荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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荒船くんとランダム隊服
「………あれ?」
トリガーを起動したら、どういうわけかいつもとは違う服に換装した。
「え?えっ!?」
ぐるぐる回って確認するが、この赤と黒の隊服は冬島隊、というか当真くんのものだ。鏡を見れば背中にちゃんと冬島隊の隊章がついている。どういうことだ、と速攻で携帯を取り出して冬島さんの番号に電話を掛けた。
◆
「という訳でして」
結果を言えば、やっぱり今回の犯人も冬島さんだった。
昨晩、私のトリガーは定期点検により予備のトリガーと交換されている。面白そうだからと、その予備のトリガーに細工をしたらしい。なにしてるんだあの人は。
「だから生身なんですか」
「換装すると目立つんだもの…」
起動する度にランダム換装なんだって、と愚痴をこぼす。目の前に座った荒船くんは、お茶を飲んでから口を開いた。
「今日の任務は?」
「さっきまで。今日はもうないよ。任務中は一緒に任務に入ってた玲ちゃん達と同じ隊服だったけど」
「…那須隊ですか?」
「そう。記念記念!って写真撮られまくって大変だった」
でもあの隊服の機動力はすごいよと言ってカフェオレを飲みつつ、目の前に置いたおかしを摘まむ。ラウンジで休憩していた荒船くんを見つけて、少し話を聞いてもらっている最中だ。誰かに話さないとやっていけない。
「その写真、いま持ってます?」
「ううん、後で送るって」
多分玲ちゃん辺りから送られてくるでしょ、と言ってお菓子をさくさく齧る。なにか考えている感じの荒船くんに、せっかくだしと声を掛ける。
「ブースに入っちゃえばそんなに目立たないし、模擬戦する?」
「ああ…いえ、その前に少し用事を済ませてきてもいいですか。そんなには掛からないと思うので」
「わかった、いってらっしゃい」
がたりと席を立った荒船くんに手を振って、さかさか歩いていくその後ろ姿を見送った。ラウンジから出ていったのを見届けると同時に、横から声を掛けられる。
「蒼さん」
「お、出水くん。お疲れさま」
「お疲れ様です、前いいですか?」
「もちろん。お菓子もどーぞ」
「あざっす」
荒船くんがいた所に座り込んだ出水くんは、ちょいちょいと手を動かして私に耳を貸すようジェスチャーした。ちょっと出水くんの方へ耳を寄せれば、出水くんは内緒話するようにこそこそと小さな声で言った。
「蒼さんのトリオン体、いまとんでもないことになってるって聞いたんですけど」
「あら、誰から聞いたのかな?」
「当真さんです」
「あー」
出水くんから告げられた名前に、ため息にも似た声を漏れる。思い出せば冬島さんに電話した時に、後ろで当真くんの声もしていた。つまり話が筒抜け状態だったのだ。配慮はしてくれてるだろうけど、仲が良い子たちには話が広まっている気がする。そう思いながら、出水くんに頷いた。
「本当だよ。冬島さんの悪戯で、換装する度にランダムの隊服にチェンジするんだって」
「うわ、マジだったんですか」
「マジなんですよ」
見る?と首を傾げれば出水くんがわくわくした顔で頷いた。ラウンジの1番奥にあるこの席なら目立たないし、換装しても出水くんにしか見えないだろう。
「1回だけね。トリガー起動」
トリガーを起動すれば、出水くんが小さく「うおお…」と声を漏らした。ちらりと下を見れば、黒を基調としたスーツ姿だった。今度は二宮隊か。
「良く出来てるでしょ?」
「ほんとっすね…。あ、すげ。隊章もついてる」
ネクタイの先についた隊章をぺらりと見せれば、食いつくように見ていた出水くんがこくこくと頷いた。
「つーか蒼さん、スーツ似合いますね…」
「そう?」
では終了、と言いかけた所で荒船くんが戻ってくるのが見えた。あ、と零した私を見て出水くんも振り向いた。
「あ、荒船さんお疲れ様です」
「ああ」
「荒船くんおかえり。用事済んだ?」
「はい」
頷いた荒船くんは、私の前に座る出水くんに眉を下げて言った。
「出水、悪いが席を外してくれるか」
「了解、荒船さん。蒼さんまた今度」
「またね」
ひょいと立ち上がった出水くんは、そう言って歩いて行ってしまった。それと入れ替わりに、荒船くんが席に着く。
「今度は二宮隊ですか」
「見た通りね。それで荒船くん、なにか話があるの?」
出水くん追い返しちゃったしと荒船くんに聞けば、ふいと視線をそらされてしまった。なんでだ。
「なんで目をそらすの」
「別になんでもないです」
「二宮隊の隊服が気に入らない?」
「…」
「気に入らないのね」
沈黙は肯定と取って、トリガーを解除して生身に戻った。置きっぱなしのカフェオレを飲み込んでいれば、やっと荒船くんがこちらを向く。
「蒼さん」
「んー?」
「先月作った貸しがありますよね」
「ああ、ありますね」
鬼怒田さんからの急な呼び出しで約束が延期になったやつでしょと頷けば、同じようにひとつ頷いた荒船くんが続ける。
「あれ、うちの隊服になるまで換装してもらって、そのまま少し模擬戦してもらうんじゃダメですか」
「荒船くんの?いいけど」
そんなのでいいの?と首を傾げれるけれど、荒船くんははっきりと頷いた。ならばとポケットから取り出したトリガーをくるりと回した。
「トリガー起動」
「あ」
「お」
しゅん、と換装したのは黒字に青い線の入った荒船隊の隊服。まさかの1発で荒船隊の隊服が来るとは思っていなかった。
「これでいい?」
「、はい」
「じゃ、模擬戦しにいこっか」
確認するように訊けば、荒船くんがこくりと頷いたので席を立った。さかさかと先を行く荒船くんを追って、ブースの中へと足を踏み入れる。
これが終わったら、トリガー交換しに行かないとなあ。
ランダム隊服!
全ては冬島さんのせい
(ありがとうございました)
(いーえ)
最初の荒船くんの用事は、茜ちゃんに他の人への口止め及び写真要求、そして荒船隊の隊服での模擬戦は録画してあるのを後で見るのだ。
という設定。楽しかった。
「………あれ?」
トリガーを起動したら、どういうわけかいつもとは違う服に換装した。
「え?えっ!?」
ぐるぐる回って確認するが、この赤と黒の隊服は冬島隊、というか当真くんのものだ。鏡を見れば背中にちゃんと冬島隊の隊章がついている。どういうことだ、と速攻で携帯を取り出して冬島さんの番号に電話を掛けた。
◆
「という訳でして」
結果を言えば、やっぱり今回の犯人も冬島さんだった。
昨晩、私のトリガーは定期点検により予備のトリガーと交換されている。面白そうだからと、その予備のトリガーに細工をしたらしい。なにしてるんだあの人は。
「だから生身なんですか」
「換装すると目立つんだもの…」
起動する度にランダム換装なんだって、と愚痴をこぼす。目の前に座った荒船くんは、お茶を飲んでから口を開いた。
「今日の任務は?」
「さっきまで。今日はもうないよ。任務中は一緒に任務に入ってた玲ちゃん達と同じ隊服だったけど」
「…那須隊ですか?」
「そう。記念記念!って写真撮られまくって大変だった」
でもあの隊服の機動力はすごいよと言ってカフェオレを飲みつつ、目の前に置いたおかしを摘まむ。ラウンジで休憩していた荒船くんを見つけて、少し話を聞いてもらっている最中だ。誰かに話さないとやっていけない。
「その写真、いま持ってます?」
「ううん、後で送るって」
多分玲ちゃん辺りから送られてくるでしょ、と言ってお菓子をさくさく齧る。なにか考えている感じの荒船くんに、せっかくだしと声を掛ける。
「ブースに入っちゃえばそんなに目立たないし、模擬戦する?」
「ああ…いえ、その前に少し用事を済ませてきてもいいですか。そんなには掛からないと思うので」
「わかった、いってらっしゃい」
がたりと席を立った荒船くんに手を振って、さかさか歩いていくその後ろ姿を見送った。ラウンジから出ていったのを見届けると同時に、横から声を掛けられる。
「蒼さん」
「お、出水くん。お疲れさま」
「お疲れ様です、前いいですか?」
「もちろん。お菓子もどーぞ」
「あざっす」
荒船くんがいた所に座り込んだ出水くんは、ちょいちょいと手を動かして私に耳を貸すようジェスチャーした。ちょっと出水くんの方へ耳を寄せれば、出水くんは内緒話するようにこそこそと小さな声で言った。
「蒼さんのトリオン体、いまとんでもないことになってるって聞いたんですけど」
「あら、誰から聞いたのかな?」
「当真さんです」
「あー」
出水くんから告げられた名前に、ため息にも似た声を漏れる。思い出せば冬島さんに電話した時に、後ろで当真くんの声もしていた。つまり話が筒抜け状態だったのだ。配慮はしてくれてるだろうけど、仲が良い子たちには話が広まっている気がする。そう思いながら、出水くんに頷いた。
「本当だよ。冬島さんの悪戯で、換装する度にランダムの隊服にチェンジするんだって」
「うわ、マジだったんですか」
「マジなんですよ」
見る?と首を傾げれば出水くんがわくわくした顔で頷いた。ラウンジの1番奥にあるこの席なら目立たないし、換装しても出水くんにしか見えないだろう。
「1回だけね。トリガー起動」
トリガーを起動すれば、出水くんが小さく「うおお…」と声を漏らした。ちらりと下を見れば、黒を基調としたスーツ姿だった。今度は二宮隊か。
「良く出来てるでしょ?」
「ほんとっすね…。あ、すげ。隊章もついてる」
ネクタイの先についた隊章をぺらりと見せれば、食いつくように見ていた出水くんがこくこくと頷いた。
「つーか蒼さん、スーツ似合いますね…」
「そう?」
では終了、と言いかけた所で荒船くんが戻ってくるのが見えた。あ、と零した私を見て出水くんも振り向いた。
「あ、荒船さんお疲れ様です」
「ああ」
「荒船くんおかえり。用事済んだ?」
「はい」
頷いた荒船くんは、私の前に座る出水くんに眉を下げて言った。
「出水、悪いが席を外してくれるか」
「了解、荒船さん。蒼さんまた今度」
「またね」
ひょいと立ち上がった出水くんは、そう言って歩いて行ってしまった。それと入れ替わりに、荒船くんが席に着く。
「今度は二宮隊ですか」
「見た通りね。それで荒船くん、なにか話があるの?」
出水くん追い返しちゃったしと荒船くんに聞けば、ふいと視線をそらされてしまった。なんでだ。
「なんで目をそらすの」
「別になんでもないです」
「二宮隊の隊服が気に入らない?」
「…」
「気に入らないのね」
沈黙は肯定と取って、トリガーを解除して生身に戻った。置きっぱなしのカフェオレを飲み込んでいれば、やっと荒船くんがこちらを向く。
「蒼さん」
「んー?」
「先月作った貸しがありますよね」
「ああ、ありますね」
鬼怒田さんからの急な呼び出しで約束が延期になったやつでしょと頷けば、同じようにひとつ頷いた荒船くんが続ける。
「あれ、うちの隊服になるまで換装してもらって、そのまま少し模擬戦してもらうんじゃダメですか」
「荒船くんの?いいけど」
そんなのでいいの?と首を傾げれるけれど、荒船くんははっきりと頷いた。ならばとポケットから取り出したトリガーをくるりと回した。
「トリガー起動」
「あ」
「お」
しゅん、と換装したのは黒字に青い線の入った荒船隊の隊服。まさかの1発で荒船隊の隊服が来るとは思っていなかった。
「これでいい?」
「、はい」
「じゃ、模擬戦しにいこっか」
確認するように訊けば、荒船くんがこくりと頷いたので席を立った。さかさかと先を行く荒船くんを追って、ブースの中へと足を踏み入れる。
これが終わったら、トリガー交換しに行かないとなあ。
ランダム隊服!
全ては冬島さんのせい
(ありがとうございました)
(いーえ)
最初の荒船くんの用事は、茜ちゃんに他の人への口止め及び写真要求、そして荒船隊の隊服での模擬戦は録画してあるのを後で見るのだ。
という設定。楽しかった。