荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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出水くんと相合傘
「わわ、」
夕暮れ時、街中を散策していたら突如ざあっと音を立てて大粒の雨が降って来た。慌てて近くのお店の軒下へと避難するけど、雨の勢いはぐんぐん増していく。
「こまったなー」
傘持ってこなかったわ、と溜め息を吐いて少し待機だなと雨雲を見上げた。
◆
「――あれ?わり、ちっと通して」
ざあざあと雨が降るのを見ていれば、前を通っていた男子高校生の一団の中から声がした。その声にそちらを見れば、特に見覚えのない高校生たちの中からするりと色素の薄い髪の毛が現れる。
「蒼さん?」
「あ、出水くん」
「こんな所で何してるんです?」
「雨宿りだよ」
一団から抜け出してきた出水くんが私の前までやってくる。傘持ってなくって、と言えば出水くんはああと納得したように頷いた。その後ろで、待たされている一団から声が飛んでくる。
「おい出水ー!その美人さん彼女ー!?」
「ちっげえよ馬鹿!おれの先輩!」
「俺たちはいいから彼女送ってやれよー!」
「あとで詳しく聞かせろよなー!」
「ちげえって!」
じゃあなーなんて、出水くんの話も聞かずにわいわい言いながら男子高校生たちが歩いて行ってしまった。取り残された出水くんは、溜め息を吐きながらそれを見送っている。
「あいつら…」
「ごめんね、邪魔しちゃったかな」
「何言ってんです、構いませんよ。どうせすぐそこで別れるつもりでしたし」
「そう?」
道を曲がって視界から消えていく高校生たちを見ていれば、出水くんがほら、と傘を差し出してきた。斜めになった傘からぽたりと雨粒が流れ落ちる。
「それより身体冷えちゃいますから、早く帰りましょ?」
「了解。お邪魔します」
「はいどーぞ」
出水くんの差し出した傘に入り込んで、本部へ向かって歩き出す。足元に出来た水溜りを避けながら歩いていれば、傘を持つ出水くんに話しかけられた。
「今日は何しに出てたんです?」
「立ち入り禁止区域の近くで工事が始まったって言うから、ちょっとその確認に」
「あ、そういや西の方で重機入ってましたよね」
「そうそう」
そこの安全確認に行ってましたー、と言えば1度は頷いた出水くんが「あれ?」と首を傾げて呟く。
「でも、そっからここまで遠くないっすか」
「玉狛行ってたの」
「あー」
お昼ご飯は烏丸くんの作ったパスタでね、なんて話しながら2人で雨の中を歩く。暫く歩いていたけど、雨は強くなってきたし風も強く吹いてきた。天気予報め、きいてないぞ。
「天気予報外れましたねー」
「1日快晴っていってたもんね…っふ、くしゅっ」
ひやりとした風に煽られて、思わずくしゃみがでた。そんなに冷えてないはず、と触れた腕は残念ながらひんやりしていた。なんだと…と顔をひきつらせた私を見て、出水くんが呟く。
「やっぱ身体冷えちゃいましたか」
「うーん…どっかで暖かい飲み物を入手したいかな」
「それなら、そこの角にあるカフェでなんか買っていきましょっか」
「そうしましょっか」
ざあざあと降る雨の中を少し歩いて、カフェの建物から突き出た軒下に入り込む。傘の水気を軽く払って、がらがらの傘たての中に差してからカフェの木扉を押しあけて中に入れば、コーヒーの良い香りがふんわり鼻を擽った。
「わ、いいにおい」
「ですね、蒼さん何飲みます?」
出水くんと一緒に、レジ前に立てられた黒板みたいなメニュー表に目を落とす。おすすめはカフェラテらしく、白いチョークで猫のラテアートが施された絵が描いてある。心惹かれるけど、確か身体が冷えた時は違うのが良いって言ってたなあ。
「冷えた身体にはココアがいいと荒船くんが」
「じゃあココアにしましょっか」
「カフェラテはまた今度にしよ」
「了解、天気良い時に来ましょっか」
出水くんと軽く約束して、2人分のココアをテイクアウトで注文する。ついでにレジの横に並んでいたクッキーも美味しそうだったのでいくつか一緒に買って、あれこれ話しながらココアの出来上がりを待つ。
「蒼さん本部戻って時間あります?」
「あるよ、今日はもう任務ないし」
「じゃあちょっと勉強教えてもらえませんか?わかんねえとこあるんですけど、オペ会議で由宇さんいないし、太刀川さんはいても役に立たねえんで」
「いいよー、傘に入れてくれたお礼にでも」
「助かります」
良かったーと笑う出水くんに笑みを零して、それなら私の部屋でこのクッキーを齧りながらやるかと思案を巡らせる。
「はい、ココア2つお待たせいたしました」
「あ、ありがとうございます」
「私が持つよ、傘開けないでしょ」
「そっすね、じゃあちょっとだけお願いします」
「お任せあれ」
店員さんからココアを2つ受け取って、ざあざあ降る雨の中に戻る。ばさっと傘を差した出水くんの元へ入り込んで、ココアを手渡して歩き出す。
「いいにおい」
「ですね」
すん、と口に近づけたカップからココアの良い香りを吸い込む。ホルダーを付けてもらったのでそんなには熱くないけれど、ちょっと冷えた身体には良い感じのあったかさだった。
「ん、あつ」
傾けたカップから熱いココアが口の中に流れ込んでくる。ふうふう息を吹きかけつつ、ちょこちょこ飲み込むと身体の中からじんわりと熱が上がってくる感じがする。
「おいし」
「なんか、ちょっと良いココアな感じがしますね」
「ねー」
雨で湿った空気の中でも、ココアの良い香りが鼻に抜ける。これはいい買い物をした、なんて上機嫌で笑う。
「今日は近道でいいっすか?」
「よいですよー」
風邪引かないように帰りましょ、と2人でココアを飲みつつ近場のボーダー通路へと足を向けた。
相合傘
出水くんに拾われる
(到着ー)
(入れてくれてありがとね)
(いーえ)
「わわ、」
夕暮れ時、街中を散策していたら突如ざあっと音を立てて大粒の雨が降って来た。慌てて近くのお店の軒下へと避難するけど、雨の勢いはぐんぐん増していく。
「こまったなー」
傘持ってこなかったわ、と溜め息を吐いて少し待機だなと雨雲を見上げた。
◆
「――あれ?わり、ちっと通して」
ざあざあと雨が降るのを見ていれば、前を通っていた男子高校生の一団の中から声がした。その声にそちらを見れば、特に見覚えのない高校生たちの中からするりと色素の薄い髪の毛が現れる。
「蒼さん?」
「あ、出水くん」
「こんな所で何してるんです?」
「雨宿りだよ」
一団から抜け出してきた出水くんが私の前までやってくる。傘持ってなくって、と言えば出水くんはああと納得したように頷いた。その後ろで、待たされている一団から声が飛んでくる。
「おい出水ー!その美人さん彼女ー!?」
「ちっげえよ馬鹿!おれの先輩!」
「俺たちはいいから彼女送ってやれよー!」
「あとで詳しく聞かせろよなー!」
「ちげえって!」
じゃあなーなんて、出水くんの話も聞かずにわいわい言いながら男子高校生たちが歩いて行ってしまった。取り残された出水くんは、溜め息を吐きながらそれを見送っている。
「あいつら…」
「ごめんね、邪魔しちゃったかな」
「何言ってんです、構いませんよ。どうせすぐそこで別れるつもりでしたし」
「そう?」
道を曲がって視界から消えていく高校生たちを見ていれば、出水くんがほら、と傘を差し出してきた。斜めになった傘からぽたりと雨粒が流れ落ちる。
「それより身体冷えちゃいますから、早く帰りましょ?」
「了解。お邪魔します」
「はいどーぞ」
出水くんの差し出した傘に入り込んで、本部へ向かって歩き出す。足元に出来た水溜りを避けながら歩いていれば、傘を持つ出水くんに話しかけられた。
「今日は何しに出てたんです?」
「立ち入り禁止区域の近くで工事が始まったって言うから、ちょっとその確認に」
「あ、そういや西の方で重機入ってましたよね」
「そうそう」
そこの安全確認に行ってましたー、と言えば1度は頷いた出水くんが「あれ?」と首を傾げて呟く。
「でも、そっからここまで遠くないっすか」
「玉狛行ってたの」
「あー」
お昼ご飯は烏丸くんの作ったパスタでね、なんて話しながら2人で雨の中を歩く。暫く歩いていたけど、雨は強くなってきたし風も強く吹いてきた。天気予報め、きいてないぞ。
「天気予報外れましたねー」
「1日快晴っていってたもんね…っふ、くしゅっ」
ひやりとした風に煽られて、思わずくしゃみがでた。そんなに冷えてないはず、と触れた腕は残念ながらひんやりしていた。なんだと…と顔をひきつらせた私を見て、出水くんが呟く。
「やっぱ身体冷えちゃいましたか」
「うーん…どっかで暖かい飲み物を入手したいかな」
「それなら、そこの角にあるカフェでなんか買っていきましょっか」
「そうしましょっか」
ざあざあと降る雨の中を少し歩いて、カフェの建物から突き出た軒下に入り込む。傘の水気を軽く払って、がらがらの傘たての中に差してからカフェの木扉を押しあけて中に入れば、コーヒーの良い香りがふんわり鼻を擽った。
「わ、いいにおい」
「ですね、蒼さん何飲みます?」
出水くんと一緒に、レジ前に立てられた黒板みたいなメニュー表に目を落とす。おすすめはカフェラテらしく、白いチョークで猫のラテアートが施された絵が描いてある。心惹かれるけど、確か身体が冷えた時は違うのが良いって言ってたなあ。
「冷えた身体にはココアがいいと荒船くんが」
「じゃあココアにしましょっか」
「カフェラテはまた今度にしよ」
「了解、天気良い時に来ましょっか」
出水くんと軽く約束して、2人分のココアをテイクアウトで注文する。ついでにレジの横に並んでいたクッキーも美味しそうだったのでいくつか一緒に買って、あれこれ話しながらココアの出来上がりを待つ。
「蒼さん本部戻って時間あります?」
「あるよ、今日はもう任務ないし」
「じゃあちょっと勉強教えてもらえませんか?わかんねえとこあるんですけど、オペ会議で由宇さんいないし、太刀川さんはいても役に立たねえんで」
「いいよー、傘に入れてくれたお礼にでも」
「助かります」
良かったーと笑う出水くんに笑みを零して、それなら私の部屋でこのクッキーを齧りながらやるかと思案を巡らせる。
「はい、ココア2つお待たせいたしました」
「あ、ありがとうございます」
「私が持つよ、傘開けないでしょ」
「そっすね、じゃあちょっとだけお願いします」
「お任せあれ」
店員さんからココアを2つ受け取って、ざあざあ降る雨の中に戻る。ばさっと傘を差した出水くんの元へ入り込んで、ココアを手渡して歩き出す。
「いいにおい」
「ですね」
すん、と口に近づけたカップからココアの良い香りを吸い込む。ホルダーを付けてもらったのでそんなには熱くないけれど、ちょっと冷えた身体には良い感じのあったかさだった。
「ん、あつ」
傾けたカップから熱いココアが口の中に流れ込んでくる。ふうふう息を吹きかけつつ、ちょこちょこ飲み込むと身体の中からじんわりと熱が上がってくる感じがする。
「おいし」
「なんか、ちょっと良いココアな感じがしますね」
「ねー」
雨で湿った空気の中でも、ココアの良い香りが鼻に抜ける。これはいい買い物をした、なんて上機嫌で笑う。
「今日は近道でいいっすか?」
「よいですよー」
風邪引かないように帰りましょ、と2人でココアを飲みつつ近場のボーダー通路へと足を向けた。
相合傘
出水くんに拾われる
(到着ー)
(入れてくれてありがとね)
(いーえ)