荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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菊地原くんと夕方のカフェにて
今日は1日お休みなので、服や雑貨、生活用品を見にいこうと街中へ繰り出していた。お昼頃からいろんなお店を見て回ったので、15時をすぎた頃には少し多いくらいの袋を抱えていた。
「荷物多くなってきたなあ」
「――蒼さん?」
必要なものはそろえたし、カフェでお茶したら帰るかなとお気に入りのお店に向かって歩いていれば後ろから声を掛けられた。
振り返れば、私服姿の菊地原くんがまばらな人波を避けながら近づいてくるところだった。
「、菊地原くん」
「今日は休みなんですか?」
「そうそう。菊地原くんは本部いくとこ?」
近づいてきた菊地原くんとともに、ちょっと移動して人通りの邪魔にならないところへ移動する。歩きながら人ごみの中にいるなんて珍しいね、と言えば菊地原くんはむすりとした顔になった。
「本部来る前に、待機任務中に食べられそうなものを買って来てくれって言われたんですよ」
「あら、そうだったの」
「歌川にでもやらせればよかったんですけど、あいつもう本部にいるらしくて」
「頼まれちゃったのか」
「風間さん相手じゃ断れないでしょ」
「断れないなあ」
それは私でも無理だ。溜め息をつく菊地原くんの両手は空のままで、まだおやつを探していることが窺える。なにか手伝えるかな、と思案を巡らせたところで当初の目的を思い出した。
「そうだ、私いつものカフェに行こうと思ってたんだけど一緒に行かない?」
そう提案すれば、菊地原くんはああ、と合点がいったような声を上げた。
「蒼さんお気に入りのですか」
「そうそう。そこならケーキとかも買えるし、今ならご一緒特典でお好きな物をご馳走します」
「わかりました、ご一緒します」
「よし!いこいこっ」
こくりと頷いてくれた菊地原くんに笑顔になる。さっそく行こうとすれば、近づいてきた菊地原くんがひょいと私の持っている荷物を持ってしまった。
「あ」
「重いでしょ、持ちますよ」
「ありがとう」
助かる、とお礼を言って2人でカフェに向かって歩き出した。
◆
「なににしよっかなー」
お気に入りのカフェにやってきて、窓際の席でメニュー表をじっくり見ていた。本日のおすすめは木苺のタルトらしく、きらきらしたジュレに飾られたタルトの写真が載っている。
「これ美味しそうだよなあ、しかしグレープフルーツのタルトも捨てがたい…」
「ぼくこれにします、ブルーベリーのタルト」
「あ、決めるの早いねー…じゃあ、今日は木苺にする」
顔見知りになった初老の店主に注文をして、のんびり話しながらタルトたちが来るのを待つ。
「風間隊は待機任務だよね」
「蒼さんも夜勤ですよね?」
「うん」
私も待機任務だよと零せば、菊地原くんがふうんと声を上げる。風間隊も待機任務なら、基本的には一緒にいても大丈夫そうだ。
「それなら来ます?来るなら蒼さんの分のお菓子も買って行きますけど」
「いきたい!じゃあ私が買おうか、お邪魔するわけだし…」
「出さなくていいですよ。蒼さんのって言えば簡単にうちの経費で落ちますし」
「そう?」
経費とは言ったものの、基本的にボーダーからは支給されているものではない。風間隊の隊員たちが月々のお給料からちょこっとずつ出し合って何かあったらそこから引き出す、いわゆる風間隊貯金だ。
「そうですよ。こういう時位しか蒼さんにご馳走できないんですから、大人しくご馳走になってください」
「了解」
ご馳走になります、と言えば丁度良くタルトたちが運ばれてきた。木苺のタルトは写真で見るよりも綺麗で、食べるのがもったいないくらいだ。
「わーおいしそう!」
「よかったですね」
一緒に頼んでいたコーヒーをひとくち飲んでから、2人揃って手を合わせてフォークを持つ。
「いただきまーす」
「いただきます」
ぷるんとしたジュレにフォークを突き立てて、たっぷりの木苺が乗ったタルトを掬う。きらきら輝くそれを口の中に放り込めば、木苺の甘酸っぱさがじゅわりと染み出した。
「んー!」
「ん」
おいしー!とテンションが上がった私の向かい側では、菊地原くんがほんのり表情を緩ませてタルトを齧っている。
「おいしい?」
「おいしいですよ、1口食べます?」
「いただく!私のも1口どーぞ」
すい、とお互いにタルトのお皿を差し出して、タルトの一角を崩させてもらう。大粒のブルーベリーがごろごろ入ったタルトの端っこをざくりと切り取って、いそいそと口に運んだ。
「!ん、こっちもおいしいね」
大粒のブルーベリーはどれもこれも瑞々しくて、木苺とは違う甘酸っぱさが口に広がる。あまーい、ともぐもぐしていれば菊地原くんも木苺のタルトを口に運ぶのが見えた。
「っす、っぱ…!」
ブルーベリーの方が甘かったから、木苺はすっぱく感じたのだろう。眉をぎゅっとひそめた姿に笑みがこぼれる。
「ビタミンー!って感じがするよね」
「んん、美味しいですけどね…」
ぼくはこっちが良い、と菊地原くんが木苺を味わうのもそこそこにブルーベリーのタルトを口に運ぶ。甘いブルーベリーをもぐもぐ咀嚼して表情がほんのり緩む。かわいい。
「んふふ」
「なんです?」
「なんでもないよ」
可愛いなんて言ったら怒られちゃうから誤魔化して、にこにこしながらタルトをすくう。
「お土産何にしよっか」
「ショーケースにあったフルーツロール見ました?あれでいいんじゃないですかね」
「あ、みたみた!じゃあフルーツロールにしよっか」
席に着く前に見たショーケースの中に、苺や桃、葡萄などがふんだんに使われていたフルーツロールがあったのを思い出す。デコレーションも綺麗だったし、あれは喜びそうだ。
「じゃ、ゆっくり食べてお土産買って、それから本部行きましょっか」
「そうしましょう」
こくりと頷いた菊地原くんと一緒に、ゆっくりお喋りしながらタルトを食べ進めた。
夕方のカフェにて
菊地原くんとお茶する
(まって苺ロールも捨てがたいよ)
(2本買えばいいじゃないですか)
今日は1日お休みなので、服や雑貨、生活用品を見にいこうと街中へ繰り出していた。お昼頃からいろんなお店を見て回ったので、15時をすぎた頃には少し多いくらいの袋を抱えていた。
「荷物多くなってきたなあ」
「――蒼さん?」
必要なものはそろえたし、カフェでお茶したら帰るかなとお気に入りのお店に向かって歩いていれば後ろから声を掛けられた。
振り返れば、私服姿の菊地原くんがまばらな人波を避けながら近づいてくるところだった。
「、菊地原くん」
「今日は休みなんですか?」
「そうそう。菊地原くんは本部いくとこ?」
近づいてきた菊地原くんとともに、ちょっと移動して人通りの邪魔にならないところへ移動する。歩きながら人ごみの中にいるなんて珍しいね、と言えば菊地原くんはむすりとした顔になった。
「本部来る前に、待機任務中に食べられそうなものを買って来てくれって言われたんですよ」
「あら、そうだったの」
「歌川にでもやらせればよかったんですけど、あいつもう本部にいるらしくて」
「頼まれちゃったのか」
「風間さん相手じゃ断れないでしょ」
「断れないなあ」
それは私でも無理だ。溜め息をつく菊地原くんの両手は空のままで、まだおやつを探していることが窺える。なにか手伝えるかな、と思案を巡らせたところで当初の目的を思い出した。
「そうだ、私いつものカフェに行こうと思ってたんだけど一緒に行かない?」
そう提案すれば、菊地原くんはああ、と合点がいったような声を上げた。
「蒼さんお気に入りのですか」
「そうそう。そこならケーキとかも買えるし、今ならご一緒特典でお好きな物をご馳走します」
「わかりました、ご一緒します」
「よし!いこいこっ」
こくりと頷いてくれた菊地原くんに笑顔になる。さっそく行こうとすれば、近づいてきた菊地原くんがひょいと私の持っている荷物を持ってしまった。
「あ」
「重いでしょ、持ちますよ」
「ありがとう」
助かる、とお礼を言って2人でカフェに向かって歩き出した。
◆
「なににしよっかなー」
お気に入りのカフェにやってきて、窓際の席でメニュー表をじっくり見ていた。本日のおすすめは木苺のタルトらしく、きらきらしたジュレに飾られたタルトの写真が載っている。
「これ美味しそうだよなあ、しかしグレープフルーツのタルトも捨てがたい…」
「ぼくこれにします、ブルーベリーのタルト」
「あ、決めるの早いねー…じゃあ、今日は木苺にする」
顔見知りになった初老の店主に注文をして、のんびり話しながらタルトたちが来るのを待つ。
「風間隊は待機任務だよね」
「蒼さんも夜勤ですよね?」
「うん」
私も待機任務だよと零せば、菊地原くんがふうんと声を上げる。風間隊も待機任務なら、基本的には一緒にいても大丈夫そうだ。
「それなら来ます?来るなら蒼さんの分のお菓子も買って行きますけど」
「いきたい!じゃあ私が買おうか、お邪魔するわけだし…」
「出さなくていいですよ。蒼さんのって言えば簡単にうちの経費で落ちますし」
「そう?」
経費とは言ったものの、基本的にボーダーからは支給されているものではない。風間隊の隊員たちが月々のお給料からちょこっとずつ出し合って何かあったらそこから引き出す、いわゆる風間隊貯金だ。
「そうですよ。こういう時位しか蒼さんにご馳走できないんですから、大人しくご馳走になってください」
「了解」
ご馳走になります、と言えば丁度良くタルトたちが運ばれてきた。木苺のタルトは写真で見るよりも綺麗で、食べるのがもったいないくらいだ。
「わーおいしそう!」
「よかったですね」
一緒に頼んでいたコーヒーをひとくち飲んでから、2人揃って手を合わせてフォークを持つ。
「いただきまーす」
「いただきます」
ぷるんとしたジュレにフォークを突き立てて、たっぷりの木苺が乗ったタルトを掬う。きらきら輝くそれを口の中に放り込めば、木苺の甘酸っぱさがじゅわりと染み出した。
「んー!」
「ん」
おいしー!とテンションが上がった私の向かい側では、菊地原くんがほんのり表情を緩ませてタルトを齧っている。
「おいしい?」
「おいしいですよ、1口食べます?」
「いただく!私のも1口どーぞ」
すい、とお互いにタルトのお皿を差し出して、タルトの一角を崩させてもらう。大粒のブルーベリーがごろごろ入ったタルトの端っこをざくりと切り取って、いそいそと口に運んだ。
「!ん、こっちもおいしいね」
大粒のブルーベリーはどれもこれも瑞々しくて、木苺とは違う甘酸っぱさが口に広がる。あまーい、ともぐもぐしていれば菊地原くんも木苺のタルトを口に運ぶのが見えた。
「っす、っぱ…!」
ブルーベリーの方が甘かったから、木苺はすっぱく感じたのだろう。眉をぎゅっとひそめた姿に笑みがこぼれる。
「ビタミンー!って感じがするよね」
「んん、美味しいですけどね…」
ぼくはこっちが良い、と菊地原くんが木苺を味わうのもそこそこにブルーベリーのタルトを口に運ぶ。甘いブルーベリーをもぐもぐ咀嚼して表情がほんのり緩む。かわいい。
「んふふ」
「なんです?」
「なんでもないよ」
可愛いなんて言ったら怒られちゃうから誤魔化して、にこにこしながらタルトをすくう。
「お土産何にしよっか」
「ショーケースにあったフルーツロール見ました?あれでいいんじゃないですかね」
「あ、みたみた!じゃあフルーツロールにしよっか」
席に着く前に見たショーケースの中に、苺や桃、葡萄などがふんだんに使われていたフルーツロールがあったのを思い出す。デコレーションも綺麗だったし、あれは喜びそうだ。
「じゃ、ゆっくり食べてお土産買って、それから本部行きましょっか」
「そうしましょう」
こくりと頷いた菊地原くんと一緒に、ゆっくりお喋りしながらタルトを食べ進めた。
夕方のカフェにて
菊地原くんとお茶する
(まって苺ロールも捨てがたいよ)
(2本買えばいいじゃないですか)