荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
二宮さんとクレープを食べる
「七草」
「あ、匡貴さんこんにちは」
ラウンジへ行こうと廊下を歩いていたら、正面から歩いて来た匡貴さんに声を掛けられた。なんでしょうと彼の前に行けば、彼は私をじっと見下ろしてから口を開いた。
「…すまない、少し時間を貰えないか」
「ああ、18時まででしたら構いませんよ」
そう答えれば、匡貴さんはひとつ頷いて「ついてきて欲しい」と歩き出した。
◆
警戒区域の外へ行くというので、城戸さんに許可を貰ってから匡貴さんと一緒にボーダー通路を歩いていた。通路に入った時点で匡貴さんが換装を解いたので、同じように換装を解いて私服姿で歩いている。
「そういえば、どこに行くんですか?」
「…笑わないでくれるか」
珍しく言いにくそうにこちらを見る匡貴さんに、首を傾げながら答える。
「内容にもよりますけど、笑わないと思いますよ」
歩く速さを合わせてくれる彼にそう言えば、少しだけ言いにくそうに、そしてちょっとだけ目を逸らして小さく口を動かした。
「…、クレープだ」
「クレープ?」
「駅前に、美味しいクレープ屋が出来たと、犬飼が」
小さく呟かれる言葉を拾って、頭の中で組み立てる。そう言えば、昨日の夕方にそんなことを言っていた犬飼くんに、一緒にいこうと誘われたなあ。あれか。
「それ私も犬飼くんに誘われたんですけど、昨日は任務が入ってて行けなかったんですよ」
だから行けて嬉しいです、と言えば匡貴さんの表情がほんの少し和らいだ。
「、そうか」
「匡貴さん、クレープお好きなんですか?」
「…ああ」
こくりと頷いた匡貴さんに、そうかそうか、匡貴さんクレープ好きなのかと頷く。つくづく人は見かけによらないよなあと思っていれば、匡貴さんは苦々しげに続けて口を開く。
「だが犬飼なんぞに言えば、口には出さないだろうが笑うことが目に見えている。それに、…男1人でクレープを買いに行くのは、」
「ああ…」
確かに、それはちょっと心にクるかもしれない。クレープ屋なんて女子の巣窟のようなものだ。イケメンが1人でクレープを買いに来たら、女子の視線を否が応でも独り占めだろう。匡貴さんはそういうのを嫌うし、私が呼ばれたのも頷ける。
「存分に盾にしてもらって構いませんよ」
「すまない…」
私が居るだけでも奇異な物を見るような視線を送ってくる人は減るだろうしと、笑ってそう言えば匡貴さんが苦い顔をしながら謝ってきた。
「七草の分は俺に買わせてくれ」
「え、悪いですよ」
「いや、わざわざついてきて貰うんだ。これ位させてくれないと困る」
「う…わかりました、ご馳走になります」
そう言って軽く頭を下げれば、匡貴さんは安心したようにひとつ頷いた。
◆
「わー、いろいろありますね」
「そうだな」
ところ変わって、例のクレープ屋の前。
新規開店とあって店内のイートインスペースが満席なのはもちろん、外にも10人程の行列が出来ていた。その行列に並んだら素早くやってきた店員さんにメニューの載ったパンフレットを貰ったので、匡貴さんと2人でそれを覗き込んでいるところだ。
「七草はどんな奴が好みだ」
「ミルフィーユとか、ガトーショコラが入ってるやつが好きですね。匡貴さんは?」
「俺はフルーツ系だな」
そう答える匡貴さんは、危惧していたとおり周囲の女子の視線を集めている。けれど本人は私がいるのもあってか開き直ったようで、特に気にせずメニューを見て目を輝かせている。
「これなんかどうだ」
「あ、美味しそう!」
匡貴さんに提案されたのは、苺がたっぷり入ったクレープだった。生クリームに突き刺さるようにガトーショコラが飾られている。
「これにしようかな…匡貴さんはどれにします?」
「目を惹くのはこれだな」
「わ、綺麗ですね」
匡貴さんが指差したのは苺のクレープに、細長くカットされたメロンやグレープフルーツが飾られたパフェみたいなクレープだった。
これも美味しそう、というか目を惹くものが多くていけない。
「…これはもう1回くらい来ないとだめですね」
「そうだな。また付き合ってくれるか」
「勿論です」
2人揃ってパンフレットを覗き込みつつ、真面目な顔して話していれば順番はすぐにやってきた。
可愛い制服を着たお姉さんに各々決めたクレープを注文し、約束通り匡貴さんにお金を払ってもらった。ガラスを1枚挟んだ先の調理場で手早く作られたクレープを受け取れば、暖かいそれはふわりと甘い香りを漂わせた。
「わ、いいにおい!」
「横に公園があったろう、そこで食べないか」
「了解です」
流石に女子まみれの店内で食べるのは拒否した匡貴さんと一緒に、ふわりと良い香りをひきながら足早に公園へと向かう。
公園へ入れば、そこにはまばらに親子がいるだけだった。空いてるベンチの中で、木陰の下に置かれたものを発見してそちらに向かう。
「いただきます!」
「ああ」
並んで腰を下ろして、待ちに待ったクレープに齧りつく。端っこがぱりっとしたもちもちのクレープ生地と、ふんわりしてるけど甘すぎない生クリーム。それからメインの苺をひとくちに齧れば、待ち望んでいた美味しさに顔が緩んだ。
「んー!」
「ん」
隣を見れば、匡貴さんもほんの少しだけ笑みを浮かべてクレープを満足げに食べていた。匡貴さんも気に入ったようだ。
大満足のそれを2人で食べ進めて、次はなにを頼もうかと早くも相談を始めるのだった。
匡貴さんとクレープを食べる
結構甘いものがお好きらしい
(次は桃にしようかな…)
(それもいいな)
先日、夫婦で日本1周を目指す移動クレープ屋さんと遭遇しました記念
「七草」
「あ、匡貴さんこんにちは」
ラウンジへ行こうと廊下を歩いていたら、正面から歩いて来た匡貴さんに声を掛けられた。なんでしょうと彼の前に行けば、彼は私をじっと見下ろしてから口を開いた。
「…すまない、少し時間を貰えないか」
「ああ、18時まででしたら構いませんよ」
そう答えれば、匡貴さんはひとつ頷いて「ついてきて欲しい」と歩き出した。
◆
警戒区域の外へ行くというので、城戸さんに許可を貰ってから匡貴さんと一緒にボーダー通路を歩いていた。通路に入った時点で匡貴さんが換装を解いたので、同じように換装を解いて私服姿で歩いている。
「そういえば、どこに行くんですか?」
「…笑わないでくれるか」
珍しく言いにくそうにこちらを見る匡貴さんに、首を傾げながら答える。
「内容にもよりますけど、笑わないと思いますよ」
歩く速さを合わせてくれる彼にそう言えば、少しだけ言いにくそうに、そしてちょっとだけ目を逸らして小さく口を動かした。
「…、クレープだ」
「クレープ?」
「駅前に、美味しいクレープ屋が出来たと、犬飼が」
小さく呟かれる言葉を拾って、頭の中で組み立てる。そう言えば、昨日の夕方にそんなことを言っていた犬飼くんに、一緒にいこうと誘われたなあ。あれか。
「それ私も犬飼くんに誘われたんですけど、昨日は任務が入ってて行けなかったんですよ」
だから行けて嬉しいです、と言えば匡貴さんの表情がほんの少し和らいだ。
「、そうか」
「匡貴さん、クレープお好きなんですか?」
「…ああ」
こくりと頷いた匡貴さんに、そうかそうか、匡貴さんクレープ好きなのかと頷く。つくづく人は見かけによらないよなあと思っていれば、匡貴さんは苦々しげに続けて口を開く。
「だが犬飼なんぞに言えば、口には出さないだろうが笑うことが目に見えている。それに、…男1人でクレープを買いに行くのは、」
「ああ…」
確かに、それはちょっと心にクるかもしれない。クレープ屋なんて女子の巣窟のようなものだ。イケメンが1人でクレープを買いに来たら、女子の視線を否が応でも独り占めだろう。匡貴さんはそういうのを嫌うし、私が呼ばれたのも頷ける。
「存分に盾にしてもらって構いませんよ」
「すまない…」
私が居るだけでも奇異な物を見るような視線を送ってくる人は減るだろうしと、笑ってそう言えば匡貴さんが苦い顔をしながら謝ってきた。
「七草の分は俺に買わせてくれ」
「え、悪いですよ」
「いや、わざわざついてきて貰うんだ。これ位させてくれないと困る」
「う…わかりました、ご馳走になります」
そう言って軽く頭を下げれば、匡貴さんは安心したようにひとつ頷いた。
◆
「わー、いろいろありますね」
「そうだな」
ところ変わって、例のクレープ屋の前。
新規開店とあって店内のイートインスペースが満席なのはもちろん、外にも10人程の行列が出来ていた。その行列に並んだら素早くやってきた店員さんにメニューの載ったパンフレットを貰ったので、匡貴さんと2人でそれを覗き込んでいるところだ。
「七草はどんな奴が好みだ」
「ミルフィーユとか、ガトーショコラが入ってるやつが好きですね。匡貴さんは?」
「俺はフルーツ系だな」
そう答える匡貴さんは、危惧していたとおり周囲の女子の視線を集めている。けれど本人は私がいるのもあってか開き直ったようで、特に気にせずメニューを見て目を輝かせている。
「これなんかどうだ」
「あ、美味しそう!」
匡貴さんに提案されたのは、苺がたっぷり入ったクレープだった。生クリームに突き刺さるようにガトーショコラが飾られている。
「これにしようかな…匡貴さんはどれにします?」
「目を惹くのはこれだな」
「わ、綺麗ですね」
匡貴さんが指差したのは苺のクレープに、細長くカットされたメロンやグレープフルーツが飾られたパフェみたいなクレープだった。
これも美味しそう、というか目を惹くものが多くていけない。
「…これはもう1回くらい来ないとだめですね」
「そうだな。また付き合ってくれるか」
「勿論です」
2人揃ってパンフレットを覗き込みつつ、真面目な顔して話していれば順番はすぐにやってきた。
可愛い制服を着たお姉さんに各々決めたクレープを注文し、約束通り匡貴さんにお金を払ってもらった。ガラスを1枚挟んだ先の調理場で手早く作られたクレープを受け取れば、暖かいそれはふわりと甘い香りを漂わせた。
「わ、いいにおい!」
「横に公園があったろう、そこで食べないか」
「了解です」
流石に女子まみれの店内で食べるのは拒否した匡貴さんと一緒に、ふわりと良い香りをひきながら足早に公園へと向かう。
公園へ入れば、そこにはまばらに親子がいるだけだった。空いてるベンチの中で、木陰の下に置かれたものを発見してそちらに向かう。
「いただきます!」
「ああ」
並んで腰を下ろして、待ちに待ったクレープに齧りつく。端っこがぱりっとしたもちもちのクレープ生地と、ふんわりしてるけど甘すぎない生クリーム。それからメインの苺をひとくちに齧れば、待ち望んでいた美味しさに顔が緩んだ。
「んー!」
「ん」
隣を見れば、匡貴さんもほんの少しだけ笑みを浮かべてクレープを満足げに食べていた。匡貴さんも気に入ったようだ。
大満足のそれを2人で食べ進めて、次はなにを頼もうかと早くも相談を始めるのだった。
匡貴さんとクレープを食べる
結構甘いものがお好きらしい
(次は桃にしようかな…)
(それもいいな)
先日、夫婦で日本1周を目指す移動クレープ屋さんと遭遇しました記念