荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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出水くんとグラタン
ふつふつと音を立てて焼けていくグラタンを、オーブンの窓越しにじっと見つめる。たっぷり乗せたチーズがとろけて、キッチンの中に良い匂いが漂っている。
「…さて、そろそろ来るかな」
ちらりと時計を見上げる。約束したのは午後7時15分、もうそろそろだと思っていれば、丁度良くぴんぽんと部屋のチャイムが鳴った。
「はいはいー」
鍵を外して扉を開けば、目の前に隊服姿の出水くんが立っていた。にこにこしている出水くんは、任務が終わってすぐ来てくれたようだ。
「蒼さんこんばんはー」
「こんばんは!どうぞ入って」
少し避けて出水くんを招き入れる。
中に入って来た出水くんは換装を解いて私服姿に戻り、いそいそと靴を脱いだ。それを見ながら扉を閉めて先に中へ戻る。
「先に手洗いしてきてねー」
「はーい」
出水くんにそう言って、キッチンへと戻れば焼いていたグラタンはチーズが程よく焦げていた。おお、食べごろ。カトラリー系は先に運んであるし、サラダも飲み物も運んである。あとはこれを運ぶだけだ、とオーブンの扉を開ければちょうど出水くんが戻って来た。
「すげ、めっちゃいい匂いしますね」
「でしょ、いい感じに焼けたよ」
オーブンからミトンをはめた手で慎重にグラタン皿を取り出す。お盆へゆっくり降ろして、もうひとつのグラタン皿も慎重に取り出した。
「おれが持って行きましょうか」
「ありがと、お願いしていい?」
「任せて下さい」
お盆をしっかりと持った出水くんが、ゆっくりとダイニングへ向かって行く。キッチンから出るところまでその後ろ姿を見送って、丸パンの入った籠を持って追いかける。
「この上でいいんですよね?」
「うん、ありがとう」
テーブルにお盆を乗せた出水くんにミトンを渡せば、お盆の上からテーブルに敷いてある木製の板にグラタン皿を乗せてくれた。ふわりと漂うチーズの香りに、出水くんのお腹がぐうと鳴った。
「超うまそう」
「熱いうちに食べよ」
座って座って、と促せばミトンを外した出水くんはいそいそと椅子を引いて席に着いた。私は出水くんの前の席について、2人で手を合わせる。
「いただきます!」
「いただきます、熱いから気を付けてね」
「了解」
自分と出水くんのグラスに冷たいお茶を注いで渡し、いまだふつふつと膨れるチーズにスプーンを差し入れる。
ぱり、と小さく音を立てて割れたチーズと、ごろごろ入れた鶏肉を乗せて重くなったスプーンを持ち上げる。
「ん、!」
「あつっ!」
ふう、と息を吹きかけてからグラタンにかぶりつく。まだちょっと熱かったけれど、ぱりとろのチーズも、噛めば肉汁が溢れる鶏肉も美味しかった。焦がさないようかき混ぜ続けたホワイトソースも美味しくて、これは上手く出来たと口元が緩む。
「うまっ」
「んー!」
もぐもぐとグラタンを咀嚼して、籠に入った丸パンへと手を伸ばす。かりっとした表面に力を入れてちぎり、口へ運ぶ。こっちもこんがり焼けてていいかんじだ。
「すっげえ美味いです」
「ん、ありがと。気に入ってくれたならまた作るよ」
「そりゃもうぜひ!」
もぐもぐはふはふ、とグラタンを食べていた出水くんがすごい勢いで頷いた。それに笑いながら、私もグラタンにスプーンを伸ばす。マカロニを掬って、ふうと息を吹きかけてから齧りつく。
「そういや、今日蒼さんとこで晩飯食うって言ったら、太刀川さんがすっげえ羨ましがってましたよ」
「そう?」
パンをちぎりながら出水くんが零した言葉に首を傾げれば、出水くんも同じようにパンをちぎりながら頷いた。口に放り込んだパンをもくもく咀嚼して、ごくりと飲み込んでから口を開く。
「なんか最近蒼さんの手料理食ってねえ、って」
「あー、慶とは外食ばっかりだしなあ」
出水くんの言葉に思い返せば、慶が私の部屋でご飯を食べたのはだいぶ前になる。この前一緒にチキン食べたけど、あれは手料理じゃない。グラタンを食べながら考えるけど、「レポートが仕上がらない」とか「書類が終わらない」とかで手伝った御礼に美味しいもの食べに連れてってもらう事が多かった。
「じゃあ、今度は慶も呼んでみる?くるかな」
「蒼さんのお呼びとあらば、レポート放り出しても来るんじゃないですか?」
「それはレポートの方を取って欲しいけど」
あとで忍田さんにやんわり文句言われそうだし、と苦笑しながら良い感じの熱さになったグラタンを食べ進める。でもまあ、とりあえず次は慶も呼んでみるか。
「次は荒船さんと飯っすか?」
「ううん。荒船くんはこの前一緒にご飯食べたから、次は風間隊」
まだ予定は立ててないけどね、と言えば出水くんが頷いた。出来るだけちゃんと弟子や後輩たちを構えるように、定期的に出水くんや荒船くん、それから風間隊の後輩たちとローテーションでご飯を食べたりしているのだ。
「気が早いけど、次のご飯のリクエストしてもいいですか?」
「いいよー。私に出来そうなやつなら」
サラダを食べつつ頷きながらそう言えば、出水くんは嬉しそうに笑った。鶏肉をもぐもぐ食べながらすこし考える素振りを見せた出水くんは、ごくりと喉を鳴らしてから口を開いた。
「蒼さんのオムライスが食いたいです。たまご硬めの」
「了解」
それなら出来る、と頷いて了承する。
オムライスならよく作るし、その時に慶も呼べば良いだろう。時間があればコロッケも作ってあげよう。2人はいっぱい食べてくれるから作り甲斐があるし。
「あとでお休み教えてね」
「はい」
楽しみにしてますと笑った出水くんに笑い返して、食事の続きをしようとグラタンにスプーンを差し入れた。
出水くんとグラタン
月1回の定期ご飯
(ということで慶さん来る?)
(行くに決まってんだろ)
(ちゃんとレポートとか終わらせるんすよ)
ふつふつと音を立てて焼けていくグラタンを、オーブンの窓越しにじっと見つめる。たっぷり乗せたチーズがとろけて、キッチンの中に良い匂いが漂っている。
「…さて、そろそろ来るかな」
ちらりと時計を見上げる。約束したのは午後7時15分、もうそろそろだと思っていれば、丁度良くぴんぽんと部屋のチャイムが鳴った。
「はいはいー」
鍵を外して扉を開けば、目の前に隊服姿の出水くんが立っていた。にこにこしている出水くんは、任務が終わってすぐ来てくれたようだ。
「蒼さんこんばんはー」
「こんばんは!どうぞ入って」
少し避けて出水くんを招き入れる。
中に入って来た出水くんは換装を解いて私服姿に戻り、いそいそと靴を脱いだ。それを見ながら扉を閉めて先に中へ戻る。
「先に手洗いしてきてねー」
「はーい」
出水くんにそう言って、キッチンへと戻れば焼いていたグラタンはチーズが程よく焦げていた。おお、食べごろ。カトラリー系は先に運んであるし、サラダも飲み物も運んである。あとはこれを運ぶだけだ、とオーブンの扉を開ければちょうど出水くんが戻って来た。
「すげ、めっちゃいい匂いしますね」
「でしょ、いい感じに焼けたよ」
オーブンからミトンをはめた手で慎重にグラタン皿を取り出す。お盆へゆっくり降ろして、もうひとつのグラタン皿も慎重に取り出した。
「おれが持って行きましょうか」
「ありがと、お願いしていい?」
「任せて下さい」
お盆をしっかりと持った出水くんが、ゆっくりとダイニングへ向かって行く。キッチンから出るところまでその後ろ姿を見送って、丸パンの入った籠を持って追いかける。
「この上でいいんですよね?」
「うん、ありがとう」
テーブルにお盆を乗せた出水くんにミトンを渡せば、お盆の上からテーブルに敷いてある木製の板にグラタン皿を乗せてくれた。ふわりと漂うチーズの香りに、出水くんのお腹がぐうと鳴った。
「超うまそう」
「熱いうちに食べよ」
座って座って、と促せばミトンを外した出水くんはいそいそと椅子を引いて席に着いた。私は出水くんの前の席について、2人で手を合わせる。
「いただきます!」
「いただきます、熱いから気を付けてね」
「了解」
自分と出水くんのグラスに冷たいお茶を注いで渡し、いまだふつふつと膨れるチーズにスプーンを差し入れる。
ぱり、と小さく音を立てて割れたチーズと、ごろごろ入れた鶏肉を乗せて重くなったスプーンを持ち上げる。
「ん、!」
「あつっ!」
ふう、と息を吹きかけてからグラタンにかぶりつく。まだちょっと熱かったけれど、ぱりとろのチーズも、噛めば肉汁が溢れる鶏肉も美味しかった。焦がさないようかき混ぜ続けたホワイトソースも美味しくて、これは上手く出来たと口元が緩む。
「うまっ」
「んー!」
もぐもぐとグラタンを咀嚼して、籠に入った丸パンへと手を伸ばす。かりっとした表面に力を入れてちぎり、口へ運ぶ。こっちもこんがり焼けてていいかんじだ。
「すっげえ美味いです」
「ん、ありがと。気に入ってくれたならまた作るよ」
「そりゃもうぜひ!」
もぐもぐはふはふ、とグラタンを食べていた出水くんがすごい勢いで頷いた。それに笑いながら、私もグラタンにスプーンを伸ばす。マカロニを掬って、ふうと息を吹きかけてから齧りつく。
「そういや、今日蒼さんとこで晩飯食うって言ったら、太刀川さんがすっげえ羨ましがってましたよ」
「そう?」
パンをちぎりながら出水くんが零した言葉に首を傾げれば、出水くんも同じようにパンをちぎりながら頷いた。口に放り込んだパンをもくもく咀嚼して、ごくりと飲み込んでから口を開く。
「なんか最近蒼さんの手料理食ってねえ、って」
「あー、慶とは外食ばっかりだしなあ」
出水くんの言葉に思い返せば、慶が私の部屋でご飯を食べたのはだいぶ前になる。この前一緒にチキン食べたけど、あれは手料理じゃない。グラタンを食べながら考えるけど、「レポートが仕上がらない」とか「書類が終わらない」とかで手伝った御礼に美味しいもの食べに連れてってもらう事が多かった。
「じゃあ、今度は慶も呼んでみる?くるかな」
「蒼さんのお呼びとあらば、レポート放り出しても来るんじゃないですか?」
「それはレポートの方を取って欲しいけど」
あとで忍田さんにやんわり文句言われそうだし、と苦笑しながら良い感じの熱さになったグラタンを食べ進める。でもまあ、とりあえず次は慶も呼んでみるか。
「次は荒船さんと飯っすか?」
「ううん。荒船くんはこの前一緒にご飯食べたから、次は風間隊」
まだ予定は立ててないけどね、と言えば出水くんが頷いた。出来るだけちゃんと弟子や後輩たちを構えるように、定期的に出水くんや荒船くん、それから風間隊の後輩たちとローテーションでご飯を食べたりしているのだ。
「気が早いけど、次のご飯のリクエストしてもいいですか?」
「いいよー。私に出来そうなやつなら」
サラダを食べつつ頷きながらそう言えば、出水くんは嬉しそうに笑った。鶏肉をもぐもぐ食べながらすこし考える素振りを見せた出水くんは、ごくりと喉を鳴らしてから口を開いた。
「蒼さんのオムライスが食いたいです。たまご硬めの」
「了解」
それなら出来る、と頷いて了承する。
オムライスならよく作るし、その時に慶も呼べば良いだろう。時間があればコロッケも作ってあげよう。2人はいっぱい食べてくれるから作り甲斐があるし。
「あとでお休み教えてね」
「はい」
楽しみにしてますと笑った出水くんに笑い返して、食事の続きをしようとグラタンにスプーンを差し入れた。
出水くんとグラタン
月1回の定期ご飯
(ということで慶さん来る?)
(行くに決まってんだろ)
(ちゃんとレポートとか終わらせるんすよ)