荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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諏訪さんと流星群
水の流れる音以外、静寂に包まれている空間。
放棄された街の中にある川。冷たく澄んだ水の中に足を投げ出して柔らかな草の絨毯の上に寝転がり、空に広がる星空を眺めていた。
「あ?蒼?」
がさりと草を踏み分ける音と共に、その声は降ってきた。
寝ころんだままその声のした方へ視線を向けると、見知った顔が目に映りこんだ。
「諏訪さんだ、こんばんはー」
「蒼お前、こんなトコで何してんだ?」
「星空観賞中です」
転がったまま言えば、諏訪さんは私に近づいてきてそのまますぐ隣の草の上へと座り込んだ。隊服姿なので防衛任務の途中なのだろうけれど、少し通信を入れた後に換装を解いてしまった。
「あれ、任務中じゃないんですか?」
「ちっと休憩」
堤に言ったし10分だけな、と笑う諏訪さんは靴を適当に脱ぎ捨てて私と同じように川に足を入れた。直後にばしゃっと水音を鳴らして諏訪さんの足が跳ね上がる。
「うおっつめてえ!」
「水ですもん」
「よくお前平気で入れるな…」
「慣れると気持ちいいですよ」
夏になってしばらく。夜の空気は暖かいけれど、川の水は少し冷たいくらい。最初に足を入れた時は冷たさに震えたけれど、今はもう水と同じような体温になってしまっている。
「諏訪さん、チョコ食べます?」
「食う食う」
ここに来る時に持ってきていたバッグの中から、パフの入っている板チョコを取り出し、ぱきりと1列割って諏訪さんに手渡す。
ついでに自分の分も1列割って、口の中に放り込んだ。
「さんきゅ」
「いーえ」
倒れたままもぐもぐチョコを齧っていれば、同じように諏訪さんが寝ころんで聞いてきた。
「なー蒼、なんでこんなとこで空見てるわけ?」
「光の無いとこで流星群が見たかったので」
「ああ、いま流星群見えるんだっけか」
そうです、と諏訪さんの言葉に頷く。
年に何回か流れる流星群を見ようと、わざわざ暗い放棄地帯までやってきたのだ。ここなら街灯もないし、星がよく見える。
「誰か連れてくりゃ良かったんに」
「そうしようと思ったんですけど、学生さんたちは明日からテストらしくて」
「あー、そういや日佐人もそんな事言ってたな」
さすがにテスト前の学生を連れ出すことは出来ないし、1人でここまで来たのだ。
「それでも女子ひとりじゃ危ねェだろ。今度は誰か連れてこいよ」
「了解。諏訪さんやさしい」
「諏訪さんはいつでもやさしーの」
軽口を叩きながら空を見上げていれば、夜空を切り裂くようにきらりと光が流れた。
「あ」
「お」
「流れた!」
「流れたなー」
諏訪さんと2人、綺麗だったなーとはしゃいでいればきらり、きらりと星が流れ始めた。ちらっと見た時計は、流星群が本格的に流れてくる時間になったことを告げていた。
「綺麗ー」
「結構良いモンだよなあ」
「ほんとに星屑って感じですよね」
きらり、きらりと流れる星たちを見ながら諏訪さんがぽつりと零す。
「あれ全部、何かが燃えてるんだよなあ」
「向こうは火だるまでも、これだけ離れると綺麗に見えますよねえ」
そんな情緒もないことをぐだぐだ喋っていれば、ピピッと諏訪さんの携帯が鳴った。アラームらしいそれは、諏訪さんの休憩時間が終わった事を知らせているのだろう。
「早えな、もう時間かよ」
「お仕事頑張ってくださーい」
「おー」
寝転がったままの私の横で、諏訪さんが川から足を上げてふと声を漏らした。
「あ」
「ん?」
「……蒼さん、予備のタオルかなにかお持ちではないでしょうか…」
「ああ」
申し訳なさそうにしている諏訪さんに、びしょ濡れの足を拭くものがないんだなと笑みをこぼす。丁度タオルは予備を持ってきていたし、鞄から1枚取り出して諏訪さんに差し出した。
「どうぞ、使って下さい」
「悪ィな」
完全に頭から抜けてたわ、と言いながら諏訪さんが渡したタオルで水気を切り、靴を履いて立ち上がる。
「これ、洗って返すな」
「別に今返してくれてもいいですよ」
「そういう訳にはいかねえよ」
苦笑いした諏訪さんは、転がったままの私の頭をぐしゃぐしゃ撫でてから換装した。
「じゃあ蒼、風邪引く前に帰れよ」
「はーい」
そう言った諏訪さんは私に手を振って、たぶん堤さんに通信を入れながら土手を登って姿を消した。
静かになった河原では、水のせせらぎが良く聞こえる。
「――…ああ、ここにいたのか」
「堤さん?」
「蒼、隣いい?今度は俺が休憩なんだ」
次の来訪者が来るまでは、そんなに時間がかからなかった。こちらに降りてくる堤さんを見ながら、諏訪さんの優しさに口元が緩んだ。
諏訪さんと星空観賞会
流星群を見る
(暖かい飲み物持ってきました!)
(わ、笹森くんまで)
水の流れる音以外、静寂に包まれている空間。
放棄された街の中にある川。冷たく澄んだ水の中に足を投げ出して柔らかな草の絨毯の上に寝転がり、空に広がる星空を眺めていた。
「あ?蒼?」
がさりと草を踏み分ける音と共に、その声は降ってきた。
寝ころんだままその声のした方へ視線を向けると、見知った顔が目に映りこんだ。
「諏訪さんだ、こんばんはー」
「蒼お前、こんなトコで何してんだ?」
「星空観賞中です」
転がったまま言えば、諏訪さんは私に近づいてきてそのまますぐ隣の草の上へと座り込んだ。隊服姿なので防衛任務の途中なのだろうけれど、少し通信を入れた後に換装を解いてしまった。
「あれ、任務中じゃないんですか?」
「ちっと休憩」
堤に言ったし10分だけな、と笑う諏訪さんは靴を適当に脱ぎ捨てて私と同じように川に足を入れた。直後にばしゃっと水音を鳴らして諏訪さんの足が跳ね上がる。
「うおっつめてえ!」
「水ですもん」
「よくお前平気で入れるな…」
「慣れると気持ちいいですよ」
夏になってしばらく。夜の空気は暖かいけれど、川の水は少し冷たいくらい。最初に足を入れた時は冷たさに震えたけれど、今はもう水と同じような体温になってしまっている。
「諏訪さん、チョコ食べます?」
「食う食う」
ここに来る時に持ってきていたバッグの中から、パフの入っている板チョコを取り出し、ぱきりと1列割って諏訪さんに手渡す。
ついでに自分の分も1列割って、口の中に放り込んだ。
「さんきゅ」
「いーえ」
倒れたままもぐもぐチョコを齧っていれば、同じように諏訪さんが寝ころんで聞いてきた。
「なー蒼、なんでこんなとこで空見てるわけ?」
「光の無いとこで流星群が見たかったので」
「ああ、いま流星群見えるんだっけか」
そうです、と諏訪さんの言葉に頷く。
年に何回か流れる流星群を見ようと、わざわざ暗い放棄地帯までやってきたのだ。ここなら街灯もないし、星がよく見える。
「誰か連れてくりゃ良かったんに」
「そうしようと思ったんですけど、学生さんたちは明日からテストらしくて」
「あー、そういや日佐人もそんな事言ってたな」
さすがにテスト前の学生を連れ出すことは出来ないし、1人でここまで来たのだ。
「それでも女子ひとりじゃ危ねェだろ。今度は誰か連れてこいよ」
「了解。諏訪さんやさしい」
「諏訪さんはいつでもやさしーの」
軽口を叩きながら空を見上げていれば、夜空を切り裂くようにきらりと光が流れた。
「あ」
「お」
「流れた!」
「流れたなー」
諏訪さんと2人、綺麗だったなーとはしゃいでいればきらり、きらりと星が流れ始めた。ちらっと見た時計は、流星群が本格的に流れてくる時間になったことを告げていた。
「綺麗ー」
「結構良いモンだよなあ」
「ほんとに星屑って感じですよね」
きらり、きらりと流れる星たちを見ながら諏訪さんがぽつりと零す。
「あれ全部、何かが燃えてるんだよなあ」
「向こうは火だるまでも、これだけ離れると綺麗に見えますよねえ」
そんな情緒もないことをぐだぐだ喋っていれば、ピピッと諏訪さんの携帯が鳴った。アラームらしいそれは、諏訪さんの休憩時間が終わった事を知らせているのだろう。
「早えな、もう時間かよ」
「お仕事頑張ってくださーい」
「おー」
寝転がったままの私の横で、諏訪さんが川から足を上げてふと声を漏らした。
「あ」
「ん?」
「……蒼さん、予備のタオルかなにかお持ちではないでしょうか…」
「ああ」
申し訳なさそうにしている諏訪さんに、びしょ濡れの足を拭くものがないんだなと笑みをこぼす。丁度タオルは予備を持ってきていたし、鞄から1枚取り出して諏訪さんに差し出した。
「どうぞ、使って下さい」
「悪ィな」
完全に頭から抜けてたわ、と言いながら諏訪さんが渡したタオルで水気を切り、靴を履いて立ち上がる。
「これ、洗って返すな」
「別に今返してくれてもいいですよ」
「そういう訳にはいかねえよ」
苦笑いした諏訪さんは、転がったままの私の頭をぐしゃぐしゃ撫でてから換装した。
「じゃあ蒼、風邪引く前に帰れよ」
「はーい」
そう言った諏訪さんは私に手を振って、たぶん堤さんに通信を入れながら土手を登って姿を消した。
静かになった河原では、水のせせらぎが良く聞こえる。
「――…ああ、ここにいたのか」
「堤さん?」
「蒼、隣いい?今度は俺が休憩なんだ」
次の来訪者が来るまでは、そんなに時間がかからなかった。こちらに降りてくる堤さんを見ながら、諏訪さんの優しさに口元が緩んだ。
諏訪さんと星空観賞会
流星群を見る
(暖かい飲み物持ってきました!)
(わ、笹森くんまで)