荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
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荒船くんと恋人繋ぎ
良く晴れた本日、弟子から恋人に昇格したばかりの荒船くんと2人で街中の映画館へと向かっている。つまりは、デートだ。初デート。
「本当に映画で良いんですか?」
「うん!悠一に視てもらったから大丈夫だよ」
「そうですか」
普段は緊急呼び出しに備えて映画館なんて行けないんだけど(上映中に呼び出されたら迷惑になっちゃうし)、今日は悠一に視てもらっているから大丈夫なのだ。にこにこしている私を見る荒船くんも、普段より柔らかい表情をしている。
「じゃあ、どれ見ましょうか」
「あれ見たいな、今CMでやってるアクション映画」
「了解。チケット買いに行きましょうか」
「うん」
そんなに混んでいない映画館のカウンターに並んで、お目当ての映画のチケットを購入する。上映までは少しだけ時間があったので、ドリンクだけ買ってシアターの方へと足を踏み入れた。
「映画ひさびさ」
「どれくらい来てなかったんです?」
「確実に1年は来てないねー」
最初の大規模侵攻があってからは、気軽に外出できずに本部にいたからなあ。昔は戦力不足だったけれど、准たちの頑張りもあって今は人員が潤っているから少しくらいの外出は出来るようになった。
「それより、荒船くんこの映画ってもう見た?」
「はい、公開初日に」
荒船くんはもう見てるかもしれないな、と訊けばこくりと頷かれた。それでも、荒船くんは気に入った映画は何度も見に行くと言っていたから問題は無いだろう。
それに、先に見ているならお薦めの場面を聞ける利点がある。
「ほんと!じゃあお薦めの場面とかある?」
「そうですね…最初の方に主人公がベッドから転がり落ちるシーンがあるんですけど、」
「うん」
楽しそうな表情で話しだした荒船くんと一緒にシアターに入る。声のトーンを落として一緒に席を探して、2人並んで座り込んだ。今日はそんなに混んでいないからゆったり見れそうだと思えば、シアター内が暗くなっていく。
「ちょうどでしたね」
「だね」
楽しみ、と2人で静かに口を噤んだ。
◆
(おおお…!)
最新映像技術と世界最高峰のアクションなんて謳われていただけあって、映画の中盤を迎えるころにはすっかり映画に引き込まれていた。
(うわ、いまの格好良いなー!)
主人公が繰り出す多彩な動きに目を奪われて興奮する。トリオン体ならあの動きも出来そうだななんて考えながら見ていれば、場面は主人公がヒロインとの今生の別れを告げるシーンへと変わっていく。
(人のキスシーン見るのって、なんか気まずいんだよなあ…)
別れを惜しんでいるのはわかるけれど、キスシーンが長い。ちょっと気まずい心を落ち着かせようとドリンクに手を伸ばしたら、肘置きにあった荒船くんの手にふれてびくっとした。
「っ!ごめん」
「いえ」
小さい声で謝ってドリンクを掴む。乾いた喉を潤すようにこくこくドリンクを飲んで、ふと「そういえば、まだ荒船くんとキスしてないな」と思ってしまった。
「…っ!?」
いやいやいや今何を考えた、と一気に顔が赤くなるのを感じる。暗くてよかった、と溜め息を吐いて映画に集中しようと画面に目をやりながら空になったドリンクを戻した。
「、え」
ドリンクを置いて、引き戻そうとした手をぐっと掴まれて肘置きに固定された。私の手に上からかぶせるように荒船くんのおっきな手が重なっていて、思わず荒船くんの顔を見ればじっとこちらを見ていた紫色の瞳と視線がぶつかる。
「…ダメですか」
「…ダメじゃない、です…」
低い声で呟かれて、逃げるように画面へと視線を向ける。右手は荒船くんにとらわれてしまって、どうしても意識してしまう。
(、集中できない…!)
映画自体はクライマックスに向かっており、段々と派手な爆発やアクションが盛込まれてくる。荒船くん手のひらおっきい、とか別の事に意識を持っていかれて映画の内容がうまく頭に入って来ない。なんとか画面に集中するも、アクションに興奮する荒船くんが時折手に力を入れるので集中が途切れてしまう。
(うー…!)
これは後でDVD買って見直しだ…と荒船くんの手にもやもやした恨みの視線を送った。
◆
「…それで、あの場面に繋がっていくんですよ」
「へー!随分最初から手が込んでたんだね」
くるり、と指先のフォークを回してパスタを絡める。映画を観終わって、映画館近くのパスタ屋さんでお昼ご飯を食べているところだった。話題はもっぱら先程見ていた映画で、荒船くんがきらきらした顔で話しているのを見てこちらもにこにこしている。絶対言わないけど、今の荒船くんすごくかわいい。
「あの監督は最初から最後まで、細部に拘って作り込むんです」
「そうなんだ。他のも見てみたいな」
「それなら、作戦室にもいくつか置いてるんで後で持っていきます」
「ほんと!ありがとう」
あそこ映画のDVDいっぱいあるもんな、と頷きながらたらこクリームパスタをくるりとフォークに巻き付ける。それを口に運んで、咀嚼しながら正面でカルボナーラをくるくる巻く荒船くんを見る。
「……、」
荒船くんの手が、気になっている。大きいのに繊細な動きをするそれに視線が吸い寄せられる。私も荒船くんも公私混同しないタイプだから本部では淡々としてるし、そもそも今日がなんやかんや初デートだからまだ手を繋いで歩くとかもしてない。
(荒船くんと手、繋ぎたいなあ)
「…、どうかしました?」
「あ、ううん。なんでもない」
さっきのは重ねられただけだしなー、とじいっと見ていたのに気付かれて慌てて首を振る。さすがにちょっと意識しすぎだよなあ、ともぐもぐパスタを食べ進めていく。たらこ美味しい。
「…蒼さん」
「ん?…んん?」
呼ばれて視線を上げれば、目の前に荒船くんがフォークを差し出していた。それも綺麗に丁度私の1口分くらいが巻かれたやつ。意図がわからなくて首を傾げれば、荒船くんも首を傾げた。
「あれ、食べたいんで見てたんじゃないんですか」
「え、あっ…そういうわけでは…!」
慌てて首を振った私に、マジか、と荒船くんが小さく零す。わざわざ新しいフォークを使って巻いてくれたらしく、行き先を失ったパスタが揺れる。
「…でも、折角なので食べてくれませんか」
「あーんですか」
「そうですね」
「…」
「蒼さん」
「……、いただきます…」
荒船くんにじっと見つめられるのが弱いのは、もう知られてしまったんだろうか。荒船くんが自分の意見を推し進めたい時にじっと見られることが多い気がする、と思いながら端っこの席だし目立たないからいいかとちょっと身を乗り出す。
「…」
「どうぞ、」
「…あー、ん、む」
ひょい、と口の中に入って来たカルボナーラを、初デートなのにハードル高すぎないかなと考えながらもぐもぐ咀嚼する。
「おいしいですか」
「ん」
心なしか満足げな荒船くんが自分の口にもカルボナーラを運んでいくのを見つつ、複雑な気持ちでパスタをくるりと巻いた。
◆
「あれ、もう暗い」
「日が落ちるのが早くなってきましたよね」
この前までは今くらいの時間だったらまだ明るかったのにね、なんて言いながらショッピングモールから出て街中を並んで歩き始める。
ちょろっとだけ買い物もしたけど、小さいものだし片手は余裕で空いている。荒船くんもまた然り。
「…」
本部まではまだ遠いし、ちょっとでいいから手を繋いで歩きたい。駄目だ今日、ずっと荒船くんのこと考えてる。
「…蒼さん」
「ん?」
荒船くんとデートして幸せなのに、よくばりだなあと小さくため息をついたら荒船くんに話しかけられた。見れば、酷く不安そうな顔をした荒船くんが視界に入ってびっくりする。
「浮かない顔してますけど、体調悪いですか」
「え?や、ちょっと考え事してただけ」
「考え事?」
「あー…荒船くんと、手を繋ぎたいなと…」
正直にそう言って荒船くんを見上げれば、随分呆けた顔をしていた。困らせちゃったかな、と思った瞬間に荒船くんがふっと笑って手を差し出してくる。
「実は俺も、蒼さんと手を繋ぎたかったんです」
「え」
「手、繋いでもいいですか」
「!もちろん」
差し出された手に自分の手を重ねれば、荒船くんにぐっと握り込まれる。う、わ、恋人繋ぎだ。やっと手を繋げて良かったと笑う私に荒船くんも笑い返して、一緒にゆっくり歩き出す。
「じゃ、帰りましょうか」
「ちょっと遠回りで帰りたいです」
「了解」
ちょっと甘えたお願いに笑って了承をくれた荒船くんと2人、手を繋いだまま上機嫌で帰路についた。
20万hit御礼企画!
荒船くんとデート
(ふふ)
((くそ、蒼さん可愛い))
20万hit御礼企画、ゆうさま・こっぺさま・虎猫さま・きとりさまの合同リクエストでした!
ぎっちり詰め込みました!書いててとても楽しかったです!
ありがとうございました!
良く晴れた本日、弟子から恋人に昇格したばかりの荒船くんと2人で街中の映画館へと向かっている。つまりは、デートだ。初デート。
「本当に映画で良いんですか?」
「うん!悠一に視てもらったから大丈夫だよ」
「そうですか」
普段は緊急呼び出しに備えて映画館なんて行けないんだけど(上映中に呼び出されたら迷惑になっちゃうし)、今日は悠一に視てもらっているから大丈夫なのだ。にこにこしている私を見る荒船くんも、普段より柔らかい表情をしている。
「じゃあ、どれ見ましょうか」
「あれ見たいな、今CMでやってるアクション映画」
「了解。チケット買いに行きましょうか」
「うん」
そんなに混んでいない映画館のカウンターに並んで、お目当ての映画のチケットを購入する。上映までは少しだけ時間があったので、ドリンクだけ買ってシアターの方へと足を踏み入れた。
「映画ひさびさ」
「どれくらい来てなかったんです?」
「確実に1年は来てないねー」
最初の大規模侵攻があってからは、気軽に外出できずに本部にいたからなあ。昔は戦力不足だったけれど、准たちの頑張りもあって今は人員が潤っているから少しくらいの外出は出来るようになった。
「それより、荒船くんこの映画ってもう見た?」
「はい、公開初日に」
荒船くんはもう見てるかもしれないな、と訊けばこくりと頷かれた。それでも、荒船くんは気に入った映画は何度も見に行くと言っていたから問題は無いだろう。
それに、先に見ているならお薦めの場面を聞ける利点がある。
「ほんと!じゃあお薦めの場面とかある?」
「そうですね…最初の方に主人公がベッドから転がり落ちるシーンがあるんですけど、」
「うん」
楽しそうな表情で話しだした荒船くんと一緒にシアターに入る。声のトーンを落として一緒に席を探して、2人並んで座り込んだ。今日はそんなに混んでいないからゆったり見れそうだと思えば、シアター内が暗くなっていく。
「ちょうどでしたね」
「だね」
楽しみ、と2人で静かに口を噤んだ。
◆
(おおお…!)
最新映像技術と世界最高峰のアクションなんて謳われていただけあって、映画の中盤を迎えるころにはすっかり映画に引き込まれていた。
(うわ、いまの格好良いなー!)
主人公が繰り出す多彩な動きに目を奪われて興奮する。トリオン体ならあの動きも出来そうだななんて考えながら見ていれば、場面は主人公がヒロインとの今生の別れを告げるシーンへと変わっていく。
(人のキスシーン見るのって、なんか気まずいんだよなあ…)
別れを惜しんでいるのはわかるけれど、キスシーンが長い。ちょっと気まずい心を落ち着かせようとドリンクに手を伸ばしたら、肘置きにあった荒船くんの手にふれてびくっとした。
「っ!ごめん」
「いえ」
小さい声で謝ってドリンクを掴む。乾いた喉を潤すようにこくこくドリンクを飲んで、ふと「そういえば、まだ荒船くんとキスしてないな」と思ってしまった。
「…っ!?」
いやいやいや今何を考えた、と一気に顔が赤くなるのを感じる。暗くてよかった、と溜め息を吐いて映画に集中しようと画面に目をやりながら空になったドリンクを戻した。
「、え」
ドリンクを置いて、引き戻そうとした手をぐっと掴まれて肘置きに固定された。私の手に上からかぶせるように荒船くんのおっきな手が重なっていて、思わず荒船くんの顔を見ればじっとこちらを見ていた紫色の瞳と視線がぶつかる。
「…ダメですか」
「…ダメじゃない、です…」
低い声で呟かれて、逃げるように画面へと視線を向ける。右手は荒船くんにとらわれてしまって、どうしても意識してしまう。
(、集中できない…!)
映画自体はクライマックスに向かっており、段々と派手な爆発やアクションが盛込まれてくる。荒船くん手のひらおっきい、とか別の事に意識を持っていかれて映画の内容がうまく頭に入って来ない。なんとか画面に集中するも、アクションに興奮する荒船くんが時折手に力を入れるので集中が途切れてしまう。
(うー…!)
これは後でDVD買って見直しだ…と荒船くんの手にもやもやした恨みの視線を送った。
◆
「…それで、あの場面に繋がっていくんですよ」
「へー!随分最初から手が込んでたんだね」
くるり、と指先のフォークを回してパスタを絡める。映画を観終わって、映画館近くのパスタ屋さんでお昼ご飯を食べているところだった。話題はもっぱら先程見ていた映画で、荒船くんがきらきらした顔で話しているのを見てこちらもにこにこしている。絶対言わないけど、今の荒船くんすごくかわいい。
「あの監督は最初から最後まで、細部に拘って作り込むんです」
「そうなんだ。他のも見てみたいな」
「それなら、作戦室にもいくつか置いてるんで後で持っていきます」
「ほんと!ありがとう」
あそこ映画のDVDいっぱいあるもんな、と頷きながらたらこクリームパスタをくるりとフォークに巻き付ける。それを口に運んで、咀嚼しながら正面でカルボナーラをくるくる巻く荒船くんを見る。
「……、」
荒船くんの手が、気になっている。大きいのに繊細な動きをするそれに視線が吸い寄せられる。私も荒船くんも公私混同しないタイプだから本部では淡々としてるし、そもそも今日がなんやかんや初デートだからまだ手を繋いで歩くとかもしてない。
(荒船くんと手、繋ぎたいなあ)
「…、どうかしました?」
「あ、ううん。なんでもない」
さっきのは重ねられただけだしなー、とじいっと見ていたのに気付かれて慌てて首を振る。さすがにちょっと意識しすぎだよなあ、ともぐもぐパスタを食べ進めていく。たらこ美味しい。
「…蒼さん」
「ん?…んん?」
呼ばれて視線を上げれば、目の前に荒船くんがフォークを差し出していた。それも綺麗に丁度私の1口分くらいが巻かれたやつ。意図がわからなくて首を傾げれば、荒船くんも首を傾げた。
「あれ、食べたいんで見てたんじゃないんですか」
「え、あっ…そういうわけでは…!」
慌てて首を振った私に、マジか、と荒船くんが小さく零す。わざわざ新しいフォークを使って巻いてくれたらしく、行き先を失ったパスタが揺れる。
「…でも、折角なので食べてくれませんか」
「あーんですか」
「そうですね」
「…」
「蒼さん」
「……、いただきます…」
荒船くんにじっと見つめられるのが弱いのは、もう知られてしまったんだろうか。荒船くんが自分の意見を推し進めたい時にじっと見られることが多い気がする、と思いながら端っこの席だし目立たないからいいかとちょっと身を乗り出す。
「…」
「どうぞ、」
「…あー、ん、む」
ひょい、と口の中に入って来たカルボナーラを、初デートなのにハードル高すぎないかなと考えながらもぐもぐ咀嚼する。
「おいしいですか」
「ん」
心なしか満足げな荒船くんが自分の口にもカルボナーラを運んでいくのを見つつ、複雑な気持ちでパスタをくるりと巻いた。
◆
「あれ、もう暗い」
「日が落ちるのが早くなってきましたよね」
この前までは今くらいの時間だったらまだ明るかったのにね、なんて言いながらショッピングモールから出て街中を並んで歩き始める。
ちょろっとだけ買い物もしたけど、小さいものだし片手は余裕で空いている。荒船くんもまた然り。
「…」
本部まではまだ遠いし、ちょっとでいいから手を繋いで歩きたい。駄目だ今日、ずっと荒船くんのこと考えてる。
「…蒼さん」
「ん?」
荒船くんとデートして幸せなのに、よくばりだなあと小さくため息をついたら荒船くんに話しかけられた。見れば、酷く不安そうな顔をした荒船くんが視界に入ってびっくりする。
「浮かない顔してますけど、体調悪いですか」
「え?や、ちょっと考え事してただけ」
「考え事?」
「あー…荒船くんと、手を繋ぎたいなと…」
正直にそう言って荒船くんを見上げれば、随分呆けた顔をしていた。困らせちゃったかな、と思った瞬間に荒船くんがふっと笑って手を差し出してくる。
「実は俺も、蒼さんと手を繋ぎたかったんです」
「え」
「手、繋いでもいいですか」
「!もちろん」
差し出された手に自分の手を重ねれば、荒船くんにぐっと握り込まれる。う、わ、恋人繋ぎだ。やっと手を繋げて良かったと笑う私に荒船くんも笑い返して、一緒にゆっくり歩き出す。
「じゃ、帰りましょうか」
「ちょっと遠回りで帰りたいです」
「了解」
ちょっと甘えたお願いに笑って了承をくれた荒船くんと2人、手を繋いだまま上機嫌で帰路についた。
20万hit御礼企画!
荒船くんとデート
(ふふ)
((くそ、蒼さん可愛い))
20万hit御礼企画、ゆうさま・こっぺさま・虎猫さま・きとりさまの合同リクエストでした!
ぎっちり詰め込みました!書いててとても楽しかったです!
ありがとうございました!