荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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烏丸くんと特訓
「こんにちはー」
「おーい、蒼が来たぞー」
迎えに来てくれた悠一と共に玉狛支部へやってきた。扉を開けた途端に流れてきたいい匂いに釣られて、悠一と足早にキッチンへ向かう。
「レイジさん、こんにちは」
「ただいまー」
「おかえり。蒼、待ってたぞ」
そう言って挨拶を返してくれるレイジさんの方からケチャップの良い香りがする。私が来ることを伝えていたからか、今日のお昼ご飯は私の好物のようだ。
「こんにちは、蒼さん」
「あ、烏丸くんこんにちは。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
奥の方からひょこっと現れた烏丸くんに挨拶する。今日、わざわざ玉狛にやってきた目的は烏丸くんだ。本部ではあまり出来ない黒トリガーの練習の相手をしてもらうことになっている。
しかしまずはレイジさんのおいしいご飯を食べてからだ!と勧められるまま席に着いた。
◆
「"水冠"」
左耳にある黒い雫を模した黒トリガーに触れて呟けば、私の周りの空気から滲み出るように1メートルほどの黒っぽい半透明の水球がふたつ現れる。
空中を揺蕩うそれらは、父さんの遺した黒トリガー。
『ガイスト、起動』
少し離れた場所でバチッ、と音が弾ける。
そちらへ目を向ければ、烏丸くんがガイストを起動して弧月を携えていた。移動特化型。
「避けるんでいいんすよね」
「うん」
模擬戦ブースならトリオン切れも無いし、気が済むまで練習することが出来る。
「隙があったら攻撃しますよ」
「そりゃもう、キツめによろしく」
そう笑って右手をすっと身体の前に掲げると、途端に右側にある水球がばらけて小さい水球の塊になっていく。それを見た烏丸くんがぴくりと反応した。
「それじゃ、よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
ぺこりと頭を下げて、砕いた水球を端っこから烏丸くんに向けて撃ち出す。水冠の強みは多彩な攻撃が出来ること。球体を崩して射手のように撃ち出すこともできるし、広げてシールドとしても使える。トリオン兵なんかが水冠の液状トリオンに接触すれば、触れた先から圧を掛けて潰すことだってできる。潰したやつからトリオンを吸収すれば、自分のトリオンとして使う事も出来る。
「それくらいじゃ捕まりませんよ」
対する烏丸くんは、その機動力を生かして弾を避けていきながら冷静な声で呟く。真後ろに滑るように現れた烏丸くんは見ずに、浮かべていたもうひとつの水球をマントの様に広げながら背中側に展開して硬度を跳ね上げる。
「ッ!硬いな」
ガンッ!と背後で弧月で斬りつけられる音が響くけど、後ろを向く頃にはどうせ移動しているので端から振り向かない。ガードの無い前側には飴玉サイズまで小さく砕いた水冠を広げた。ここまで細かくすると大雑把な弾道しかひけないけど、今日は練習だからとことん撃つつもりだ。
「"雹"」
ぎゃんっ、と後ろから姿を消して真上に現れた烏丸くんに向け、前方に広げていた弾丸を上から順に撃ち込む。烏丸くんが素早く動いている時は捕まえるのが大変だけど、ガードは薄い。来るところを絞って狙い撃ちしてしまえばいい。たとえば、わざと空けておいた真上とか。
「!」
空中ではグラスホッパーでも持ってない限り急な動線変更は無理だし、攻撃に寄ってるから防御に後れを取る。速いのが仇になって思考する時間が少ない。
ドドドドドッと真上に撃ち込んだ弾丸の多くは烏丸くんを貫いて、烏丸くんは地面に降り立つ前にダウンした。
「罠だったか…」
「よし、まずは1勝…」
しゅう、と修復されていく烏丸くんの身体を見下ろしつつ、再び水冠をばらけさせた。
◆
「いやー、速くて困るな」
「そう言っても、蒼さんもう目が慣れてますよね」
ぎゃんぎゃん空気を切り裂く音をさせながら、烏丸くんが高速で移動している。最初の1回以降は迂闊に突っ込んで来なくなったし、目が慣れてきたって言っても水冠を発動しているときはそんなに早く動けないからどうしてもガードに寄ってしまう。
「"跳ね水"」
ガードに回した方の水球で、烏丸くんが突撃してくるタイミングに合わせて円錐状のトリオンを針山の如く突きだしてみるけれど、これも初回以降は警戒されているのであまり近くまで近づいてこない。いやいや困った。
「烏丸くんそれ最速?」
「いえ、もうちょい上がりますけど」
「だよね」
じゃあやっぱ弾道引いた方が手っ取り早そうだと判断して、2つの水球を1つにくっつける。両手をパンッと叩き合わせて、身体を覆うマントの様なそれの端っこからピンポン玉くらいの弾丸に変換していく。
「じゃあちょっと頑張りましょうか」
高速で動き回る烏丸くんを狙うのは正直難しい、けど、防御無視で全て弾丸にしてしまおう。ばらけていく端から烏丸くんに向けて撃ちだしていくけど、微妙な所で決定打にならない。
「後ろ、がら空きになりましたよ」
「あ」
ひゅっと速度をもう1段階上げた烏丸くんが、真後ろに滑るように現れる。これはガード間に合わないな、と身体を捻った瞬間に胴体を切り裂かれて左脇腹がばくんと口を開けた。
「やられた」
「いや、半分にするつもりでやったんすけど」
「速くて避けきれなかったんだよ」
トリオンが漏れたのは切り裂かれた一瞬で、きらきらとトリオンが光った次の瞬間には傷口が塞がった。一瞬で傷1つ無い姿に戻ったのを見て、烏丸くんが首を傾げる。
「…あれ、そっちも持ってきたんですか」
「うん、一応動作確認しようと思って」
ほら、と掲げたのは左手首にあるブレスレット型の黒トリガー。これは母親が遺してくれたもので、他のトリガーと併用しないと発動できない特殊なトリガーになっている。能力は超回復で、自分の周囲にあるトリオンを吸収して瞬時に修復すること。
「ちゃんと機能してますね」
「ね、問題なしだ」
トリオン体の回復なんて出来るのは貴重だから、多少の危険を冒しても皆の生存率を上げるために遠征には毎回参加するのだ。かく言う今日も、1週間後に遠征が迫っているから烏丸くんに頼んで確認しているのだった。
「よし、続きお願いしてもいい?」
「もちろんです」
こくりと頷いた烏丸くんに頷き返して、再び高速で動き出した烏丸くん目掛けてばらりと水球の弾丸をばらけさせた。
黒トリガーの動作確認
遠征に向けて特訓中
(この後迅さんもスタンバってますけど)
(それは豪華な練習だ)
ようやく蒼さんの黒トリガーお披露目。
「こんにちはー」
「おーい、蒼が来たぞー」
迎えに来てくれた悠一と共に玉狛支部へやってきた。扉を開けた途端に流れてきたいい匂いに釣られて、悠一と足早にキッチンへ向かう。
「レイジさん、こんにちは」
「ただいまー」
「おかえり。蒼、待ってたぞ」
そう言って挨拶を返してくれるレイジさんの方からケチャップの良い香りがする。私が来ることを伝えていたからか、今日のお昼ご飯は私の好物のようだ。
「こんにちは、蒼さん」
「あ、烏丸くんこんにちは。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
奥の方からひょこっと現れた烏丸くんに挨拶する。今日、わざわざ玉狛にやってきた目的は烏丸くんだ。本部ではあまり出来ない黒トリガーの練習の相手をしてもらうことになっている。
しかしまずはレイジさんのおいしいご飯を食べてからだ!と勧められるまま席に着いた。
◆
「"水冠"」
左耳にある黒い雫を模した黒トリガーに触れて呟けば、私の周りの空気から滲み出るように1メートルほどの黒っぽい半透明の水球がふたつ現れる。
空中を揺蕩うそれらは、父さんの遺した黒トリガー。
『ガイスト、起動』
少し離れた場所でバチッ、と音が弾ける。
そちらへ目を向ければ、烏丸くんがガイストを起動して弧月を携えていた。移動特化型。
「避けるんでいいんすよね」
「うん」
模擬戦ブースならトリオン切れも無いし、気が済むまで練習することが出来る。
「隙があったら攻撃しますよ」
「そりゃもう、キツめによろしく」
そう笑って右手をすっと身体の前に掲げると、途端に右側にある水球がばらけて小さい水球の塊になっていく。それを見た烏丸くんがぴくりと反応した。
「それじゃ、よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
ぺこりと頭を下げて、砕いた水球を端っこから烏丸くんに向けて撃ち出す。水冠の強みは多彩な攻撃が出来ること。球体を崩して射手のように撃ち出すこともできるし、広げてシールドとしても使える。トリオン兵なんかが水冠の液状トリオンに接触すれば、触れた先から圧を掛けて潰すことだってできる。潰したやつからトリオンを吸収すれば、自分のトリオンとして使う事も出来る。
「それくらいじゃ捕まりませんよ」
対する烏丸くんは、その機動力を生かして弾を避けていきながら冷静な声で呟く。真後ろに滑るように現れた烏丸くんは見ずに、浮かべていたもうひとつの水球をマントの様に広げながら背中側に展開して硬度を跳ね上げる。
「ッ!硬いな」
ガンッ!と背後で弧月で斬りつけられる音が響くけど、後ろを向く頃にはどうせ移動しているので端から振り向かない。ガードの無い前側には飴玉サイズまで小さく砕いた水冠を広げた。ここまで細かくすると大雑把な弾道しかひけないけど、今日は練習だからとことん撃つつもりだ。
「"雹"」
ぎゃんっ、と後ろから姿を消して真上に現れた烏丸くんに向け、前方に広げていた弾丸を上から順に撃ち込む。烏丸くんが素早く動いている時は捕まえるのが大変だけど、ガードは薄い。来るところを絞って狙い撃ちしてしまえばいい。たとえば、わざと空けておいた真上とか。
「!」
空中ではグラスホッパーでも持ってない限り急な動線変更は無理だし、攻撃に寄ってるから防御に後れを取る。速いのが仇になって思考する時間が少ない。
ドドドドドッと真上に撃ち込んだ弾丸の多くは烏丸くんを貫いて、烏丸くんは地面に降り立つ前にダウンした。
「罠だったか…」
「よし、まずは1勝…」
しゅう、と修復されていく烏丸くんの身体を見下ろしつつ、再び水冠をばらけさせた。
◆
「いやー、速くて困るな」
「そう言っても、蒼さんもう目が慣れてますよね」
ぎゃんぎゃん空気を切り裂く音をさせながら、烏丸くんが高速で移動している。最初の1回以降は迂闊に突っ込んで来なくなったし、目が慣れてきたって言っても水冠を発動しているときはそんなに早く動けないからどうしてもガードに寄ってしまう。
「"跳ね水"」
ガードに回した方の水球で、烏丸くんが突撃してくるタイミングに合わせて円錐状のトリオンを針山の如く突きだしてみるけれど、これも初回以降は警戒されているのであまり近くまで近づいてこない。いやいや困った。
「烏丸くんそれ最速?」
「いえ、もうちょい上がりますけど」
「だよね」
じゃあやっぱ弾道引いた方が手っ取り早そうだと判断して、2つの水球を1つにくっつける。両手をパンッと叩き合わせて、身体を覆うマントの様なそれの端っこからピンポン玉くらいの弾丸に変換していく。
「じゃあちょっと頑張りましょうか」
高速で動き回る烏丸くんを狙うのは正直難しい、けど、防御無視で全て弾丸にしてしまおう。ばらけていく端から烏丸くんに向けて撃ちだしていくけど、微妙な所で決定打にならない。
「後ろ、がら空きになりましたよ」
「あ」
ひゅっと速度をもう1段階上げた烏丸くんが、真後ろに滑るように現れる。これはガード間に合わないな、と身体を捻った瞬間に胴体を切り裂かれて左脇腹がばくんと口を開けた。
「やられた」
「いや、半分にするつもりでやったんすけど」
「速くて避けきれなかったんだよ」
トリオンが漏れたのは切り裂かれた一瞬で、きらきらとトリオンが光った次の瞬間には傷口が塞がった。一瞬で傷1つ無い姿に戻ったのを見て、烏丸くんが首を傾げる。
「…あれ、そっちも持ってきたんですか」
「うん、一応動作確認しようと思って」
ほら、と掲げたのは左手首にあるブレスレット型の黒トリガー。これは母親が遺してくれたもので、他のトリガーと併用しないと発動できない特殊なトリガーになっている。能力は超回復で、自分の周囲にあるトリオンを吸収して瞬時に修復すること。
「ちゃんと機能してますね」
「ね、問題なしだ」
トリオン体の回復なんて出来るのは貴重だから、多少の危険を冒しても皆の生存率を上げるために遠征には毎回参加するのだ。かく言う今日も、1週間後に遠征が迫っているから烏丸くんに頼んで確認しているのだった。
「よし、続きお願いしてもいい?」
「もちろんです」
こくりと頷いた烏丸くんに頷き返して、再び高速で動き出した烏丸くん目掛けてばらりと水球の弾丸をばらけさせた。
黒トリガーの動作確認
遠征に向けて特訓中
(この後迅さんもスタンバってますけど)
(それは豪華な練習だ)
ようやく蒼さんの黒トリガーお披露目。