。くい、と手を引かれて隣に座り込めば、広場の斜め向かいにあるベンチに座る人たちがこちらを見ているのに気付いた。目が合えばひらりと小さく手を振られる。
「…ねえ影浦くん、向こうに知ってる人が2名ほどいるんですが」
「だろうな」
向こうのベンチに座ってコーヒー飲んでるの、水上くんと蔵内くんだ。こっちなんかはもう見向きもしない素知らぬ体で、2人で携帯を見ながら話しこんでいるように見える。
「もしや皆来ているのでは…」
「ああ。ついでに全員トリオン体だから心配しなくていい」
事も無げに頷いた影浦くんが足を組みながら携帯を取り出す。そのまま誰かにメッセージを打ち始めたので辺りを見回せば、広場の入口に王子くんと犬飼くんが見知らぬ女の子たちと話しているのを見つけた。反対側の出口には北添くんが街灯に背を付けて携帯を見ている。
「スナイパー組と村上くんが見えないけど…」
「荒船と当真は近くのビルの屋上でここら辺見てて、穂刈と鋼はその辺にカメレオンで隠れてるぜ」
「まじですか…」
とんでもない布陣が敷かれてる、と零した私に携帯を閉じた影浦くんが聞いてくる。
「今日は視線感じてねえか?」
「あ、うん。今日はまだ」
「見つけたら言えよ。それと、出来るなら換装しとけ」
「…実はもうトリオン体でして」
「それならいい」
影浦くんが私と一緒なのは、男が現れた時に何らかの感情を込めた視線が影浦くんに送られるからだろう。感情受信体質なら、向こうが見つけるのとほぼ同時に気付く事が出来るし。
「ごめんね、嫌な役やらせちゃって…」
「構わねえよ」
「あとで皆纏めてご飯連れてくよ」
「おー、楽しみにしてるぜ」
そう笑った影浦くんが、直後ぴくりと何かに反応した。そのまま怖い顔で通信をオンにして、荒船くんたちに向かって話し出す。
『来たぞ、すっげえ憎悪。水上たちの近く』
『―――――見つけた』
影浦くんが通信に乗せて話せば、少しして荒船くんの声が聞こえてきた。見つけた、ということは零した男の情報も伝わっているのだろう。
『蒼さん、白いパーカーの男で間違いないですか』
荒船くんの声にそっと水上くんたちの方を見れば、彼らの少し後ろに白いパーカーの男が見えた。じっとこちらを見ているのは、まさに何度も遭遇したあの男だった。
『…うん、あの人』
目が合わない内に影浦くんに隠れるように座り直して、通信に乗せて答える。ぎゅう、と影浦くんの手を握れば大丈夫だというように握り返してくれた。
『捕まえるぞ、ぜってえ逃がすな』
荒船くんの低い声が聞こえて、それからはあっという間だった。透明になっている穂刈くんと村上くんが男の口と動きを封じて静かに制圧し、水上くんと蔵内くんがそれを隠すように近づいてくる。逃走の危険もないと踏んだ北添くんと犬飼くん、王子くんが少し距離を置いて歩いていく。手際がいい。
「蒼サンはこっちな」
「どこいくの?」
「集合場所。記憶処理しねえとだろ」
「あ、了解」
私はと言えば静かな捕獲劇を見守って、影浦くんに手を引かれて歩き出した。
◆
「、あれ」
「なんだ、もう終わってんのか」
私と影浦くんが集合場所、近くの廃ビルの中に入った時には18歳組の面々が仰向けで失神しているらしい男を取り囲んでいた。
「何したの?」
「大したことはしていません」
怪我とかさせてないよね、と訊けばそれには頷かれたので一応はそれ以上聞かないでおく。荒船くんがイーグレットを片手に持っているところを見ると、多分あれを使ったんだろう。ボーダーの弾は生身の人間に当たっても大丈夫なように出来ているから。
「あんまり勝手にすると城戸さんに怒られちゃうよ」
「大丈夫です、許可は取ってありますから」
振り返った荒船くんが何でもないように言った。え、と言葉を詰まらせれば村上くんが補足するように口を開いた。
「城戸指令もこの計画は知っていますよ」
「むしろ徹底的にやってこいって言われましたから」
「城戸さんも大概蒼さんに甘いですよね~」
「まあ、蒼さんが困ってるなら皆全力で助けますからね」
城戸さんまで話が通ってるだと、と固まった私の前に荒船くんが立つ。
「蒼さん、早く終わらせて帰りましょう」
「あ、うん」
促されて失神した男の前にしゃがみ込む。数回瞬きをしてサイドエフェクトを発動、意識の無い男の記憶から私に関する事を片っ端から消していく。
「終わったら適当なトコに転がしてこねえとな」
「あ、ゾエさん運ぶよ~」
「そりゃおーきに。ゾエなら楽チンやな」
皆がわいわい話している間に綺麗さっぱり記憶を消して、ぎゅっと目を閉じてサイドエフェクトを停止させる。
「終わりました?」
「うん、ありがとう」
「じゃあゾエさん捨ててくるね~」
「見られんなよー」
目頭をぐりぐりして、差し出された荒船くんの手を借りて立ち上がる。北添くんに担ぎ上げられた男はもう私のことなんて追いかけまわさない。大事にしてしまったとはいえ、早く解決できてよかったとほっとする。
「みんなありがとう、助かった」
「次、こういうのがあったらもうちっと早く言えよ」
「そうですよ。もし蒼さんに何かあったらどうするんです」
「相手をぶち殺しそうだからな、荒船は」
「それも形も残さずな」
「だよねー」
果てしなく物騒な事を言う後輩たちに苦笑して、一緒に本部まで帰って行った。
それから皆には焼肉を奢る事になって、この前貰ったばかりのボーナスが吹っ飛んだのは良い思い出になった。
20万hit御礼企画!
ストーカー被害
貴女の脅威は全力を以て排除します
20万hit御礼企画、秋梨さまのリクエストでした!
18歳組で頑張らせていただきました。人が多くなってきて書き分けが…大変なことに…!
ありがとうございました!
少し早足で街中を歩いていたら、前方に見知った後輩が歩いていることに気付いた。これ幸いと近づいて行って声を掛ける。
「辻くん」
「っ、蒼さん?」
雑踏の中でもちゃんと聞こえたらしい辻くんが振り向く。私と視線が合うと、近づくまで足を止めて待っていてくれた。申し訳ないからちょっとだけ離れた場所で足を止めれば、辻くんは少しだけほっとした表情になった。
「引き止めてごめんね、辻くん今から本部行く?」
「はい、あの、これから任務なので…」
「それなら、本当に申し訳ないんだけど、本部まで一緒に行ってもいいかな。あんまり近づかないから」
「…か、かまいません」
辻くんがギシギシした動きで頷いてくれて、内心でほっと胸をなでおろした。よかった、と小さく呟いた私の声を拾ったらしい辻くんが怪訝な顔をする。
「、何かあったんですか?」
「あー…あの、ちょっと後をつけられてまして…」
「…」
そう告げれば、辻くんがすっと辺りを見渡したのが見えた。とりあえず立ち止まっていたら邪魔になってしまうし、辻くんを促して一緒に歩き出す。私は彼の3歩くらい横だ。
「特徴とか覚えていますか」
「うん。身長175くらいで、王子隊の樫尾くんみたいな黒髪をした眼鏡の若い男の人。今日は白のニット帽かぶってた」
多分10mくらい後ろ、と男の特徴を伝えれば辻くんが驚いたように呟く。
「今日はって…1回じゃないんですか」
「ここ1か月くらい、街に出てくると高確率でエンカウントしてて…」
今のとこ実害は無いんだけどと告げれば、辻くんが1歩分私の方に近づいた。え、と彼を見上げれば私と視線を合わせないまま硬い表情で呟く。
「ちゃ、ちゃんと守ります」
「、ありがとう」
すごい勇気を出してくれた様子に笑みをこぼして、一緒にボーダー本部へと向かって行った。
◆
「影浦くん、本日はなにをお求めで?」
「あー、もうすぐヒカリの誕生日だろ。だけどあいつの趣味よくわかんねえから助言してくれ」
「了解」
あれから数日後、影浦くんに誘われて街へ出てきていた。休日ともあって人が多いし、影浦くんは人ごみとか嫌うから珍しいなと思いつつ彼の隣を歩く。今日はまだ視線を感じない。
「目星はついてる?」
「いや、見ながら決めようと思ってる」
人ごみをひょいひょいすり抜けて目的地へと向かう。混んでるから影浦くんの後ろだったり、横だったりをちょこまか動いていたら手が差し出された。
「はぐれるからつかまっとけ」
「あ、うん。ありがとう」
正直もみくちゃにされそうになってたから助かった、と影浦くんの手を握らせてもらう。すると途端に影浦くんが機嫌悪そうに舌打ちした。
「えっ」
「なんでもねえよ」
「や、なんでもなくないでしょ」
もしかしたら、あの男が現れて影浦くんに嫌な視線を向けてるのかもしれない。付き纏われてるのは誰にも言ってないから知るはずもないのだ。
「荒船の視線が刺さっただけだ」
「…荒船くん?」
おろおろする私に影浦くんが吐き捨てるように呟いた。なんで荒船くんが、と呟けば影浦くんが小さく零す。
「蒼サン、ここんとこ男に付き纏われてんだろ」
「…、なんでそれ知ってるの」
「犬飼が情報持ってきた」
辻くんから回って来たのか、と眉を下げれば影浦くんががしがし頭をかきながら呟く。
「それが俺らの耳に入って、荒船がすっげえ怒ってよ」
「じゃあ、荒船くんが居るのって…」
俺ら、つまり18歳組には話が回ってしまったのだろう。ということは、影浦くんと2人でわざわざエンカウント率の高い街中に出てきた理由に行きついてしまった。
「蒼サンには悪ィが、誘き出してる真っ最中だな」
「うっわ…」
「荒船が群を抜いて怒ってっけど、俺らだって怒ってねえわけじゃねえんだぜ」
影浦くんに手を引かれながら、少し広くなっている場所へやってくると影浦くんは空いていたベンチに座り込んだ。くい、と手を引かれて隣に座り込めば、広場の斜め向かいにあるベンチに座る人たちがこちらを見ているのに気付いた。目が合えばひらりと小さく手を振られる。
「…ねえ影浦くん、向こうに知ってる人が2名ほどいるんですが」
「だろうな」
向こうのベンチに座ってコーヒー飲んでるの、水上くんと蔵内くんだ。こっちなんかはもう見向きもしない素知らぬ体で、2人で携帯を見ながら話しこんでいるように見える。
「もしや皆来ているのでは…」
「ああ。ついでに全員トリオン体だから心配しなくていい」
事も無げに頷いた影浦くんが足を組みながら携帯を取り出す。そのまま誰かにメッセージを打ち始めたので辺りを見回せば、広場の入口に王子くんと犬飼くんが見知らぬ女の子たちと話しているのを見つけた。反対側の出口には北添くんが街灯に背を付けて携帯を見ている。
「スナイパー組と村上くんが見えないけど…」
「荒船と当真は近くのビルの屋上でここら辺見てて、穂刈と鋼はその辺にカメレオンで隠れてるぜ」
「まじですか…」
とんでもない布陣が敷かれてる、と零した私に携帯を閉じた影浦くんが聞いてくる。
「今日は視線感じてねえか?」
「あ、うん。今日はまだ」
「見つけたら言えよ。それと、出来るなら換装しとけ」
「…実はもうトリオン体でして」
「それならいい」
影浦くんが私と一緒なのは、男が現れた時に何らかの感情を込めた視線が影浦くんに送られるからだろう。感情受信体質なら、向こうが見つけるのとほぼ同時に気付く事が出来るし。
「ごめんね、嫌な役やらせちゃって…」
「構わねえよ」
「あとで皆纏めてご飯連れてくよ」
「おー、楽しみにしてるぜ」
そう笑った影浦くんが、直後ぴくりと何かに反応した。そのまま怖い顔で通信をオンにして、荒船くんたちに向かって話し出す。
『来たぞ、すっげえ憎悪。水上たちの近く』
『―――――見つけた』
影浦くんが通信に乗せて話せば、少しして荒船くんの声が聞こえてきた。見つけた、ということは零した男の情報も伝わっているのだろう。
『蒼さん、白いパーカーの男で間違いないですか』
荒船くんの声にそっと水上くんたちの方を見れば、彼らの少し後ろに白いパーカーの男が見えた。じっとこちらを見ているのは、まさに何度も遭遇したあの男だった。
『…うん、あの人』
目が合わない内に影浦くんに隠れるように座り直して、通信に乗せて答える。ぎゅう、と影浦くんの手を握れば大丈夫だというように握り返してくれた。
『捕まえるぞ、ぜってえ逃がすな』
荒船くんの低い声が聞こえて、それからはあっという間だった。透明になっている穂刈くんと村上くんが男の口と動きを封じて静かに制圧し、水上くんと蔵内くんがそれを隠すように近づいてくる。逃走の危険もないと踏んだ北添くんと犬飼くん、王子くんが少し距離を置いて歩いていく。手際がいい。
「蒼サンはこっちな」
「どこいくの?」
「集合場所。記憶処理しねえとだろ」
「あ、了解」
私はと言えば静かな捕獲劇を見守って、影浦くんに手を引かれて歩き出した。
◆
「、あれ」
「なんだ、もう終わってんのか」
私と影浦くんが集合場所、近くの廃ビルの中に入った時には18歳組の面々が仰向けで失神しているらしい男を取り囲んでいた。
「何したの?」
「大したことはしていません」
怪我とかさせてないよね、と訊けばそれには頷かれたので一応はそれ以上聞かないでおく。荒船くんがイーグレットを片手に持っているところを見ると、多分あれを使ったんだろう。ボーダーの弾は生身の人間に当たっても大丈夫なように出来ているから。
「あんまり勝手にすると城戸さんに怒られちゃうよ」
「大丈夫です、許可は取ってありますから」
振り返った荒船くんが何でもないように言った。え、と言葉を詰まらせれば村上くんが補足するように口を開いた。
「城戸指令もこの計画は知っていますよ」
「むしろ徹底的にやってこいって言われましたから」
「城戸さんも大概蒼さんに甘いですよね~」
「まあ、蒼さんが困ってるなら皆全力で助けますからね」
城戸さんまで話が通ってるだと、と固まった私の前に荒船くんが立つ。
「蒼さん、早く終わらせて帰りましょう」
「あ、うん」
促されて失神した男の前にしゃがみ込む。数回瞬きをしてサイドエフェクトを発動、意識の無い男の記憶から私に関する事を片っ端から消していく。
「終わったら適当なトコに転がしてこねえとな」
「あ、ゾエさん運ぶよ~」
「そりゃおーきに。ゾエなら楽チンやな」
皆がわいわい話している間に綺麗さっぱり記憶を消して、ぎゅっと目を閉じてサイドエフェクトを停止させる。
「終わりました?」
「うん、ありがとう」
「じゃあゾエさん捨ててくるね~」
「見られんなよー」
目頭をぐりぐりして、差し出された荒船くんの手を借りて立ち上がる。北添くんに担ぎ上げられた男はもう私のことなんて追いかけまわさない。大事にしてしまったとはいえ、早く解決できてよかったとほっとする。
「みんなありがとう、助かった」
「次、こういうのがあったらもうちっと早く言えよ」
「そうですよ。もし蒼さんに何かあったらどうするんです」
「相手をぶち殺しそうだからな、荒船は」
「それも形も残さずな」
「だよねー」
果てしなく物騒な事を言う後輩たちに苦笑して、一緒に本部まで帰って行った。
それから皆には焼肉を奢る事になって、この前貰ったばかりのボーナスが吹っ飛んだのは良い思い出になった。
20万hit御礼企画!
ストーカー被害
貴女の脅威は全力を以て排除します
20万hit御礼企画、秋梨さまのリクエストでした!
18歳組で頑張らせていただきました。人が多くなってきて書き分けが…大変なことに…!
ありがとうございました!