荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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嵐山隊から救援依頼
ラウンジの一角でレポートを仕上げていたら、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。それに気付くと同時に聞き慣れた声が降ってくる。
「ああいた。蒼、いまいいか?」
「准?いいよ、どうしたの?」
早足にこちらに近づいてきたのは同い年の嵐山准で、珍しく少し困ったような顔をしていた。いつも大体笑顔だから、こういう顔は珍しいなと首を傾げる。
「すまない、蒼に少し手伝って欲しいことがあるんだ」
「なに?」
「あまり公にしたくはないんだ…うちの作戦室まで来てくれるか?」
「了解」
へんにゃりと眉を下げた准に頷いて、資料なんかをテーブルの隅に片付けて立ち上がる。まだ新入隊員の時期ではないし、なんの話だろうと思いつつ准の後を追った。
◆
「…どうしたの」
先導する准に続いてお邪魔します、と嵐山隊の作戦室に足を踏み入れたらそこには重い空気が漂っていた。ずらりとそろった嵐山隊のメンバーが皆一様に暗い表情をしていて、これは思ったより深刻かもしれないなと気を引き締める。
「実は、最近悪質な差し入れが木虎と綾辻に送られてきていて…」
「!」
『悪質な差し入れ』が『女性2人』に送られてきたと聞けば、差し入れの中身はどういうものか大方察しが付く。2人が引きつった顔でソファの隅に座っているのもそう言う事だろう。アイドル活動をしている彼等はたまにこういうトラブルに巻き込まれるのだ。手伝ってほしいのは、犯人を捜して煮るなり焼くなりすることだろうと口を開く。
「犯人の目星はついてる?」
「握手会の時に来てたっていうのはわかるんですけど、同じ袋を持ってきた人が結構いて…」
「それでも監視カメラの映像や時間を分析してもらって、3人まで絞りました」
「見せて」
私の問いかけには佐鳥くんと時枝くんが応えてくれた。時枝くんがタブレット端末を渡してくれたので、ソファに座りながらそこに表示された監視カメラから抜粋された何枚かの画像を見せてもらった。
「んー…」
「蒼、見覚えないか?」
「あるある。嵐山隊モチーフのバッグ持ってる人と准のコスプレした人は握手会の常連さんだよね。でもこの黒い帽子の人は初めて見る」
見た事ある2人は何度も足を運んでくれてるし、確かファンクラブの会員だから個人情報の特定も簡単だろう。問題は、握手会では見た事がない黒い帽子の人。
「ちょっと顔が見にくいな…別角度か動画ない?」
「あります。少し待ってください」
時枝くんが横からタブレットを操作して、1つの動画ファイルを開く。ざわざわ騒がしい喧噪の中、黒い帽子の人が握手の為の列に並んでいるところが映し出された。
「……ん、」
男がちらりと辺りを見回した瞬間に顔がはっきり見えた。どこかで見覚えがあるな、とそこで止めた男の顔をじっと見る。
「…あー、わかった。早沼の方にあるコンビニ店員だ」
そこまで判ればあとは現地に出向いてサイドエフェクトで記憶を探ってくればいい。犯人ならそのまま然るべき対処をして、犯人でなければ他の2人を見にいけば良いことだし。
「コンビニ店員か」
「うん。この後時間あるからすぐ行ってくるよ」
「すまない」
「気にしないで」
根付さんと城戸さんに声かけて行った方がいいなと時計を見る。今の時間なら会議もしてないだろうし、ちょっと話してくるだけならすぐに済むだろうと手早く根付さんにメッセージを送った。
ソファから立ち上がって、テーブルを挟んだ反対側で青い顔をしている綾辻ちゃんと木虎ちゃんの頭をそっと撫でる。
「今日中に片付けてくるから、心配しないで待ってて」
「、お願いします」
「蒼、頼んだぞ」
「まかせて」
2人のケアをお願いね、と准や佐鳥くん、時枝くんに言い残して嵐山隊の作戦室から飛び出した。
◆
予想通り会議もしていなかったので、根付さんと城戸さんの所までやってきていた。嵐山隊から借りたデータをモニターで見せつつ、1番怪しい奴から見ていくことを告げる。
「と言うことでして」
「そうか」
「全く困ったもんだねえ…」
淡々とした城戸さんに対し、根付さんはやれやれと背もたれに身体を預けた。この手の輩は時々現れては、大体この3人の手によって無かったことになっていく。
「記憶操作などは蒼に任せよう」
「了解」
「すみませんねえ、蒼さんには手間を掛けますが」
「いいえ。後で個人情報持ってくるので、一応ブラックリストに入れておいてください」
「すぐに対応しますよ」
根付さんから貰った残り2人の住所も頭の中に叩き込んで、それでは、と会議室から出てまた足早に廊下を歩き出す。許可ももらえたし、さっさと行って片付けてこよう。
◆
結果から言えば、やっぱりコンビニ店員の黒帽子が悪質な差し入れの犯人だった。ちょうど勤務先のコンビニに到着したら表でゴミを纏めていたので、さくっと人目を避けた横の路地へと連行、気絶させてサイドエフェクトで確認すればビンゴ。
「…これでよし、と」
嵐山隊に関する悪い記憶を消去して、代わりにボーダーに適度に良い印象を持つように植え付けておく。これなら変な被害は出ないだろう。ポケットに入っていた財布から免許証を引っ張り出して写真を撮り、最後に私に会った記憶も消して終了。サイドエフェクトを停止させて、ぐうっと伸びをした。
「さて、帰りますかあ」
ひっつかんでいた襟首から手を離せば、どさっと男が固いコンクリートの地面へと転がった。そのうち起きるでしょと男をそのままにして日の当たる道路へと歩き出しながら、城戸さんと根付さんに完了の報告、ついでに氏名と住所なんかが載った写真を送信する。
「准にも連絡しないと」
今の時間なら電話でも大丈夫かな、と電話を掛ければ1コールもしないうちに准の声が聞こえてくる。
『蒼、どうだった?』
「やっぱりコンビニ店員が犯人だったよ。記憶消したから、もう大丈夫って2人に伝えておいて」
『わかった!蒼、本当にありがとう!』
「いーえ。また何かあったら教えてね」
『ああ。今度暇なときにご飯でもおごらせてくれ』
「お、ありがと」
ほっとしたような声の准と少し話をしてから電話を切った。
ヒーローだってたまには他の人に頼って貰わないとね、と思いながら本部へと足を進めた。
ヒーローからの救援依頼
仲間のピンチに駆けつける
(悠一ほどじゃないけど、私も暗躍してるよねえ)
ラウンジの一角でレポートを仕上げていたら、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。それに気付くと同時に聞き慣れた声が降ってくる。
「ああいた。蒼、いまいいか?」
「准?いいよ、どうしたの?」
早足にこちらに近づいてきたのは同い年の嵐山准で、珍しく少し困ったような顔をしていた。いつも大体笑顔だから、こういう顔は珍しいなと首を傾げる。
「すまない、蒼に少し手伝って欲しいことがあるんだ」
「なに?」
「あまり公にしたくはないんだ…うちの作戦室まで来てくれるか?」
「了解」
へんにゃりと眉を下げた准に頷いて、資料なんかをテーブルの隅に片付けて立ち上がる。まだ新入隊員の時期ではないし、なんの話だろうと思いつつ准の後を追った。
◆
「…どうしたの」
先導する准に続いてお邪魔します、と嵐山隊の作戦室に足を踏み入れたらそこには重い空気が漂っていた。ずらりとそろった嵐山隊のメンバーが皆一様に暗い表情をしていて、これは思ったより深刻かもしれないなと気を引き締める。
「実は、最近悪質な差し入れが木虎と綾辻に送られてきていて…」
「!」
『悪質な差し入れ』が『女性2人』に送られてきたと聞けば、差し入れの中身はどういうものか大方察しが付く。2人が引きつった顔でソファの隅に座っているのもそう言う事だろう。アイドル活動をしている彼等はたまにこういうトラブルに巻き込まれるのだ。手伝ってほしいのは、犯人を捜して煮るなり焼くなりすることだろうと口を開く。
「犯人の目星はついてる?」
「握手会の時に来てたっていうのはわかるんですけど、同じ袋を持ってきた人が結構いて…」
「それでも監視カメラの映像や時間を分析してもらって、3人まで絞りました」
「見せて」
私の問いかけには佐鳥くんと時枝くんが応えてくれた。時枝くんがタブレット端末を渡してくれたので、ソファに座りながらそこに表示された監視カメラから抜粋された何枚かの画像を見せてもらった。
「んー…」
「蒼、見覚えないか?」
「あるある。嵐山隊モチーフのバッグ持ってる人と准のコスプレした人は握手会の常連さんだよね。でもこの黒い帽子の人は初めて見る」
見た事ある2人は何度も足を運んでくれてるし、確かファンクラブの会員だから個人情報の特定も簡単だろう。問題は、握手会では見た事がない黒い帽子の人。
「ちょっと顔が見にくいな…別角度か動画ない?」
「あります。少し待ってください」
時枝くんが横からタブレットを操作して、1つの動画ファイルを開く。ざわざわ騒がしい喧噪の中、黒い帽子の人が握手の為の列に並んでいるところが映し出された。
「……ん、」
男がちらりと辺りを見回した瞬間に顔がはっきり見えた。どこかで見覚えがあるな、とそこで止めた男の顔をじっと見る。
「…あー、わかった。早沼の方にあるコンビニ店員だ」
そこまで判ればあとは現地に出向いてサイドエフェクトで記憶を探ってくればいい。犯人ならそのまま然るべき対処をして、犯人でなければ他の2人を見にいけば良いことだし。
「コンビニ店員か」
「うん。この後時間あるからすぐ行ってくるよ」
「すまない」
「気にしないで」
根付さんと城戸さんに声かけて行った方がいいなと時計を見る。今の時間なら会議もしてないだろうし、ちょっと話してくるだけならすぐに済むだろうと手早く根付さんにメッセージを送った。
ソファから立ち上がって、テーブルを挟んだ反対側で青い顔をしている綾辻ちゃんと木虎ちゃんの頭をそっと撫でる。
「今日中に片付けてくるから、心配しないで待ってて」
「、お願いします」
「蒼、頼んだぞ」
「まかせて」
2人のケアをお願いね、と准や佐鳥くん、時枝くんに言い残して嵐山隊の作戦室から飛び出した。
◆
予想通り会議もしていなかったので、根付さんと城戸さんの所までやってきていた。嵐山隊から借りたデータをモニターで見せつつ、1番怪しい奴から見ていくことを告げる。
「と言うことでして」
「そうか」
「全く困ったもんだねえ…」
淡々とした城戸さんに対し、根付さんはやれやれと背もたれに身体を預けた。この手の輩は時々現れては、大体この3人の手によって無かったことになっていく。
「記憶操作などは蒼に任せよう」
「了解」
「すみませんねえ、蒼さんには手間を掛けますが」
「いいえ。後で個人情報持ってくるので、一応ブラックリストに入れておいてください」
「すぐに対応しますよ」
根付さんから貰った残り2人の住所も頭の中に叩き込んで、それでは、と会議室から出てまた足早に廊下を歩き出す。許可ももらえたし、さっさと行って片付けてこよう。
◆
結果から言えば、やっぱりコンビニ店員の黒帽子が悪質な差し入れの犯人だった。ちょうど勤務先のコンビニに到着したら表でゴミを纏めていたので、さくっと人目を避けた横の路地へと連行、気絶させてサイドエフェクトで確認すればビンゴ。
「…これでよし、と」
嵐山隊に関する悪い記憶を消去して、代わりにボーダーに適度に良い印象を持つように植え付けておく。これなら変な被害は出ないだろう。ポケットに入っていた財布から免許証を引っ張り出して写真を撮り、最後に私に会った記憶も消して終了。サイドエフェクトを停止させて、ぐうっと伸びをした。
「さて、帰りますかあ」
ひっつかんでいた襟首から手を離せば、どさっと男が固いコンクリートの地面へと転がった。そのうち起きるでしょと男をそのままにして日の当たる道路へと歩き出しながら、城戸さんと根付さんに完了の報告、ついでに氏名と住所なんかが載った写真を送信する。
「准にも連絡しないと」
今の時間なら電話でも大丈夫かな、と電話を掛ければ1コールもしないうちに准の声が聞こえてくる。
『蒼、どうだった?』
「やっぱりコンビニ店員が犯人だったよ。記憶消したから、もう大丈夫って2人に伝えておいて」
『わかった!蒼、本当にありがとう!』
「いーえ。また何かあったら教えてね」
『ああ。今度暇なときにご飯でもおごらせてくれ』
「お、ありがと」
ほっとしたような声の准と少し話をしてから電話を切った。
ヒーローだってたまには他の人に頼って貰わないとね、と思いながら本部へと足を進めた。
ヒーローからの救援依頼
仲間のピンチに駆けつける
(悠一ほどじゃないけど、私も暗躍してるよねえ)