荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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荒船くんと嫉妬
「あー…」
「蒼さん、どうしたんです?」
機嫌悪そうですよ、と目の前に座った出水くんが言うのに頷く。機嫌が悪いのは確かだ。そしてそれに伴ってテンションも低い。
「荒船さん絡みですか?」
「そう、なん、だけ、どー…」
よくわかるねえ、とテーブルに突っ伏した私に出水くんが聞いてくる。渦中の荒船くんは少し離れたテーブルにいるけれど、今は荒船くんを視界に入れたくないのでそっぽを向いておく。
「だけど?」
「……どっちかといえば自己嫌悪…」
突っ伏したままごにょごにょ言えば、出水くんがオレンジジュースのカップをテーブルに置いて聞いてくる。
「自己嫌悪?なんでです?」
「…自分の独占欲の強さに」
「あ、妬いてるんですか」
「……うん」
嫉妬してる、と頷いてそっと顔を上げる。ちらりと荒船くんの方を見れば未だ入ったばかりのC級の女の子と親しげに話している。女の子は確実に荒船くんが気に入ってる様子で、可愛らしい声が聞こえてくる。見なきゃよかったと荒船くんが見えない位置まで身体を横にずらして座り直した。
「蒼さんも嫉妬するんですねー」
「そりゃあしますよ」
わざわざ荒船くんを視界に入れないようにして、もやもやするんですと思いっきり顔に出ている私に出水くんが意外そうに言った。
「おれはもっと淡泊なんだと思ってました。来る者は結構選り好みしてますけど、去る者は追わず、みたいな」
「残念、手に入れた物は基本的に手放したくないんだ」
ああ…執着心も結構強い…と呻きながらカフェオレを飲めば出水くんが首を傾げる。
「あれ、じゃあおれも手放したくないって思ってます?」
「思ってるよ、太刀川隊に入る時は慶と結構話したし。出水くんのことくれぐれもよろしく、泣かせたら怒るからって」
「おー、すげえ愛されてる」
「初めての弟子だもの、心血注いで育てましたし」
「愛情たっぷりに育ちましたねー」
「ねー」
からから笑う出水くんと乾いた笑いを零すけど、荒船くんと女の子が頭の片隅から離れない。あの女の子はスナイパーに入ったし、最初の講習の時にでも荒船くんと話したのだろう。仕事とはわかってるけど、実際見るともやもやする。
「あーだめだ…荒船くんに嫌われてしまう…。ごめん出水くん、私いますごい鬱陶しいだろ…逃げてくれ…」
「珍しいんでもうちょっと付き合いますよ。それに、荒船さんはよっぽどの事が無い限りは蒼さんのこと嫌ったりしないと思いますよ?」
「だって、こんな嫉妬深いの、絶対嫌になるでしょう…」
自分が嫌だ…と凹む私を他所に、出水くんがオレンジジュースを飲みつつ呟く。
「大丈夫だと思いますけどねー。荒船さんも大概嫉妬深いですし、そもそも蒼さん以外は見えてないですよ」
「そうかなあ…」
「おれは大目に見てもらってますけど、太刀川さんとか迅さんが蒼さんに近づいたらずっと目で追ってますよ。そりゃもう怖い顔で」
「…そうなの?」
「そうです」
顔を上げた私に、出水くんがはっきりと頷いた。だから心配しなくて大丈夫ですよと続けて言われて、もやもやしつつも頷いた。
「そんなに心配なら、荒船さんが蒼さんのこと気にしてるってわかる方法教えましょうか」
「なに?」
「蒼さん、試しに荒船さんのこと小さい声で呼んでみてください。話してても多分気づきますよ」
「そうかなあ?…荒船くーん」
ぎりぎり声は届く距離にいるから、半信半疑で荒船くんを小さく呼んでみる。そのまま数秒、出水くんと静かに待ってみる。
「…」
「…」
聞こえるか聞こえないか位の声だったし、流石に来ないよなあとカフェオレに手を伸ばした瞬間、すっとテーブルに影が落ちた。えっ、と驚いている間に静かな声が降ってくる。
「蒼さん、呼びましたか?」
「よ、びました…」
「ね。来たでしょ?」
顔を上げれば荒船くんが立っていて、ほんとに来たとびっくりする私を他所に出水くんがにこにこ笑う。
「あっ、えっ?ごめん、話してる途中だったよね?」
「?大した用じゃなかったので構いませんよ」
「あの、ごめんほんと呼んだだけで他意はなくて…!」
慌てる私を見て、出水くんがオレンジジュースのカップを口に運びつつ荒船くんの袖を引く。
「荒船さん、蒼さん寂しいから構って欲しいんですって」
「ちょ」
「うぐっ」
なに言ってるこの口は!?とおやつでテーブルに広げていたビスケットを出水くんの口に押し込む。押し込まれたビスケットを齧りつつ、出水くんがすっと立ち上がった。
「ん、おえ、あんくへんひへくふんへ」
「…ランク戦してくる?」
「ふぁい」
頷いた出水くんは、上機嫌にビスケットを齧りつつ席を離れていってしまった。残されてしまった、とちらりと荒船くんを見上げれば、同じように出水くんを見送った荒船くんがすっとこちらを向く。
「とりあえず、座っても?」
「うん…。あの、ごめんね」
「構いませんよ。俺もどこで話を切り上げるか迷ってましたし、逆に助かったくらいです」
そう言いながら荒船くんが出水くんの座っていたところに腰を下ろす。カフェオレのカップを持って手持無沙汰にくるくるしていれば、荒船くんが口を開いた。
「それにしても、構って欲しいって珍しいですね」
「うぐ」
普段は公私をきっちり分けているのに、と暗に言われて居心地悪くカフェオレを口に運んだ。
「すみません、なにか気にさわりましたか」
「あ、違うの。そうじゃないんだけど…あー…」
すみません嫉妬してました…、とカフェオレのカップで口を隠しながら小さく零す。カップの中で変に反響したその声をちゃんと拾ったらしい荒船くんが、ぱちりと目を瞬いた。
「荒船くんの仕事だってわかってるんだけど、実際女の子と話してるの見たらもやもやしちゃって…」
「…」
「邪魔するようなことして、ほんとごめん…」
そう言って頭を下げて、返事がないなと顔を上げた時には荒船くんが左手で口元を覆っていた。こっちを見ている顔はほんのり上気して、耳は顔よりも赤い。
「な、なに」
「…すみません、ちょっと、嬉しくて」
「え?」
もごもご言う荒船くんが「嫉妬してくれるとは思わなかったので、」と呟いたのが聞こえた。
「私だって嫉妬しますよ…」
荒船くん好きだし…と呟けば、荒船くんがふっと笑って口を開いた。
「わかりました。ちょっと構わせてください」
「、構ってください…」
それから任務行くまで荒船くんに構ってもらえたので大変機嫌が良くなって、その後一緒に任務に入った出水くんに「心配なかったでしょ?」と笑われてしまった。
嫉妬する
適度に構って下さい
(出水くんさすが)
(でしょー?)
「あー…」
「蒼さん、どうしたんです?」
機嫌悪そうですよ、と目の前に座った出水くんが言うのに頷く。機嫌が悪いのは確かだ。そしてそれに伴ってテンションも低い。
「荒船さん絡みですか?」
「そう、なん、だけ、どー…」
よくわかるねえ、とテーブルに突っ伏した私に出水くんが聞いてくる。渦中の荒船くんは少し離れたテーブルにいるけれど、今は荒船くんを視界に入れたくないのでそっぽを向いておく。
「だけど?」
「……どっちかといえば自己嫌悪…」
突っ伏したままごにょごにょ言えば、出水くんがオレンジジュースのカップをテーブルに置いて聞いてくる。
「自己嫌悪?なんでです?」
「…自分の独占欲の強さに」
「あ、妬いてるんですか」
「……うん」
嫉妬してる、と頷いてそっと顔を上げる。ちらりと荒船くんの方を見れば未だ入ったばかりのC級の女の子と親しげに話している。女の子は確実に荒船くんが気に入ってる様子で、可愛らしい声が聞こえてくる。見なきゃよかったと荒船くんが見えない位置まで身体を横にずらして座り直した。
「蒼さんも嫉妬するんですねー」
「そりゃあしますよ」
わざわざ荒船くんを視界に入れないようにして、もやもやするんですと思いっきり顔に出ている私に出水くんが意外そうに言った。
「おれはもっと淡泊なんだと思ってました。来る者は結構選り好みしてますけど、去る者は追わず、みたいな」
「残念、手に入れた物は基本的に手放したくないんだ」
ああ…執着心も結構強い…と呻きながらカフェオレを飲めば出水くんが首を傾げる。
「あれ、じゃあおれも手放したくないって思ってます?」
「思ってるよ、太刀川隊に入る時は慶と結構話したし。出水くんのことくれぐれもよろしく、泣かせたら怒るからって」
「おー、すげえ愛されてる」
「初めての弟子だもの、心血注いで育てましたし」
「愛情たっぷりに育ちましたねー」
「ねー」
からから笑う出水くんと乾いた笑いを零すけど、荒船くんと女の子が頭の片隅から離れない。あの女の子はスナイパーに入ったし、最初の講習の時にでも荒船くんと話したのだろう。仕事とはわかってるけど、実際見るともやもやする。
「あーだめだ…荒船くんに嫌われてしまう…。ごめん出水くん、私いますごい鬱陶しいだろ…逃げてくれ…」
「珍しいんでもうちょっと付き合いますよ。それに、荒船さんはよっぽどの事が無い限りは蒼さんのこと嫌ったりしないと思いますよ?」
「だって、こんな嫉妬深いの、絶対嫌になるでしょう…」
自分が嫌だ…と凹む私を他所に、出水くんがオレンジジュースを飲みつつ呟く。
「大丈夫だと思いますけどねー。荒船さんも大概嫉妬深いですし、そもそも蒼さん以外は見えてないですよ」
「そうかなあ…」
「おれは大目に見てもらってますけど、太刀川さんとか迅さんが蒼さんに近づいたらずっと目で追ってますよ。そりゃもう怖い顔で」
「…そうなの?」
「そうです」
顔を上げた私に、出水くんがはっきりと頷いた。だから心配しなくて大丈夫ですよと続けて言われて、もやもやしつつも頷いた。
「そんなに心配なら、荒船さんが蒼さんのこと気にしてるってわかる方法教えましょうか」
「なに?」
「蒼さん、試しに荒船さんのこと小さい声で呼んでみてください。話してても多分気づきますよ」
「そうかなあ?…荒船くーん」
ぎりぎり声は届く距離にいるから、半信半疑で荒船くんを小さく呼んでみる。そのまま数秒、出水くんと静かに待ってみる。
「…」
「…」
聞こえるか聞こえないか位の声だったし、流石に来ないよなあとカフェオレに手を伸ばした瞬間、すっとテーブルに影が落ちた。えっ、と驚いている間に静かな声が降ってくる。
「蒼さん、呼びましたか?」
「よ、びました…」
「ね。来たでしょ?」
顔を上げれば荒船くんが立っていて、ほんとに来たとびっくりする私を他所に出水くんがにこにこ笑う。
「あっ、えっ?ごめん、話してる途中だったよね?」
「?大した用じゃなかったので構いませんよ」
「あの、ごめんほんと呼んだだけで他意はなくて…!」
慌てる私を見て、出水くんがオレンジジュースのカップを口に運びつつ荒船くんの袖を引く。
「荒船さん、蒼さん寂しいから構って欲しいんですって」
「ちょ」
「うぐっ」
なに言ってるこの口は!?とおやつでテーブルに広げていたビスケットを出水くんの口に押し込む。押し込まれたビスケットを齧りつつ、出水くんがすっと立ち上がった。
「ん、おえ、あんくへんひへくふんへ」
「…ランク戦してくる?」
「ふぁい」
頷いた出水くんは、上機嫌にビスケットを齧りつつ席を離れていってしまった。残されてしまった、とちらりと荒船くんを見上げれば、同じように出水くんを見送った荒船くんがすっとこちらを向く。
「とりあえず、座っても?」
「うん…。あの、ごめんね」
「構いませんよ。俺もどこで話を切り上げるか迷ってましたし、逆に助かったくらいです」
そう言いながら荒船くんが出水くんの座っていたところに腰を下ろす。カフェオレのカップを持って手持無沙汰にくるくるしていれば、荒船くんが口を開いた。
「それにしても、構って欲しいって珍しいですね」
「うぐ」
普段は公私をきっちり分けているのに、と暗に言われて居心地悪くカフェオレを口に運んだ。
「すみません、なにか気にさわりましたか」
「あ、違うの。そうじゃないんだけど…あー…」
すみません嫉妬してました…、とカフェオレのカップで口を隠しながら小さく零す。カップの中で変に反響したその声をちゃんと拾ったらしい荒船くんが、ぱちりと目を瞬いた。
「荒船くんの仕事だってわかってるんだけど、実際女の子と話してるの見たらもやもやしちゃって…」
「…」
「邪魔するようなことして、ほんとごめん…」
そう言って頭を下げて、返事がないなと顔を上げた時には荒船くんが左手で口元を覆っていた。こっちを見ている顔はほんのり上気して、耳は顔よりも赤い。
「な、なに」
「…すみません、ちょっと、嬉しくて」
「え?」
もごもご言う荒船くんが「嫉妬してくれるとは思わなかったので、」と呟いたのが聞こえた。
「私だって嫉妬しますよ…」
荒船くん好きだし…と呟けば、荒船くんがふっと笑って口を開いた。
「わかりました。ちょっと構わせてください」
「、構ってください…」
それから任務行くまで荒船くんに構ってもらえたので大変機嫌が良くなって、その後一緒に任務に入った出水くんに「心配なかったでしょ?」と笑われてしまった。
嫉妬する
適度に構って下さい
(出水くんさすが)
(でしょー?)