荒船と出水の師匠シリーズ
企画もの
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玉狛支部でお昼ご飯!
「おはようございまーす」
夏の早朝、まだ暗い街中にある玉狛支部前。
小さな声でコンコンと玄関を叩いてから中へ入れば、廊下の奥から烏丸くんが歩いてきた。
「あれ、蒼さん早いですね。おはようございます」
「おはよ。烏丸くんこそ早いね、バイト?」
「はい、新聞配達行ってきます」
「そっか、行ってらっしゃい」
出かけて行った烏丸くんと入れ替わりに玉狛支部に入っていく。
見知った支部の中を静かに進んでいけば、キッチンに明かりがついていた。湯気の立つ鍋の中身をかき回しているのはレイジさんだ。
「おはようございます」
「おはよう、早いな」
「今日はよろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
レイジさんに頭を下げれば、彼も軽く頭を下げた。今日の早朝任務は玉狛支部と合同で行えとの命令が来たので、わざわざ朝早くにここまでやってきたのだ。上からの命令に眠いなんて言っていられないし、目覚ましを止めて眠い目をこすりながら静かな本部を出てきたのだ。
「朝飯食ったか?」
「いえ、終わったら本部で食べようかと」
「それならここで食っていけ」
烏丸に食わせたやつがまだ残っているからなとレイジさんが言い、後ろの棚から白い深めの皿を取り出しながらテーブルにつくように示される。
「やった、ご馳走になります」
せっかくなのでご馳走になろうと椅子に座れば、すぐにレイジさんがやってくる。
ことりと置かれた白いお皿には、湯気を立てるたっぷりの赤い液体が入っている。トマトの良い香りがするこれは、ミネストローネだ。
「わ、美味しそう」
「これも食っていいぞ」
「いただきます」
続いて置かれたのは焼きたての丸パンだ。これもレイジさんの手作りだろうかと思いながら、バスケットに入ったそれをひとつ手に取る。
あつあつのパンをちぎって口に放り込めば、ふわふわでほのかに甘い味が広がった。
「んー!」
「うまいか」
「とても!」
最後に山盛りのサラダと取り皿、それとドレッシング、自分の分らしきミネストローネを持ってきて、レイジさんが私の前に座った。
ミネストローネもスプーンで掬って口に運べば、柔らかいトマトの酸味が口に広がって、続いて玉ねぎやベーコンの甘みがやってくる。
「幸せ…」
「それは良かったが、寝癖ついてるぞ」
「えっ!」
レイジさんに指摘されて思わず空いてる左手で頭を押さえた。しまった見逃したかと手に触れた寝癖をくいくい引っ張る。そっと手を離すも、抑えていた髪の毛はみょんと跳ねた。絶望。
「くっ…後で洗面台借してください…」
「ああ」
寝癖を直すのを諦めてごはんを食べることにした私を見てレイジさんが笑う。
それからパンとミネストローネ、サラダを食べきってから洗面台に飛び込んだ。
◆
目の前に迫る刃を弧月でいなし、ぎゃりっと刃が鳴るのを聞きながらモールモッドの懐へ潜り込んで弧月を持ち直した。
「これでお仕舞いか、なっ!」
放棄された街中で、最後の一体と思われるモールモッドを切り伏せ、ごしゃっと山積みになったモールモッドたちの上に積み上げる。がしゃがしゃと動かなくなったそれらの上にのぼって、辺りを見回した。うん、敵影なし。
「おー、やっぱ蒼連れてきて正解だったなー」
「悠一」
私と同じようにがしゃがしゃとモールモッドをのぼって、風刃をぶら下げた悠一がやってくる。私の姿を視た悠一はよし、と頷いた。追撃はないようだ。
「やっぱ二人だときつくってなー」
「応援ならいつでも呼んで。できれば今度は夜で」
「そう言っても呼んだら来るくせに」
「来るけどさあ」
朝だと眠気に負けそうになるんだよ、とぼやく私に悠一が笑う。そして持っていた風刃を仕舞い、山の下にいるレイジさんに声を掛けた。
「レイジさーん、こっちおしまいー。追撃もなし」
「よし、宇佐美に連絡しよう。蒼、今日は助かった。ありがとう」
「いえ!」
私が機動力の高いモールモッド達を相手している間、レイジさんは悠一と二人でバンダーやバムスターといった鈍重系のネイバーを相手していた。それらもレイジさんの周辺に転がっている。
もともとは悠一の予知によって大量のネイバーが来ることがわかっていたから、それの応援として呼ばれていたのだ。
『お疲れさま~。ちょうど時間だから、交代して戻ってきてね~』
「了解、栞ちゃん」
栞ちゃんと交信を終え、少ししてやってきた隊に引き継ぎの報告をしてから玉狛支部への帰路についた。
◆
「む、こなみととりまるがかえってきたな」
玉狛支部に戻り、折角だから昼飯も食っていけというレイジさんのお言葉に甘えてリビングでまったり中。
陽太郎くんと共に雷神丸を撫でまわしていたら、陽太郎くんの呟きの後に小南ちゃんがバタバタとリビングへやってきた。
「蒼さん!」
「おかえり小南ちゃん。お邪魔してます」
「あ、まだ蒼さんいるんですね」
「烏丸くんもおかえり。お昼ご飯も食べて行く事になりましたー」
小南ちゃんに続いて烏丸くんがリビングへやってくる。先程まで学校だった二人は揃って制服姿だ。
「今日は早いね?このあと任務はないんでしょ?」
「テスト期間なんすよ」
「ああ、そっか」
高校生はテストの時期か。授業は午前中しかなかったから、こんなに早く帰って来たのかと一人頷く。
「それより蒼さん!ご飯まで私と模擬戦しましょうよ!」
「お、いいね」
小南ちゃんと戦うのは久しぶりだしね、と立ち上がろうとすればタイミング良くレイジさんがやってくる。
「悪いがもう準備できた。飯の後にやってくれ」
「ええー」
「残念。あとでね、小南ちゃん。陽太郎くん、手を洗ってこよっか」
「うむ」
「蒼さん、絶対ですよ!」
約束ですからね!と念を押す小南ちゃんに苦笑しつつ、陽太郎くんと手を洗いに洗面台へ向かう。
「お昼ご飯はなんだろねー」
「オムライスだといいな!」
「レイジさんのオムライスは美味しいもんねえ。陽太郎くんはふわとろと薄焼きどっち派?」
「ふわとろだな」
あれのみりょくははかりしれん、と真剣な顔で言う陽太郎くんと手を洗い、しっかり水気を切ってからリビングへ戻る。リビングではもうすでに皆が席についていた。
さっきはいなかった林藤さんも席についている。陽太郎くんは林藤さんの横へ歩いていった。
「林藤さんこんにちは。お邪魔してます」
「よう蒼。今日は悪かったな」
「いえ」
林藤さんに挨拶して、私は悠一の隣に座り込む。すぐにレイジさんによって本日のお昼ご飯が運ばれてくる。ことりとお皿が置かれ、陽太郎くんがぱっと笑顔になる。今日のお昼はふわとろオムライスだ。
「レイジ、なんでおれのたべたいものがわかったんだ!?」
「さあな」
レイジさんが薄く笑って肩をすくめる。ほんとうは、私達が任務から帰ってきたときにリビングで雷神丸と眠っていた陽太郎くんの寝言を拾ったのだけれど、そこは笑みを浮かべるだけで内緒にしておくのだ。
「さ、食べようか」
『いただきます!』
林藤さんの一言で、皆が手を合わせる。倣って手を合わせ、レイジさんのオムライスを堪能するべくスプーンを手に取った。
玉狛支部は今日も非常に平和です。
玉狛支部とお昼ご飯
1万hit御礼企画!
(さ!蒼さん模擬戦しましょ!)
(待ってまだ食べてるんで!)
(ゆっくり食わしてやれよ小南)
1万hit御礼企画、葵さんリクエストでした!
ありがとうございました!
「おはようございまーす」
夏の早朝、まだ暗い街中にある玉狛支部前。
小さな声でコンコンと玄関を叩いてから中へ入れば、廊下の奥から烏丸くんが歩いてきた。
「あれ、蒼さん早いですね。おはようございます」
「おはよ。烏丸くんこそ早いね、バイト?」
「はい、新聞配達行ってきます」
「そっか、行ってらっしゃい」
出かけて行った烏丸くんと入れ替わりに玉狛支部に入っていく。
見知った支部の中を静かに進んでいけば、キッチンに明かりがついていた。湯気の立つ鍋の中身をかき回しているのはレイジさんだ。
「おはようございます」
「おはよう、早いな」
「今日はよろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
レイジさんに頭を下げれば、彼も軽く頭を下げた。今日の早朝任務は玉狛支部と合同で行えとの命令が来たので、わざわざ朝早くにここまでやってきたのだ。上からの命令に眠いなんて言っていられないし、目覚ましを止めて眠い目をこすりながら静かな本部を出てきたのだ。
「朝飯食ったか?」
「いえ、終わったら本部で食べようかと」
「それならここで食っていけ」
烏丸に食わせたやつがまだ残っているからなとレイジさんが言い、後ろの棚から白い深めの皿を取り出しながらテーブルにつくように示される。
「やった、ご馳走になります」
せっかくなのでご馳走になろうと椅子に座れば、すぐにレイジさんがやってくる。
ことりと置かれた白いお皿には、湯気を立てるたっぷりの赤い液体が入っている。トマトの良い香りがするこれは、ミネストローネだ。
「わ、美味しそう」
「これも食っていいぞ」
「いただきます」
続いて置かれたのは焼きたての丸パンだ。これもレイジさんの手作りだろうかと思いながら、バスケットに入ったそれをひとつ手に取る。
あつあつのパンをちぎって口に放り込めば、ふわふわでほのかに甘い味が広がった。
「んー!」
「うまいか」
「とても!」
最後に山盛りのサラダと取り皿、それとドレッシング、自分の分らしきミネストローネを持ってきて、レイジさんが私の前に座った。
ミネストローネもスプーンで掬って口に運べば、柔らかいトマトの酸味が口に広がって、続いて玉ねぎやベーコンの甘みがやってくる。
「幸せ…」
「それは良かったが、寝癖ついてるぞ」
「えっ!」
レイジさんに指摘されて思わず空いてる左手で頭を押さえた。しまった見逃したかと手に触れた寝癖をくいくい引っ張る。そっと手を離すも、抑えていた髪の毛はみょんと跳ねた。絶望。
「くっ…後で洗面台借してください…」
「ああ」
寝癖を直すのを諦めてごはんを食べることにした私を見てレイジさんが笑う。
それからパンとミネストローネ、サラダを食べきってから洗面台に飛び込んだ。
◆
目の前に迫る刃を弧月でいなし、ぎゃりっと刃が鳴るのを聞きながらモールモッドの懐へ潜り込んで弧月を持ち直した。
「これでお仕舞いか、なっ!」
放棄された街中で、最後の一体と思われるモールモッドを切り伏せ、ごしゃっと山積みになったモールモッドたちの上に積み上げる。がしゃがしゃと動かなくなったそれらの上にのぼって、辺りを見回した。うん、敵影なし。
「おー、やっぱ蒼連れてきて正解だったなー」
「悠一」
私と同じようにがしゃがしゃとモールモッドをのぼって、風刃をぶら下げた悠一がやってくる。私の姿を視た悠一はよし、と頷いた。追撃はないようだ。
「やっぱ二人だときつくってなー」
「応援ならいつでも呼んで。できれば今度は夜で」
「そう言っても呼んだら来るくせに」
「来るけどさあ」
朝だと眠気に負けそうになるんだよ、とぼやく私に悠一が笑う。そして持っていた風刃を仕舞い、山の下にいるレイジさんに声を掛けた。
「レイジさーん、こっちおしまいー。追撃もなし」
「よし、宇佐美に連絡しよう。蒼、今日は助かった。ありがとう」
「いえ!」
私が機動力の高いモールモッド達を相手している間、レイジさんは悠一と二人でバンダーやバムスターといった鈍重系のネイバーを相手していた。それらもレイジさんの周辺に転がっている。
もともとは悠一の予知によって大量のネイバーが来ることがわかっていたから、それの応援として呼ばれていたのだ。
『お疲れさま~。ちょうど時間だから、交代して戻ってきてね~』
「了解、栞ちゃん」
栞ちゃんと交信を終え、少ししてやってきた隊に引き継ぎの報告をしてから玉狛支部への帰路についた。
◆
「む、こなみととりまるがかえってきたな」
玉狛支部に戻り、折角だから昼飯も食っていけというレイジさんのお言葉に甘えてリビングでまったり中。
陽太郎くんと共に雷神丸を撫でまわしていたら、陽太郎くんの呟きの後に小南ちゃんがバタバタとリビングへやってきた。
「蒼さん!」
「おかえり小南ちゃん。お邪魔してます」
「あ、まだ蒼さんいるんですね」
「烏丸くんもおかえり。お昼ご飯も食べて行く事になりましたー」
小南ちゃんに続いて烏丸くんがリビングへやってくる。先程まで学校だった二人は揃って制服姿だ。
「今日は早いね?このあと任務はないんでしょ?」
「テスト期間なんすよ」
「ああ、そっか」
高校生はテストの時期か。授業は午前中しかなかったから、こんなに早く帰って来たのかと一人頷く。
「それより蒼さん!ご飯まで私と模擬戦しましょうよ!」
「お、いいね」
小南ちゃんと戦うのは久しぶりだしね、と立ち上がろうとすればタイミング良くレイジさんがやってくる。
「悪いがもう準備できた。飯の後にやってくれ」
「ええー」
「残念。あとでね、小南ちゃん。陽太郎くん、手を洗ってこよっか」
「うむ」
「蒼さん、絶対ですよ!」
約束ですからね!と念を押す小南ちゃんに苦笑しつつ、陽太郎くんと手を洗いに洗面台へ向かう。
「お昼ご飯はなんだろねー」
「オムライスだといいな!」
「レイジさんのオムライスは美味しいもんねえ。陽太郎くんはふわとろと薄焼きどっち派?」
「ふわとろだな」
あれのみりょくははかりしれん、と真剣な顔で言う陽太郎くんと手を洗い、しっかり水気を切ってからリビングへ戻る。リビングではもうすでに皆が席についていた。
さっきはいなかった林藤さんも席についている。陽太郎くんは林藤さんの横へ歩いていった。
「林藤さんこんにちは。お邪魔してます」
「よう蒼。今日は悪かったな」
「いえ」
林藤さんに挨拶して、私は悠一の隣に座り込む。すぐにレイジさんによって本日のお昼ご飯が運ばれてくる。ことりとお皿が置かれ、陽太郎くんがぱっと笑顔になる。今日のお昼はふわとろオムライスだ。
「レイジ、なんでおれのたべたいものがわかったんだ!?」
「さあな」
レイジさんが薄く笑って肩をすくめる。ほんとうは、私達が任務から帰ってきたときにリビングで雷神丸と眠っていた陽太郎くんの寝言を拾ったのだけれど、そこは笑みを浮かべるだけで内緒にしておくのだ。
「さ、食べようか」
『いただきます!』
林藤さんの一言で、皆が手を合わせる。倣って手を合わせ、レイジさんのオムライスを堪能するべくスプーンを手に取った。
玉狛支部は今日も非常に平和です。
玉狛支部とお昼ご飯
1万hit御礼企画!
(さ!蒼さん模擬戦しましょ!)
(待ってまだ食べてるんで!)
(ゆっくり食わしてやれよ小南)
1万hit御礼企画、葵さんリクエストでした!
ありがとうございました!
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