荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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出水くんにご飯に連行される
「蒼さーん、ご飯まだでしょ?一緒に食いにいきましょー」
ランク戦エリアで模擬戦に没頭していた最中、やってきた出水くんにそう誘われて食堂へと向かっていた。先を行く出水くんは私の手を引いて、廊下をすいすい進んでいく。
「出水くん、いままで任務じゃなかったっけ?」
「そーですよ、今日は西部の担当でした」
任務だったということは遅めのお昼ご飯なんだろう。しかし、出水くんの隊長である慶や唯我くんの姿は見えない。
「慶たちは?」
「太刀川さんたちは先に食ってました。けど、おれは蒼さんと飯が食いたかったんで」
「、そっか」
廊下の端々に掛かる時計をちらりと確認すれば、現在の時刻は14時15分。任務は14時までだから、その後すぐに私を探しに来た事になる。
「連絡くれればよかったのに」
「いやー、直に会って連れてこないと駄目だと思って」
「よくわかってらっしゃる」
「でしょ」
出水くんが私の顔を見てにんまりと笑う。しっかりと手を引かれているのも、私がカメレオンやらバッグワームやらでふらっといなくなるのを防止するための措置なんだろう。
「ちゃんとご飯食べてます?」
「最低限の栄養はとってる」
ゼリーとかサプリだとかで、というのは黙っててもわかってしまうんだろう。私の答えを聞いた出水くんの腕にちょっとだけ力が入ったのをぼんやり感じていれば、あっという間に食堂へと到着した。
「んじゃ、蒼さん何食べます?ここまできて食べないのはナシっすよ」
「出水くんのおすすめ」
「りょーかい」
特に食べたいものがなかったので発券機に5千円札を飲み込ませながら言えば、出水くんが頷いて手際よくいくつかのボタンを押していく。
「出水くんはなに食べるの?」
「おれは結構腹空いてるんで、ガッツリ食べれるやつですかねー」
「好きなの押していいよ」
「お、ご馳走様です」
わざわざ私と一緒にご飯が食べたいと来てくれたんだからと勧めれば、出水くんはお礼を言ってボタンを押していった。
◆
混み合う時間帯からはずれていたので頼んだご飯類はすぐに出来上がった。それを受け取って、空いている食堂の端にある窓際の席に対面して座りこんだ。
「いいにおい」
「適当に選んじゃいましたけど、食べきれそうですか?」
「大丈夫」
鰹だしの良い香りにつられて、お腹がくうと鳴った。出水くんが選んでくれたのは、ミニサイズの山菜うどんと小鉢に入った切り干し大根とひじき、それからデザートに生クリームの乗った白玉餡蜜。量は少なめだけど、栄養重視だ。
「いただきます」
「いただきまーす」
ぱきりと割り箸を割って、山菜うどんに箸を伸ばす。口に入れたうどんは良い感じに鰹だしを吸って、しゃきしゃきした山菜と良く合っている。食べ始めた私を見て、対面して座る出水くんも割り箸を割って海老天重に手を伸ばした。
「んー…おいしい」
「ここの飯は相変わらずうまいっすよね」
海老天を美味しそうに齧る出水くんが頷いて、ふと私の方を見た。
「蒼さん、昨日の夜は何食べました?」
「悠一に呼ばれて、玉狛で肉野菜炒めとか」
「お、ちゃんと食ったんですね」
「明日出水にこっぴどく怒られたくないなら来な、って脅されて」
「まじっすか」
迅さんやるー、と呟く声に苦笑しながらうどんを食べ進める。小鉢に入った切り干し大根をつまめば、出水くんがため息つきながらご飯を掬う。
「というか…遠征帰りは飯食わないの、治ると良いんですけどね」
「こればっかりは気持ち的な問題だからねえ」
出水くんが私の対応に手馴れているのは、遠征の度にご飯を食べなくなる私を見ているからだ。毎度のことだけど、遠征に行くと気落ちしてご飯を食べる気力がないのだ。散々気を張っていた反動みたいなものだろうか。
「蒼さんがそうやってるから、おれ結構手ぇ回してるんですよ」
「知ってる、佐鳥くんとか奈良坂くんでしょ?」
「そうそう。蒼さん見かけたら、とりあえずなんか食わせといてくれって言ってるんですけど」
どうです?とこちらをじっと見る出水くんに頷く。最近は遠征から帰ってくると奈良坂くんからチョコもらったり、佐鳥くんに飴玉もらったりしていたのだ。その場で食べさせられるという強制オプション付きで。
「うん、そのおかげでいろいろ食べてるよ」
佐鳥くんなんか忙しいのにちょいちょい顔見せてくれるんだもの…断れるわけないじゃない…。食べなかったらすごくしょんぼりするんだもの、食べない訳にはいかない。
「出水くんの人選が的確すぎて怖いなーと思ってるし」
「ふ、伊達に蒼さんの弟子をしてませんからね」
してやったりと笑う出水くんに苦笑する。長い付き合いだし、気に掛けてる後輩に寄られれば断れないのを知っているのだ。
「いつもありがと」
「いーえ」
感謝の気持ちを伝えれば、出水くんがにまりと笑った。その笑顔のまま、ふっと爆弾を落としてくる。
「でも明日はおれ蒼さんと入れ替わりで任務でしょ?頻繁にはこれないんで」
「大丈夫だよ、1人でなんか食べるから」
「あ、いえ。荒船さんに言ったら引き受けてくれたんで」
「…なにを?」
「蒼さんのご飯管理ですよ。用事ついでに朝から晩まで面倒見てくれるそうです」
「………なんだと…」
今日食べたから明日は手抜きで良いなと思っていたのに、完全に出水くんに見透かされたなあと眉を下げる。荒船くん相手では食べない訳にはいかない。拒否したら有無を言わせず限界まで詰め込まれてしまう。
「荒船くんかー…!」
「蒼さん手ぇ止まってますよ」
ふっと笑った出水くんがエビフライのしっぽを齧りながら、テーブルにごとんと沈み込んだ私の頭をぽんぽん叩いてくる。
「生クリームとろけちゃいますよー」
「ああ…それはこまる…」
しらたまあんみつ…と呻きながら箸を持ち直した私を見て、出水くんが満足そうに笑った。
出水くんと遅めの昼食
弟子の策略
(ごちそうさまでした)
(腹ごしらえに模擬戦します?)
(します!)
出水くんは頼りになる
「蒼さーん、ご飯まだでしょ?一緒に食いにいきましょー」
ランク戦エリアで模擬戦に没頭していた最中、やってきた出水くんにそう誘われて食堂へと向かっていた。先を行く出水くんは私の手を引いて、廊下をすいすい進んでいく。
「出水くん、いままで任務じゃなかったっけ?」
「そーですよ、今日は西部の担当でした」
任務だったということは遅めのお昼ご飯なんだろう。しかし、出水くんの隊長である慶や唯我くんの姿は見えない。
「慶たちは?」
「太刀川さんたちは先に食ってました。けど、おれは蒼さんと飯が食いたかったんで」
「、そっか」
廊下の端々に掛かる時計をちらりと確認すれば、現在の時刻は14時15分。任務は14時までだから、その後すぐに私を探しに来た事になる。
「連絡くれればよかったのに」
「いやー、直に会って連れてこないと駄目だと思って」
「よくわかってらっしゃる」
「でしょ」
出水くんが私の顔を見てにんまりと笑う。しっかりと手を引かれているのも、私がカメレオンやらバッグワームやらでふらっといなくなるのを防止するための措置なんだろう。
「ちゃんとご飯食べてます?」
「最低限の栄養はとってる」
ゼリーとかサプリだとかで、というのは黙っててもわかってしまうんだろう。私の答えを聞いた出水くんの腕にちょっとだけ力が入ったのをぼんやり感じていれば、あっという間に食堂へと到着した。
「んじゃ、蒼さん何食べます?ここまできて食べないのはナシっすよ」
「出水くんのおすすめ」
「りょーかい」
特に食べたいものがなかったので発券機に5千円札を飲み込ませながら言えば、出水くんが頷いて手際よくいくつかのボタンを押していく。
「出水くんはなに食べるの?」
「おれは結構腹空いてるんで、ガッツリ食べれるやつですかねー」
「好きなの押していいよ」
「お、ご馳走様です」
わざわざ私と一緒にご飯が食べたいと来てくれたんだからと勧めれば、出水くんはお礼を言ってボタンを押していった。
◆
混み合う時間帯からはずれていたので頼んだご飯類はすぐに出来上がった。それを受け取って、空いている食堂の端にある窓際の席に対面して座りこんだ。
「いいにおい」
「適当に選んじゃいましたけど、食べきれそうですか?」
「大丈夫」
鰹だしの良い香りにつられて、お腹がくうと鳴った。出水くんが選んでくれたのは、ミニサイズの山菜うどんと小鉢に入った切り干し大根とひじき、それからデザートに生クリームの乗った白玉餡蜜。量は少なめだけど、栄養重視だ。
「いただきます」
「いただきまーす」
ぱきりと割り箸を割って、山菜うどんに箸を伸ばす。口に入れたうどんは良い感じに鰹だしを吸って、しゃきしゃきした山菜と良く合っている。食べ始めた私を見て、対面して座る出水くんも割り箸を割って海老天重に手を伸ばした。
「んー…おいしい」
「ここの飯は相変わらずうまいっすよね」
海老天を美味しそうに齧る出水くんが頷いて、ふと私の方を見た。
「蒼さん、昨日の夜は何食べました?」
「悠一に呼ばれて、玉狛で肉野菜炒めとか」
「お、ちゃんと食ったんですね」
「明日出水にこっぴどく怒られたくないなら来な、って脅されて」
「まじっすか」
迅さんやるー、と呟く声に苦笑しながらうどんを食べ進める。小鉢に入った切り干し大根をつまめば、出水くんがため息つきながらご飯を掬う。
「というか…遠征帰りは飯食わないの、治ると良いんですけどね」
「こればっかりは気持ち的な問題だからねえ」
出水くんが私の対応に手馴れているのは、遠征の度にご飯を食べなくなる私を見ているからだ。毎度のことだけど、遠征に行くと気落ちしてご飯を食べる気力がないのだ。散々気を張っていた反動みたいなものだろうか。
「蒼さんがそうやってるから、おれ結構手ぇ回してるんですよ」
「知ってる、佐鳥くんとか奈良坂くんでしょ?」
「そうそう。蒼さん見かけたら、とりあえずなんか食わせといてくれって言ってるんですけど」
どうです?とこちらをじっと見る出水くんに頷く。最近は遠征から帰ってくると奈良坂くんからチョコもらったり、佐鳥くんに飴玉もらったりしていたのだ。その場で食べさせられるという強制オプション付きで。
「うん、そのおかげでいろいろ食べてるよ」
佐鳥くんなんか忙しいのにちょいちょい顔見せてくれるんだもの…断れるわけないじゃない…。食べなかったらすごくしょんぼりするんだもの、食べない訳にはいかない。
「出水くんの人選が的確すぎて怖いなーと思ってるし」
「ふ、伊達に蒼さんの弟子をしてませんからね」
してやったりと笑う出水くんに苦笑する。長い付き合いだし、気に掛けてる後輩に寄られれば断れないのを知っているのだ。
「いつもありがと」
「いーえ」
感謝の気持ちを伝えれば、出水くんがにまりと笑った。その笑顔のまま、ふっと爆弾を落としてくる。
「でも明日はおれ蒼さんと入れ替わりで任務でしょ?頻繁にはこれないんで」
「大丈夫だよ、1人でなんか食べるから」
「あ、いえ。荒船さんに言ったら引き受けてくれたんで」
「…なにを?」
「蒼さんのご飯管理ですよ。用事ついでに朝から晩まで面倒見てくれるそうです」
「………なんだと…」
今日食べたから明日は手抜きで良いなと思っていたのに、完全に出水くんに見透かされたなあと眉を下げる。荒船くん相手では食べない訳にはいかない。拒否したら有無を言わせず限界まで詰め込まれてしまう。
「荒船くんかー…!」
「蒼さん手ぇ止まってますよ」
ふっと笑った出水くんがエビフライのしっぽを齧りながら、テーブルにごとんと沈み込んだ私の頭をぽんぽん叩いてくる。
「生クリームとろけちゃいますよー」
「ああ…それはこまる…」
しらたまあんみつ…と呻きながら箸を持ち直した私を見て、出水くんが満足そうに笑った。
出水くんと遅めの昼食
弟子の策略
(ごちそうさまでした)
(腹ごしらえに模擬戦します?)
(します!)
出水くんは頼りになる